ピョコンッ、ピョコンッ

学校の廊下を、軽く足を庇いながら歩いていく。

クーーーッ、あの車のお陰で、転んだ足が痛い。

悔しいのと痛みで、眉間にしわが寄る。

今度会ったら、文句言ってやるとプンプン怒る。





今日もまた、ミン・ヒョリンの話を聞いてあげていた。

聞いてあげるほど、彼女が皇太子に惚れているのがわかる。

あの優しそうな、ちょっとイケメンの彼を思い出し、彼女の話しに相槌を入れる。

「で、昨日は会って話してみたの?」

「昨日は出掛けるから、無理って言われたの。でも、ちゃんと言葉は伝えたわ。」微笑む。

う~~ん、この笑顔に惚れない男はいない。

同じ女なのにねーー。

「そうそう、会えなくても、毎日1回はメールで言葉伝えてね。」

「うん、そうよね。彼って公務で忙しくて、学校の時にしか会えなかったの。」

「えっ?学校だけなの?」

「ええ、それでも私は満足してるわ。私の為にわざわざ会いに来てくれる。

そして、私と話をしてくれる。肩を寄り添い、ただ私のなんて事もない話を聞いてくれる。それだけで、十分幸せ。」

「スキンシップは?」

「スキンシップ?」

「キスは?」

「2・3回。」ピンクの頬になり、照れている。

「う~~~ン、少ないわね。自分からもした方がいいわよ。」

「えっ?恥かしいーー」

「何言ってるの?皇太子の事が好きなんでしょう?二人で留学して、結婚するんでしょう?キスよりもっと凄いのするんだから。」私はキスもあれの経験もないけどね。

「キスは慣れていたほうが良いわよ、でも自分からは深いのしちゃダメよ」

「深いのって?」

「えっ?知らないの?」

「はい、キスって、唇合わせるだけじゃないの?」

「まー、それもキスだけど。お互いの舌を絡めるキスもあるのよ。まったく、皇太子も男なのかしら。」あの彼を思い出しながら、いやあの彼なら、すると思うけどなーーと思い出す。

「舌と舌ーーー。」ピンクの頬がますますピンクになる。

「好きな人となら、大丈夫。愛し過ぎるとそうなるみたい。」想像。

「じゃあ、まだまだなのね。」

「ミン・ヒョリン!貴方は学校一の美人さん何だから、自信を持って皇太子の愛を深めてね。」

昨日、断ったとはいえ、私は止めを刺さないと。

彼女との結婚、良いじゃない。私との婚姻はなしなんだから。

もっ、もっと、愛し合ってください!

「じゃあ、彼への愛のこもったメールうってみようか」私はニッコリと笑う。






私は被服室を出て、バイトに向かう為に歩き出す。

私の唯一の憩いの場所。


学校。

家に帰るとただ眠るだけなので、この学校の廊下から見る景色が好き。

ふーーーッ、癒される。

学校では休み時間の内に宿題を、放課後は「美術科の母」、焼肉屋のバイトでは、網をずーッと洗っている。でも、こんな生活いやじゃない。

私は足を庇いながら階段を降りて行った。

すると階段の下に男の人が座っていた。

こんな時間に人が。

あっ!アイツは昨日の皇太子の友達。それに運転していたヤツ

そいつはスマホを持ち、溜息を付いていた。

うん?溜め息中?関係ないわ!昨日の事言ってやらないと

私は、ピョコンッ、ピョコンッと歩きながら、アイツに向かって行った

アイツの前に仁王立ちする。

「ちょっと!貴方!昨日、貴方の車がすれすれに行った為に、自転車ごと倒れて足挫いたんだけど」大きい声で言う。

「・・・・・。」無反応なカレに私の頭はパニックになる。

何コイツ!?何で無反応。

「何、貴方、皇太子の友達だからって、貧乏とは話し出来ないとか!?」

「皇太子の友達って、オレ?」そこに返事するの?

「そうに決まってるでしょう」

「お前、皇太子って誰か知ってるのか?」カレの冷たい目が私を見る。

又あの優しそうな、ちょっとイケメンを思い出しながら「知ってるわよ!あの優しそうな人でしょう?アンタの後ろ歩いていた、ちょっとイケメン!」自慢気に言う。

「いるんだな。」小さい声で言う

「何?聞こえない?」

「何でもない。で、足怪我したのか?」

「したわよ、歩くに大変なんだから」とプーーッ膨れる。

「じゃ、医者代払うし、弁護士と話せ。」とスマホを出して、名前を検索しようと

「えっ?何してんの?」

「えっ、お金の問題になるから、弁護士に。」と私の顔を見上げる

「あわわわーーっ!良いって、電話しなくても!」とコイツのスマホを取り上げる

「オレがお前の自転車倒したんだろう?金払うのが当たり前。」私が持っているスマホを取り返す。

「お金なんていらない。ただアンタに文句言いたかっただけ。ゴメン、誤解させてしまったね。ゴメンなさい」深々と頭を下げた。

「お前って変。」

「あはははっ、これが普通。じゃあっ!バイトがあるから」私はカレに向かって手を挙げ、ゆっくりと歩きだした。

ピョコンッ、ピョコンッ。

「オイ!お前の名前は?」

振り向き「シン・チェギョンって言うの。遠い未来有名デザイナーになるから、名前覚えておいて」ニッコリと笑う。

「シン・チェギョンって言うのか?」カレが私に近づき、私の顔をマジマジと見る。

「何よ!そんなに見ないでよ!」横を向く。

「この学校にシン・チェギョンって2人いるのか?」

「私だけだと思うけど。」

「化粧、してるのか?」と私の頬を触る。

急に触られ、ビシッとカレの手を叩く。

「気安くさわんな」コイツから離れる。

「お前化粧。」

「する訳ないじゃん。なんなのよ」ピョコンッ、ピョコンッと歩きだした。

「あっ、アンタこそ、名前なんて言うのよ」

「・・・・・・。」

「言いたくないの?まったく、でも制服は教えてくれてるよ。カン・インって」ニターッと笑う。

「えっ?」

制服の名札を指差し、私は笑う。

「まったくお金持ちは自分の名前も言いたくないの?でも、名前聞いた事あるし。

もう、カン・イン君とは会う事もないから~~、これっきりだね。」今度こそ手を挙げ、さよならをした。






時は戻り。

休み、皆でバスケをやって、終わった後。

制服を掛けていた筈のとこに、制服がなくなっていた。

「オレの制服知らないか?」シンが言う

「知らないなーー、又取られたのか?」

辺りを探しながら「そうみたいだ。」

「まったく。皇太子も大変だな。そんなに好かれて。」呆れた顔をする。

「オレの制服あるから、それ着ろよ。」インが言った。

「悪いっ。」

チェギョンがイ・シンとカン・インを勘違いした日。

小さな事が、2人を引き合わせていた。








ヒョリンとの相談が終り、私は廊下を歩く。

廊下の窓ガラスに写る、夕日。

奇麗だねーー。

束の間の休息。この何分かに、私は心の栄養を養う。

よし!元気チャージ終了、バイトに行くかー。

昨日よりも、足の調子がいい。傷跡が残らないと、いいなー。

シャワーを浴びる時に気が付いた、ヒザ上の傷

傷に水があたり、痛い。

その時思い出した、アイツの顔

カン・イン。確かお金持ちの家の息子

まッ、私にはまったく関係ない人なので、スル~~~。

「スル~~・スル~~・スル~~~っ」と歌いながら階段を降りていく。

すると、踊り場にカン・イン!

昨日までのキツイ目ではなく、笑っていた。

「何よーー!」

「イヤーーーッ、凄い音程だなーと思って。」段々、カレはツボにはまったらしく、笑いが止まらない。

クッ、クッ。クッ。

それにしても豪快に笑わないんだ。

「音程は普通だから、笑うことないじゃん」

「普通?」カレが笑いながら「止めてくれ。オレを笑い死させるつもりか」

「勝手にアンタが笑ってるだけでしょッ」

カレの笑いが止まってきた。

もしかして笑い上戸?

「足の具合はどうだ?」

「へっ?」

「足だよ、転んだんだろう?」怒る

「あっ、うん。昨日よりいいよ、じゃあ。バイトあるから。」シャッと手をあげ通り過ぎようと。

「送っていくか?」

「イン君が?まさか、いらないよ。」

「イン君?」

「うん、そうでしょう、カン・インだからイン君。呼び捨て出来るほどの仲じゃないし。」

カレが私の事を黙って見ている。

そして、目つきが悪くなる。

「何よ、怒られ風、なのよ。今度こそ、もう会うことはないけど、ジャッ!」私は階段を降りて行った。











ウ~~~ン、何で最近、この人ここにいるの?私とイン君は踊り場のとこに腰掛、風景を見ている。

もう2度と会う事はないと、断言していたのに、毎回会う。

そして、とうとう私はカレと体3人分の間を空け、座っていた。

何を話す訳でもなく、2人ただ風景を見ている。

ほんの10分位並んでいるだけなのに、何故か和んでしまう。

するとカレのスマホが鳴った。

カレはスマホを見た後、溜息を付く

私は気になったが、親しい仲でもないのに。聞く立場ではない。

立ち上がり「イン君!ジャッ」又帰ろうとしたら。

「なあ?お前って好きなヤツいるか?」

「何突然!?」ビックリ。

「教えろ。」

「いないよ。恋している暇があったらバイトしなくっちゃ」笑う。

カレの顔が真面目になっていく。

「そっか。」下を向く

そんなカレの様子も判らず、私は階段を降りて行った。







焼肉屋での網を一生懸命洗っていると。何故か、今日のイン君の事を思い出す。

何だろう、思いつめていたね。

思い切って「美術科の母」でシン君の悩み聞いてみようかな。

今日もまた、ミン・ヒョリンからカレとの事を聞く。

カレは彼女に対して、本当に紳士のように接していたんだね。

まだ、高校生なのに。こーー、活き良い良くがバーーッっていかない人なんだ。

やっぱ、皇太子って恋まで大人しいのかしら。

今まで、色んな人達のを聞いてきたけど、そんな物語のような王子様はいなかった。

大人しい、誰でも庇ってやりたくなるようなミン・ヒョリンと紳士的でまるで物語の通りの皇太子のカップル。

ほえ~~~っ。やっぱ、同じタイプは引き合うのね。

そして、私は思い出す。皇太子の許婚と言う約束。

あはははっ~~!合わないって、こんな毎日生きていくのに、一生懸命ながさつなチェギョンちゃんと!と自分を叱咤した。

男と付き合っているよりも、バイトしなくっちゃ!

「宮」に断言したからには、ちゃんとお金の事はやらないとね。







「シン・チェギョンさん、本当にシンは、私の元に戻ってくるのかな?」

「何弱気になってるの!?貴方が頑張んないと、この恋は終わっちゃうよ。」肩に手を置く

「終わりたくない、終わりたくないです!彼の事が大好きだから!」ガッツポーズをする。

おっ?大分強気になったねーー、良い事だ。

そのままの勢いで、皇太子の気持ちを掴んでね。






皆様、こんにちは。

お盆休みの最後の日、夜のアップしようとしましたが、寝てしまいました。

で、今誰もいないので続きのアーップです。

大雨が酷くならないように、願います。


コメント、いいねボタン有難うございます。

では、またー。