「いらっしゃいませー。」ラストオーダーの時間の前に、お客様が入ってきた。

大きなサングラスに、綺麗なストレートヘアの美人そうな女性。

こんな田舎でも色んな所からお客様が来てくれるので、田舎には不釣り合いな女性でも何ら不思議でもない。

「ラストオーダーですが宜しいでしょうか?」

席を案内する前に、一言声を掛けてあげる。

「そっかー、仕方ないねー。良いわ。」許しを貰ったので席にご案内する。

すかさずママが水とメニューを持って来てくれる。

「はい、当店自慢の料理ばかりです。」

シンプルなメニュー表には私の描いたイラストが一個ある。

ペラペラと捲ってお客様は「じゃあ、この今日のお任せ料理で」

パタンとメニュー表は閉じられた。

「じゃあ、お待ちください。」メニューを脇のスタンドに戻し、厨房にパタパタと急いだ。

「今日のお任せ一つです!」

中のパパとシン君に聞こえるように、少し大きめな声で言った。

「了解ー!」2人の声が重なる。

さっきまで1日の仕事が終わりそうな時間なので、掃除をしていた2人がテキパキと動き出す。

その光景を見つめ、私は口元が緩んでしまう。

あーっ、いつ見ても私の旦那様はカッコイイ!

元々肌が浅黒かったのに、チェジュンと魚釣りをして日焼けで真っ黒になっている。

髪の毛を伸ばしワックスでビシッと結い上げて、ラフにシャツを着こなし、腰には黒くて長いエプロンを巻いている。

数年前まで、皇太子殿下だったなんてとても見えない。

子供もジフンと言う名の男の子とウネと言う女の子がいて、今私のお腹の中には3人目もいる。

大きくなったお腹を擦り、毎日カレからの愛を捧げられる。

あの冷たい皇太子が、こんなに熱い人だったとは。

先生からもう夜は大丈夫ですよという解禁を得てから、シン君の愛が止まらない。

最初は2人のラブラブを味わいたくてセーブしていたが、そろそろ欲しいねと言った途端、毎年子供を産んでいる。

シン君は子供を10人欲しいみたいで、頑張るぞーと意気込んでいて町一番の大家族になりそうな勢いだ。もうー恥ずかしい。

でも、ここにシン君が来た時に行っていたあの言葉を思い出すと切なくなる。

私はその時には、ちゃんと身を引こうと決めている。

カレのお陰で幸せだけど、カレには迷惑を掛けたくない。

ポーッと料理をしているシン君を見ていると、ママに注意をされた。

「こら、チェギョン!シンに見惚れないで、片付け手伝いなさい。」

「あっ!ハイ!」又、パタパタと移動すると

「おい、チェギョン!走るのは禁止だって言ってるだろ!」

フライパンを振りながら、ギロッと睨まれた。

「分かってるって!」そう言いながらも、パタパタと動き回る。

「オイ!」私の体はシン君の腕によって止められた。

「いくら3人目だろうが、ちゃんとお腹を気遣え。」私の顔に近づき、ジーッと睨む。

お腹に手を当てながら「大丈夫だって。シン君と私の子供だよ」ニコニコと笑う。

「お前なー!」睨んでいた顔が呆れた顔になる。

「全くー、可愛くてしょうがない。」カレの唇は私の唇に重なる。

カシャっ。

うん?カメラの音。

シン君の顔が離れていき、さっきのお客様のとこに向かった。

カメラをずーっとシン君に向けていたお客様。

「何でこんなとこにいるんだ?」

携帯のカメラのレンズに手を当てて、わざと低い声を出す。

「お客様よ。威嚇するなんてー失礼じゃない?」

「ねーさん、いつまでシラを切るつもりだ!」手を掴み特徴のある指輪を見る。

「あら?バレてた?」

「これはオレがワザワザ買ってやったやつだろう?彼氏から買って貰ったって設定でな。」

「あんた、まだ覚えていたのね。」

シン君はストレートの髪に手を当ててグイッと引っ張った。

「あーーっ!」皆の声が揃う。

ストレートヘアがずれて、中からショートヘアの・・サングラスも外して・・・

「皇帝陛下!」

「バレちゃった。」

高貴に溢れる綺麗なお顔は、我が国の皇帝陛下。

「ねーさん、皇帝陛下が何でこんな田舎に?」

疑いの目はジロジロと皇帝陛下を見る。

「評判な料理を食べに来たのよ。」

そう言いながら、カシャッと携帯の音は鳴る。

料理が出来上がり、皿を持ったままのパパに手を振り

「皆さん写真撮りましょうー。うちの父と母が写真見たいって。」

LINEに私達のさっきの写真を送ったみたいで、もっと見たいと催促が来たらしい。

ジフンとウネを世話していたチェジュンも呼び出し、皇帝陛下は色々な写真を撮っては送っていた。









「そっかー。もう5年になってしまうんだ。毎日が忙しく過ぎてあっという間だ。」

秋の季節の夕方、空は暗くなりオレンジ色のライトに照らされたテラス席にねーさんと二人座って海を見ている。

「早いわよねー。私が皇帝陛下になるって言ったら、アンタは5年の期間をくれないか?って

5年後にオレを迎えに来て、皇帝陛下の器がありそうだったら、皇帝陛下をゆずる。

でも、無理そうだったらねーさんはそのままソウルに帰って、皇帝陛下を続けてくれって。凄い賭けだったよね。」

二人で、5年前を思い出す。

「それにしても、シン?アンタ日に焼け過ぎじゃない?又黒くなってる。」オレの肌を見てビックリする。

まー、確かに黒くなったが

「でもね。カッコ良くなったね。やせ細ってなくなり、男らしい体になっちゃってー、妻子持ちなのにモテるんじゃない?」

怪しいぞーと言いながらからかう。

「オレにはチェギョンしか見えないから、そういうのは分からない。」

携帯を取り出し待ち受けのチェギョン、ジフン、ウネを見る。

「ふーん、愛は続行中なんだ。」ニヤニヤ

「アンタがそんな情熱的な男子だったとは、昔は分からなかったわ。

好きな女を追いかけて、皇太子も辞めて宮を出て行くなんて思ってもみなかった。

昔の冷たーい表情のアンタより、日焼けで真っ黒のアンタの方が全然良い!」ニッコリと笑う。

オレも、褒められたみたいで嬉しくて笑う。

その後、二人でもう暗くなった夜の海をボーっと見ていた。

でも、ねーさんがここに来た目的の答えを聞きたくて、勇気を振り絞った。

「で、どうなんだ?オレには器がありそうなのか?」真面目な顔で見つめる。

「5年前のアンタは、子供だった。

世間では氷の皇太子ってあだ名を付けれて、とてもじゃないけど、父上の皇帝陛下を継がせる事はできないって判断して慌てて韓国に戻ったら、好きな女にも逃げられ情けない男で・・笑っちゃったわよ。」

「止めろよ。あの頃はまだクソガキだったんだから。」

「おっ!自覚在り?」

「あるよ。あの頃はオレにとって黒歴史だった。」

「ふーーん。分かっているのなら、大丈夫じゃない?」クスッと笑う。

「大丈夫・・?」

「そっ、荷物纏めてソウルに戻って来なさい。」バッと立ち上がり

「ちゃんと家族を連れて来なさいよ。」オレに指をさす。

「それって…皇帝陛下の器があるって事か?」椅子をギューっと掴む。

「そうよ・・今のアンタは綺麗に笑えるようになった。良い奥さんを貰ったわ。

手続きは一緒に来たキム内官に任せなさい。すべてキム内官に伝えているから。」

店の駐車場には、メガネを掛けてキッチリとスーツを着ているオトコと、大きなガタイのイイ男が立っていた。

「ねーさん、本当にいいんだな?でも、ねーさん本当は皇帝陛下でいたかったんじゃないのか?」

後姿の姉に問いかける。

「馬鹿ねー、私にはそんな器はないわー。それに5年やって身をもって分かったから。」バイバイと手を振りながら食堂の中に入って行った。

そして、オレ達の事を心配そうに見守っていたチェギョンを呼び出し、何かを話をしていた。













おねーさんは護衛の人と共に、ホテルに戻った。

何時もだったら、美味しい食事は笑いと共に頂くのに、今日はシーンと静まり返っている。

ジフンが何度か我儘を言って、皆を困らせた。

「シン。私達は引き留めないよ。シンはこんな田舎のシェフより、皇帝陛下の方が似合ってる。それにシンの腕のお陰ですっかり我が店は有名店になって、がっぽり儲かっている。

大丈夫だから。」シン君の肩を叩きママとパパの部屋に行った。

「兄さんがいなくなるのは、寂しい。」

ボロボロと泣いているジェジュンの背中を優しく撫でている。

「チェジュン、あまり泣くなよ。お前とチェギョン顔が似てるんだから、まるでチェギョンが泣いているみたいで慌てる。」優しく笑う。

「僕、ブタの弟で本当に良かった。兄さんと言うカッコイイ人と兄弟になれたんだ。

クラスの皆に、何時も羨ましがられる。自慢の兄さんなんだ。」

泣きたくないのにボロボロと涙が溢れている。

「離れてしまうが、チェジュンはジフン、ウネも世話をしてくれて、そしてオレとチェギョンが喧嘩したら、ちゃんとオレの味方をしてくれる。オレの自慢の弟だ。」

ニッコリと笑い頭を撫でる。

自慢の弟と言ってもらえたチェジュンは何時までも泣き続けた。






チェジュンも自分の部屋に行き、私達も離れの自分達の部屋に行き、寝る準備をする。

ウネに母乳を飲ませていると、ジフンも飲みたいと我儘を言う。

「もう、ご飯食べたのに、まだ飲みたいなんて。」

「ママ、はやく。」ウネにゲップをさせてシン君に預けた。

ジフンは私に抱っこされて、もう片方の胸に吸い付く。

一生懸命吸い付く我が息子。

「そんなに力強く吸わないでよー。痛いよ。」ジフンを注意する。

言われたジフンの吸い付きが和らぎ、とことん飲んで眠くなり始めている。

「ジフン、もう寝ようか」二人のベットに連れて行き、ジフンをベットに寝かせて掛け布団を掛けてあげる。

お腹いっぱいになり、目がドローンとしているジフンは、ムニャムニャと何かを話しながら目を閉じた。

寝顔を見ていると、隣でウネの寝顔を見ていたシン君が私を後ろから抱きしめられた。

「チェギョン。」こんなシーンとしたとこで、その声で私の名前を呼ぶなんて反則だよ。

「シン君、私達を置いて行っても良いよ。」

シン君が私に会いに来た時から思っていた言葉。

「はあ?」

「大丈夫だよ。私達がシン君と一緒に行ったら、足手纏いで迷惑かけちゃうから、此処にいるよ。」回された腕に自分の手を乗せる。

「一年に一回でも会いに来てくれると、嬉しいなー。」

一人でボソボソと言っていると、シン君が急に立ち上がった。

「チェギョン!本当に言ってるのか?」シン君の怒った声に、体がビクッと浮いた。

「来い!」私を立たせてテレビのある部屋に移った。

小さな部屋だけど、シン君のパソコンと、カメラ。私の道具と綺麗に片付けている。

「お前、オレと離れるってどういう事か、知ってるのか?」

私をドアに貼り付け、荒々しくキスをして来る。

「!!」何時もの優しいカレのキスじゃなくて、怖さを感じ何とかキスを止めようと試みるが、がっしりと抑え込まれている。

シン君、止めてって言葉は伝わらずに、カレのキスは止まない。

こんな怖いシン君はあの高校の時以来で、ボロボロ涙が出て来た。

恐い・・・恐い・・・でもシン君に教え込まれた体は、カレの力強い欲に溺れていく。

お互いの口元からは、嗚咽と舌が絡まる音が響く

はあ・・はあ・・。

「離れるなんて言うなよ。」間近で見つめ合う私達。

「オレはお前が傍にいないと死んでしまう。」チュ―っと吸われる。

「だって・・だって・・、こんな何もできない私なんか。」泣き零れる涙は止まらない。

「そんな事ない。」ギッと真剣な目は私の中まで見透かすようだ。

「皇帝陛下になったシン君はきっと何でもカッコ良くできる・・それを全部私が崩してしまう。シン君が私のせいで責められるのは嫌だ。」

その目に負けないように私もシン君をしっかりと見る。

「お前なー・・オレがカッコ良く出来るなんて、有り得ないだろう?オレはただお前にずーっと好きでいて欲しくて努力してるんだ。

ソウルから逃げてしまったお前を捕まえに、皇太子を辞めてまできたんだ。

地球上にいる35億五千万の男の中から、オレを選んでくれたチェギョン。

この村に来て、色んな人に出会い、笑い、困ったこともあった・・そしてオレ達の子供の誕生。

幸せ過ぎて、でも時々思ってた。

オレの代わりの皇帝陛下になったねーさんは、今幸せだろうかって。

皇帝陛下の器じゃなかったオレの為に、海外でのボランティア活動を途中で辞めて戻ってきたねーさん。

皇帝陛下の激務を女1人でこなしているねーさんを、テレビで見ている度に悔しくなった。

黒歴史の殻の中閉じ籠っていた馬鹿なオレは、自分が一番だって思っていて、庶民達の事を下に見ていた。

皇太子と言う存在は、国民の為に居て、韓国の代表として誠意を持って各国の人達を会わないといけないのに。

ほんと馬鹿だった。

だから、オレも庶民になってちゃんと皆のキモチを分かるようになりたいと思いこの地に来た。

この5年間でようやく人として成長できた気がする。

それは、ジフン、ウネ、そして大きなお腹の中にオレ達の子供を宿しているチェギョンのお陰だと思っている。


だから、今度こそオレが皇帝陛下になり、国民の為にこの人生を掛けていきたい。

その為にはチェギョンが傍にいてくれなきゃいけないんだ。

なんたって、チェギョンが傍にいないと、オレは死んでしまうんだから。」

さっきまでの荒々しいキスではなく、優しいキスが私の唇に重なる。

あんなに泣いていた涙は段々落ち着いてきた。

「チェギョンは初めてのことだらけで大変だと思う。オレががちゃんと支えてやるから、一緒にソウルに行こう。」

唇だけではなく、鼻、頬、カレのキスは止まらない。

好きな人が自分を好きになってくれる奇跡、それは本当だね。

こんなに私なんかの事を好きなシン君。

毎日いっぱいの愛をくれる意地悪で優しい旦那様

そんな旦那様と1年に一回だけ会ってくれれば良いなんて、何で言ったんだろう。

この人を傍で支えてあげたい。

この国の人達の為に、自ら皇帝陛下になりたいと言っている

苦しい時も、幸せな時も全てこの人の傍で支えてあげたい。

「さっきの言葉、ごめんね。」ギューっとカレの首元に腕を回し抱きしめる。

「あの堅苦しい宮の生活は嫌かもしれないが、あの仕来りを後世に残していくのも指名だと思っている。

オレがちゃんとチェギョンとジフン、ウネ、そして生まれてくる子供の手を繋いでしっかりと守ってやるから。」

シン君も私の体に腕を回し優しく抱きしめる。

「もうあんな事言うのは止めろよ。心臓が止まるかと思った。」ホッと溜息を吐く。

「うん、もう言わないよ」お互いの顔を合わせ、又キスをし合う。

キスをしながら、優しく体を床に押された。

私の上に体を浮かせて「チェギョン・・今日良いか」切ない顔で私を見つめる。

カレの顔に手を添え「もー―っ、解禁になった途端毎日だよ。体がもたないよー。」クスクス笑いながらカレの顔を自分に近づけてキスをする。

「ずーっと我慢してたんだぞ。でも、ちゃんと優しくしてる筈だが?」ニヤリと笑う。

私の顔が・・・・と考えてしまう。

確かに。普段のはもっと凄いもん。もうぐったりしてしまうから、最後の方は記憶が無くなる時があったりする。

赤ちゃんがいるからシン君もちゃんと考えてくれるんだけど、たまに凄いのが始まりそうになって、慌てた時もある。

「そんな体位無理――!」と逃げだした事もあった。












カチャっ。

扉を開き、ゆっくりと中に入っていくと、ソファの角に座っている人がいた。

「シン君・・・?」髪の毛が長く、肌が益々浅黒い私のダンナサマは

髪の毛を短く切り、キッチリとワックスで固められ高そうなスーツを着ていた。

「すごーい。田舎の時のシン君とは全然違うー。」

あの場所でも、シャツにジーンズでもカッコ良かったのに、こんな正装姿になってしまうと、破壊レベルなカッコ良さだ。

「そんなにカッコ良くならないでよー。」慣れない格好で、モジモジと歩く。

「お前こそ、今日は格段に可愛い。」私を引き寄せ抱きしめる。

「何見てたの?」カレの持っているI PADを覗き込むと田舎で撮った写真がいっぱい映っていた。

「オレの宝物」私のパパ。ママ。チェジュン・・そして私とシン君。ジフン、ウネ・・。様々な写真が皆笑っている。

「そう言ってくれるなんて、嬉しい。」ギュッと抱きしめる。

「オレの大事な家族だ。」うんと頷き、二人時間ある限り抱きしめ合う。

「これから凄い大変だと思うが、お前とジフン、ウネ、そして生まれてくる赤ちゃんを絶対に離さないからな。」

「うん。絶対に離れないよ。皇帝陛下。」

おねー様は退位してシン君は韓国の皇帝陛下になった。

元々皇太子殿下としてずーっと宮の仕来りを体に染込んでいるカレは、色々な事を簡単に覚えていく。

私は…チェ尚宮に毎日指摘をされながら、何度も体に染込ませようと必死だ。

何時も簡単に笑っていた笑顔も満足にできなく引き攣ってしまう。

「皇帝陛下って・・二人っきりの時は言うな。」

「だって、シン君って呼んでいると、公の場所でも言いそうだもの。」眉毛は困ったように下がる。

あはははっ。シン君の笑顔。

高校の頃のような冷たい表情じゃなくなったシン君。

パパの食堂で、お客様を接待し、近所のおじいちゃん、おばあちゃんと話し笑ううちに、カレの笑顔は最高に素敵になった。

シン君のおねー様の退位に合わせて、シン君の久々の登場に皆どよめいてしまった程だ。

次期皇帝陛下の笑顔にやられた女子達の書き込みの多さに、何度も宮の公式ホームページがダウンしてしまう。

まったくー。

冷たい表情で近寄りがたい高貴な皇太子は、庶民の生活に揉まれて生まれかった。

「最近、お前のあの一目惚れした笑顔が見えないのが寂しい。早く復活しろ。」

メガネをクイッと上げて私をちゃんと見る。

「うん・・。笑顔をもっと上品に見えるようにって頑張っていたら、引き攣るようになっちゃって。」しょぼん。

「無理するな。お前は今までのままで良いんだ。オレだけに笑っていれば良いさっ。」

爽やかな笑顔は、私の胸をズキュ――ンと刺す。

「マジで倒れそう。」心臓を抑えてシン君に倒れこむ。

「何やってるんだ。」私の腰に腕を回し、体をくっつける。

すると、控えめにノックをする音が響いた。

「皇帝陛下、皇后陛下、お時間でございます。」皇帝陛下付のキム内官の声がした。

私とシン君は、目を合わせる。

「失敗しても、オレが上手くフォローする。」

信頼する夫からの言葉に、私のキモチは落ち着いていく。

「うん。出来るだけヘマしないようにします!」

腰掛けていたシン君を引っ張り立たせた。

「じゃあ、転ばないようにな。」

カレは私の腕を取り、自分の腕に回した。

扉を開けると宮の建物の赤、緑。そして真っ青な空が目の前に広がる。

秋の青空の下、今日は皇族達を招いて二人初めてのお仕事。

綺麗な芝生の上に小さなテーブルが沢山散りばめられて・・ザワザワと皆は待ち望んでいる。

二人で並ぶと、女官達に連れられたジフンとウネも後ろに立つ。

「秋の青い空。」小さな声で呟く「あの田舎の海と空の青い色には負けるけど、ソウルの空の色も綺麗だね。」

「ああ。綺麗だ。」空を見上げ眩しそうにシン君も呟く。

「覚えてる?私達の出会いが秋だって事を。」シン君は腕を私に差し出した。

「忘れる筈がない。チェギョンとの出会いは良くも悪くも、青秋の霹靂のような出来事だったからな。」ニヤッと笑う。

私はシン君の腕に自分の手を置き、エスコートの体勢が出来た。

「何、その良くも悪くもって。」プーっと膨れる。

「オイオイこんな所でそんな可愛い顔するなって。」

お互い口をなるだけ開かないように会話をして笑顔を作る。

「今日は、一緒に寝ないよ。」ニコニコと笑う。

「そんな拷問は止めてくれ。」自然な笑顔を浮かべる。

「じゃあ、私の事好きなの?」足元を見ながら階段を下りて行く。

「何度でも言ってやる。」階段の途中で止まり見つめ合う。

ザワザワと騒いでいた皆が急に静かになる。

「好きだ。」今日何度目かの言葉に私は、極上の笑みを浮かべ「私も好きだよ。」

顔で合図して、前を向く


「さあ、オレ達の初仕事だ。」二人腕を組み階段を下り庭に降り立った。







皆様、こんばんは。

青秋の霹靂終わりましたー。

次のお話は、残業次第で更新していきますからー。

でも、まー。明日は更新したいと思ってます。

何時も皆様には、感謝しております。おやすみなさいー。