イン君があの夜の日、送ってくれた時から、私達は本当のチングになった。

ほんの少しの時間で、相談したり、笑い合ったり。

毎日、イン君に会うのが楽しみになっていた。

それにね、大分寒くなってきて、カレが温かいココアを持って待っていることが多くなってきた。

私が始めてイン君に持ってきてくれた事が、嬉しかったみたいで、これからはオレが持ってくるから。と言ってくれた。

バスに乗るお金も持った無いと思っている私には、あの時の缶コーヒー代は勿体無かった。

でもね、この1000ウォンを払っても、イン君を温めてあげたかった。

あの時は心からそう思った。

カレは、目つきが悪いけど、私にやさしく接してくれる。

まさに、紳士のように。

カレは私にチングとして接してくれる。

カレから貰った温かいココアを一口飲むと、体に広がる温かさ。

「イン君も飲む?」何気なく言う

「!」カレはビックリする。

「あっ、私の後なんか嫌だよね。ゴメンゴメン。」笑った。

「嫌じゃないけどココアは苦手だ。」

「そうなんだ、見た感じのまんまだね。甘いの嫌いそう。」

「そうでもない。」意外な言葉で、ボーッとカレの事を見ていたら。

「チェギョン?」不思議な顔をしていた。

「えっ?ボーっとしていた?」カレの頭が頷いた。

「アハハッ、気にしない!今日はね、イン君に2大ニュースがあるんですーー」

「なんだよ」

「一つはねーー、私のデザイン画が賞に入りましたーー。で、その服を製作して出品してみなさいって。先生に言われたのーー。凄いでしょうーー」自分でパチパチ手を鳴らす。

「良かったな。」カレは私の頭をポンポンと撫でた。

私は、カレの触られた頭が熱くなる感覚を覚えた。

こんな寒い所なのに。その部分だけ、温かい。

この分からない温かさに、動揺しているのを悟られなくて、ワザと笑う。

「えへへへっ。」

「せっかく褒めたのに、その笑い方。」呆れる。

まだ温かいココアを一口飲み「だって褒められたのって久し振りで」苦笑い。

「久し振り?」

「パパがね、私にベタ惚れだったパパが何でも褒めてくれたの、チェギョンはいい子だ。チェギョンは立派だ、チェギョンの描いたデザイン画は絶対売れる!ッて何時も頭撫でててくれたから。」

あっ、パパに頭撫でられたみたいだったからかな。

この温かさ・・・。

するとイン君は立ち上がり「オレのチングのチェギョンはいい子だ。」頭を撫で始めた。

「チェギョン、賞を貰ったってすごいぞ。」頭を又撫で始めた。

「止めてよ。」手で払う

それでもカレは私の頭を撫で続ける。

そんな、優しくしないでよ。

ずーッとママと一緒に頑張ってきたんだから!私達、家族3人で助け合い、生きてきたんだから。

涙が溢れてくる。

「やめっていったじゃん。」

「涙はたまに出した方が良い。体の毒素が出て行くみたいだ。」優しく笑う。

「イン君!胸貸して!」頭だけカレの制服につけて、泣き続ける

イン君は何も言わずに、私の頭を撫でてくれた。

「ありがとう。又胸借りちゃった。」

「チングだろう、当たり前だ。」ティッシュを渡す。

涙を拭き、鼻もかんでいると「それで後のニュースは?」

「あっ!?そうだった。」慌てて、ポケットからあるものを出した。

「ジャーーーン!スマホ、又使えるようになりましたーーー」ぱちぱちと叩く。

「おっ。」

「イン君のアドレス、聞きても良い?」

彼女の差し出した白いスマホ、着飾ってなくて以外だった。

待ち受け画面は、 ここからの景色だった。

「あっ、チェギョンもか。」オレも自分の黒いスマホを取り出し、待ち受けを見せる。

「イン君もだーー!ここの景色って、ほんと綺麗だよねーー。こんな良い所、私達しか知らないって贅沢だよねー、でもね後一つ好きなとこもあるの。

「?」

「此間宮で、イン君たちと会ったでしょ、あそこの景色が、又良かった。

あそこを保つ為に、色んな人達が頑張ってるし、次の世代まで伝えようとしている、最近「宮」に対する考え方がかわってきたかな。

あの景色を見てから、そう思うようになって、皇太子も大変だね。

あの中で暮らしているんだから。

あの歴史の重みが、18才の彼の肩に乗ってるんだもの。

でも、彼を下から支えている人達は、歴史、しきたり、皇室の方々を守ろうと頑張ってる。

彼はそれに答えてあげないとね、話した事が無いけどイ・シン頑張れだね。」ピンと張り詰めたような空気が漂う中、シン・チェギョンの言葉がオレの心に素直に入る。

「ホラッお前のスマホ寄越せ。」話を変えようと言った。


「もう、珍しく良い事言ったのにーー。」赤外線を出し、お互いのスマホをくっつけた時。

ピーーーーッと言う音が鳴った。

何だろうとお互いスマホに顔を近づけたら、彼女のスマホが真っ暗な画面に。

「シン・チェギョンーーー。これは?」

「はい?充電切れ?」と苦笑



「そうみたいです。今日久し振りに、メールしまくったから、からかな?」目が泳いでいる。

「オレ明日から学校に来ないから、ちょうど良かったのに。」

「イン君、どっかいくの?」スマホの電源をもう一回入れてみようとしたけど真っ暗闇

「ちょっとな。」

「寂しいな、イン君と会うこの時間が楽しみだったのに。」

オレは彼女のいい香りのする頭に手を置き、撫でた。

「イイ子にしてろよ。」笑った。

「イン君って、黙っていると悪い人だけど、笑うとまったく雰囲気が違うんだもの。」

「シン・チェギョーーーン」怒る。

「ヒャーーーーーッおっもう時間だーーー!ジャッ!」手を上げたら、イン君がスマホのカメラ体勢だった。

「えっ?」

「オレのチングって言って、見せてきても良いか?」カメラを構えたまま。

「良いよ。だって、私達、最高のチングだもの」一番の笑顔でカメラを見た。

シーンとした中にカシャッという音が響いた。

「イン君!ジャッ」チェギョンがオレの視界から消えた。

スマホを構えたままの彼女との別れ。

チングという言葉に隠されたオレの気持ち、お前は知らないだろう。

辛いな。

明日から、タイに公務に行く。毎日会っていたオレ達。

あえない日々は、もっと辛くなるだろう









「ヒョリンゴメンね、これから忙しくなるんだ、美術科の母休業だよっ。」

「チェギョンががアドバイスしてくれないと。」

「大丈夫だって、皇太子もこんなにヒョリンが好きだって毎日言ってるんだから、通じるよ。」

「そうかな。」

「自信を持って。」

「私、明日から、タイのコンクールに出るの。そこで、忙しいけど、息抜きしてくる。」

「えっ?タイ。いいなーー。フォーとか食べたい」笑う。

「チェギョンにはお世話になっていたから、お土産買ってくるね」綺麗な微笑を残し、彼女は行った。





私はいつも通りに、あの場所に向かう。

もう大分冬が深まってきた。

制服の上にピーコートを着て、何時もの場所に着いた。

イン君。いない。

何時もの場所にイン君がいない。

温かいココアを持ち、顔は怖いけど、温かい心、温かい手を持つカレ。

私は、もう真っ暗で星明りで見える景色を目を凝らしてみる。

カレと見る景色はとても綺麗だった。

今、一人で見る景色は、目に見えるように黒で覆われていた。

あんなに綺麗に輝いていたのに。

つまんないな。






バイト先に行っても、「ちょっと元気ないじゃない?」馴染みの客に言われた。

「ゥ~~ン、チングがちょっといなくて寂しいんです。」

「えっ?チングって、女?」

「男です。」笑う。

「男でチングなの?それにチェギョンちゃん。その男友達がいなくて寂しいでしょッ。」おねーさんが笑う。

「私はねーー、男と女に友情は芽生えないと思う。男と女には友情では無く、愛情が芽生えるのよ。

だから、チェギョンちゃんの寂しいと気持ちは、友達としてとかじゃなくて、好きな男としてかもね。」ソルロンタンを食べながら、笑った。

「イヤーーッ、愛情?まさか。私チングって約束したし。」

「男の子って、了解した?」

「しましたよ、嫌ッ」あの日を思い出す。

急に怒って「ない」と言ったカレ。

でもその後、私の元に走って追いかけてきてくれた。

急に訂正した「ある」と言う言葉に。

「男の子は、チェギョンちゃんに合わせたんだね。どんな思いだったのかな?」意味深に笑う。

急に真っ赤になる私。

カレの気持ち、ちゃんと聞いてなかった。ただカレの優しさに、甘えていた日々。

毎日カレが寒い中、ココアを持ち私を待っていてくた。

毎日、私達最高のチングだねーッとカレに言っていた。

スマホを取り出し、イン君に電話。

あーーーっ!交換してなかったーーー!あの時の私を恨む。

「チェギョンちゃん、慌ててーー、若いねーー。酔っ払ったオンニもたまには、良い事言うのよ」ビールを飲んだ。







次の日、私は禁断の映像科に足を向けた。

この校舎は、皇太子がいる為に、他の科の人達は用が無い時には、入ってはいけませんという決まりが出来た。

私は、皇太子じゃなくて、イン君の友達に用事があるんだから!と力強く歩きだした。

すると、スマホが鳴り出した。

画面を見るとヒョリンの文字が。

仕方が無い通話ボタンを押した。

「チェギョン!チェギョン、大変!」

「何?どうしたの?」

「コンクールの審査員にシンがいるの!皇后様の代わりみたい!」あの大人しいヒョリンが慌てて言う。

「えっ?皇太子が。」

「もう、今日のバレエちゃんと踊れるかしら?」

彼女のバレエの成績は韓国でも1・2を争うほどなので、余程でもない限り完璧に踊ると思う。

「良かったね。二人はやっぱり運命になんだね。」伝える。

「チェギョン。」

「諦めずに、皇太子にキスでもしたら?タイという熱い国で、2人は元に戻れるかも。」

「できるかな?」

「恋は立ち向かわないと、愛は戻らないよ」けしかける。


「判った!やってみる」彼女の声に力が入った。

皇太子か、大分前より嫌いじゃなくなってきた。

国民の税金で楽しく暮らしているヤツ!と勝手に嫌っていたけど。

カレは彼なりに、苦労しているみたいで。

あっ、でも許婚の件は別よ

愛のない結婚なんて絶対にない!と一人で力こぶを握っていると「チェギョン、ありがとうね!私、シンに自分の気持ち伝える」

「よし!当たって砕けろーー。ミン・ヒョリン」通話を切った。

ミン・ヒョリンに言ってないで、自分もイン君に言わないと。

イン君のお友達に番号聞かないと。帰って来てからだと遅い。

早く伝えないと。

私が無理矢理言わせていたチングという言葉

カレは最初納得していなかったのに。








映像科の部屋の前に来た。

私は大きく息を吸い込み、深呼吸する。

イン君に向かって、一歩前進だーー!と私は、映像科の扉を開けた。

「あのーー、すみません、イン君の友達っています?」恐る恐る聞いた。

「イン君?」一人が聞いてくれた。

「カン・イン君です」もう一度言った。

「友達って言うか、本人いるよ。」インを呼ぶ生徒。

「えっ?」イン君、今日学校にいるの?

でも、私の目の前に現れたのは。

皇太子イ・シン!

あれ?でも、タイにいるヒョリンが、皇太子が来てるって。

「何でここにいるんですか?タイには?」

「は?ところで君は誰なの?えっ、見たことあるな。あっ、美術科の子だろ!

廊下で告白されたよな。」私に話しかける。

「皇太子なんでしょ、タイには。」

「皇太子って、シンの事だろっ、アイツは昨日からタイに行ったよ。」

「・・・・・。」ぼーーーーーーッとなる私。

「皇太子ってあなたじゃなくて?」

「何馬鹿なことを言ってるんだ?韓国の皇太子を知らないっていうやつはいないだろう。」笑った。

「皇太子って、目つきが悪い?」

「悪いって言うか、冷たい表情が氷の王子って呼ばれるくらいにな。」彼の言葉を聞いて確信する。

毎日私に温かいココアを持って待っていてくれた人はイ・シン。

カン・インじゃなかった。

私は急にしゃがみ込み「う~~~~~~~っ」唸った。

まさか?まさか?

カレは自分の事を嫌っている女に、毎日会いに来てくれていたの?








私は映像科を飛び出し、美術科を目指す。

クラスには、皇室大好きと言う女の子がいて、いつもノートを持ちあるいていた。

私は走って、クラスの中に入り、彼女達を目指す。

「ねーッ皇太子の写真って持ってる?

「勿論!」いってノートを広げた。

そこには、一昨日まででカン・インだと思っていた人が写っていた。

「本当に韓国の皇太子イ・シン。」

「当たり前でしょうーー!何時見てもカッコいいよねーー!」

私の視界がグルグル回り始める。

「ちょっと大丈夫!?」心配そうに見る。

「大丈夫じゃない。」しゃがみ込んだ

「チェギョン、大丈夫?」2人は騒ぐ。

目眩が止まらない。私はゆっくりと目を瞑った。







皆様、こんばんは。

ねむいです。すみません寝ます。おやすみなさい