「よっ!なんだその格好。カッコイイじゃないかーー。イ・シン皇太子殿下」ニヤニヤ笑うコン・ケビンが立っていた。

コン・ケビン!

何でこんなとこにいるんだ!?

お前、チェギョンとロンドンにいるんじゃーっ。

コン・ケビンはニヤニヤしながら、オレに近づく。

彼の手はオレの体に巻いてあった、紐を解いた。

お前、オレを助けに?

「まさか。」ニヤッと笑う。

そして、口に巻いていたのも解く。

「チェギョンは!?お前、チェギョンの事どうしたんだ!?」

「オイオイ、第一声はチェギョンの事かよ。」

「チェギョンは?お前に託したじゃないか!?幸せにしてくれって」コン・ケビンの手前まで近づいた。

アイツの目が鋭くなる。

「おや?ちょっとは学習したみたいだな。オレに近づくとやられるって。」ニッコリと笑う。

言われた言葉が当たっているから、グッと堪える。

「チェギョンはいる。幸せになる為に、此処に帰ってきた。」

「ここに?韓国にか?」

コン・ケビンはスーツの上着を脱ぎ捨て、体を解し始めた。

なんかヤバイ予感がする。

思った時には、アイツの跳び後ろ廻し蹴りが、オレの首元に1発で当たった。

急な出来事で、瞬時にオレはぶっ飛んだ。

「悪い、一発殴らせろ!今までチェギョンに」コン・ケビンの顔の横に、オレの右足が止まる。

「油断するなよ。」

オレの右足を見たコン・ケビン「お前、さっきぶっ倒れなかったな。」

オレはコイツにぶっ飛ばされたが、何とか持ち堪え、瞬時に右足を、アイツの顔の傍で止めた。

「何処で習った、護衛か?それとも師範に教えてもらったのか?」アイツの目が細くなる。

「・・通信教育だ。」

「又、マニアックなとこで習ったな。」笑う。

オレは脚を降ろし、コン・ケビンと向き合う。

「お前にやられっぱなしは、嫌だからな」

「1ヶ月もしない内にこんなに動けるなんて、何処の通信教育だ。」

「弱いオレなんかに、チェギョンを守る事なんか出来ない、一生懸命体を作って鍛えた。」お互い睨みあう。

静かな睨み合いが、永遠に続くと思われたが。

「ふっ、どうやら俺はランスロットにはなれなかった。」笑う。

「・・・。」

「愛しいギネヴィア姫は、アーサー王しか愛していないそうだ。」

・・・・?

「韓国の皇太子は、鈍感なのか?俺が内官に受かった暁には、皇太子改造計画を進めないと」真剣に悩む。

「コン・ケビン、お前達は好き合っているんじゃ。」

「まさか?俺はとーさんの事を裏切る事は、絶対にしない。」脇に従えてこの事をずーッと見守っていたコン内官。

「しかし、ケビンオッパからあの時オッパに変わっていた。」口をあんぐりと。

「あぁ、自分に兄がいなかったから兄貴だって、あの時チェギョンが女にして欲しいって言うから、試しで触ろうとしただけで、急に「やっぱ、シン君じゃないと嫌だー!」って泣き叫ぶんだ。

好きな女に言われたんだ。諦めろって事だろう。」

小さい携帯のベルが鳴る。

コン内官がヒソヒソと話をしていた。

「殿下、支度が整いました。ご案内致します。」頭を下げた。

コン内官に勧められて歩き出したが、頭の中がゴチャゴチャなオレは、コン・ケビンを見る。

「チェリー卒業良かったな。あんなに付けやがって」と睨まれた。

「あの時だけは、オレのモノだって印が欲しかった。」苦笑いをする。

「バカ夫婦だ。」コン・ケビンは上着を着て、姿を整え

「イ・シン皇太子殿下。シン・チェギョン皇太子妃をロンドンから無事にお連れ致しました。」オレを真剣な顔で見る。

「コン・ケビン有難う。来年待ってる。試験落ちるなよ。」笑う。

「私が?落ちる訳ございません」ニヤッと笑う。

「コン内官!案内を頼みます。」

頭を軽く下げたコン内官は、オレを目的地まで導いて行った。








コン内官を先頭にオレは前進する。

この前進は、チェギョンの元へ向かっているのだろうか?

それとも、廃妃に向かっているのか?

「コン内官、何処へ?」

「行けば判ります。」優しい彼からの言葉。

彼は何時もオレのために、最善の努力を惜しまない。

全く何時もこの人に甘えてばかりいたオレ。

来年は20才になる。

毎日少しずつでもいいから、この人の手を煩わせないように大人になりたい。

歩いていた先に、韓服を着た女官、チェ尚官達が廊下に座っていた。

もしや。

「殿下、今夜はもう遅いので、お休み下さい。」深々と頭を下げた。

「コン内官。」

「殿下!殿下には妃宮様が。」

「判ってます。オレにはチェギョンが必要なんです。宮全体を味方に付けているチェギョンに叶うわけがない。

貴方だけは、オレの味方だと思ってましたが。」笑う。

「殿下、済みませんでした。」頭はもっと深く下がる。

「冗談ですよ。コン内官頭を上げてください。そろそろ中に入ります。」扉の取っ手に手を掛けた。

「殿下明日のお昼頃には伺います。」

「コン内官。」

「なんでしょう?」

「此処は、何日居てもいいのか?」ポソッと聞いた。

「殿下の気の済むまで宜しいと。」笑う。

「じゃあ、思う存分に。」

扉を引き、足を一歩差し出したが、体を戻し韓服を着て座り込んでいるチェ尚官に「チェ尚官、書き留める書が足りない。」小さい声はチェ尚官だけに聞こえるように。

「承知致しました。今直ぐにお持ちします。」女官に伝達した。

オレは姿勢を整え、この扉の向こう側に吸い込まれて行く。

「宮」の古い建築物に、似合わない音が静かに聞こえる。

ブーーーン。エアコンの音か。

奥の部屋がうっすらと明るい。オレはその灯りを目指して歩く。

そして、明るい部屋の中に、チェギョンがポツンと座っていた。

彼女の姿を見て、オレの体がビクンと跳ねた。

「あっ、やり逃げ男。」トローーンとした顔で、オレに言う。

グッ!胸が痛い。

「オイ!確かにそうだけど、もうちょっと言葉選べ。」言い返したら。

「ゴメン!もうダメーーーー!」チェギョンは布団の上に横になった。

「チェギョン大丈夫か!?」急に横になった彼女の傍に寄り、彼女の体を少し浮かす。

「大丈夫じゃない~~~!、昨日のと、オネーサン達に全身揉まれて、体が言う事聞かないの。」顔をちょっと浮かせて見る。

頬が真っ赤になり、トローーンとしている彼女。

横になり、オレを潤んだ目で見て貰っても、オレの体があつくなるだけだ。

色とりどりな韓服に包まれて、横になっているチェギョンに、オレの胸の鼓動が早くなる。

「チェギョン、辛いとこ悪い質問いいかな?」

「いいよ。」赤い唇がゆっくりと動く

「なんで韓国に帰ってきた?」

「幸せになりに来た。」

「アイツと幸せになれって。書いたじゃないか。」

「私の幸せは、シン君と一緒に!なんだよ。」

「・・・・・。」

「・・・オーーーイ!聞こえたの?」

「聞こえた」

「なぜ黙るの?」オレは彼女のスベスベな頬をゆっくりとなぞり

「ロンドンの時、毎日のように好きだって伝えていたのに、お前は何時も嫌いだって。

毎日、毎日お前が可愛くてしょうがなかった。

何度も抱きしめたくなって、大変だった。

でも、雷のお陰でオレは。ケビンの変わりでも良い。

とにかく震えているお前を宥めたかった。」オレの指は、ゆっくりと彼女の唇に触れる。

「シン君、昨日全然キスしてくれなかった。」

「ここはお前の好きな男だけが、許されるとこと思ってた。」

「じゃあ、シン君。昨日も分も、キスいっぱい頂戴」ニッコリと笑う。

又コイツは、グッとくる事ばかり、言う。

「お前オレの事」

「好き! 嫌、違うな、大好きイや、たんない。愛してる!

子供の頃の憧れの恋は終わって。

本当の恋を知った私は、第2シーズンに突入です

この第2シーズンは永遠に続くんだよ。覚悟しておいて」

オレは頬の赤い彼女をジーーーッと見ている。

「こんなに見て貰えたの初めただ。」ポワーンとした顔で言う。

「あのアパートで、お前が昼寝していた時、ずーッと見ていた。

オレの妻なのに、手に入らないお前。

悔しくて、悔しくて、でも自業自得。

お前の事が、こんなに欲しくて堪らなくなるなんて、あの頃のオレは全く思っていなかった。」

「そう、そう、冷たい夫だったね。私の名前がシン・チェギョンだって判ってた?」

「バカにするな!妻の名前位判る」オレは彼女と向き合うように、横になった。

そして、オレは左側のチェギョンを見る。

彼女は、右側のオレを見る。

自然と近づくお互いの唇

チュッ。

「エヘヘッ、初めてキスして貰っちゃった。小さい時からの夢だったんだー。

王子様からのキス。王子様のキスでお姫様は、ずーっと幸せに暮らせるって。」

「泣くなよ。」私の瞼にキスをする。

「泣くに決まってるでしょ。」彼女の顔に何度も、口付ける。

「くすぐったい。でも、気持ちイイ。こんな近くでシン君の香・いい香り。」

彼女の目がゆっくりと降りていく。

「・・チェギョン。」

彼女特有の可愛い唇に口を合わせたまま、オレは彼女を自分の腕の中に閉じ込める。

柔らかくて、温かい存在。

ずっとオレの傍にいたのに、判らなかったバカなオレ。

遠回りしたけど、ヤバイなオレも眠くなってきた。

結局、余り寝てない。

チェギョンを抱きしめ、この良い香り、柔らかい肌を感じたままオレの意識は遠のいて行った。






「チェ尚官。」

お辞儀をしたチェ尚官。

深夜なのに、ちゃんとスーツを着て此処まで来たコン内官。

「アレから・2時間ほど経ちましたが。全く音が聞こえません。」困った顔で告げる。

「判りました。じゃあ、私が。何かあったら、私が責任を取ります。」扉の鍵を開けた。

コン内官はゆっくりと進み、奥の部屋の前で一旦止まる。

「殿下。」小さい声で呼んでみるが、部屋からは音がしない。

「殿下。」もう少し大きい声で言ってみたが、又答えがない。

コン内官は、勇気を出して中を覗いたら。

コン内官特有の優しい笑顔が広がる。

コン内官はお辞儀をして、この部屋を出た。

「チェ尚官、お二方はぐっすりとお休みしてます。今日のところは、解散しなさい。」

「私共には全く音が。」

「お二方共そのままの格好で、眠っておられました。ようやく手に入れて、安心したのでしょう。我々も引き上げましょ。」

チェ尚官の手元にある、2冊の書。

「明日になれば、若い殿下ですから、2冊なんて足りないと思いますよ。」コン内官は笑った。

物事を動じないチェ尚官の頬が、ちょっとばかり赤くなった。

コン内官は、此処の場所を離れ、東宮殿に向かう。

歩きながら、皇太子夫妻の事を思う。

ようやく、2人共心が通いなられた。

良かった。本当に良かった。

妃宮様は、殿下の事をずーッと思っていました。




先代の陛下との約束の婚約者。

何とかあの気難しいシンと婚姻させて欲しい。

小さいながらも、シン・チェギョン嬢は良い目を持っている。

あの子が必ずシンを幸せにしてくれるだろう。頼むぞ、コン内官。



陛下、ようやくお約束を叶えました。

殿下は若気の至りで、違う女性に目がいってましたが、何とか事にならぬように阻止続けてようやくお2人が婚姻されても、妃宮様の気持ちが殿下に届かず辛い日々が続いていました。妃宮様がロンドンに行かれてから、殿下は。

辛そうでした。いなくなってから、判られたんでしょう。

殿下は日毎に生気がなくなっていかれ、見ている我々も辛かったです。

そんな殿下を見ていたので、先程の寝顔は幸せそうでした。

東宮殿に着き、皆に指示をして自分も今日の仕事を終えようとしたら。

ベンチにケビンが座っていた。

「こんな夜にどうした?」

「とうさん。」ワイシャツにスラックス姿のケビン。

「未だ家に帰らないのか?かーさんが待ってるだろう。」

「・・・・。」

「殿下達はぐっすりと眠ってらっしゃる。」

「は?あいつ等こんな時に寝るなんて。」呆れる。

「昨日から眠られてなかったのだ、許してやれ。」笑う。

ケビンは、ポケットからタバコを取り出した。

「オイ、タバコ止めたんじゃなかったのか?」

「止めたんだけど、今日は特別。」寂しそうに笑う。

「ケビン、諦めるのは辛いな。」

「・・・。」タバコに火をつけ、天を仰ぐ。

「ずっとロンドンで傍にいたのに、妃宮様は俺をオトコとして見てくれなかった。

アイツの中には、殿下しかいなかった。

何時も泣きそうな顔していたのに、一緒に住むと決まってからのアイツの顔。

全く。今まで見た事のない笑顔だった。

悔しいな。

アイツを支えてあげれるのは、俺だけだと思ってたのに。」

天を見上げていたケビンから、一筋の涙が零れる。

コン内官は、ケビンの肩を抱きしめる。

「私は、お前とは血が繋がっていないけど、一生お前の父親だ。お前が泣きたい時には、慰める。笑いたい時には、一緒に笑い合う。

失恋の時には泣いてもいいんだぞ。」ケビンの肩をバンバンと叩く。

自分より小さくなった父親の胸の中に押し込まれ、ケビンは涙を溢れ出させた。

「父さん、今日だけは泣かせてくれ。」

主のいない東宮殿に、ケビンの嗚咽が微かに響いた。







皆様、こんばんは。

何時も訪問有難うございます。

今日はゴボウ掘りなので、夜の更新はありません。

土まみれになり、ヘロヘロになりながら頑張ってきます。

皆さん、青森のゴボウ買ってね。(笑)

今日のイラスト、ケビンもチェギョンも自分で言うのもなんですが、好きですねー。

では、又ー。