「そろそろ、終わりですよ。」

フッと気が付き自分が軽く寝ていた事を知る。

「・・・・判りました。」フーーッと溜息を付き、良くこの状況で寝れたもんだ。

広い部屋に、彫り師と私だけ。

彼の彫る音は、私の背中の神経そして身まで響く。

大きな痛みではないが、ぐっすりと寝れる訳ではなかった。

この二日間誰とも会わずに、山の中の別荘に閉じ込められて過ごした。

チェギョンには何も言わずに来てしまったので、心配していると思う。

でも、きっと母上達が傍にいてくれている。

チェギョン、ようやく、貴方に会えます。

全く、このしきたりも大変です。

結婚してから後を継ぐ事になっているので、チェギョンに合えない2日間がとても辛かった。

独り身の時に後を継げるようになっていたら、もっと楽だったのに。

嫌、この背中の絵を見て、チェギョンは逃げ出したかもしれない。

だからこの後、チェギョンに会うのがちょっと心配ですね。

「はい、終了です。」2日間寝ずに私の背中を預かっていた彼。

「2日間、お疲れ様でした。では、身を清める場所へご案内いたします。」私の腕を掴みゆっくりと引き起こしてくれた。

「うつ伏せだったので、直ぐには立てませんよ。」ちょっとの時間を置き,ゆっくりと立ち上がらせた。

「貴方もお疲れ様でした。」

「身に余るお言葉を頂き、ありがとうございます。」この部屋を出て、ある場所を目指す。

足が止まり、扉が開かれる。

「どうぞ、中にお進みください。すべてのモノは準備なされているそうです。では、これで私は失礼いたします。」深々と頭を下げて、先ほどの道を戻って行った。

私は中に入り、洗面所の鏡に写った自分を久々に見た。

そこには、2日間もうつ伏せ状態のままでいた疲労感たっぷりの男がいた。

「疲れてますね。」苦笑いをしてしまう。

「では、疲れを取らせて頂きますか。」上半身裸だったので、下のスラックス達を脱ぎ・・鏡で背中を見つめた。

そこには背中いっぱいに、少し藍色が強い青が広がっていた。

「とうとう私にも、この重さを背負って行く時が来ました。」背中の絵を見て気持ちが引き締まる。

小さい時から、父上の背中を見てきた私ですから、この事に対しての戸惑いはありませんが。

チェギョン、貴方は私の事を受け入れてくれますか?

それだけが気がかりです。








二日分の疲れを、広い浴槽に置いてきた私は、スッキリと目覚めた感覚になる。

着替え、髪の毛もセットしてこの屋敷の玄関に行くと、私付のコンが黒のスーツに身を包み私を待っていた。

まっ、自分も今日の為に作った黒のダブルスーツでビシッと決めている。

「本日は大変喜ばしい日です。一生お傍で務めさせて頂きます。」深々と頭を下げるコン。

私は笑いながら「コン、頼みます。チェギョンはどうしてますか?」

コンは私に付き添い、この屋敷の警備の為にいたが、外の情報は入って来るので、心配なチェギョンの事を聞いてみた。

「はい、奥様はずーっと泣いておられるそうです。」申し訳なさそうな顔。

「そうですか、こればっかりは仕方ない事なので、後でゆっくりと謝ります。」

私は待たせていた車の後部座席に乗り、ある場所に向かう。

ここから、ちょっと離れた山深い所に、大きな門が見え始めた。そこには数多くの黒いスーツの集団がウジャウジャと溢れていたが、この車を見ると皆一斉に並び始めた。

門の中に入っ行くと、広い敷地に数多くの高級車が並んでいる。

その中をゆっくりと進み、私は玄関の前に降り立つ。

ここでも、数え切れない位の人数がいる。

私は、車から降りて皆に向けて手を上げた瞬間、全員の頭がお辞儀した。

凄いなこんなに揃うなんて、苦笑いをしながら中に入っていく。

屋敷の中には男しかいなく、全ての事を男が切り盛りしていた。

案内された部屋の前に立ち深呼吸をして、腹から声を出した

「イ・シン、只今参りました。」

中から「入りなさい。」と言う声が聞こえ、扉をゆっくりと開けた。

そこには、又もや黒服の集団がいた。

私の父上が上座に座り、横の席に座れと指差している。

頭で頷きながら、そこの席に座る。

父上付のコンのお父上が立ち上がり、大きな声で皆に聞こえる様に言った。

「只今より、イ家3代目襲名を行います。」

私の背筋がビシッと筋が入ったようになる。

私は辺りを見渡し「この度は態々この遠いとこまでお出で下さり有難うございます。

私、イ・シンは、本日韓国マフィアを統括するイ家の3代目を継がせて頂く事になりました。末永く宜しくお願い致します。」

韓国中のマフィアの重鎮達が揃っている中、私の声は威厳たっぷりと響き渡った。








襲名も終わり、実家にようやく戻って来た私と父上は、おじいさまの写真立ての前で、背筋を伸ばし挨拶をした。

「おじい様、今日私イ・シンはイ家の3代目を継がせ頂きました。

おじいさまのような立派な3代目になるように、日々精進していきます。」深々と頭を下げた。

挨拶の終わった私と父上は、女性達のいる部屋に向かった。

マフィアの襲名の時には、女性は一切係わらずに、この事について誰にも言ってはならない。

だから、チェギョンが聞いてきても何も答えるl事が出来なかったようだ。

部屋を開けると「チェギョンは?何処ですか?」キョロキョロと辺りを見渡す。

「此処に入って来て、一番の言葉がチェギョンなんて、、新婚さんは良いわよねー。」ねーさんがニヤニヤと笑う。

オレはジロッと睨みながら「ねーさんこそ、兄さんと会えて嬉しそうですね。」仕事の時はコンと呼ぶが、プライベートでは兄さん呼ぶ。

私付のコンは、ねーさんとは幼馴染で、お互いの初恋を実らせてゴールイン、今年5人目の供が生まれたそうです。

凄いですね。5人ですか私達も負けてられません。

私達は6人以上にしましょう・一人でニヤニヤとしていると「ねーねー、シン背中の絵見せてよーー!」無理やりな姉は、服を脱がそうとしたが「ダメです!一番最初はチェギョンに見せるんです。

チェギョンがこの背中を受け入れてくれるか?拒否するのか?とても大事な事なんです

チェギョンが此処にいないのなら、もう行きます!コン!私の車、ではなくバイクを出してください。」

「承知しました。」頭を下げながらも行動は早い。

部下に電話をして準備をさせている。

「シン、チェギョンにはちゃんと説明しなさい。あっ、離婚されないようになっ。」父上が私を見て笑う。

「判っています。じゃあ、もう行きます。」コンが私にヘルメットを二つ寄こした。

黒はフルフェイスタイプ。赤にはゴーグルが付いていた。

早足で玄関に向かい、外に出ると久々のバイクが置いてあった。

最近乗っていなかった私のハーレー。

なんか名前だけだとチャラチャラ、マフラーから出る音が気に入って買った。

加速していく度に、音質がオレのキモチをゾクゾクと興奮させていった。

お気に入りののバイクに跨り、メットを付けてコンや皆に挨拶をして、久々の音を出した。

玄関先に響くこの音。

溜まらない。

アクセルスロットを回し、段々クラッチレバーを離してスピードを上げて行く。

通常なら、革の服やブーツで身を固めて行くのだが、着替えている時間が勿体なく、スーツのまま乗り出した。

久々な風はもろ体に感じ、少し寒いが嫌じゃない。

次々と車の合間をぬって先を急いでいくと、芸術高校が見えて来た。

時間的に、学校にいる時間だと知り、自分の家ではなく、この場所にバイクを飛ばしていた。

あともう少しで、チェギョンに会える。

チェギョンに会えると思うだけで、心臓が高鳴るまるで中坊のようだ。

バイクは良い音を鳴らしながら,左折をして行った。













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「チェギョン!オイ!シン・チェギョン!」オトコの声がした。

私は振り向き何?と言う顔をした。

「チェギョン、お前今日の髪型いつもと違うんだな。」芸能科のパクが立っていた。

「・・・。」もう今日は何回目よ!なんか知らないけど、色んな男に声を掛けられる。

「なあ、目のあたり真っ赤で腫れてるけど、なんかあったのか?」

「何も。」用事がないならもう行こうと。

授業も終わり、バイトもなくなった私は、シン様のいなくなった部屋に帰ろうとトボトボと玄関jに向かっていた。

あの女性の声が頭の中に響く。

「シンは私の元に帰って来たの。だからもう次に会う時には離婚届を持って行くかもね。」カン高い声が蘇る。

そんな事ない!って言いたいけど。私達はまだ1カ月くらいの新婚。

毎日体と心を重ねていたけど、突然いなくなったシン様に動揺するばかり。

あの女の人の言葉を信じてしまいそう。

トボトボと歩き出したら、急に肩を引き寄せられた。

「何!?」

突然の引き寄せられた体は、元の位置に戻る。

「シン・チェギョン!なんだよ、無視するなよ。」

「なによ、早くテレビ局に行かなくてもイイの?アンタはアイドルなんだから、色んな女が待ってるのよ」グイッと前に出る。

「久々に話したのに、つれないよなー。」

「去年、一緒に図書委員やっただけでしょ?って言うか、パクはアイドルの仕事が忙しくて、何回しか会った事が無かったけどね。」鞄を持ち直しもう帰ろう。

「お前、結婚したって本当か?それもスッゲー年上って!マジかよ!?」

「そうだよ、結婚したよ。毎日がラブラブなんだから!」シン様が居なくなってからは、泣きっぱなしですが。

「18で結婚って?お前目の周り泣いてるんだろう?」心配そうな顔。

「!!」

「なーーっ年離れすぎてキモチがついて行ってないだろう?泣くほど嫌なら家出ちゃえよ。」

「何言ってるのよ!さっさと行ってよ。」私はパクを振り切り玄関に駆け込み、慌てて靴を履き替えて玄関を飛び出した。

「シン・チェギョン!」追いかけてくるパク。

「もうーー、なんで?何時もは知らない振りしてたのに、構わないで!」

「去年から気になっていた女が結婚したんだ。幸せなら仕方ないと思っていたが、泣いてる。気になってしょうがないだろう?」パクは私の手を掴み引き留める。

「!?気になっていた?」

「ああ、お団子頭のかわいい子にな。」

「パク。私あんたの名前知らないんだけど。」申し訳なさそうに言う。

「はあ?シン・チェギョン!こんな時にそんなこと言うのかよ。俺の名前はパク・ジュノだ!覚えておけよ!」

「・・・・気が向いたら。この手、離してよ。」

「嫌だ。」

「離して!もう家に帰るんだから!」周りの人達も私達を見てヒソヒソと話ししている。

「もうーーー、アイドルがこんな事しちゃいけないでしょ!?」掴まれた手を一生懸命離そうと必死にバタバタとしたたら、遠くから聞こえていたバイクの音が段々近づいてくる。

その音は、この学校の校門を抜けて、玄関前まで入って来た。

黒のメットに黒のスーツ、黒のバイク。ヤバそうな感じ。

凄い音は、玄関先の私達の傍で止まった。

確実に自分に向かってきたバイクにビクつき、離れようとしたが「うん?」このシルエットは。

バイクの男の人は、メットを外して髪の乱れを直した。

「シンさま?」

「チェギョン!迎えに来ました。」照れくさそうに言うカレは眩しかった。

「シン様!」飛び込んでいこうとしたけど。あっ?もしかして離婚届の紙を持って来たのかも。

私はそれだけは嫌!と思い咄嗟に駆け出した。

それも、パクが手を離さなかったので、一緒に走り出してしまった。

傍目からは,二人で仲良く逃亡したみたいに見えた。

「チェギョン!その男は誰ですか!?」バイクから降りて,早足で私達に近づいてくる。

「嫌、シン様。私は受け取りたくないです!」訳の分からないパクは、もっと早く走りたいのに、足で纏いになっている。

「何を受け取るんですか?私はただ貴方を迎えに来ただけです。」早足は段々駆け出し、私達の間を狭めて行く。

シン様の顔は段々無表情になり、怖さが増していく。

「チェギョン!」パクのせいでシン様に掴まってしまった。

「嫌です!私は離婚なんてしません!」ギッとシン様を睨んだ。

「離婚?」

「だって、あの人が言ってました。シンは私の元に帰って来たから、離婚届が届くかもねって。」

「・・・・そんな訳ないです。そんなウソ何処で仕入れて来たんですか?」シン様は私の肩を掴んだ。

「ミン・ヒョリンさんです。」シン様の力強い手が私の肩にめり込む。

「アイツが貴方にふざけた事を教え込んだんですね。あの女のウソに惑わされないでください。私が貴方と離婚する訳ないじゃないですか!」ちょっと怒り口調のシン様。

「本当ですか?」

「チェギョン。オトナはウソついてばかりじゃありませんよ。ちゃんと素直に言う時もあるんです。だから、信じてください。」

シン様は私の顔に近づき唇を重ねてきた。

嫌がる私に、何度もキスをするうちに、シン様のなすままにキスを続けてしまった。

3日振りの熱烈なキスを受けてしまって骨抜き状態になってしまっ私だが、シン様の唇が離れてしまった時、私はシン様の胸を押した。

「じゃあ・・なんでいなくなったんですか?朝起きたらシン様はいませんでした。何ですかーー!」興奮してしまった私の目からは涙がボロボロと落ちて行く。

「チェギョン。それは。」切なそうな顔のシン様。

「大人はやっぱり嘘をつくんですね。子供だと思って甘く見ないでください!」私はシン様から離れて歩き出そうとしたら。

シン様は私の手を掴み、バイクの傍まで来た。

「ちゃんと説明します。今は黙って私に付いて来てください。」赤いメットを被らせてもらい、ゴーグルも嵌めて貰う。

「全く、泣き顔も可愛い過ぎです。」鼻の上に軽いキスを落とした。

シン様も、メットを被ってバイクに跨り、私に乗れと言う合図をして「しっかり掴まってください。」バイクに跨った私の両手を掴んで自分の腰に回した

「じゃあ、行きますよ。」バイクのアクセルを何回か回し、シン様のバイクは爆音を鳴らしながら走り出した。

後に残された一般ピーポーたち。

2人のいざこざをじーっと見ていたが、キスが始まるとギャーギャーと騒いでしまった。

「見た?見た?見ちゃったよーー!」

「こんな間近で、生チューーを見れるなんてそれもオトナのきっす。」

「あんなのされちゃー、離れられないわよねーー。」女子達が集まりワイワイ騒いでいる。

そして、二人はバイクで行ってしまった。まるでドラマの様だと皆、興奮してしまっている。

パク・ジュノも、その一人。

「チェギョン、お前あの凄い男とあんなキスばっかしてるのか?」

俺の目の前っで、二人は生チューをしていた。

それも、大人な男はチェギョンを骨抜き状態にしていった。

あんなキスの仕方があるなんてキスはただ唇を重ねるもんだと思っていた。

マジかよ、気になるオンナの生チューなんて見せられてしまって、全然相手にされてないじゃん。

くっそーーっ。

アイドルやって中々人気も出て来たのに、かるーく無視されてしまった俺はガックリと肩を落とした。









シン様のバイクは凄い速さで道路を走っている。

この方向は家に向かう道ではなく何処に行くんだろう?

バイクに乗ったのは初めてで風が冷たい。

でも、シン様の体に自分の体をギュッと重ねていると温かく感じる。

久々なシン様の体。

シン様の背中は、抱き付いていると安心してしまう。

離婚なんかしたくない、ずーっとシン様の傍に居たい。

こんなに好きなんだもん、もう離れたくない。

ギューーッと力を込めた。

バイクは人の多いとこへ流れて行き、ある場所の前で止まった。

「ここは。」見上げる場所はきらびやかな場所

ロッテホテルのエントランスの真ん中に止まっている私達。

メットを外しながらシン様は「此処は私が株を75パーセント持っているとこです。」スタンドを下ろし、私も下した。

すると、ここのドアマンが近づいてきて「イ様、何時も有難うございます。」深々と頭を下げている。

シン様はバイクのキーを渡しながら「優しく扱ってくれ。」一言添えた。

「チェギョン、行きますよ。」シン様は私の手を取り、ホテルの中に入っていく

何時も外から見てばっかりのラクジュアリーなホテルに入って行ってるなんて、嘘みたいだ。

ロビーのフカフカなソファに座らせて、シン様はフロントに向かった。

私はじーーーっとシン様の後ろ姿に見惚れていた。

何てカッコイイのかなー、細身なダブルスーツに高そうな靴。

フロントでのサインのみの手続き、株主ってそれだけなの?

手続きを終えたシン様は私に向かって一歩一歩近づいて来る。

「チェギョン、行きます。」私の手を取りギュッと握った。

「何処にですか?」近くにあったエレベーターホールに移動して、上昇ボタンを押す。

シン様は何も言わず、エレベーターを待っていたので、私の言葉は消えていった。

エレベーターが到着して、カードを翳して階数を押した。

私達しか乗っていないエレベーターの1室。

他にも客はいたのだが、シン様の風貌と冷たい目に皆乗って来なかった。

扉が閉まりそうな時に、皆私の事を可哀想という顔で見送っていた。

何で、皆そんな顔してるの?

不思議に思っていると、エレベーターが止まり扉が開いた。

シン様の手が冷たくなって行き、私の手をきつく繋いでいる。

歩き出すシン様の歩調に何とか付いていき、目当ての部屋の番号の前に止まり、カードを翳した。

扉の向こうは、余りの広さにビックリする。

「わーーーーー!最上階です」見下ろす明洞の街並みは夕日に照らされて、オレンジ色に染まっている。

そして、色んな看板に光が入り始めて行く。

「綺麗・・・。」大きなガラス窓にオデコをくっつけて、私はまだ感動中。

「チェギョン・・。」シン様の顔が辛そうに見えた。

「シン様?」私は外を見るのを止めて、シン様に近づこうと。

「チェギョン、この3日何をしていたのか、貴方にちゃんと見て貰いたいです。」真剣なシン様の顔。

ゴクっ。シン様の真剣な言葉に、私は言葉も発せずに、唾を飲み込むしかなかった。

シン様は、上着に手を掛けてボタンを外していく。

脱いだ上着はソファに置き、ベストとスリムなワイシャツも脱ぐ。

「シン様・・。」いくらシン様の裸には慣れてきたとはいえ、明るい所では恥ずかしくて目線を外した。

「チェギョン」シン様の声に、ちゃんと見ないと!と改めて、目線をシン様にあわせると、そこには何時も通りな綺麗な浅黒い肌が現れた。

シン様の手が止まらない。ベルトに手を当てバックル全てを外してスラックス、靴下、ペンティまで。

思わず今度は、目を瞑ってしまった私。

「チェギョン、目を開けてちゃんと私を見て下さい。」

「シン様、恥ずかしくてー。」

「今確認しないで、後から何かあっても知りませんよ。」

「それは、困りますー!」私は恐る恐る目を開けて、シン様に近づいて行った。

わたしより身長のあるシン様なので、見上げながらの確認は、大変だった。

「浮気の証拠ってどんなのですかね?」

「私が何時もチェギョンにつけてるやつです。まっ私ならバレないようにつけさせませんがね。」

「そんなーっ!じゃあ、確認の意味がないじゃないですか!あっ、ここにミミズバレの跡が」ちょうど肩のとこに跡があった。

「チェギョンそれは、貴方との初めての日についた大事な跡ですよ。」

「!!」初めての日ーー!ほっぺを抑えて、顔の紅潮を抑えようとした。

「チェギョン、全部見てください。」堂々と立っているけど、今日のシン様はちょっとだけ違った。

顔を見上げると、どこか緊張している顔だ。

なんか変、私は前を見るのを止めて、後ろに回った。

「あっ!」

そこには、青の世界があった。

「凄い・・・です。」私はシン様の背中を見て絶句した、

綺麗な色のコントラストに、迫力のある青龍が住んでいた。

「シン様。これは刺青というものですか?」

「そうです、何時も貴方が褒めてくれていた背中に入れ墨をしてしまいました。」シン様の声が珍しく震えている。

「・・・。」

「家の家業を引き継ぐことになったんです。跡取りは必ず自分の守護神の絵を背中にいれる。そうしないとイ家の跡取りになれないんです。

そして、私が刺青を彫っている事や、3代目襲名を女性達には知らせてはいけないと言うシキタリ。あの日の朝、日が昇らないうちにチェギョンに何も言えずに出掛けてしまい、本当に辛かった。」シン様の握っていた手が白くなり、強い力が掛かっていることを知る。

「チェギョンがこの刺青を受けて入れてくれるのか?それとも嫌がって離婚を選ぶのか。私は今、チェギョンの言葉を待ってます。」

「シン様・・。」

シン様がいない間、あの人の言葉を信じてしまって、シン様を疑ってしまった酷い私なのに。

シン様はこの綺麗な刺青を心配している。

「綺麗ですね。芸術高校美術科の私の血が騒ぎます。

初めまして、青龍さん。シン様の背中を守ってくださいね。」彼女の唇が背中の青龍の顔の所にキスをしていく感覚が分かる。

「シン様とても似合ってます。」ギュッと背中に抱き付き、伸ばした手はシン様のお腹でギュッと重なる。

「それは、私の背中を受け入れてくれると思ってもいいのですか?」私の手に自分の手を重ねるながらか細い声が聞こえた。

「はい、離婚なんて絶対にしません」又青龍にキスをする。

「チェギョン、青龍にキスは嬉しいのですが、私を忘れてませんか?3日振りですよ?」私の腕を外して、グイッと自分の胸元で抱きしめてくれるシン様。

「さっき、学校でしました。」胸元で頭をグリグリする。

「あれはチェギョンが嫌がっていました。」さっきまでの自信なさげな声質はもう聞こえない。

「3日分のキスを私に下さい。」グリグリを止めて、私は顔を上げてシン様のキスが降りてくるのを待った。

「ところで何時まで一人っきりにさせて置くつもりですか?」軽いキスを重ねる。

「えっ?」

「一人で裸は寂しいです。チェギョンも。」キスを繰り返しながら、私の上着のボタンを外す。

「私の浮気確認はもう確めましたね?じゃあ、次は私の番です」真剣な顔。

「浮気なんかあり得ません」強気な発言。

「ほーーっ早く確かめましょう。」上着はさっさと脱がされ、ベストもソファに投げて、私を抱上げた。

力強い足取りで、キングサイズのベットの掛布団を剥いで、私をそこに降ろした。

丁度いい柔らかさと固さのベットは、私の体をちょっとだけ沈めた。

私の体を覗き込むようにシン様は跨り私のワイシャツのボタンを外していく。

「面倒くさいですね。破いても良いですか?」

「ダメです!制服ですよ。」クスクスと笑う。

ボタンを外している指が私の頬に移動して優しくなぞられる。

「チェギョン可愛いです。でも、目の辺りがまだ腫れてますね。ずーっと泣いていたんですね。」

「そうです。ずーっとシン様の事探していました。」シン様の切なそうな顔が降りて来て私にキスをする。

「もうそんな事はないですから。チェギョンの事を泣かせません。」

「シン様・・の夢・・叶えたいです。」私の言葉は、シン様の動きを止めた。

シン様は、驚いて私をガン見する。

「いっぱいの子供たちに囲まれて暮らしたい。この間ポツリと語ってくれました。」体を起き上がらせて、シン様の頬に手を添えた。

「シン様の夢を叶えるのが私の夢です。」

「チェギョンの夢はデザイナーになるのじゃ。」

「夢は一個だけとは決まってませんよ。だから私の夢にも子供がいっぱい欲しいって言うのもあるんです。だから、シン様との子供欲しいです。」私の唇は、シン様の唇に重なる。

「チェギョン、28才の私より18才の貴方の方がオトナですね。」シン様からのキス。

2人の唇は重なり続けた。









電話のベルで目が覚めた。

ぼーっとしても、手はいつもの場所に置いてあるiPhoneを探す。

「あれ?ない?」

いつもの場所になくて、重い体を起こそうとしたら、無理だった。

頭だけ上げて下を見下ろしたら、シン様の体がしっかりと私の体に巻き付いていた。

その様子は、背中の青龍のように見えた。

シン様がこの音で起きないなんて、初めてだった。

昨日、私達は何度も繋がり、最後は憶えてない。(>人<;)

電話のベルは鳴り止まず「シン様、起きてくださいー。」肩を揺らした。

セットしていた髪型は乱れ、サラサラな髪型のシン様が、ハッと体を起こした。

キョロキョロと辺りを見渡しフーーッと息を吐く。

「あのまま寝てしまったんですね。」体を起こしたが、私にキスを落としながら、ベル音の元を目で探す。

どうやら、ソファに置いた私の制服から音が鳴っている。

「今何時ですかー。」裸のままベットを降りて歩いていく。

ああ夢じゃないんだ、シン様の背中には青龍が威厳を放ちいる。制服のポケットからiphoneを取り出すと

「チェギョン!大変です!8時30過ぎてます。」

「えーーーーー!学校遅刻です――!」慌ててベットから降りようとしたら、うん?腰が重い。

って言うか腰が抜けてるーーー。

「シン様、大変です。腰が立てませんーー!」大きな声で叫んでしまった。

「・・・・・。」真顔なシン様。「確かに何度繋がった事か、最後の記憶がイッタまま寝ちゃったんですね。」


「シン様、どうしましょう。」情けない顔で見上げる。

「とにかく、シャワー浴びてこっから出ましょう。」私を抱上げバスルームに二人で雪崩れ込んだ。







シン様のバイクは校舎の玄関に止まる。

私は降りようとしたけど、まだ腰が上手く立てない。

シン様は私をおんぶして、校舎の中に入って行く。

今は授業中なので、廊下には誰もいない。

そして、3年の美術科が見えて来た「チェギョンあともう少しです。」ガラッと開けた扉の先には、生徒たちの面が一斉に私達を見た。

「ひゃーーーー!おんぶされてるーー!」キャーキャー騒ぐ女子達。

「毎回、登場の仕方がハンパない!」

「チェギョンの旦那さん、今日の髪型自然で、この間のような凄みのあるセットではなくて、惚れてしまいそうです」皆それぞれ、きゃーーきゃーが止まらない。

皆が騒ぐ中、私をおんぶしたシン様は中に進み、私の椅子に座らせた。

ガンヒョンを探し「ガンヒョンさん、朝起こしてくれてありがとうございます。」深々と頭を下げた。

シン様の事をキッと睨みながら「イ・シンさん、チェギョンの元に3日間も帰って来なかった理由は?チェギョンずーっと泣いていたんですよ!」何時もは冷静なガンヒョンが立ち上がり、シン様に食ってかかっていた。

「話すと長くなります、今度ギョンと一緒に遊びに来なさい。」ニッコリ笑う。

「えっ?何でギョンさんと?」ボンと真っ赤になるガンヒョン。

「毎回我が家に遊びに来て、チェギョンにガンヒョンさんを紹介させてくれって、うるさいんです。チェギョンとイチャイチャしたいのに、できません。」私の頭を撫でながら笑う。

「だってあんな人、私なんかと本気で付き合ってくれる訳ないです。」キッと睨むガンヒョン。

「見た目はチャライけど、案外純情なんですよ。それに本気でガンヒョンさんの事好きになったみたいですから。我が家に二人呼びますから、会ってやってください。」シン様は私の頭にキスをして「授業のお邪魔をしてすみませんでした。」謝って出て行った。






廊下に出て歩き出したら「チェギョンの保護者のイさん!」チェギョンの担任に呼び止められた。

私は振り向き「はい、なんでしょう?」

「ここんとこ、チェギョンが泣いてばかりいました。保護者の貴方と何かあったんですか?」

「・・・・・。」

「あの子、いつも明るて元気が取り柄えで、いい大学に進めばもっと活躍できるほど、中々の才能の持ち主なんです。だから家計が苦しくてバイトしてたのが無くなり、ようやくちゃんと向きあえるんです。だから、保護者の貴方が全面的に助けてあげてください。

まっ、私の本心は、うちの可愛い生徒を泣かすなって!って思ってますけどね」睨む担任。

私は笑いながら「チェギョンの周りには、イイ人ばかりですね、もう泣かすようなことは、ありませんから。あっ、大学の事は真剣に考えさせて頂きます。

でも、ちょっと遅れるかもしれませんが、絶対に彼女の夢を叶えさせますとも。」

「遅れる?」

「ええ、子供が出来たかもしれませんから。じゃあ、先生、今日は遅刻してしまいすみませんでした。」ニコニコと笑って歩き出した。

すると後ろから「えーーーーーーーー!」大きな声が廊下に響き渡った。











今日は、会社に出勤せずにコンに頼んで、ミン・ヒョリンの後始末をしていた。

「私の妻を惑わせる嘘をつきました。チェギョンを泣かせるなんて、許しません。

コン、アイツがいたバレエ団への寄付は終了、そして、ミンヒョリンを南米のどこか遠くに、バレエの指導者として、飛ばしてください。私を怒らせたんです!韓国には、二度と戻らせません。」コンに全てを任せた私は、電話を切った。

アイツとは長い付き合いでしたが、十分にお金の代償は払っているので、解決済みです。外国で頑張ってバレエを教えてください。









学校の終りそうな時間に、私はチェギョンを迎えに車で来た。

すると見覚えのある車が、駐車場にとまっていた。

「あいつ。付きまとうのは止めろって、あんだけ言ったのに。」私は車を止めて、アイツの車に向かった。

車の窓ガラスを叩き、中のヤツを出させた。

「ギョン!ストーカー行為は止めろって言ってるだろう!」ギョンの首元を掴んだ。

「シン!誤解だってーーー!」ギョンがギャイギャイと騒いでいたが、嫁の親友に手荒な真似をするなんて、許せない。

昔のようにギラギラと目が光り出した時

「シン様ーーー!」パタパタと駆けてくる私のカワイイチェギョン。

ギョンを捕まえていた手を引っ込め「チェギョン、もう走っても大丈夫なんですか?」急に何時もの口調に戻り、彼女は私に飛び込み、胸元に頭をグリグリとした。

「シン様ーー、ガンヒョンがねギョンさんに会ってみようかなーって、電話掛けたんですよーー。」後ろから恥ずかしそうに歩いてくるガンヒョンさん。

ギョンを見ると目がハートマークになってる。

まっ、私もチェギョンを見る時には、そうなっているかもしれませんがね。

ギョンとガンヒョンはお互い向き合い、モジモジとしている。

「何してるんですかーー?後はしっかりとやりなさい。私達は帰りますから。」チェギョンのカバンを持ってあげて、車に乗ろうとした。

「おい!シン!お前んちに行くんだからな。見られちゃいけないのは、隠しておけよーー。」

「そんなのある訳がないじゃないですか、嫌、見て欲しいのならいっぱいあります。

チェギョンと私の写真がいっぱい貼ってます。全部見に来て下さいよ」彼女を車に乗せて家に向かって走りだした。





ギョンとガンヒョンは、後から我が家に遊びに来た。

チェギョンとガンヒョンさんはキッチンに二人で立ち、料理をチェギョンが教えながら色んなモノを作っていた。

そして私とギョンは大きなテーブルに座り、乾杯をしていた。

男2人は手伝うと言ったのに断られ、酒を飲むしかなかった。

御互いの好きな女の料理する姿を眺め「こんな良いおつまみは無いなー。」ギョンはもう酔っぱらったのか,頬がピンクだ。

「いいでしょう、好きな女と暮らす結婚がこんなに良いモノだったなんて、知りませんでした。」

「それにしてもこのテーブルデカ過ぎないか?」オトナが8人位座れそうだ。

「子供もいっぱい座れるようになってます。」ニヤリと笑う。

「子供って嫁はまだ18才だろう?」

「オンナの三大絶頂を教え込ませました。きっと子供出来たでしょうね。」フフフっとニヤ付く。

「マジかよ!?俺が大学の時教えた時、女がキモチイイだけなんて絶対にやるもんかって言ってたお前がか?」ギョンの目が驚きで落ちそうだ、

「ギョン、恋をすると人は変わるそうです。この私も変わってしまいました。チェギョンの為なら何でもしますよ。」グイッとビールを飲む。

「韓国マフィアのトップのお前を虜にするシン・チェギョン!恐るべし。」

「シン様ーー、キムチ鍋出来ましたーー!今日もいっぱいの愛情入れときましたよーー。」テーブルの上にドンっと置く。

「ほらっチェギョンのキムチ鍋。私が恋に堕ちてしまったキーワードです。」制服にエプロン姿のチェギョンをグイッと引き寄せ、キスをねだる。

ギョンがいるから恥ずかしがっていたが、仕方ないですと私の頬にキスをして、パッと離れてまたキッチンに行った。

「・・・・・・・。」

「なんですか?」

「お前制服のコスプレさせていた俺の事、バカにしてなかったか?」

「そうでしたかねーー?」素知らぬふりをする。

「お前、毎晩よかならぬ事、させてないだろうな18才に。」ギョンの目が冷たい。

「アハハは八、ご想像にお任せします何たって私は28才なのでそれなりのテクは持ち合わせてますよ。」ニヤリと笑った。

「くーーーーーー、制服プレイ俺もしたいーーー!」悔しそうなギョン。

そう言いながらも、根が真面目なギョンの事だ。

ガンヒョンさんには、堅実な男でいてくれるだろう。

チェギョン貴方と結婚してから、人生が変わりました。

キッチンの彼女と目が合い、口元で愛してますよと言う口元をする。

すると、嬉しそうに微笑むチェギョンも、愛してますと言う口をする。



28才のオトコと18才のオンナの結婚は、何時までも幸せだったとさっ。


お終い。






皆様、こんばんは。

昨日はバイト終わってから雪掻きをしていたので、更新しないで寝てしまいました。【汗)


今日のお話の中に刺青のお話が出てきますが、私の想像なのでお許しを。

ヤフーの時、このお話をアップした時に指摘を受けましたので、とりあえずこれに関してツッコミはなしでお願いいたします。

では、もう眠いのでおやすみなさい。