「もう、別れよ。」

雨の音が傘に響き、私の声はその音にかき消されていった。

「チェギョン、悪かったって。だからもうしないよ。」

傘の柄を持っていた手をグッと掴まれた。

「離してよ!もう、その言葉聞き飽きた。」顔を上げながら、睨みつける。

「僕にはチェギョンだけなんだ。」

私の睨みは通じつ、子犬のようなウルウル瞳は私を見下ろしている。

「ユル君!もう、騙されないから!」

彼の子犬のような瞳にやられた女性は数知れず

彼女の私の事を無視して、何人もの人達がユル君に縋る。

優しいユル君は相談に乗っていくうちに最後の一線を超えてしまう事を、何度も繰り返していた。

そしてそれは、何度も私にバレて何度も別れ話になっていたが、もう耐えきれない!

「もう、ユル君とは終わったの!」

彼から買って貰ったお気に入りの傘を彼に押し付け、私は後ろを見ずに走り出した。

「チェギョン!」

ユル君の声が雨の音に負けずに耳に届いたが、私は振り向かずに地下鉄の改札に逃げ込んだ。

ちょうど着いた電車に乗り込み、ハアハアと息を繰り返した。

しばらくすると息も整い、私の思考はしっかりとなり、さっきの選択は間違っていなかった事を確認できた。

高校の時からの付き合いのユル君と別れた私は、ガラスに向かって呟いた。

「もう、二度と恋なんかしない。」









高校三年の秋。

珍しい時期の編入で出会ったユル君。

私達の出会いは運命だと信じていた。

が、その運命も昨日で終わってしまった。

ユル君から何度も電話やラインが着たが、私は削除ボタンを選んだ。

簡単に私の携帯の中から消滅してしまったイ・ユルの名

「簡単だね。」この名前のお陰で何度も泣き、苦しみ、私の心は悲鳴を上げて壊れそうだった。

でも、もう終わった事だ。

これからは、楽しい日を送っていかないとね。

昨日の夜にユル君との思い出の数々をゴミ袋にまとめ、それをごみ収集場所に持って行った。

「さー、大学に行こうかな。」

実家から大学に通っている私は、遠い大学までの距離を自転車で通っていた。

カバンをカゴに入れて家に向かって叫んだ。

家の一階で食堂を経営している親達が仕込み途中でも、私に声を掛けてくれる

「チェギョン!気をつけてなー!」仲の良い自慢のパパとママ。

私もユル君とこうなるんだろうと未来を思い描いていたのに、叶わなかった。

ハッと気がつき、何まだ未練がましくしてるのよ。もう過去のことでしょ!さっさと気持ち切り替えていかないとね。

見送る二人に明るく笑いながら

「行ってきます!」と手振り自転車に跨った。







皆様、こんばんは。

「二度と恋はしない」この話の前の題名は「紳士が恋に堕ちる時」でした。

なんかシックリときてなかったので、急遽変更しました。

なるだけアップ出来るよう、がんばるでー。

では、皆様何時も訪問ありがとうございます。

おやすみなさい。