オレはコン秘書に用意してもらった車を、北漢山(プッカンサン)に向けて走り出した。

5年振りのソウルの道路

チェギョンに会いに行く為に、車と車の隙間をかいくぐって行く。

たださえ、この国の運転手達は、皆荒い。

ちょっとでも開いていると、グイグイと入ってくる。オレはその波を上手く乗り切り、ひたすら走る。

そして、車は北漢山(プッカンサン)の麓に着いた。

オレは駐車場に車を置き、入り口で彼女を探す。

くそーー、どこにもいない。

オレは彼女を探す為、スーツ姿のまま段々登山道を突き進んでいった。

初冬の登山なので、皆しっかりとした格好をしていた。

オレはスーツ姿のまま、小走りで若い女の人の姿を覗く

いない、どこにもいない。

体力が段々落ちてきた。ゼイゼイ、一生懸命探しても彼女はいない。

とうとう、ヒザに手を置き大きく息を吐き出す。

苦しい。

苦しい、肺が苦しいのか、自分の誤った選択に対して心が苦しいのか・、もう判らなくなっていた。

とにかく、チェギョンを探さないと

子供みたく、行くなって言っても良かった。

そんな良い人と言っても、何時どうなるか判らないだぞ。

昨日止めれなかった、自分が悔しい。

ネクタイを外し、スーツの上を脱いだ

早歩きだったので、随分と息が上がり、汗が流れる。

登山道にスーツ姿で早歩きをするヤツなんて、見たことのないと自分で思う。

それに最近、運動をしていない。チェギョンとの運動は、完璧にしているが。

日頃の食事を段々元に戻そうとしているので、いまいち力が出ない。

それでも、オレはチェギョンに向かって歩き出さないと

イ・ユンホ社長に、チェギョンを取られないように

もう歩けないと叫んでいた足達を、気力で歩かせる。

チェギョン,チェギョン。

すると目の前に、紫色のジャンバーを着た彼女が見えた。

隣にはイ・ユンホ社長が見える。

オレは安堵の為、体が崩れ落ちそうだったが、何とか足に力を入れた。

「・・・チェギョン!   チェギョン・・・!」段々大きくなる声

周りの皆まで、振り向いていく。

振り絞った最後の言葉に、彼女が振り向く

「チェギョン!」無理して早歩きをして来た為、体はもう限界だった。

彼女の元に走り出そうと思っても、足が空回りして上手く歩けない。

一歩一歩確実に彼女に近づく。

オレがこんなとこに、スーツのまま現れゼイゼイしているのを見た彼女は、あんぐりと口を開けっぱなしだった。

「チェギョン!帰ろう。オレの元に帰って来い!」言葉の割りに、説得力のないこの格好。


「シン君!」

「チェギョン。」オレはようやく彼女の傍に着き、彼女を強く抱きしめた。

「オレはまだまだ大人になれないようだ、イ・ユンホ社長となんか行くな!」彼女の香りをいっぱいに吸いながら言う。

どんな酸素ボンベよりも、役に立つ。

「イ・シン社長、なんでチェギョンと?」

「すみません、チェギョンとは高校の終りに結婚していたんです。

でも行き違いで離婚してしまい、5年もあったことがなかったんです。

でも、貴方が私とチェギョンを引き合わせてくれました。

「上手いとこがあるんですよ」と言う言葉に誘そわれて、私はチェギョンと会うことが出来、ちゃんと気持ちを伝えたんです。

好きという言葉を、彼女に伝えるのに5年経ってしまいましたが。」彼女を又抱きしめる。

愛しくて、愛しくて。

たった何時間しか離れていないのに、苦しかった。

「チェギョン、段取りをちゃんとしようと思ったけど、もうダメだ!

もう一度、オレと結婚して欲しい。」彼女の顔をちゃんと見る。

「頂上に登ったら、本当は私からシン君に言おうと思っていたのに、先に言われちゃった。」

少しずつ涙が出てきた。

「チェギョン。」

「私も、もう限界!結婚してください!」抱きついた。

すると、周りにいたオバサン、オジサン、色んな人達がオレ達を見守っていたらしく。

皆、拍手をしてくれた。

良かったねーー!

「オにーさん、スーツで追いかけてくるなんて、カッコいいじゃない」オバさんに背中を叩かれた。

「チェギョン。」

「アジョシ。ごめんね。私シン君しか欲しくないの。」

「チェギョンの好きな人は、イ・シン社長さんだったんですね。

私は勝ち目のない戦いは絶対にしない主義なんです。

じゃあ、これから一人で頂上まで登ってきます。

カレは暫くあるけないから、チェギョンが付き添ってあげなさい。」頭を撫でる。

オレはチッと言葉を言う

「最後位いいですよね。じゃあ、又仕事場で」カレは登山道を上に向かって歩き始めた。

「チェギョン、今度からはオレと一緒に登山するんだぞ」睨まれた。

オレは傍にあった木の切り株に座った。

まだ息が上がっている。額に頬に小さい汗が流れる。

彼女がリュックから、タオルを出す。

そしてオレの汗を拭いてくれた。

又、流れる汗を拭き、彼女の頬が赤くなった。

「チェギョン?」

だって、あの時のシン君、思い出しちゃって、汗ばんだシン君そして汗のニオイ、

そして、シン君の荒い息遣い。ギューーーーッとなる」心臓を指差す。

オレは親指で彼女の頬を撫でる

「オレの事、欲しい?」

「イ・シンの24年間の人生、これからの未来・・全て欲しい。

その代わり私がシン君の事、一生幸せにしてあげる」見上げる目は真剣だった。

「ゥ~~ン、聞いた事とは、違う答えがきたけど。今の言葉、すっごーく胸に響いた。」

自然と重なる唇。

北漢山(プッカンサン)の登山道の脇で、キスを交わす。

皆の目が気になるけど、お互いの唇が誘う。

キスしよう。

キスして欲しい。

言葉はでないけど、何度も重なる

これほど、求め合う人は2度と出てこな。

5年離れていても、ずーーっと相手の事を想っていた。

「チェギョン、仕事場に戻らないと。」彼女のカワイイ唇から、ようやく離れた。

「うん。」彼女の名残惜しそうな顔をオレは抱きしめ

「待ててくれるか?」

「いいの?」急に、にこやかになる。

「うん、出来るだけ一緒にいたいな。」

「本当?そんなにいたら飽きちゃうよ。」意地悪く笑う。

「飽きない、5年待ってたんだぞ!!お前がオレの前に現れるのを・・・。

毎日の肌が触れ合うのも、時間が足りな。

一日24時間、全部お前の事抱いていたい。」

「嬉しいけど。それは却下!」

「何でだ?」

「足りない!25時間抱き合っていたい!」ギュッと力を入れる。

「アハハハッーーー、やっぱお前って、最高ーー!」







仕事場に戻ると、まだあいつらが残っていた。

「おっ!お帰りか?」

「連れて帰って来たんだな。」

「チェギョン、初めましてーー、ギョンって言うんだ。宜しくな!」ニコニコ顔

「お前ら、帰らなかったのか?」チェギョンの手をギュッと握り、中に進む。

「ICEMANの最後を看取らないとな。」笑う。

「ICEMAN・?」不思議がる

「そっ、シンのアメリカでのあだ名。」

「仕事での冷徹さから、その名が付いたみたいだ。」

「シン君!たださえ、目つきが悪いんだから、皆から勘違いされてたんだねーー。」

「オイ!お前のチェギョンは天然か?」小さい声で聞かれた。

「あーっ、そうだ。かわいいだろう?」だらしなくなる。

3人は急に立ち上がり、ドアを目指す。

「オイ、もう帰るのか?」

「帰るよ、ICEMANがイ・シンになった事だし、今度又遊びに行くよ。お前、ここに泊まってるのか?」

「イや、チェギョンの部屋に泊まってる。」チェギョンを引き寄せる

「さっさと結婚しろ!」

「でも、そろそろあの家に戻る。」

「えっ?」

「新しい家とも考えたけど、やっぱりオレ達あそこから始まったから。今度遊びに来る時は、あの家に来てくれ」

「判った。」3人は扉を開けた。

「オイ!悪い、急な結婚式の招待状が来るかもしれないから、どんな用事があっても、そっちはキャンセルしろよ」ニヤリと笑う。

「了解!何が会っても行くからな」3人は出て行った。

「シン君、あの家に戻るの?」

「戻る、その前にアメリカに戻って、あっちの仕事の体系を変えてくる。

全て、韓国で動くように改正してくるから、少しの間離れる。」

「アメリカに行っちゃうの?」

「ちょっとだけな。」

「直ぐに戻ってくるんだよね。」

「うん、戻るから。」

「何時決まったの?」

「昨日。」

「えっ!言ってくれればちゃんと。」

「チェギョンがしたいって言っている事を、止める事は出来ない。チェギョンとは24時間一緒にいたけど、出来るだけ友達との付き合いを優先させたい。」

「シン君・、私は25時間シン君といたいのよ。」

「うん、昨日聞いていたら、行けって言わなかったかもな。」

「アメリカに何時行くの?」

「明日。」チェギョンを抱きしめる。

「急だよ!」

「帰ってきたら、ずーッと韓国にいるから。1週間の我慢だ」彼女の頬にキスをする。

「絶えられない。」

「今まで耐えてきたじゃないか。」

「色んなシン君を覚えちゃって、いないと嫌だ!」彼女の目からボロボロと涙が出始めた。

「直ぐ帰ってくるから、帰ってきたらクリスマス・イブに結婚式しよう。

泣いている暇はないぞ、今日はいろんな事しないと。あの家に戻って、家は掃除済みだから。

家に戻ったら、やって、やってやりまくらないとな」笑った。

「シン君!」


おやすみなさい