アパートのバスルームに、突然入って来たシン君

突然の出来事で、お互い目を見開いたまま固まる。

ほんの何十秒だったかもしれないが、私にとっては何十分にも感じた。

えーっ。えーーっと。

とにかく、大変事になっていると頭が確認した途端。

「ウギャーーーーーッ!」言う声がでた。

上は服で隠したけど、後ろのケツは丸見えーー!

「シン君!出て行って!」真っ赤になりながらも、カレに言い放つ。

カレも私の大きい声で正気に戻ったみたいで、顔に表情が見えた。

その表情は、怖かった。

なんで?こんな状況になった時になる顔じゃないよ。

そしてゆっくりとカレは私のほうに向かって来た。

「ちょっ!ちょっと!なんかやばい事考えているんの?ちょっとシン君てば!」私の体は後ろに下がる。

それでもカレの足の動きは止まらない。

とうとう私は壁にぶつかった。もう行き場がない。

どうする?間近に迫るカレ。オッパーー!

こんな時どうしたらいいの?とカレの怖い顔を見ていられなくなり、顔をそむけた。

「シン・チェギョン!お前!」

やばいって!襲われる~~~!

「お前、こんなに痩せていたか?」

「ふぇ?」意外な言葉に、擬音が出てしまった。

「久し振りに会って、痩せたなーと思っていたけど、お前、韓国の時太っていたじゃないか?」

「太っていたーー?訂正してよ!!ちょっとポッちゃりしていただけよ!」シン君に詰め寄った。

「イヤ、あの位がちょうどいい。」思い出しているようだ。

「思い出さないでよ!あの頃は思春期だったから。」

「この体はおかしいだろう?お前ちゃんと食べているのか?」心配そうに見る。

「食べてるわよ!何時もと変わらない量よ!ホラッ、大人の体になってきたから痩せてきたんだよ。」しどろもどろな言い訳。

「オレのせいだな。」ポツリとカレが呟く。

「オレの事で、お前の体おかしくなったんだ。」

「そんな事ない」

突然私を抱きしめたカレ。

カレの細い体に抱きしめられて、私は息も出来なかった。

シン君痛い。そんなにギュッとしないでよ。

ちょっとの隙間から、カレの苦しそうな顔を見てしまった。

そんな顔しないでよ。

私が痩せたのは、大人になってきたからなのに。

もう、そんな。

目に涙が溜まり始めてきた。

涙を零さないように、必死に上を向く。泣いたら、カレを困らせてしまう。

私が痩せたのは自分の所為だって。

「お前がこうなっているのを知らないで、お前から逃げていた。」

「逃げてしまったのは私だよ。」

「シン・チェギョン。」カレは私の髪の毛に自分の頬を寄せる。

「オレが全部悪いんだ。」

「シン君そんな事ないよ」急に鼻がむずむずし始めて、思いっきりくしゃみをしてしまった

「シン・チェギョン!悪い!お前裸だったな」カレは私から急に離れてバスルームを出た。

突然、カレがいなくなりからだが寒い。

さっきまでの温かい体、心がいなくなり寂しい。

扉の向こうからカレの声が聞こえる。

「早くシャワー浴びろ」

「私が上がったらシン君も入ってね」


その後、シャワーを浴びながら私は。

こんな痩せてしまった体に、興味なんてないよね。

私の事すきだって言ってたけど。

ウソウソ、すきだったら、何かするはずだもの!

オッパもあの時・・・。

私は気分を変えようと、シャワーを熱くした。









自分の部屋で大学の宿題をやっていたら、ノックの音が。

「はい、どうぞ。」

ゆっくりと扉が開き、シャワーを浴びてきたカレが立っていた。

「チェギョン、さっきは悪かったな。」申し訳無さそうに言ってきた。

私はジロリと見て「ワザとじゃないいんでしょッ?」聞いた。

「ワザとじゃない!知らないで入ってしまった。」慌てる。

そうだよね、「宮」の中では、バスルームなんて、一人に1つだったから、誰かが入っているのかどうか、気にせずに入るはず。

「仕方ない今日は許す、その代わりあの事は忘れて」指を立てた。

「忘れたくない。」

「シン君!忘れてください」

「じゃっ忘れるように、努力する。」小さい声。

私はその姿に、心臓がギュッと痛くなる。

ちょっとーー!こんなとこで、ヒヨコにならないでよーー!私の頬が赤くなる。


「チェギョン、夜飯の材料買いに行きたいんだけど。」

「お買い物ーーーー。」

私の大好きな言葉が出て、ヒヨコシン君の事をあっという間に忘れて「行こうーーーー!」叫んだ。










私達は韓国の食材が売っている店に辿り着いた。

この店を見る度に、オッパが呆れた声を出す。

「お前はこの店に来ると、どんなに具合が悪そうでも、目がキラキラ。嫌、ギラギラ輝かせるもんな。」呆れて言っていた。

いいじゃない!この店は私にとって素晴らしいとこなんだから~~

中に入り買い物カゴを持ち、走る勢いでお菓子コーナーに行こうととしたら。

「オイ!オレの事忘れていないか?」低い声で呼び止められた。

「あっ!?」ゆっくりと体を後ろに向けると。

機嫌の悪い顔で、私を見下ろすカレがドンッと立っていた。

「アハハッ、忘れてた。」

「やっぱりなっ。」呆れた顔。

「エヘヘッ。どうもここに来ると興奮するみたいで。」

呆れ顔のカレは歩き出した。

「ま~ま、案内するから」買い物カゴを振り回して、歩き出そうとしたら。

体のバランスがおかしくなった。

あれ?カゴ分の重さがなくなった。

慌ててからだを真っ直ぐにすると、目の前に買い物カゴを持ったカレが歩いていた。

「えっ!?シン君。それなんだか判るの?」聞いてみた。

「お前ーー!オレをバカにしたな!買い物カゴだろう?中学校で習ったから、知ってる」ムスッとする。

へ?買い物カゴを授業でって。

さすが皇太子!そういうとこで習うのね。

「早く案内しろっ」指を刺す。

「判ったって」私は慌てて近寄った。

カレはジーンズのポケットから、スマホを取った。そして操作してお目当てのとこが見つかったようだ。

「何?こんなとこで見る事なの?」

「アアッ、昨日チェ尚官から送ってもらったメール。」

「えっ?おねーさん?」

「お前の好きな食べもんとその材料。色んなの送ってもらった。」

カレはサラッとその事を私に告げ、普通に歩いていく。

私の足が止まってしまった。

私の好きな食べ物?なんで?

まッ、2人しかいないから、どっちかの好物だけど。

何でおねーさんに聞くの?

カレは振り向き「何驚いてるんだ?早くこれどこに置いてるのか?教えろよ」言う。

「うん、ねえ?何で?私の好物聞いたりするの?」

「さっき決めた事がある。」カレは私を見る。

「この1ヶ月でお前の体太らせる!ガツガツ食わせて、前のようにポチャリさせる」

「は?」今私の顔は変な顔をしていると思う。

「いいか?家の事はオレが全てやるから、お前はゴロゴロしてろ!」ニヤッとする。

「シン君!何冗談言ってるの?」

「本気だ!」見た事もない材料を持ち上げ、不思議な顔をしながら言う。

「私このままのほうがいいよ!」

「オレの好みは、前のお前の体。」笑って違う棚を見に行く。

ギューーーッ胸が痛い。

カレがからかっているのは、判る。だから簡単にそんな言葉いわないでよ。

「はいはい。」気持ちを立て直して、カレの言葉を忘れよっと。

カレの顔を見て「シン君!私はこの体でいいからね」と傍にあった麺を持って、中に入れた。


「あらっ?チェギョンちゃん!又着たわね?」この店の店長さんが笑いながら挨拶をする。

「エヘヘッ、だってここ私にとってパラダイスだもの」オバサンと話す。

「チェギョン!これ値段書いてないけど。」カレは不安そうに缶を持ち上げる。

振り向いてカレを見ると、あれ?メガネしてた?

メガネを掛けたカレが、私に缶を渡す。

「オバサン、これの値段って幾ら?」

「あれ?チェギョンちゃん、何時ものイケメン彼氏は?」

「彼氏って、オッパの事?」笑う。

「2人で良く買い物来るじゃない?」当たり前のように言う。

「あらっ、チェギョンちゃん、このイケメンとも関係あるの?」値札を貼りながら笑う。

「チェギョンの夫です」オバサンの持っていた缶を奪い取り、カゴに入れた。

「えーーー!?」驚くおばさん。

「ちょっとシン君!」

「未だ夫なんだから、いいだろう!」先に行った。

イヤーーッ、此処に一人残された私は「色々とあるのよ。」オバサンに苦笑いを残し、シン君について行った。






皆様、こんばんは。

何時も訪問して下さり、ありがとうございます。

切ない恋、こんな話だったんだーと感心しております。(笑)

では、もう寝ます。