「あなた、この間シンと手を繋いでいた人よね。」

上履きから目線を上げていくと、綺麗な顔。

学校一の美人、ミン、ヒョリンがいた。

舞踏科の№1で、高校が終わったら留学も決まっているという噂の凄い人。

私の目が驚き「なんでこんな所に?」呟いた。

「ほら、ここから見える?向かいの校舎から貴方のことが見えて、慌ててこっちの校舎に来たの。

貴方、この間、私の彼氏と手を繋いでいたわよね。どういうつもりなの?

彼はこの国の皇太子なのよ。彼女がいるのに、あんな事皆んなの前でしちゃいけないわ。」ゆっくりと微笑む顔は、綺麗すぎてなんか怖い。

「だから、人に紛れて貴方の事引っ張ったのに、シンがあんな行動取るなんて思いもしなかった。」

「もうそんなことしないでね。」笑ってこの場を離れようと。

「ミン・ヒョリン。私だって、私だって。」自分の想いを言ってしまおうか

ギロリと振り返ったその顔はいつもの綺麗な顔では無くなっていて、身震いした。

私の傍まで寄ってきて「シンの事は高1の時から好きだったのよ。ようやく彼女になれて、ゆくゆくは皇太子妃になるんだから。

その為には私のすべてを注ぎ込んできたバレエを捨ててもいい。」

「そこまでして・・。」

「シンの事が好きなのもあるけど、母を、母を楽にしてやりたい。」その言葉は力強い。

「父親のいない私たち家族は、この韓国の社会で生きていくには大変で、やっと見つけたお金持ちの家の住み込み家政婦でようやく生活しているの。

バレエも、昔やっていた母から夜の時間の空いた時間に教えて貰い、私達の努力は報われ、いろんな賞を貰って、奨学金でこの高校に入れた。

私の為に一生懸命働いて、いつも辛そうに笑う母をなんとか助けてあげたい。

あなたにはこの苦しみが分かる?

私は周りの人から何と言われてもいい!母を、お母さんを皇太子妃の母にさせて幸せに笑って欲しい!

だから、ようやくシンと付き合えた私達の間に入って来ないで。」強気で話していた彼女の声が段々小さく震えていく。

「お願い。」両手を握りしめ、どれだけの思いを入れて言っているのか、分かる。

廊下ですれ違う彼女は、何時も男子に囲まれて堂々として、こうやって人に頼むなんでしない人だと思っていた。

シン君の事を好きという言葉は、私の口からは出てこなかった。

ヒョリンに何も言い返せなかった。

ヒョリンのお母さんを助けたいと思いと、私の家族を助けたいと言う思いは同じだ。

手をギュッと握りしめ、シン君の想い、ヒョリンの想いをきいてしまい、益々私はどうしたら良いのか。






悲痛なヒョリン元から逃げ出し、階段を降りて行こうとしたら、手をギュッと捕まれた。

ビックリして、捕まれた方を見上げると

「イン君!」

「チェギョン。」グイクイと引き摺られる。

「えっ?イン君、イン君、痛いって!」

私の声が彼に届いていないのか、ズルズルと引き摺られていった場所は。

何時も私とイン君が日向ぼっこしていた所だった。

いつも座っている場所に、叩きつけられ変な体勢で座ってしまって、手首を痛めてしまった。

「イン君、痛いって!」ジンジンと痛くなってくる手首を庇っている私を、彼は私をジーっと見てくる。

何時ものイン君の顔付きじゃない。

無表情の顔に、私の体は無意識に震え始めてきた。

「チェギョン、さっきのヒョリンの言葉聞いたろう?」ボソボソと話し始めた。

「ヒョリンは高1の時から、シンの事が好きだったんだ。

だから、ようやくシンにヒョリンを会せることが出来、そして仲良く付き合っていると思っていたのに。

ヒョリンの事は遊びだって・・マジかよ・・。

あんな綺麗なヒョリンを遊びで。で、普通レベルのチェギョンを好きだって?マジか?

自分の口からじゃなく、俺に言えって?シンの事を好きなヒョリンになんて言えばいいんだ。」ギュー――っと手を握っている。

「オレの家にヒョリン親子が住み込みの家政婦としてきてから、俺とヒョリンは兄弟のように育った。

アイツはこの話を誰にも言う事がなかった。

高校に入る時に、内緒にしてくれと必死にせがまれて、仕方なくずーっと内緒にしてきたのに。

チェギョンには、自分から本当の事言ったんだな。」

ポツリポツリと言うイン君は、何時もの優しそうに笑うイン君はどこにも見つからなかった。

「なーっ、これほどまで真剣なヒョリンに、シンを譲ってくれないか?チェギョンが一言言うだけで、シンはヒョリンの事を真剣に考えてくれるはずなんだ!」

さっきまでの無表情とは違い、段々顔付がおかしくなっていく。

「イン君は良いの?ミン・ヒョリンの事好きなんでしょう?」

様子のおかしいイン君を、どうにか元のイン君に戻そうと。

「好きだ。ずーっとアイツの事だけを見てきた。でもアイツは

「インは私にとって双子のお兄さんだね。私が困っているとぜったいに助けにやってきてくれる。」

嬉しそうに言うんだ。

ヒョリンの事は好きだけど、そんな気持ちは後でいい。とにかくアイツは今非常に困っている。

シンが好きなら、シンと付き合わせてやりたい、シンと婚姻したいなら、婚姻させたい。

シンの子供が欲しけりゃ……、子供を作らせたい。」最後の言葉はイン君の口元は震えていた。

「イン君、そんな―。イン君はそれで良いの?」怖くて、ガタガタと体は震えている。

私の目の前で、首元のネクタイを緩め、ボタンも外して、イン君は力を溜め唸り声を響かせ、ス―――っと大きく息を吐き、キッと私を睨んだ。

「良いんだよ」イン君はガシッと私の肩を掴み、制服の襟を掴み力任せに破いた。

「イン君!?」突然のf出来事で、私の目は見開く。

「ヒョリンがシンの事を好きでも、それでも俺はアイツの事が好きなんだ!」

悲しそうな顔で、私の制服を脱がせていく。

「止めて!」

脱がせようとしている手をもがいてもがいて暴れて、私はイン君から離れることが出来た。

髪の毛も、上着もスカートも滅茶苦茶だけど、ここからとにかく離れないと。

「チェギョンがやられたと分かれば、シンも諦めがつくんだ!だから、俺は・・・。」

私に突き飛ばされて尻餅をつき、ボロボロと泣きながら私を見てくる。

逃げ出した私の後ろから,泣き声が響く。

「ヒョリン・・・ヒョリンの為なら・・何でもする。」

イン君の悲しそうな泣き声が、私たちの大切な場所に響き渡っていた。







皆様、こんばんは。

最近、田舎の夜は冷えてきました。

皆様の所はどうでしょうか?


話は変わって、又残業の日々になりそうです。

腕が疲れ切っていて、筋が痛いです。

塗るシップを手放せないです。(笑)

では、皆様も体は大事にお過ごしください

おやすみなさい。