オレは授業が終わり,今日のこれからの公務が終わった後、チェギョンの家に寄るからと伝える為に美術科に来ていた。

「シン・チェギョンはいるか?」何時ものメガネの女を呼んでもらい、教室を見渡す。

「さっきの授業に出なかったんだよねー、どこに行っちゃったんだろう?」

「授業に出なかった?」何度見渡してもチェギョンは何処にもいなかった。

「もしかして寝ているのかなー。」心配そうな顔。

「アイツの携帯番号教えろ!」

威嚇しながら、早く教えろという顔をしても、この女は

「いくら皇太子だろうが、チェギョンの了解も得ていないのに、教えられない。」

プイッと頭を横に振った

オレはチェギョンの携帯の番号を知りたくて、粘っているとオレの携帯が鳴った。

予定時刻の曲が流れている

「チっ、もう時間だ。行かないといけないから。これを渡してくれ。」普段は絶対に教えないオレのプライベート番号。

「チェギョンの親友だから信じてお前に託すから。ちゃんと渡してくれ。」

生徒手帳の紙を破いて自分の番号を渡した。

「ちょっ、ちょっとー!」叫ぶメガネ女を置き去りに、オレは玄関に向かった。

あの女なら、ちゃんと番号を渡してくれる筈だ。

くっそー、昨日番号教え合えばこんな事なんかやらずに済んだのに。

チェギョンの顔が見たい、声が聴きたい。

このオレが好きになったからって、会いたくてたまらないなんて。

ちょっと前までのスカしたオレだったら絶対にないな。

何時掛かってきても良いように、携帯をポケットから出しギュッと握りしめた。








公務が終わり、チェギョンの家に向かってくれと伝えたが。

「殿下、この後も職務がお待ちしております。」

「チェギョンの家に寄ってからでは、ダメなのか?」無駄な抵抗をしてみた。

「職務が遅くなると、全てのものが遅くなります。」だよなー。

「分かりました。」ずーっと鳴らない携帯をジーッと見ているしかなった。







東宮殿に着き、キム内官をチェギョンの家に向かわせた。

もしかして躊躇してオレの携帯に出ないのであれば、キム内官に連れてきて欲しいと告げた。

職務をさっさと終えて、チェギョンを出迎える準備をしないといけない。

オレは、すごいスピードで職務をこなしていき、コン内官を驚かせていた。

「殿下をここまで変えさせたシン・チェギョン様を、私も早く見たいです。きっと可愛いんでしょうね。」

「…可愛くて仕方ない。」ポツリと呟いた言葉にコン内官が嬉しそうに微笑んでいた。

職務を終え、チェギョンの食べたそうなモノを準備して貰い、オレは自分の部屋で紅茶の準備をしていた。

ようやく落ち着き、辺りを見渡すと

「うん?クッションってもっといっぱいあった方がいいのか?女子はクッションを膝に乗せたりしているよなー。」

慌てて女官に持って来てもらうように頼んだ。

「よしこれで・・。花・・チェギョンだったらこの花よりもっと可愛いのが好きじゃないのか?」

飾っている豪華な花をジロジロと見つめ

「やっぱり、可愛い系にしてもらう」大慌てて女官を呼んだ。

「もう、良いよなー。チェギョンが初めてくるんだ。完璧な部屋にしておかないと。」

全てを整え、もう1度見渡してホッと息を吐いた。

初めてこの部屋に人を呼ぶ。

それも好きな女を呼ぶなんて、緊張でドキドキが半端ない。

大きく息を整え「これで良い筈だ」

緊張を解こうとして本を出し、途中だった紅茶の準備を始め、ちょっと一息を入れようと、ミルクを少し入れようとしていると。

「殿下!大変です!」ノックもせずに入ってくるコン内官。

「シン・チェギョン様がいなくなったそうです。キム内官から電話が入りまして」

冷静なコン内官の見た事もない慌てっぷり。

あまりにもの驚きの言葉で、オレのミルクを淹れいていた動作は止まらない。

じょぼぼぼぼぼーーーーっ。

「で、殿下!ミルクが零れております。」コン内官の悲痛な声が響き渡った。









宮から何人かの人を送り、アパート周辺の聞き込みをさせ、オレは皇太子の権限を使い、警察に頼んで防犯カメラを見せて貰った。

チェギョンのアパート近くの防犯カメラに映るチェギョンの父上の車

それを追いかけて、何点もの防犯カメラに写っている。

このソウルを離れてしまったことを確実にしていた。

「・・どうしてなんだ。」悔しい言葉が出てしまった。

「この道を行っているってことは、釜山方向ですね」警察官が言う。

「コン内官、チェギョンの実家は何処でしたか?」ピンときた

「はい、確か釜山から車で30分の所でした。」座っているオレの後ろに立っているコン内官は手帳を広げて言う。

オレは目を閉じ少しだけ考えた後、すっと立ち上がった。

「貴方達はこの車の持ち主が何処にまで行ったか追跡して下さい。では、私達はこれで失礼致します」










宮の後部座席で疲れ切った顔で、街のイルミネーションをボ――っと見ていると

「クリスマス・・・か。」彩り豊かな飾り付けは、街を輝かせる。

何時も見ているソウルタワーもクリスマスバージョンに代わっている。

カップル達がこの寒い中寄り添い歩いていく姿を見つめ、オレの心は痛くなる。

チェギョン、なんで・・なんで何も言わずにこのソウルから出て行ってしまったんだ。

オレがお前に惚れてるって言ったのが嫌だったのか?

オレの顔を見て嬉しそうにキラキラと輝く顔を思い浮かべると、又心臓が辛くなった。











次の日、あのメガネ女が何かを知っているかと思い、学校に登校した。

気が焦り、あまりにも早く着たせいで誰も校舎に居なかった。

オレは玄関前で苦笑いを浮かべた「どんだけだよ・・。」

階段を上っていき、チェギョンのいた美術科に辿り着く。

チェギョンがいた時には一度も来たことなかった。

チェギョンに惚れたのが遅過ぎて、学校での可愛いチェギョンを少ししか見れなかった。

それから又歩き出し、この間チェギョンが昼休みにいた場所を目指す。

美術科から離れているあの場所。

あそこは、生徒も中々いかない場所でオレも最近知った。

ようやくたどり着き、長椅子がありそこに腰かけた。

チェギョンが休み時間過ごしていたと思われる場所。

辺りを見渡し、この学校にこんな場所があったなんて、誰も来ないくてシーンと静まり返っている。

もう季節は冬になっている。

この肌寒い場所も、日が高くなってきたせいか温かさが増してきた。

今日は早く出てきたせいか、ちょっとだけ瞼が重くなってきた・・おい寝るなよ・・メガネ女に会いに行くんだろう・?

自分に問いかけながら、昨日からあまり寝ていなかった疲れで、ウトウトと寝てしまった。

寝ていると、微かに人の声が聞こえてきた。

フッと気が付き、ボ――っと声の方に聞き耳を立てた。

「なんでそんなことしたのよ。」女の声。

「・・する気は全くなかったんだ!」辛そうな声の男

「・・なんで?そんな事する人じゃないでしょ?」

「俺は…俺はお前の為なら何でもする。」うん?この声は・・?

「イン!だからって、そんな事したらダメ・・。」眠気も一気に冷めたオレは立ち上がり、声の方向に向かった。

「オイ、何話しているんだ?」角に隠れて話している男女・・・インとミン・ヒョリンに向かって言い放った。

突然現れたオレに、二人の驚きは半端ない。

「イン、さっきの話は何の事話していたんだ?」オレはジリジリと近づいていく。

「シ・・シン・・何でこんな所に?」

「さー―、ミン・ヒョリン、インは何をしたんだ?」オレは二人の傍に辿り着いた。

「シン・・それは・・。」キョロキョロと目は動く

「イン、早く言えよ。昨日、オレの許嫁がソウルからいなくなってしまったんだ。」

「えっ?チェギョンが?いなくなったって!?」驚き過ぎて目が落ちそうだ。

「イン。隠せないわよ。」インの袖を引っ張っている。

観念したのかインは重い口を開き出した。

話し終えたインに、怒りで震えが止まらない、ジロリと見下し怒りMAXのオレの右の拳がインのみぞおちにめり込んだ。

ドォンっ!鈍い音がなる。

その反動でインの体は浮かび上がり、廊下に叩きつけられた。

「お前ーーーーー!チェギョンに!」怒り狂ったオレの拳は止まらない。

「止めて!シン止めてーーー。」

オレの体を止めようとしゃしゃり出てくるミン・ヒョリンを怒り狂った目で威嚇したが、彼女はインの体に覆い被さった。

「止めて、インの事をこれ以上・・。」ボロボロと泣きじゃくる。

「どけっ!」

オレの怒りは止まらない、又インを殴ろうとすると、ミン・ヒョリンはもっとインを守ろうとギュー―っと力強く隠す。

「私を、私を殴って!」キッと強い目はオレを刺す。

「ヒョリン良いんだ・・俺はチェギョンに、男として一番やっちゃいけないことをしたんだ、シンに殴られても仕方ない。」

ミン・ヒョリンをどけさせ、インはフラフラと立ち上がると。

「イン!立っちゃっダメ!」インに抱きつきながら、泣きじゃくる

オレは怒りが止まらなかったが、その二人を見ている内に、拳は降ろされた。

「クッソ―――!この怒りどうしたら!」

オレは怒りを収めようと、天井を見上げ大きく深呼吸を繰り返す。

「チェギョン、チェギョンがどんな思いでこのソウルを離れて行ったのか!」

悔しい、悔しい。

チェギョンが破れた制服で泣いている時に、オレは呑気に授業を受けていたなんて。

教室に来なかったインの事を何とも思わず、ただチェギョンの事で頭をいっぱいにしていた。

「シン、本当にごめんなさい、インがやってしまった事は本当にダメな事で」

インの体の具合を確かめながら、ミン・ヒョリンはオレに謝ってくる。

「お前、オレの事名前で呼ぶのはもう止めろ。」

「シン、なんで?私達付き合っているんじゃない。名前で呼んだって。」

オレはミン・ヒョリンのネクタイをグイッと引き上げた。

「オレとお前が付き合っているって?まさか?冗談だろう?オレの名前を呼んでいいのは、チェギョンだけだ。」

わざと低い声で呟く。

「だって、私の気持ち知ってるでしょう?ずーっと前からシンの事だけ好きだったのよ!」

ネクタイを引き上げられながらも、毅然とした態度で言う。

「オレの事を好きだって?まさか?お前の好きなのはインだろう?あの夜遊びしていた時、お前の口から出てきた言葉は全てインの事だった。

何でもかんでもインの事ばかりで、遊ぶ女を変えようと思ってた。」

「遊ぶ女って?私の事そんな風に?」

「そうだ、ちょっと前までのオレは最低野郎で、ミン・ヒョリンの事を遊ぶ女・・つまり簡単にヤラセテくれる女と思っていた。」

「そんな―、私、シンと結婚するのが夢でバレエを捨てても良いと。」

ワナワナと震えだす。

「オレには大事な・・逃げられたけど許嫁がいる。絶対に連れ戻す。」

引き上げていたネクタイを手から外した。

「イン、シンが私の事を遊びだって、私本気だったのに。」

インにしがみつき泣き出す。

「ヒョリン泣くなって。俺が何とかシンにとりつくって・・。」

オレの手は傍の壁を思いっきり叩きつけた。

骨が潰れる鈍い音がした。

「ひっ!」綺麗な顔が引き攣る。

「イン、いい加減目を覚ませ。ミン・ヒョリンに心底惚れているなら、お前がちゃんと幸せにしてやれ。」

ジンジンと腫れあがった手を、抱えながら歩き出した。

「シン、手を怪我!?」インとミン・ヒョリンは抱き合いながら、オレを見ている。

「オレもお前の事怪我させた、だからあいこだ。」

二人を後にして、廊下を走りだした。

チェギョンがソウルから離れた理由が分かった。

居場所も、もう確認済みだ。

オレはこれから、釜山から車で30分離れたチェギョンがいる町に行こうと、手を怪我していない方で、コン内官に電話を掛けようとした。

ポケットから電話を取り出した時、急に電話がかかって来
コン内官からだ、どうしたんだ?

電話を受け取るにして出たら

「殿下!大変でございます!皇帝陛下が倒れてしまいました。」コン内官の悲痛な声が携帯から響き渡った。

「!!」走っていた足は止まり、あまりの驚きの為に声も出ない。

コン内官の声が何ども何度も聞こえ続けた。








皇帝陛下の持病が益々悪くなり、公務も続けれなくなった。

代役のオレは公務をこなしていくが、あまりのハードワークに心も体も悲鳴を上げていた。

これを、あの皇帝陛下を一人でやっていたのか。

急に皇帝陛下になってしまった王位継承2位だった父上。

ちゃんとした勉強もせずに皇帝陛下になってしまい、どれほどの苦労をしたことか。

頭が上がらない。

あの頃のオレは、突然なってしまった皇太子の位に嫌気を感じていて、父上の苦労さを知ろうともしていなかった。

今その立場になり、悔やむことばかりだ。

ようやく終わった公務の帰り道。

どっと疲れを体中に受け止めているオレは、目をずーっと瞑って、手を擦っていた

チェギョンがいなくなった次の日に、負った手の怪我はもう治っていた。

チェギョン、チェギョン・・疲れているんだ。

こんな時に、お前が傍にいてくれたら、どんなに安らげることか。

早く会いたい。











次の朝、皇帝陛下直々にオレに話があると言われ、行った先で生前退位を申しだされた。

まだまだ勉強不足のお前には、申し訳ないのだが。か細く語る父上。

少しだけ見ない間に、小さくなってしまわれた。

親に老いを感じてしまったオレは、グッと泣きそうになってしまって、皇帝陛下の位を譲られてしまうという驚きよりも、父上の弱さに驚いていた。

「シン、すまない。」何年振りに聞いた父上からのオレの名前。

「覚えてくれていたんですね。」オレの声が震えている。

「何言ってるんだ。自分の子供の名前分からない親などいない。」

優しい微笑みにオレの胸が熱くなる。

父上は、ゆっくりと手を差し伸べてきて、オレの手を握った。

「手の怪我は治ったのか?」

「はい。もう包帯はしなくても良くなりました。」

「そうか、お前の事を一番に思ってやれなくて、今まで本当に済まなかった。」

目をギュッと瞑り苦しげな父上。

「父上。」皇帝陛下としてやっていくには、毎日が大変で自分の子供の相手なんかしている暇などなかった。

今その状況が手に取るようにわかるオレには、もう反抗する気もない。

水面下では、オレを皇帝陛下にする作業が始まっていた。

一瞬過ったチェギョンの顔。

迎えに行こうとしてから、もう何か月も経ってしまった。

オレが彼女に対するキモチは全く変わっていないが、この状況でチェギョンの所まで行ける時間もなく。

そして、皇帝陛下になるから、オレと婚姻すれば皇后になるなんて、一般市民の彼女にはとても言えない。

益々オレから逃げて行ってしまうだろう、でももう歯車は動き出した。

オレは父上の生前退位を受け入れ、自分がその跡を継ぎますと返事をしようと

「父上、皇帝陛下の・・」

「ちょっと待ったーーーーーー!」女の声が響き渡った。

「シン、待ちなさい!」

オレの傍に寄って来た女性は「ねーさん!」

突然現れたオレのねーさんにビックリしてしまった。

「父上、ようやく戻ってこれました。」

姉上はオレの肩に手を置き、ニッコリと笑いながら、父上を見下ろした。

「ヘミョン。もう何年振りだろうなー。よく戻ってきてくれた。私が退位した後、皇帝陛下にシンがなり、ヘミョンお前がシンの事を支えてくれないか?」

あーー、これで本決まりだな。オレが言わなくても、もう決まっていることだ。仕方ないとがっくりと頭を下げた。

「父上、帰って来たばかりの私が言うのも何なんですけど、シンは皇帝陛下になれる段階ではまだないと思われます。」

「?」ねーさんも賛成すると思っていたので、意外な言葉に顔が上がった。

「何時も、ネットや新聞、テレビを見ていて、シンは氷の皇太子と呼ばれて、公務を淡々とこなしていってましたが、シンにはまだ気持ちが籠っておりません。

ただ公務をやっている、それだけでは韓国の皇帝陛下を任せる事は出来ません。

そこでモノの相談ですが・・・。」ニヤリと微笑むねーさんの顔。

あーーっ、この顔をする時は、特上の悪戯をする時の顔だ。

その後、父上とオレはあまりにものビックリする特上の言葉を聞くことになった。















車から降り立ったオレは、バックを肩に背負い歩き出した。

後ろからは、一緒の車から降りた男女がついてくる。

ここは仁川空港。

自動ドアが開き、一気に色んな声、音が溢れ出す。

三人で飛行機の手配を終え、歩いていると。

空港で見張っていた大勢の記者達が、走って近づいて来た。

「元皇太子殿下イ・シン様ーーーー。」

「イギリスにご留学だそうですねーーー。」

「そちらのお方は、噂のあるミン・ヒョリン様ですよねーーー。」

色々な言葉が行き交う。

オレは黙って突き進んでいると、後ろの二人が揉みくちゃにされていた。

記者達は、二人にマイクを向けていろいろな質問攻めで攻撃している。

オレはニヤリと笑い、二人を置いてさっさと指定された場所に向かった。

そこには先回りをしていたキム内官が私服でいた。

「殿下!」スッと立って「無事に通りましたね。」

「殿下は止めてくれよ―、もうオレは一般市民なんだ。」鏡を見てキャップを直す。

「それにしても、良い考えを思いつきましたねー。囮を使って、偽の情報を流すって。」うんうんと頷いている。

「ようやく、チェギョンの元に行ける。」

この部屋から見える韓国皇帝陛下の正装姿のどデカイポスター。

ねーさん、最高にカッコイイな。

突然のねーさんの帰国と驚きの提案。

「私が皇帝陛下になるわ。」

ニッコリと微笑む姿は、揺るぎない気持ちだと分かった。

父上もネーサンの気質を分かっており、オレよりも断然皇帝陛下に合っている。

「良い案だな。」

父上のポツリと呟いた言葉はあっという間に進んで行き、ネーサンが皇位を継いだ時

「アンタ、皇太子嫌だったでしょう?辞めちゃえば。」

又ニヤリとわらって、皇帝陛下になってすぐの仕事はオレの皇太子を辞めさせる書類の作成だった。

我がイ家の皇帝陛下の気質を受け継いでいる姉上。

どデカイポスターは、堂々としてカッコイイ。

ギィー、バタン。

人がこの部屋に入って来た。

「ハーッ、ハーッ。」2人分の息遣いか響く。

「お疲れさまでした。」キム内官が二人に寄り添い、席を勧める。

帽子を深々と被りサングラスをしていた二人は、外しながら席に座った。

インとミン・ヒョリンはパタパタと風を作り自分の顔に送っていた。

「フ―――っ、シン役大変だったー。」インはオレの髪型と同じ髪型のカツラを取り、上げ底のブーツを脱いだ。

ミン・ヒョリンは、揉みくちゃにされてヘナヘナな姿でデローンと伸びている。

「皇族って大変ねー。私には無理だわー。」もう沢山と言う顔をしていた。

「ごくろうさん。オレの代わりにサンキュウな。」ミネラルウォーターを勧める。

受け取りながら「シンの役に立てて良かった。」

親友を止めていたが、ギョンたちの働きにより元さやに戻っていた。でも、完璧には許していないけどな。

キム内官は、オレ達を見比べ「こんなに似ていないのに、人の先入観って凄いですねー。」

今日、ある雑誌記者の振りをして、色んな所に偽の情報を流させた。

オレの変装をしたインとミン・ヒョリンの写真を添付して、イ・シン元皇太子、彼女同伴でイギリス留学へ。

「よく見ると全くの別人なのにねー。」

ミン・ヒョリンは、インを見て服を整えてあげていた。

この二人は、親の反対を押し切って付き合いを始めた。

ようやくインへの気持ちを気が付いたミン・ヒョリンは、オレの事をすっぱりと諦めて、今はイン一筋だ。

「じゃあ、オレはそろそろ行く。」釜山行きの時間が迫って来たので、皆に挨拶をする。

「殿下、皇帝陛下も皇帝としての気質はありますが、私は殿下にもあると思っております。では、何かあったら直ぐにお電話ください。」キム内官が涙ぐむ。

「キム内官、いい加減慣れてくれよー。オレはもう殿下じゃないって。」

「シン、気をつけてな。その――、チェギョンに会えたら、俺が謝りに行きたいと伝えてくれ。」モジモジとしながら言う

「シン、イギリスへの旅行のチケットありがとうね。」記者達を巻こうと、インとヒョリンを代役に頼んだお礼に、そのまま旅行をプレゼントした。

一般市民になった時に、オレは最低限のお金しか貰わず、色んな準備のために使ってしまって、もう10万ウォンしかなかった。

釜山までのチケット分は払ったから、後は何とかなるだろう。

今は早くチェギョンに会いに行きたい









皆さん、こんばんは。

私の話って、よくチェギョンが逃げ出します。

お決まりですが、温かい目で読んでやってください。【汗)

では、おやすみなさい。