無事に会見が終わり、ホッとする。

皇太子だけ出席した事の追求もあったが、上手くかわした。

休憩室に向かい、扉を開けた。

女官達が傍に立ち、皆心配そうに見守っていた。

チェギョンは、タオルを顔にかけ、上を見上げている。

「大丈夫か?」できるだけ、優しく声をかけた。

タオル越しに「シン君、ありがとう。突然泣いちゃったりして。」何時ものデカイ声ではなく、か細い声。

なんだ?チェギョンが小さく見える。

思わず抱きしめたくなったが、周りには人がいる。

「泣いたことは、仕方ない。帰るぞ。」

コン内官にも伝え、皆の動きが変わる。

タオルを取ろうとしたチェギョンの手を止め「まだしてろっ。」

「えっ?歩けないよ。」

チェギョンの言葉を、無視して彼女の手を引っ張り、自分の体に寄せた。

「オレが支えてやるから、車までまだタオルしておけ。」ギュッと彼女を抱き寄せた。

思ったより、細いそして柔らかい。

オレの胸元にポテッと頭を置き「・・・ありがとう。」






東宮殿に着き、チェギョンを休ませた。

「とにかく寝てろ。」

「私も皆さんに、言いに行くーー」

「チェ尚官、今は、コイツを寝かせてやってください。」グイグイと部屋に押し込む。

中では、女官達もチェギョンの腕を引っ張っているようだ。

「寝てすっきりしたら、又宮の報告に付き合うから。今は寝ろ!良いか!?」泣き腫らした頬を引っ張った。

「いったーーー!」

「じゃっ、行ってくる。」コン内官と伴い、東宮殿を出た。







皆から、チェギョンの涙の訳を聞かれたが、判らないので答えようがなかった。

報告も終わり、東宮殿に戻った。

チェギョンの部屋に入り、ベットに向かって歩き出す。

ベットの端に腰を下ろし、彼女を見下ろす。

頬、鼻、目の周りが、まだ赤い。

「なあ、そんなに泣くほどあのポスターに何があったんだ。」彼女の前髪をちょっとだけ触った。

急にパチッと開き「シン君!」ガバッと起きた。

「寝てなかったのか!?」あまりの早さに、ビックリする。

「うたた寝かな、熟睡できなかったで、額に誰かの指の感覚があったから。」

「そっかー、起こしたな。」

ちょっとだけ、間が空く。

「今日は、突然泣いちゃって、ごめん。」ペコッと頭を下げた。

「で、何で泣いたんだ。」

「うーーーん、ミュシャ?」

「そうだな、あのポスター見て、泣き始めた。」

「前にシン君に言った事あったよね。恋したことあるって。私が好きだった人と偶然会った美術館の展示だったんだ。

お互い、ミュシャが好きで、展示があると一緒に見に行ったり。

語り合ったり、私の想いは段々大きくなっていたけど。

彼が、自分の実家に帰るって、簡単に帰って行っちゃった。」

シーーンと静まる部屋。

「帰る前に、自分の想いを告げたんだけど、ありがとうって言葉だけで、笑って行っちゃった。」

「・・・・。」

「凄く好きだったみたいで、1ヶ月も泣きっぱなし。それからミュシャ見ないようにしていたんだけど。

今日は、不意に見てしまってブワッと涙腺が壊れちゃった。まだ引きずってるんだね。」

膝の上に置いていた手をギュッと力が入る。

「・・・まだ好きなのか?」


「・・・・・・うん。ごめんね、シン君と婚姻したのに、でもシン君もミン・ヒョリンさんの事好きだし。私はその人のことまだ、好きだけど振られてるから。」

「チェギョン。」できるだけ優しく言う。

お団子頭をした幼いオンナは、スーツケース1つだけ持って、オレのとこに嫁いできた。

自分の実家を守る為。

本当は好きな奴がいるのに。

「オレ、お前のことちょっと嫌っ、かなり子供扱いしていた。済まなかった。」彼女に向けて、ちゃんと頭を下げる。

「シン君。」

「ヒョリンの事は、もう終わったんだ。プロポーズを断られた時に、もう二人の関係は終わった。」

「でも、シン君まだ好きなのに。」

「嫌、もう終わった恋は追いかけない。」

チェギョンの顔がハッとなる。

「チェギョンは、ずーっと追いかけ続けるのか?」彼女の目をジーっと見る。

「追いかけたくなくてもつい思い出してしまって、心臓がギューーーっと痛くなる。

早く諦めちゃえば良いのに。」

「チェギョン、二人で終わった恋追いかけるの止めないか?」彼女のまだ赤みの残る頬を親指でなぞる。

「二人で?」

「そうだ。一人なら悩み抱えてしまうけど、二人なら止めれる。」

「ふふふっ、シンが言うとなんか本当に出来そう。」ニッコリと笑う。

ヤバイ、目が離せなくなるくらい可愛い。

「そうだね、何時までも引きずっちゃいけないね。」

オレの二つの手を自分の頬に当て「シン君優しいね。ありがとう。」つぶやく言葉。

優しくない。

オレは、ただお前に振り向いてもらいたいだけなんだ。







あの突然の涙の日から、2ヶ月が過ぎた。

季節も秋になり、オレ達の関係も大分夫婦らしくなっていた。

学校に着き、車から降りて二人手を繋ぎ歩いていると、悪友たちに挨拶される。

「朝から、仲良くていいねー。」ギョンがからかう。

「人の多いとこで、玄関まで連れてやっているだけだ。」からかわれても、手は離さない。

玄関に着き、チェギョンの下駄箱から靴を出してやる。

「ありがとう。シン君、じゃあ放課後又ねーー。」チェギョンは廊下で待っているメガネ女の所に走っていく。

一人取り残されたオレに、インが声をかける

「よっ!今日も切ない表情してるねーー。どんだけ好きなんだ?」

「そうそう、自分の妻に片思いだなんて皇太子がだぜ?」ギョンのわき腹にドスッとグーッのこぶしを入れた。

「うるさい。」

あの日から、2ヶ月も経っているのに二人の関係は変わらず。

むしろ兄妹ぽっくなってないか?

オレ達は、夫婦なのに!

下駄箱から、靴を取り出し、履き替えながら「このままじゃダメだ!」

「シンく~~ん、どうしたんですか?独り言がデカイですよ。」からかう二人。

キッと二人の事を睨みつけながら、廊下に足を着いたら、チェギョンが立ち止まっていた。

近寄り「どうした?」チェギョンの目線を追う。

うん?オトコ?スーツを着たオトコ。

隣にいたメガネ女も「うそ!何でここにいるの?」驚く顔。

スーツオトコが、こっちに近づいてくる。

「チェギョン、久しぶりだね。」爽やかそうな笑顔。

「・・・オッパ・・・・。」

えっ?オッパって。

チェギョンの顔を見下ろすと、涙が落ち始めていた。










皆様、こんばんは。

何時も、皆様の訪問有難うございます。

今日は今年最後のゴボウ掘りです。

5時半に起きないといけないので、もう寝ます。

では、おやすみなさい。