ゆっくりと目が開く。

見慣れた天井が視界に入る。

「ふーーーっ。」大分熱が下がったみたいだ。

学校で目眩がして倒れたことは、付き添ってくれたガンヒョンが教えてくれて判った。

「熱が出たのって、小学校以来だ。」バイト休んじゃったなーー。今月のお金、安くなってしまう。

現実な事を思っていたのに、なぜか急にイン・・違った。

皇太子の顔がちらついた。

イン君だと思っていた人は、皇太子だった。

ずーっと勘違いしてた。

だって制服のネーム、カン・インだったんだもの。

私の嫌いな皇太子が、イン君だったなんて。あっ、又違った、イ・シンだった。

もうややっこしいーーー。

私が間違っていたら、言ってくれればよかったのに

随分経ってるよ。

ずっと皇太子なんて嫌いって言っていた時、イ・シンは苦笑いをしていた。

てっきりお友達だから、そんな顔していると思っていたのに。

布団をガバッと掛け、自分のしてきた行動が恥かしくなる。

最低だ

幾ら勘違いをしていたとは言え、イ・シンの悪口を本人に直に言っていたなんて。

人間として最低だ。

今度、カレに、カレに会えたら謝らないと。

喉が渇いた。

私は体を起し、まだボーっとする体を何とか動かし、ベットを降りて台所を目指した。

冷蔵庫から、ペットボトルを取り出し台所の小さいテレビをつけた。

テレビつけるなんて、久し振り。

イスに座り、ペットボトルの水を飲む。

今日は平日なので、この時間はドラマが入っていた。

ありきたりなドラマ

学校の人気者に恋する女の子が、何言われてもどんな事をされようが、めげずに好きですと言っていた。

こんな子いるのかなー。恋か・・・・。

こんな貧乏で、バイトだらけの忙しい女なんて、誰も相手にしないってって自分で笑った

急に思い出す、皇太子の顔。

なんで何時もココア持って来るなんて、幾ら私が一回奢ってあげたからって。

ココアから伝わる温かさ。

冷たい手から、体・心とカレの優しさが染み渡る。

カレの事を思い出しながら、テレビの画面をボーーッと見ていた。

ハッと気がつき、やだやだ、何思い出してるの!?

皇太子なんて、思い出しちゃって、バカみたい。

自分は皇太子の許婚を断ったんだから

今回の間違った事を、許してくれるまで謝らないと

そしたら、もう会うことはないんだから。

ふと思い出す、1日会えないだけで、寂しかった。

毎日カレと会うのが習慣になっていたからかな。

カレに会えない生活に慣れることが出来るんだろうか?

もうそろそろ冬休みがくる。

私はあのデザイン画を、仕立てないといけない。

家にミシンがないから、学校で仕上げないと

さぁさぁ、もう現実に戻ろう。何年振りかのお休みだから、変なことばっか考えてしまうね。

テレビを消して立ち上がろうとしたら、ドラマが終り、ワイドショーが入っていた。

司会者が慌てて言っていた。

なんだろう?

普段こんなのが嫌いな私だけど、つい聞いてしまった。

タイに訪問中の皇太子殿下が受賞式の途中、同じ韓国のミン・ヒョリンさんにキスをされたようです。

・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・。

ボーーーーーッ

テレビを見て固まる私。

ミン・ヒョリンって、あのミン・ヒョリン

あっ!?あの時の通話。

「諦めずに、皇太子にキスでもしたら?タイという熱い国で、2人は元に戻れるかも。」

、ヒョリンの彼氏って、皇太子。

私のアドバイス通りにキスをしたみたいだ。

「あっ、映像がきました。」

我が家の小さいテレビに写る。

皇太子にキスをする、ヒョリン。

何度もそのシーンが流れる。

綺麗なヒョリンと冷たい感じのイケメン皇太子。

お似合いだ。

突然、心臓がギューーーーっとなる。

何回も流れる映像に反応するように、苦しくなる。

何で?

ただの風邪なのに。

何で、苦しくなるの?

私は慌てて、テレビを消した。

久し振りにテレビを見たのがいけなかったのよ。

ヒョリンにキスをされて、驚く皇太子。

貴方達、貴方達何回もキスしてるんだよね。

あの綺麗なヒョリンが彼女なんて。

あの場所を思い出す。

温かいココアを差し出してくれる皇太子を思い出すと又、心臓がギューッとなる。




自分の部屋のベットに潜り込んで、皇太子の事を考える度に、ギューーーっとなる心臓を押さえ。

どうしちゃったのよ!なんで今頃。

遅いってば!皇太子を見て、苦しくなるなんて。

何度もカレに最高のチングだねって。

そして、皇太子の悪口を言っていたのに。

遅いよ、何もかも遅い









心臓がギューーーッとなった日から、私の心臓はおかしくなった。

「ねえ、ねえ、皇太子の」ギューーッとなる。

擦れ違う人が、皇太子という言葉を言う度に、私は自分の胸を押さえる。

今更。


バイトをしている時、「皇太子が今日・・・」ギューーーっとなる心臓。

そして勇気を振り出し、テレビを見る。

そこには、カン・イン君、いや皇太子イ・シンがいた。

心臓がおかしくなるよーーーー

なんで、こんなに苦しくなるの?

今更、今更。

「あれ?珍しい。チェギョンちゃんがテレビ見てる。」馴染みのおねーさんが言う。

「・・・・・。」ボーーとしたまま。

「チェギョンちゃん?」私の顔まで手を持っていって、手を振る。

「・・えっ!?」急に意識を戻した私。

「どうしたーー?魂ここにいないわよーー」クスクスと笑う。

「えへへへっ。なんでもないです。」心臓を押さえながら言う。

「そこ痛いの?」心配そうな顔。

「大丈夫です!大丈夫ですから。」声が小さくなる。

「そー言えば、チェギョンちゃんのチングとどうなった?元気ないから。」

「会ってません。」

「どうしたの?」

「学校に来てないんです。カレに謝りたい事があるのに。」真っ赤になる。

泣きそうになるのを、我慢する。

「チェギョンちゃん、泣きたい時は泣いた方がいいのよ。体の毒素が出ていいんだから。」優しいおねーさん。

あっ?皇太子と同じ言葉。

ギューーッとなった。

「オンニ!ありがとうね。でも泣かない泣く暇があったら、仕事するもん」泣きそうな顔で、私は隣のテーブルを拭き始めた。

「まったく、チェギョンちゃんは」オンニは溜息を吐く。







皇太子は帰国しているようだが、ヒョリンとのキスの事で、学校に来るのを自粛しているみたいだ。

私は、「美術科の母」を休業したままだった。

だって、そんな気分になれなかった。

ヒョリンからのメールはあるけど、どうしたらいいのか。

わかんない。

でも、あの場所に向かう。

皇太子が待っていてくれた場所へ。

カレが座っていた場所に座り、黙って景色を見ようとしたがもう外は暗い。

あの綺麗な景色は見えなくなった。

寒い。

一人で見る景色は、つまらない。

何時も温かいココアを持ち、待っていてくれるカレ。

イ・シン。

会いたい、会いたい。



毎日お昼になると、ガンヒョンの目を盗み、映像科に行く。

扉の傍に寄り、中の様子を伺う。

いないかな。

キョロキョロ。

「シン・チェギョンちゃん、バレバレですよ~~」本物のカン・インが言う。

「エヘヘヘッ。ばれてましたか。」苦笑い。

「シンは今日も休みだよ。毎日来て大変だよね。」ファンが言う

「お前・、シンの追っかけ達とは違うなーー。訳ありか?」ギョンが真面目に聞く。

「ただ、一言言いたいだけなの。」

「こんな可愛い子を、毎日来させるなんて。だけど毎日、チェギョンちゃんと話せて、俺は嬉しいけどね。」本物イン君は笑う。

私の体は、後ろに下がり始める。

「オイオイ、逃げるなんて、今時カワイイなーー」

「じゃあ、もう行きます!」逃げ出した。

今日も来ていない。

もう2週間になっちゃうよ。

それに冬休みに入ってしまったら、もっと会えなくなってしまう。

廊下に立ち、ボーーッと外を見ていると、ガンヒョンがきた。

「こらっ!シン・チェギョン!いつも何処に行ってるの!?」腰に手を当てて、立っていた。

ゲッ!ガンヒョンだ!

「ちょっとトイレまで。」

「何時もこの時間宿題やったりしているのに、あんたの行動、おかしいよ。」怪しい目で私を見る。

「なんでもないよーー」慌てて逃げた。








午後の授業を受けていると、段々寒くなってきた。

空の色も白くなってきた。

天気予報では雪マークが付いていた。

朝、お天気のおねーさんが「今日は初雪が降るでしょう、カップルさん達は忙しいでしょうね。」笑いながら言っていた。

ふん!バイトが忙しいよ!と悪態を付く私。

雪酷くないとイイなーー、自転車で来てるから、大雪になっちゃたら、押して帰らないと。

私のバイト先は自分の家からかなり遠い。

焼肉やの下には、コンビニがあり、すぐ傍にあるホテルに泊まっている日本人達が買い物しに来て、日本語が飛び交っている。

テレビ局が周りにあり、色んな所が建設途中、これから発展していこうとしている地区だ。

バイトが終わる11時には辺りには、人がいなくなる。

車もたまに走るくらい。

こんなひっそりとした所を、押して帰るなんて、寂しいよ。

バイトが終わり、外に出ると雪が降ってきた。

あっちゃーーっ。降ってきたよ。

「チェギョン、雪が降ってきたから、気をつけな!」オーナーが声を掛ける。

「オーナー、お気遣いありがとうね。」外に出た。

雪は降ったばかりなので、まだ積もっていない。
これなら、家まで乗って帰れる。

私は自転車に乗り家を目指す。

10分位漕いでいると、左手に公園が見えた。

何時見てもこの彫刻?銅像?でか過ぎ!

雪が降る中、自転車で走っていると、少し先に駅が見えた。

メディアシティ駅が見える。

お金が掛かるのは嫌だけど、そろそろここのお世話にならないと。

でもこの駅まで、歩くと40分掛かる。

やっぱッ無理して、自転車でまだまだ来よう。

何時ものスピードを落として走っていても、雪のお陰で私は自転車事倒れた。

「いったーーーい!」

もう、痛いのと、恥かしいのと、雪のお陰で汚れてしまった。

でも幸いに、誰も居なかった。

痛い、痛い、痛いよーー、ママ・。

パパが死んじゃってから、なるべくママには心配を掛けない様に、何時でも笑っておりこうさんにしていた。

雪降る中、ちょっとは凹んでもいい?

「ママ、転んで痛いよーー!」叫んでみる。

どうせ、こんな時間、誰も居ないって!




「シン・チェギョン!痛いのか?」声が聞こえた。

私の後ろの方から、人の声。

それも知ってる声。

私の目の前に立ち、ゆっくりと膝まつく。

雪の振り続ける中、キャメル色の高そうなコートを着たカレが私の目の前に。

心臓がおかしくなる。

今まで中で一番ギューーーッとなり、私は顔をしかめる。

「オイ!大丈夫か?」カレが慌てて近寄る。

ようやく会えたカレを見た途端、私の目から涙が溢れ出した。

会いたかったカレが、目の前にいる。

でも、「近寄らないでーー!もっと・・・。」雪明りに照らされたカレが眩しい。

わたし、どうしちゃったんだろう。もっと違う言葉言えたのに。

カレの顔は暗く落ち込んでいる。

涙が次から次へと流れ続ける私。こんな酷い言葉じゃなくて、名前間違っていた事を謝らないと。

ずっと皇太子の悪口を聞かされていたんだから、これも罪になるのかなー。

とにかく謝らないと。


「・・・・会いたかった、会いたかった・・・・・。」泣きながら、又違う言葉が出てきた。

カレはわたしの頭に積もった雪を払いながら

「オレも、会いたかった。ずっと会いたくて仕方がなかった。」雪が降る中、私の体を抱きしめてくれた。





皆様、こんばんは。

昨日は眠くて投稿をあんまり覚えてなくて、冷や汗ものでした。(笑)

最近、このブログの訪問が一気に上がる日があり、ビックリしております。

こんなところに来ていただけると言う感謝の気持ち

記事も人気ランキングに入りました。皆様のおかげでですね。

できるだけ毎日投稿できるように、皆様への恩返しさせて頂きます。

コメント、いいねボタン有難うございました

では、おやすみなさい。