デザイナーへの留学が待っている賞に、間に合うように出来たドレス。

今回のテーマは「ウェディングドレス」だった。

デザインを考えている時は、ドレスなんて考えた事もない。

私は普段着のデザインが描きたいの。と言っていたが、この賞に入るとパリへの留学が決まる。

だ然やる気が出て何度も描き直した。

提出した後に、シン君と出会い、色んな事がこの短い間に、駆け抜けていた。

友達だったシン君は、彼氏、いや許婚になった。

不思議。

目の前にあるドレス。

デザイン画から、自分が着て審査を受けるようにと、自分のサイズに合わせて作った。

本当は、色んなとこに手を加えたかったけど、時間がなかった。

シンプル過ぎるドレス。

私は、横に置いていた薄いピンクの幅の広いリボンを腰に巻いた。

これで少しは明るくなった。

このドレスは基本膝上の短さだが、後ろに流れるように広がる生地は床の上に溜まる。

若い花嫁に着て貰いたい、そんな感じに仕上げた。

このデザイン画で、賞が取れれば留学が待っている。

私は、シン君の許婚なのに。

良い日を決めてカレとの婚姻が待っているのに、留学を夢見てしまう。

だって、ずーっとデザイナーになりたくて、この高校に入り頑張ってきたの

デザインだけではなく、裁縫も一から習った。

大変な宿題・課題・そしてバイト。

私の高校生活は凄い速さで、過ぎていった。

ドレスを見て、私はこの高校生活を思い浮かべる。

そして、「よし!明日は頑張るぞーーー!」


ドレスを写メして保存しておく。後でシン君に送ろう。

この間ギョン君が言っていた「きっとなんかあるんだよ。」

うん、そうだよね。何か有るから、私の事避けてるんだ。

それが終わったら、私に会ってくれる?


シン君。








次の日、ガンヒョンと共に、審査の場所に行った。


大学の公会堂を借りての審査。色んな審査の人達が次々と集まる。

控え室は、戦場状態になっていた。

髪の毛をセットしたり、自分達で縫ったので、解れたりと、アクシデントの対応に追われていた。

「はい!終り。鏡見なさい。」私はゆっくりと目を開ける。

「ガンヒョーーン、凄いよ!私じゃないみたい。」目がキラキラする。

「ハイ、化粧も分厚くしてみました。」ニッと笑う。

「うわーー、アイラインもツケまつげも完璧だーー。イヤーーッ、口元もプルンッとしてる。」私は鏡に映った自分の顔を写メしておく。

「殿下に送るの?」小さい声で聞く。

「ううん、後で送る。カレが私に会ってくれるようになったら、見せるの!だから、いっぱい撮っておかないとね。」何回もシャッターを押す。

すると、ガンヒョンが首元に、真珠の首飾りを垂らした。

「えっ?これ貸すから。大事に使ってね。」

「ガンヒョン、これすっごく高そうなんだけど。」変な顔。

「アハハッ、貧乏人、許婚なんでしょう?もっと色んなのやるんだから。、慣れときなさい。」背中を叩いた。







午前はホールに皆集められて、審査員達が、いろんなドレスを見ていく。

アッ、あの人見た事ある。

オッ、あのデザイナーの服大好きなんだよねー。

色んな人達の審査を受け、疲れてきた時に、ドアが開いた。

黒服の人が3人入って来た後に。

へミョンオンニ。

ホールにいた皆が騒ぎ出す。

綺麗。マジで綺麗。

オンニって呼んでいた日が、懐かしく感じた。

久し振りに見ると、オンニとシン君ってやっぱ似てるね。

あっ、その見下ろす時の目、シン君そっくり。

シン君が真面目に本を読んでいる時の、流れる手つきが同じだ。

私はオンニの姿にシン君を重ねてしまった。

会いたいよーー。目に涙が溜まる

でも、今は泣いちゃダメだ!ガンヒョンが頑張ったメイクを崩したくない。

すると。

「目が真っ赤だわ、大丈夫?」私にハンカチを差し出すオンニがいた。

私はビックリして、慌てた

「はい!大丈夫です。」ホールに響き渡る大きい声。

「でも、涙落ちそうね。」オンニが近づき私に小さい声で言う。

「ようやく、チェギョンちゃんに会えた。嬉しいわ。」

「オンニ、皆に気が付かれますよ。」小さい声。

「アハハッ、チェギョンちゃん、今日はとっても綺麗よ。頑張って」溜まった涙を吸い取ってくれた。

オンニは普通に私から離れ、又違う人のを見に行った。

フーーーッ、ビックリした。

あんな綺麗な人が近づくんだもの。






午前の審査で、最終審査への5人が選ばれる。

私達は一旦控え室に戻り、発表の紙が張り出されるのを待った。

ガンヒョンと他愛のない話。

スマホを開き、シン君の画像を見たり、見せたりと、上手い具合に時間を潰した。

そして、紙が張り出された。

「あったーーー!」私の声が響く。

「チェギョン、良かったねーーー!」ガンヒョンが抱きつく。

「凄いよね、5人の中に入ったよ。これって、凄いよね」2人手を取り合って喜んでいると、いろんな声が聞こえてきた。

喜ぶ声。泣いている声。悔しがる声。

2人は顔を見合わせ、頷きあう。「ママに電話してくるね。」

「行ってらっしゃい~~。早く戻ってお出で。」





午後になり、もう一度ホールに5人が集められ最優秀賞が決められる。

一人だけへの留学の道。

色んな人達が、頑張ってやってきた。

誰がとっても、悔いはないだろうな。

だって皆、凄いドレスばかりで。

本当に自分で縫ったの?と言いたい位の素晴らしさだった。

私のは、幾ら器用でも、時間がなかった。

縫い目に適当さが出ている。

何かここにいるのが、場違いのように思える。

あんなに留学したかったのに。

チェジュンの為に、頑張って働いていたけど、自分でお金を貯めてパリに勉強をしようと考えていたのに。

この企画を進められた。

でも、私はこの後に、最初で最後の恋に堕ちる。

イ・シンに恋をしてしまった私は、留学を忘れるほど、カレしか考えられなくなった。

あーーあっ。

シン君に会いたいなーー。まだ会えないのかなー。


体はしっかりと審査の人達に向かっていたが、心はシン君に向かっていた。


審査結果がその場で、発表された。

私の隣の隣の人が選ばれた。

そうだよね。

ドレスが綺麗で、デザインも良かった。

私はぼーーッと最優秀賞を取った人を見ていた。

全力を出し切ったんだから。

5人の中に選ばれたんだから。これって、凄い事だよね。

ボーっとしていると、オンニと目が合った。

アッ、イジワルな目。

何か企んでいるの?イジワルそうな目つきはシン君に似ている。

もーーッ、オンニ!シン君に似過ぎーー!

賞が終わり、残りの4人の前にオンニがたった。

「折角ここまで、やってくれたのに、皆さんには何もないんですよね。

ささやかですが、私からプレゼントをあげます。アッ、ちゃんとこれはポケットマネーですから、ご心配なさらずに。」優しく微笑む。

そして、護衛の人達を呼び、ドアを開けさせた。

そこには、タキシード姿のシン君が立っていた。


・・・・・・・。・・・・・・・・・・・。

ビックリしすぎて何も言えない私は、ただポカーーンとカレを見つめている。

ずっと会いたかったシン君が目の前にいる。

シン君はお辞儀をして中に入って来た。

手には3個の箱を持ち、端の人に渡していった。

「私からのプレゼントは、暇そうにしていた皇太子に渡して貰いましょう。」ニコニコという。

隣の人にシン君は箱を渡した。

でも、もう箱を持っていなかった。

まだビックリ顔の私。

シン君は私の前に立った。

「オイ、口閉じろッ」口を動かさずに小さい声で言う。

慌てて私は、口を閉じた。

うん?シン君を良く見ると、あれ?そのタキシードって、私が考えたやつ?

シン君にはこんなのが似合うよねーと、いっぱい描きとめた中の一枚。

するとカレは、私の前に膝まつき、私の手を取る。

ポケットから小さい箱を出し、光り輝くモノを取り出した。

「婚姻の日にちが決まった。オレと結婚して下さい!」指輪を嵌めた。

その場がシーーーンと静まる。


・・・・。・・・・・・。

「えっ?」

「オイ!返事は!?」シン君は私を見上げる。

「今まで会ってもくれなかったのに?」

「事情があったんだ。」カレは私の指を愛しそうに触る。

ビクッとなる私。

「どんだけ私が会いたかったか!シン君なんか嫌いだーー!」カレの唇は私の指に嵌めた指輪にキスをする。

「今まで、27回、皇太子って嫌い!って聞いてきたけど。シン君嫌いははじめてたぞ!」眉間を寄せる。

「げっ!数えてたの!?せこい!」

「皇太子に向かって。せこいって、オイ!」立ち上がる。

「嫌いだよ!私の事捨てていた彼氏なんて、嫌いです!」

「シン・チェギョン!」カレは私の体に手を回し、私の体を自分の肩に乗せた。

「ネーさん!コイツは貰っていくから!」しっかりと固定をされた私は、暴れてみたが、ビクとも動けなかった。

「オンニーーー、助けてーーー!」

「チェギョンちゃーーん、そいつ解禁みたいだから頑張ってねーーー」手を振る。

「オンニーーー、解禁って?」

「早く、東宮殿に戻るぞ」細いカレなのに、しっかりとした足取りで会場を出て行った。







車に乗せられた私は、カレに手を握られる。

「東宮殿まで行ってください。」





殿下が突然、ウエディングドレスを着た彼女を連れてきた時、運転手は驚いた。

この間、シン:チェギョン様のご実家までお送りした時には、泣き続けていた彼女。

降りる時にか細い声で「有難うございました」と深く頭を下げる彼女の姿に、ドキッとしたものだ。

でも今は。ドレスを着て頬を赤く染めながら、見た事も無い程に幸せそうに、笑っていた。

それも、殿下の肩の上で。





「降ろすぞ。」とカレは私に言う。

「嫌だ!」

「もう、車に乗るから。」

「だって、ようやく会えたんだよ。それにシン君の香りがする。」

「オイ!そんなの、車でも出来る!」

「こんな高い位置から、景色見たこと無いから、新鮮!」上半身を上げた。

カレは私の足を掴んでいたのに、手を掛けた。

「これが、シン君が何時も見ている景色なんだね。やっぱ何か違う。こんな見通しのいい景色見れるなんて、羨ましい。」

「仕方ない、少し歩くか?」

「ヤッターー!」

シン君の肩に乗せられた私は、大学の構内を少し歩いた。

幾ら休みで人がいないと思っていたが、向こうから人がやって来た。

「戻るぞ!」カレは踵を翻し、来た道を戻った。

さっきまで、興奮していたので、何ともなかったが「寒い!」ガタガタ震えだした。

「だから言ったはずだ。車に入ろうと。」カレの口からの息も白くなっている。

あっ。そうだよね、シン君も寒いよね。

「ゴメンなさい。シン君に会えて嬉しくてつい。」

「その理由じゃなかったら怒るぞ。」車のとこに着き、降ろされた。

ドレスの裾をカレが持ってくれた。

「あっ、ありがとう。」

「デザイナーシン・チェギョンの第1作目だもんな。汚せない。」私を車に乗せた。

隣の席に座り、車の暖房にお互いホッとする。

カレは運転手さんに、行き先を教え、ゆっくりと寛いだ。

カレは私に手を握り左手の指輪を触る

「留学したかったか?」ポツリと言う。

私は、カレの顔を見つめ

「初めはその気で頑張っていた。けど、シン君に会っちゃったからねーー。私がずーっと夢見ていたデザイナーよりも。イ・シンの傍にいたくなった。」

私はカレの目を見る。

真剣な目は、カレの心まで届いたようだ。

「チェギョン、オレを選んだ事、後悔させない。」握っていた手に力を入れた。

2人で手を握りあって、ゆっくりとしていた時に、「ね、そのタキシードって、私のデザインだよね。何でシン君着てるの?」聞いてみる。

急に、眉間に皺が寄る。

「ネーさんが、チェギョンの様子を知りたくて、ガンヒョンを脅迫したみたいだ。」

「脅迫~~!」

「で、ガンヒョンの口からチェギョンのイラストの事を聞き出し、ガンヒョンに頼んだそうだ。

デザイン画のタキシードは、「宮」が誇る衣装部が徹夜で仕上げたみたいだ。」

「やっぱ、オンニって凄いね。」呟いた。






東宮殿に車が着き、私達は降りた。

コン内官がで迎えてくれた。

カレは小さい声で、おじさんに何かを言っていた。

するとおじさんは、少し驚きながら「判りました。皆に伝えます。」下がろうとしていたのを、私が止めた。

「コン内官アジョシ、待ってください!お願いがあるの。」

急に呼び止められたアジョシは「ハイ、なんでしょう。シン・チェギョン様。」頭を下げた。

「あのですねーー。シン君と私を撮って欲しいの」スマホをアジョシに渡した。

「私の初めての作品なんです。シン君と撮りたいの。」アジョシはスマホを持ちあげた。

「判りました。綺麗に撮ります。」

私はシン君傍に寄り、ピースサインをあげた。

カレはその私を愛しそうに抱きしめてくれた。

アジョシは何度もシャッターを押し、「撮り終えました。綺麗に撮れました。」頭を下げた。

スマホを返してもらいながら、大事そうに画像を見る。

何枚も写る二人は、まるで結婚式のカップルに見える。

「アジョシ、どうも有り難うございました。」スマホを胸元で握る。

「では、何かあったらご連絡を。」アジョシは東宮殿から出て行った。

アジョシがいなくなり、私は違和感を覚えた。

前に来た時は、必ず人の気配があったのに。

今この東宮殿は静まり返っている。

「シン君!何か変だよ」カレは私の手を取り、自分の部屋に入った。

「ねえねえ、人の気配がしないよ。」

すると、首もとのネクタイを外しながら「オレが頼んだ。」

私の髪飾りのリボンを外し、結っていた髪の毛も解く。

「シン君。」

そして、ドレスのジッパーも下げるとドレスはストンッと下に落ちる。

「・・・・オイ、お前オレを煽ってるのか?」目付きが鋭くなる。

「だって、ガンヒョンが・・ウエディングドレスの下はこの下着なのよって!!差し出したから。」

カレはゆっくりと目を瞑り溜息を吐いた。

「チェギョン、お風呂温めているから、体温めて来い。」

「えっ?まだ明るいよ。」カレの部屋の窓からは明るい日が入って来ている。

するとカレは蓋の掛かったスイッチを開け、ボタンを押した。

急に窓ガラスを覆い尽くす、黒い素材。

ガシャンガシャンと降りていく音は、まるで映画のようだ。

薄暗くなったシン君の部屋。

最後にドアにも黒い素材。

ガッシャーーン。

まるで「核シェルターみたいだろう。オレも一応皇太子だから何かあった時用みたいだ。銃撃戦になっても丈夫に作られている。」カレは暗くなった部屋にスマホを触ると、スマホの画面が明るく光る。

その光をつてに、私をバスルームに連れて行く。

バスルームそのままの明るさで、ホッとする。

「ホラッ。」ドアを閉めた。

私はカレも一緒に入るかと思って、ドキドキしていたが、一人にされガッカリした。

なーーんだ。

ブラを外し、ガーターベルトに手を掛けて「ガーターベルトは、新郎が手を使わず口で外すのにねー。」とわざと言っていたら・・、扉が開きシン君が入って来た。

「忘れもん。」と私の前に膝をつきガーターベルトを、口で引っ張った。


「シン君!!」

「よし外れた!!でも、これってドレスの中に入ってやるんだろう・・・。」と笑うカレ。

ブラを外していた私なので「早く出て行ってーー!!」と叫んだ。

「じゃっ、準備してから来るから。」外に出た。

ウッウッ、久々に体見られたのに、何にも変化がないカレ

やっぱり、この胸じゃね~~っとガッカリした。

落ち込みながら、髪・体を洗って私は湯船に入り、寒さで冷たくなっていた体を温めた。

気持ちイイ。

湯船に入る習慣がない為、こうやって入ると、とても気持ちイイ。

シン君に湯船の気持ちよさを教えて貰ったので、今度は私がサウナの良さを教えよう。

やっぱ、茹で卵が最高よね。一人想像して、ニヤニヤしていると。

「又、食べるの想像していたな。」扉の向こうから・少し冷たい空気が入って来た。



皆様、こんばんは。

さて、大人の事情で、またもやカットです。

まったくー、自分ってお盛んでしたねー。(笑)

コメント、いいねボタン有難うございました。

おやすみなさい