「廃妃でお願い致します。」

オレの言った言葉に驚くお前の顔が忘れられない。




許婚だったシン・チェギョンとオレは高校3年生の時に、結婚した。

最初はケンカが耐えなかったが、いつの間にか言いたい事を、バンバン言ってくるお前に、負けじと言い返すオレ。

それまで人形だったオレの姿しか見ていなかった、人達は皆驚いていった。

オレは勉強の嫌いなお前に教えたり、お前はお返しにオレに笑いを与えてくれた。

オレにとって、シン・チェギョンは友達みたいなもんだった。

髪の短いシン・チェギョン。

スカートの下にはいつもジャージを履いているチェギョン。

ガハガハ笑うチェギョン。

毎日、オレの事を笑わせてくれるチェギョン。

イヤッ友達と言うより、親友だ。

初めて出来た親友。

だから、体を重ねる事がなかった。そんな事でこの好い関係を壊したくなかった。

お互いの性を忘れ、ずーーっと親友でいたかった。







オレ達の関係に陛下や皇后が、とうとう言い始めた。

「太子!妃宮との仲は良さそうだが、どうだ?子はまだか?」

「・・・・・・。」

「皇太子。そろそろ、そういう話はまだでしょうか?」

「・・・・・・・・。」オレは黙るしかなかった。

子供は出来る訳がない。

毎日のように交わされるこの言葉

アイツにもこの言葉を問いかける。

毎日のプレッシャーにアイツは苦笑いを浮かべる。

「シン君、どうしようかねーー?」オレの親友は困った顔で、オレを見上げる。

「いいんだよ。オレ達はこのままでいよう。無理する事はないさっ。」アイツの頭をポンポンと叩いて、自分の部屋に入っていった。

アイツがオレの部屋を切ない瞳で見ているとは、知らずに。

1ヵ月後に陛下が倒れた。

軽い貧血だったが、大事をとって早く皇太子に譲位したいらしい。

オレ達は又、子の事を言われ始めた。

今度は本格的にアイツを攻め始めた。

毎日、あれを食べろ。どこどこに行って拝んで来いとか、アイツを段々苦しめていった。

そしてとうとう。ばれてしまった。

オレ達が体を重ねていない事を。

オレとチェギョンを呼びつけた陛下

「太子!どういうことだ!?お前達は。」

「皇太子。」

「ちゃんとした夫婦じゃなかったのか?」

「すいません、オレ達は、まだしてません。」

「理由は?」怒る寸前の陛下がゆっくりと聞いてきた。

「シン・チェギョンはオレの大事な親友です。」

「そっかーっ、では、このままでは子は出来ぬ。太子、どちらかを選びなさい。」

オレとチェギョンは顔を見合わせる。

「シン・チェギョンを廃妃にするか。それとも、子が出来るように努力するか。

太子!お前に選択を任せる。」陛下の静かな言葉がこの部屋に響く。

「今直ぐですか?」

「今直ぐの方がいい。事を始めるのは早い方が良い。」陛下は目を閉じながら言った。

どうしたら、今直ぐにこの事を決めろと言うのか。

初めて出来た親友と言う存在をとるか?

それとも、その関係を崩してまで、親友に子を産ませるのか?

子が生まれるまで、色んなプレッシャーが掛かるはず。

でも、子が生まれてしまうと、チェギョンには国母という重い責任を背負う事になる。
もう、今までの楽しい関係じゃなくなる。

悩んだ末、オレの出した言葉は。

「廃妃でお願い致します。」





廃妃が決まったチェギョンは、この宮を去ることになった。

宮を去る日に、陛下と皇后がわざわざ出向いて

「お別れだね。妃宮。」

「陛下、もう私は妃宮ではないですよ。」笑う。

「妃宮が来てから、この宮はとても変わった。いい方向にね。これも皆、妃宮のお陰だ。ありがとう。」頭を下げた。

「妃宮、厳しく教えましたが、あなたは歯を食いしばって、付いてきてくれました。どこに行ってもその作法で大丈夫です。頑張り屋さんのあなたの事、好きでしたよ。」涙ぐむ皇后

3人で肩を寄せ合って、今までの事を感謝しあう。

そして最後に、泣きつくして目が赤く腫れ、まだまだ涙ぐんでいるお前は

「シン君!これ食べてね。」彼女が唯一作れる、生クリームが入ったシュークリーム。

オレはこのシュークリームが大好きだった。

「今まで、有難うね。」泣き腫らした顔で笑う。

「どーせ学校に行っても会えるんだから、オレ達親友だろう。」

「うん!じゃあ、又学校で!」着た時と同じスーツケースを引っ張り東宮殿を出て行った。

車で見送ると言ったのに、「もう妃宮じゃないから、歩いて帰る。」言うチェギョン。

玄関先でチェギョンを見送ったオレは、なんともいえない気持ちで見送っていた。







夕食を広いテーブルで一人で食べた。

昨日まで、あいつがいて笑い合いながら食べていた食事。

毎日が楽しかった。

食事が終わり、アイツが作ってくれたシュークリームを食べ始めた。

食べながら、テーブルに雫が落ちていく。

何個も落ちるしずく

オレは自分が泣いている事に気が付く。

アイツの最後のシュークリーム

今までの中で一番美味しいシュークリーム

アイツがいなくなって気が付く、アイツの事を好きだった事を

女として好きだった事を

アイツから拒まれるのが怖くて、親友と言う言葉で誤魔化していた事を

廃妃と言う言葉で、ようやく気が付いたオレ

泣きながら食べたシュークリームは、オレの心に残った






次の日、ようやく気が付いたオレのキモチを伝えようと、学校に行ったら。

アイツは学校に2度と来なかった。




1年後。オレは済州島に来ていた。

自分の誕生日で1週間の滞在を許された。






皆様、こんばんは。

土日、ニンニク掘りのお手伝いをしに行ってきました。

ゴボウ掘りより、全然楽でした。

根と葉っぱを切り分ける作業で楽しかったー。

後は秋まで、畑仕事はないので臨時収入がなくて寂しいですね。


今回のお話は、「手離した後には、後悔だけ」です。

又忘れているお話なので、続きが楽しみですね。

では、おやすみなさい。