「さーっ。準備準備ー。」今日も忙しいそう。

だって、開店前からお客様が並んでいる。

パパ、今日も大変だよ。苦笑いをして中に入っていく。

「ママ、お客様が10人待ちです。」こんな田舎なのに、人がこんなにいる。

「じゃあ、時間前だけど、入れちゃいましょう。」ママとパパは準備完了と合図を送ってくる。

「はい!」私は、店の扉を開け「時間少し早いけど、開店です。」

大きな声で、お客様に聞こえるように叫んだ。





「ふーっ!ようやく一段落。」テーブルに、顔をベターと置き、溜息を吐く。

「チェギョン、何その顔ーっ、お嫁にいけなくなるわよ。」ママが私の顔を見て笑う。

「お嫁なんかいかないもーん。」口笛を吹きながら、携帯を見た。

電話登録の欄に、イ・シン

後からガンヒョンが無理矢理寄越したからと、シン君が書いてくれた電話番号を送ってくれた。

走り書きの字だが、綺麗な数字の並び方。

そして、「チェギョンのこと言ってないからね。」ありがたい。

この電話番号に掛けないで、いつも見ているだけだったので、番号を暗記してしまった。

暗記したって掛けることなんか、ないのにね。

シン君は、もう私の事なんか忘れているに決まっている。

皇帝陛下が生前退位を望まれ、シン君が跡を継ぐかと思ったら、お姉さまの方が継いでしまって。

そして極めつけに、シン君が一般市民になってしまうという事に…大変だよねー。

忙しすぎて、本当に私の事なんか忘れているって。

チョッとだけ一緒に暮らしたツンツン皇子

メガネをかけた途端、優しい人に変わってしまって、私はこの人に恋をしてしまった。

一瞬だけの本気の恋。

私も田舎に帰ってから凄く忙しかったけど、シン君の事を忘れる事は出来なかった。

ボーッと又、シン君の電話番号を見てしまってる、あーーっ、ダメダメ何思い出しているのよ!

さっさと仕事の片付けしないと!慌てて外に出た。

キラキラ。

真夏の通り雨が降った後の、雫がキラキラしたような反射が私を照らした。

「眩しい!」なに眩しくて目が開けれない!

手で目を抑えながら、この状況を何とか知ろうと、指の間から眩しい正体を探ろうと覗いた。

人?人が何で眩しいの?

人が眩しいなんて、有り得ない!って断言した後に、フッと気が付いたことがあった。

シン君も眩しかった。

私は眩しい光の先を見ようとして、顔から手をどけた。

キラキラキラ・・眩しい音が鳴り続ける真ん中に、背の高い人が立っていた。

そんなまさか!

あの時と同じ眩しさ、嫌、今はそれ以上かも。

嫌々、こんな田舎にいるわけ無いじゃん

カレは今、イギリスに行った筈

そんな都合の良い話あるわけ無いとブツブツと言いつつ、私の1%の希望が早く目を開けろと命令する。

眩しくても、ガッ!と目を見開き、眩しすぎる人をようやく確認できた。

「なんで?」あり得ない!幻だよ、いるわけ無いじゃん!

胸が急に熱くなる。

「お前・・オレの童貞誰かに奪われたら、どうする気だったんだ?」

ちょっと怒った真剣な顔から、良い声が響く。

「えっ?」いきなり童貞って?

「お前との為に、守ってたんだぞ。」何か怒ってるんですけどーっ。

「オレに相談もしないで、勝手にいなくなって。」

わー―、責められてるー。頭を押さえて言葉から逃げた。

目の前まで近寄り「でも、ようやく会えた。」

頭の上に乗せた手に、シン君は自分の手をのせた。

乗せられた途端、雷が落ちたような衝撃が体中を駆け巡る。

その衝撃の為、体が震え出す。

「迎えるに来るのが遅くなった。」

ジーっと見つめてくる顔に私の心臓はMAXに暴れ出す。

「ヤバイな―っ、お前キラキラと眩し過ぎーっ。」

あははっと笑うシン君に、会わなかった分の想いが溢れ出す。

大きな手が私の身体を包み込み、ギュー―っと抱きしめていく。

「シン君?本物?」

キラキラと眩しいシン君に閉じ込められた私は、無意識にしがみ付く。

「本物だ。だから泣くなって。」背中を摩りながら優しく言われた。

「泣いてないよ。」

「チェギョンは嘘つきだなぁーっ。」

ボロボロと落ちていく涙をすくい、クスクスと笑う声が私の頭に響く。

こんなに現実味に溢れているんだから、幻じゃ無いよね。

ちょっとの間抱きしめられていたけど「彼女さんは?」

ハッと思い出して、離れようとしたが、シン君は離してくれず。

「オレには大事な許婚がいるんだから。彼女なんか作るわけ無いだろう?

今日のテレビに出ていたのは、ガセネタだ。イギリスに行ったのは、インとヒョリンだ。」

イン君。

ソウルから逃げるようにしてここに辿り着き、時々思い出しては、彼はミン・ヒョリンの為にあんな事をしようとしていただけで、本当は優しいイン君なの!と自分に言い聞かせてきたが、名前を聞いただけで、一瞬体が強張る。

シン君の体に顔を擦りつけ、何とかこのキモチを抑えようとした。

「チェギョン、ごめんな。あの時オレは、のんきに授業を受けていた。

インとは、親友断絶していたけど、ギョンに説得されて元に戻ったが、やはりあの事は許せない。

インが言うには、何でもオレの言う事を聞くから、チェギョンに会わせてくれって。

ちゃんと謝りたいそうだ。そして、もう一度友達に戻りたいって。

謝るのは当たり前だが、友達ってお前達そんな仲だったのか?」

シン君に張り付いていた私をビリビリと剥がし、私の顔をジロッと見降ろした。

「友達だったよ。」嘘はいけないと思い、ちゃんと話した。

「だから、あんな所に一緒にいたのか。あんな誰も来ない所で二人きりって。」

長々と続く説教は、チェジュンの登場で終わった。

「ヒョン!何でこんな所に?」嬉しそうにシン君に抱きつく。

「ようやく仕事が終わったんだ。チェギョンを迎えに来た。」

「ヒョンって本当に皇太子殿下を辞めたのか?」

私とチェジュンでシン君を取り合いながら、チェジュンは凄いことを聞いた。

「辞めたよ。何の心残りもない。」

ソウルのアパートにヒョッコリと来た時の無表情な顔ではなく、ニッコリと優しく笑い。

「ヒョン、氷の皇子って呼ばれていた時もカッコよかったけど、今の方がもっとカッコイイ!」

「チェジュン、なにキメ台詞言っちゃってるのよ!それは私が言うんでしょう?」

二人でシン君に抱きつきながら言い合いをする。

「もーーーっ。うるさいわよ。ご近所さんに迷惑でしょう!」

ママが中から出てきたが、ご近所さんと言っても周りに森と海しかない。

「あらっ?どちら様?」

自分の子供たちが引っ付いている男性を見てビックリしている。

「お久し振りです。母上。」帽子を外して、頭を下げた。

「殿下じゃないですかー。」驚きながら、近づいて来た。

「もう殿下じゃないです。一般市民になりましたので、チェギョンを迎えに来ました。」

自然に笑うシン君に「そっかー、皇太子殿下を破棄したんだね。今のイ・シンはとっても良い顔してるね。」

ママが親指を差し出しグーーッの合図をする。

シン君は、私とチェジュンをギュッと抱きしめ、嬉しそうに笑った。












その後、パパとの再会も驚きで大変だったけど、明日の仕込みがあるからと言って、皆で準備していたらオレも手伝いますと、率先して野菜の皮を抜き始めた。

料理上手なのは知っていたが、本当に器用で皆ビックリしていた。

なんたって、宮お抱えの料理長に教えられましたから。と言うシン君の笑顔に、ますます赤くなる。

夕食を食べ始め、皆和気あいあいと話ししていると。

「シン、でこれからどうする?」

殿下じゃなくなったシン君をシンと呼ぶ酔っ払いのパパ。

「今日はうちに泊まっていきなさい。」酔いが回り、ケタケタと笑うママ。

「ヒョン、俺の自慢のルアー見せるから俺と一緒に寝よう。」

アンタどんだけシン君の事好きなのよ。一時も離れないチェジュン。

「皆さんに相談したいことが。オレはチェギョンと婚姻・・いや違った普通の名称だよな。 結婚するためにここまで来ました。」真剣な顔のシン君。

シン君の突然な言葉に皆ビックリしている。

「シ、シン君!結婚って!」急な言葉に私が一番オロオロと驚いている。

「オレはお前と結婚したいんだ。」真面目、真面目過ぎるよー。

「私達、まだ付き合ってないし、デートもした時もないし。」声が大きくなる。

「デートしたかったのか?」

「・・・・・うん。」小さい声で頷く。

クスクス笑いながら、私の頭を撫でる

「そっかー。じゃあ、デートしたら結婚するぞ。」

「直ぐにはしないんだから、デートしてシン君が嫌な奴だったらしないから!」

プーーっふくれてと横を向く。

「パパもママもチェジュンも二人の結婚、賛成ーー。」三人共ヒソヒソと笑い合う

「もー―、皆適当過ぎ!」

「シン、聞いてよ。チェギョンったら、こっちに戻りたいって言ったから帰ってきたのに、ため息や、シンがテレビに出るとバタバタと走って食い入るように見ちゃってねー。

それに携帯を何度も出し、引っ込めたりって、もう見てられなかったんだから。

シンの事が好きなんでしょう?誰に遠慮してるのよ。

だから結婚すればいいじゃん。殿下は、チェギョンの為にこうしてこんな所までやって来たんだよ。

その気持ちに応えなきゃっ。ネッ。」ママ今日は飲み過ぎだよ。

「パパはチェギョンには結婚して欲しくないけど。シンは心も顔もイケメンだから許す!」

あーあ、二人共飲み過ぎだって、ほらっもう眠そう。

「パパ、ママもう寝たら?明日も早いから。」二人を寝かせようと、二人の部屋の布団を敷きに行った。

シン君がパパを背負いながら、ママと一緒に来て、布団に寝かせてあげる。

「パパ、お世話になったシンが来てくれて、それにチェギョンと結婚したいって言ってくれて嬉しかったんだねー。

今日は本当に飲み過ぎちゃったわー。もう寝るから。」

ママは私達にお休みと言い横になった。

わたしとシン君は二人を起こさないように、居間を目指した。

居間に行くと、さっきまでルアーの手入れをしていたチェジュンが横になって寝ていた。

「チェジュン、さっきまで起きてたじゃない。」

くーくーと寝ているチェジュンを起こそうとしたけど、まったく起きない。

「そっかー。こんな時間だもんね。」

時計を見るともうPM23時、何時もなら寝ている時間だ。

又、シン君と一緒にチェジュンを部屋に運んだ。

ようやく座った私達。

皆んなでいた時には、いくらでも話が出てきたのに、今はシーンと静かだ。

ゴホゴホと咳払いをしながら「シン君、今日はうちに泊まって行ってもいいの?」

二人っきりなのを意識してしまって、慌ててテーブルの上を片付けるために立ち上がった。

「あぁ、ホテル取ってない。」パタパタと片付けている私を手伝い始めたシン君。


「こんな田舎に来て、泊まるとこ考えてないって、あっ片付けは私で出来るから大丈夫。座ってて。」

「ただ、お前に会いたい一心で来たから。」

シンクの前で洗い物を始めた私の後ろに立ち、片づけてきたお皿を真後ろから出してきた。

「ちょっ、ちょっと!」皿を置き空いた手は、私の腰に回された。

力が入る事にカレの顔も私の肩に降り始めた。

「チェギョン。」小さな呟きは私の肩に響く。

「なっ、止めてよ!」誰も起きてないからって、そんな事しないでよ。

「ずーーっと会いたかった。会った時は秋だったからなー、今の薄着のお前がこんなに柔らかったなんて知らなかった。」

肩に乗せていた顔は動き始め、私の首筋をカレの唇は優しく吸い付く。

「!」言葉にならない声が一瞬出る。

「何時も想像してたけど、実物とは全然違う。」

私の身体をギューっと抱きしめる

「やだっ、そんなに体くっつけないでよ。」唇は段々上に上がり、私の耳朶をかじる。

「シン君!!」そんな高度の技使うなんて。

「ダメだって。まだデートしてない。」

ようやく出した声は、カレの動きを止めさせた。

「デートしないとダメなのか?」後ろから抱きしめたまま、私を睨んでくる。

「ダメ!」仕方ないような手は、腰に回された。

「今日だけだからな。」ジロリと睨んでいく。

「なにそれー。」プー―っとふくれる。

シン君は私からパッと離れて、食器洗いを手伝い始めた私達はじゃれ合い、何か月分の話をし始めた。









「ここが釜山。」バスから降りだった私達。

食堂が休みな為、デート場所を釜山にした。

釜山から我が町までタクシーでやって来たシン君は、バスに乗るのが初めてでちょっと緊張していた。

そんなシン君がレアで、見ている方がニコニコとなる。

二人で釜山の街を手を繋ぎ、歩き出した。

若い子たちは、皆シン君を見てカッコイイと言う。

まさか、こんな所に元皇太子がいるとは思わないだろうね。

繋いだ手を離さないようにちょっとだけ力を込めた。

色んなのを見て歩き、屋台に行き何を食べようか、初めて見るものばかりで、シン君の目は好奇心でいっぱい。

辛い物が苦手なトッポギで涙ぐんでいたシン君。

ダサい服を無理やり試着させたはずなのに、モデル並みな体型でカッコよく見えてしまうシン君。

ゲームセンターで、対決ゲームで戦って私にボロ負けしてしまって、何回も勝負を挑んでくるシン君。

クレーゲームで、一回で白いテディベアを取ったシン君。

すっごいと私が褒めちぎっていたら当然だろうと鼻高々になってたシン君。

さすが、俺様だわー。笑いながら二人でこの白いテディベアに名前を考えてあげた。

「アルフレッド」良い名前でしょ?

アルフレッドを持ち、私の手を繋ぎ歩いているシン君。

色んなシン君を見て、私の心は一つの事を決める。

段々日が暮れていき私達は又屋台の所に向かう、そこには昼とは違い人が溢れかえっていた。

「ほらっ、はぐれるなよ。」優しく見下ろすシン君に夕日が翳す。

もう――っ、何でそんなにカッコよくて、優しいのよ。

思わず、去年のシン君との最悪の出会いを思い出し、笑ってしまった。

「何、一人で笑ってるんだ?」歩きながら私をチラリと見る。

「ねー、シン君。」

「なんだー?」二人でこの人ごみの中を歩く。

「結婚しようか?」さり気なく言う。

「!」驚いて私を見下ろす。

「結婚しよっ。」ニッコリ笑う

驚いていた顔は、段々嬉しそうな顔になっていく。

私は、つま先立ちをして、シン君の顔に近づこうとしたが、デカすぎるシン君に届かない。

気が付いたシン君の顔が近づき、私とカレの唇は重なり合う。

道の真ん中でキスをし合う私達は、皆の冷やかしなんか聞こえず、何時までもキスをしていた。










月日が経ち、食堂は大繁盛していた。

パパとシン君が厨房を仕切り、ママと私がお客様を接待する。

パパの作る絶品な肉まん。

シン君は、髪の毛も伸び一つに結い、ストライプのシャツをラフに着て、腰に回した長いエプロンは、益々イケメン度を上げていた。

そんなカレの作る、今日のお任せ料理は、女子たちに大人気。

キャーキャーと騒がれるけど、カレは徹底して私に愛を注いでくれる。

「チェギョン!」厨房から声が掛かる。

「はい。」料理を受け取りに行くと、皿を持ったシン君が私を待っている。

「今日のお任せ料理」私の持っていたお盆に乗せながら、私にキスをする。

「もー―っ、みんな見てるって。」

私達のキスはここの名物になっているらしく、オバちゃんたちは美味しい料理とキスを楽しみに来ている。

ほらっ、皆の目が輝いてるって。

「したいからする!」ビシッと私に指を指し、又次の料理をし始めた。

こんな調子で毎日を過ごしている。

「ヒョン!凄いの釣って来たぞ!」

クーラーボックスを持ってきたチェジュン。学校の休みの時は、我が家の食堂の為に釣りを頑張っている。

クーラーボックスの中身のタチウオをパパ、シン君、チェジュンが楽しそうに覗く。

「こりゃー、凄いなー。シン、なに作る?」パパの目が光る。

「父上、やっぱり、スープ、焼き、色々なのをやりますか。」シン君の目も光る。

「チェギョン、お任せ料理の黒板一旦消してくれ。」スッと立ちあがったシン君は、今でもキラキラと眩しい。

メガネをクイッと直し、カッコ良さ倍増ーー。

「チェギョン、自分の旦那を見て、よだれたらさないでよ。」

横を通って行くママは、私のお腹を触りながら笑ってパパたちの所に行く。

メニューの黒板をシン君の所に持って行こうとしたら、シン君がテーブル席の方にやって来た。

メニューの黒板の前にいる私の肩に顔を置きながら、お任せ料理の名前を書いていく。

「体調はどうだ?」私の耳元でわざと言うカレ。

「今日は、大丈夫。」お腹を優しく擦りながら

「具合悪くなったら、ちゃんと言えよ。」私の頬にキスをする。

「もーーっ。」4か月のお腹を擦り厨房に行ってしまった。

「人前じゃダメだって言ってるのにーっ。」

ブツブツと言いながら表にメニューの黒板を出しに行った。

晩秋の青空を見上げて、お腹を擦る。

去年の秋に出会った私達は、その一年後に赤ちゃんを授かった。

晴天の霹靂のような出会いをした私達は、今はすごく幸せに暮らしている。

厨房にいるキラキラと眩しいシン君を見つめ

「シン君、大好き―!」と呟いた。






皆様、こんばんは。

来週から又残業が始まるそうなので、更新が遅れます。

二日連休の時に,いっぱい寝ないとね。(笑)

では、何時も訪問して頂きありがとうございます。