「アンタ最近お団子にしてくるね。」お昼休み、食堂からの教室に戻る時、ガンヒョンがポツリと言った。
「うん。だってオッパがこの髪型好きだって言うから。」お団子を触りながら、オッパを思い出してニタついてしまう
「ねー。先生の事、去年で懲りたんじゃないの?」オッパの事を唯一、ガンヒョンに教えた。
「だって、やっぱり好きなんだもの。」ポッと赤くなる。
「まだまだお子ちゃまなアンタは、物語のような容姿の先生が好きだよねー。」呆れ顔で私を見る。
「えっ?ガンヒョンこそ、そういう小説好きじゃん。」彼女の部屋には、本棚いっぱいの恋愛小説が置いてある。
「もう、読んでません!ご卒業しました。アンタは本物の王子様と婚姻したのに。
皇子さーっ、あんたと結婚してから、スッゴク良くなった。
サイボーグから、人間になった。
アンタに好きになってもらおうと、一生懸命なとこカワイイじゃん。」美術科の教室に入り、椅子に座る。
「好きって?」意外な言葉が出た。
「はー?気がつかないの?」凄い顔で私を見下ろす。
「だってシン君、何も言わないよ。」気がつかないのが、まるで悪い言い方をされた。
ガンヒョンは、ふかーいタメ息をつき
「ちゃんと、旦那を見なさい。でも、本当の幸せは、見えないからねー。」左手で頬杖をする。
「これ、当たってるから。ヨロシク」私より考え方・容姿が大人なガンヒョンがビシッと指を差すも
指を指された私は、ビックリしながらも、「でも私の好きなのは、オッパだしー。」
「まったく、あんな男のどこが良いのやら。去年アンタの事捨てたんだよ。」
頭を傾けたら、髪の毛がはらりと、落ちた。
「わっ!直さないとー。」慌てて、髪の毛を、全部下ろし整えようと、ポケットからブラシを出し、髪の毛をとかした。
「ねーっ。お団子より、その髪型のほうが似合ってるよ。」
「えっ?」
「お団子だと子供っぽいし、それに変。宮で磨かれたせいなのか、アンタ綺麗になった。」しみじみと言う。
「ガンヒョン。」
「先生ってさ。ロリコンじゃん。幼いアンタの事が好きだけど、アンタも何時までも子供じゃいられないよね。
宮で鍛え抜かれた作法もさまになってるし、進化し続けるシン・チェギョンをあの先生は受け入れてくれるかね?」ガンヒョンのメガネの奥の目が、光る。
物語から飛び出してきたような容姿のオッパ。
オッパとは、ロリータファッションをして出掛けた美術館出会った。
一目惚れ、ミュシャを食い入るように見ている横顔に、恋してしまった。
思い切って話し掛けたら、お互いミュシャ好きという事が分かり、また会う約束をして、二人の付き合いは始まった。
オッパは遠くの場所で会う時に、フリルの格好をせがむ。
去年は、私もそういう格好が好きだったので、よく着ていたが、今はロリータファッションを卒業して、お嬢様ファッションを好むって言うか、なんたって妃宮だものね。
私も今の方が、しっくりする。
オッパの事は好きだけど、今の私の事を受け入れてくれるのかなー?
「そう言えばさーっ、旦那元気なさそうじゃん。」ふっと思い出して、ポツリと言った。
「・・・シン君?」自分のことが精一杯で、シン君の事を余り気に止めてなかった。
「やばい、最近シン君と話してない。」二年間、妃宮頑張るって言ったのに。どうしよう。
「ちょっと、会いに行こうかな。幾ら、2年妻だけど。その間はサポートしないと。」私は立ち上がり、ガンヒョンに言った。
「そうだね。旦那の様子が変なのに、妻が知らないって、どうよ?」
「じゃっ!行って来るよ。」後ろを振り向き、入り口に向かおうとしたら。
目の前が暗くなり重たい体が覆い被さってきた。
呟く声はシン君の声。
「チェギョン好きだ」
「えっ?チェギョンって、私・・・?」カレの意識のない体を私の体で受け止めても、一緒に崩れていった。
教室に響く、凄い音。
周りの皆も驚き、周りを囲み慌て始める。
どっかに体をぶつけたかも知れない、ちょっと痛いところがあるが。
私は、シン君を抱き起こそうと、無理幾ら細い体でも、意識がない体は凄く重たい。
あーーっ、シン君が具合悪い何って知らなかった私。
「ごめん、シン君ごめんね。」ボロボロと情けない涙が溢れる。
黒服のおにーさん達が囲む。
「妃宮、殿下が倒れたんですね。運びますから離れてください。」
「いやっ!私が私が運びます!」
えっ!?と言う顔のおにーさん。
「だって、私が自分の事ばかりで、シン君の事ちゃんとちゃんと・・・。」泣き続ける私は,酷い顔になってる。
グッタリと意識もなくなっているシンをガシッと支え、自分で担ごうとしたが。
「なにやってるの!今はそれどころじゃないでしょっ!ほらっ、おにーさん達に任せましょう。」私の体を無理矢理離したガンヒョン。
「私がするんだから!」又シン君に触ろうと。
ビシッ。
「痛い。」左頬が痛い。
「なにパニクってるんの!?アンタがしっかりしないと!」ガンヒョンの鋭い目。
「あっ、うん。そうだね。」ガタイの良いおにーさんに背負われたシン君。
ギュッと眉毛を寄せ、苦しそう。
「妃宮!では、殿下を!急ぎます。」
「わっ!私も行きます!」ガンヒョンと目を交わして、車まで急ぐ。
皇太子殿下が倒れた事が、学校中に広がって行く。
群がる生徒達を掻き分けて、車に向かう黒服の集団と私。
ようやく車の後部座席に乗り、シン君の頭を私の膝に乗せて、制服をカレの体に掛けてあげた。
おニーさんたちが、電話で色んな所へ電話して、指示を仰ぎ宮に向かう。
グッタリとなっているカレの体を、優しく優しく察する。
「シン君、シン君ごめんね、ごめんね。」オッパと再会してから、シン君の事を忘れていた私。
酷い妻。
今思い返してもシン君の記憶がない。
浮かれていた、オッパに又会えた喜びで浮かれまくっていた私に罰が与えられたんだ。
オッパに出会う前までは、あんなに一緒に遊び、一緒に寝ていたのに。
本当に酷い。ゴメンネ。
眉間に寄る皺を指で押し直しながら
「目を覚まして。苦しそうなシン君じゃなく、何時もの意地悪そうな目で、からかうシン君に戻って。」
宮に向かう車の中、膝に乗せたカレを抱きしめ続けた。
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でも、もう眠いです。おやすみなさい。