姫宮様は春川にいます

その言葉を何度も読み返す。

オレとチェギョンを結ぶ細い光が見えた。

「チェ尚官!」チェギョンの部屋から出たオレは、彼女を探す。

何時も通りにキリッと佇むチェ尚官。

「おはようございます!殿下。」頭を下げる。

「この紙を書いたのは貴方ですね?」

「・・・・はい。妃宮様の今回の件は全て私が悪いです。反逆罪、解雇全て受け止めます。」頭は上げることはない。

二人の間に長い沈黙が流れる。

「・・・前のオレだったら、絶対にあなたの事を許さなかったでしょう。

でも、貴方がオレにチェギョンの事を教えなかった理由は、資格がなかったんだと思います。チェギョンにとって酷い夫でしたから。でも貴方は今居場所を教えてくれた。オレはこれから、春川に出掛けます!」

「殿下、私は妃宮様が春川にいることしか、判りません。」

「大丈夫です!韓国全体から春川になったんですから、まだまだへこたれません。オレはここにはしばらく戻ってこれないので、コン内官とチェ尚官で東宮殿を守っていてください。」と着替えに戻った

殿下の後姿にずーっと頭を下げているチェ尚官だった。








「ねえ?ねえ?知ってる・・・?」

「何?何?」工場の昼休み時間。食堂のテーブルの上で話掛けられる。

「最近、春川の駅に背のでかいイケメンがいるんだって!」最近仲良くなったキム・ミンジ

「へーーー。」

「そのイケメン、ずーッと誰かを探しているみたい。」

「ふーん・・・。モグモグ・・・。」

「もう!イ・ヨンス!!ちゃんと聞いてるの?」

「だって、お腹すいちゃって。」イ・ヨンスはチキンにかぶりつく。

「まったく、イ・ヨンス!あなた黙っていれば可愛いのに、ショートカットにしたら少年になっちゃたわよ。それも食欲旺盛な中坊に。」溜息をつかれた。

食欲旺盛な中坊・・・OKOK!

そう見えたら、グットジョブだよっ。

「イケメンには興味ないの?」

「ナイナイ、私の好みは私だけを好きになってくれる人なの。」ふふーーんっと鼻を鳴らした。

「何えばってるの!そんなの当たり前でしょ。」

その言葉に胸が1回跳ねた。

「そうだよね。えへへっへーーー。」頭を掻く。

「今度仕事の帰り、春川に行ってみようかなー」とキム・ミンジが言った。

「駅反対だよ。」と又チキンを口に入れたまま話す。

「もう、ヨンスッたら、乙女心が判っていない!」背中を叩かれた。

「イケメンを見に行くに決まっているでしょう!来週の月曜日、ヨンスとのシフトの時間が合うから、付き合って!」

「付き合うって言うか、家に帰る駅だし。」

「もうっ!!」又背中を叩かれた。





毎日この工場で楽しく仕事をしている。

冬特有の重い雲を眺めながら、私は元夫に語りかける。

シン君・・・元気でやってますか?

廃妃の件、もう終わったかな?

あなたの傍には、ミン・ヒョリンがいますか?

あなたが一番欲しがっていた安らぎが、返せてよかった。

二人が仲良く幸せなら、私はここにいる事を後悔していない。

好きな人が幸せでいることが私の幸せ。

空を見上げ、白い息は上に向かう。








オレは駅の入り口の前のガードレールに腰を下ろし、乗る人や降りて帰っていく人を黙って見つめていた。

時々女の人たちに声を掛けられるが、口を開かない

絶対に話をしないオレに、皆根気負けして離れていく。

アンタ達と話している暇はないんだ。

オレは自分の妻を見つけに来てるんだ。

今日もこの街に雪が降ってきた。

空を見上げて白い雪を見上げる。


チェギョン・・・会いたい。








私は毎日バスに乗って工場に行く。

i pod touchに、ネットカフェで仕入れた曲を入れ通勤に聞く。

毎日が楽しいはずなのに。

やはり、宮の事を思い出す。

チェおねーさん、元気かな?コン内官疲れてないかな?

陛下。皇后。皇太后。皆元気かしら。


信号待ちをしているときに、珍しく家電店のテレビのニュースを見る。

そこには海外の大学に招待された殿下の代わりに、陛下が施設を訪問していると言うニュースだった。

「・・・!」

バスの窓にへばりついて、字を良く見ようとしたが、バスは走り出す。

殿下はここにいないの?

バスのイスに深々と座り、目を瞑り考える

何悩んでるの?私には関係ない。

私はもう妃宮じゃないんだから。










バスは春川の駅を通り過ぎていく。

雪の降る中、イ・シンは電車の駅の真正面で、会える筈のないチェギョンを待つ。

手袋をしていない手は、赤く染まる。

寒いな。

コートのフードを深く被り、寒さを凌ぐ。

今まで、温室育ちだったから。体がまだ慣れてない。

早くチェギョンの笑顔が見たい

あの笑顔を見るだけで、オレの心は温かくなっていたのに。

でも、オレはどう対応したらいいのか判らず、冷たい態度ばかりしていた。

チェギョン、お前の笑顔、かすんで見えなくなりそうだ。

早く会いたい。





「ヨンス!今日は付き合ってね!!」ミンジは私の腕を掴み、ぐいぐい引っ張る。

「面倒くさい・・・。」

「イ・ヨンス!友達の為だと思って!!」甘える。

「・・・仕方ないなーー。」私はミンジに付き合って、電車に乗った。

電車

ソウルから逃げてきたとき以来だ

ミンジは一生懸命話していたが、私は上の空で相槌を打つ。





駅に着き、私はミンジに引っ張られながら歩き出す。

一歩一歩、駅の出口に近づく。

「イケメン君はどこかなー?」のんきなミンジの声が聞こえる。

「ヨンスもちゃんと探して。」

「背が高いんだから、直ぐに見つかるよ」適当に返事をする。

早く家に帰りたいなー。

早くあの続きを仕上げたい。

あの大好きな背中を思い出しながら作っていた

あげる訳ないんだから、何で作ってるの?と自分に問いかける。

「あっ、ヨンス!あの人じゃない?」彼女の指差す方に、背の高い人が見える

「アーーッ、ちゃんと顔が見えないけど、イケメンだね。」ミンジは嬉しがる。

・・・・・・。

「ヨンス?どうしたの?」

・・・・・。

「何?どうしたの?ヨンス?アンタ、涙出てるよ。」

・・・・・・・。

私の目からは止め処もなく涙が落ちていく。

どんな格好をしていようと、必ず判ってしまう。

「ヨンス!どうしたの?」何も言わない私にミンジの声が大きくなる。

雪まみれの背の高いオトコは、ミンジの声に引き寄せられる。

私とカレの目が合う

一瞬固まった私。

でも体は無条件で走り出した。










皆様、こんばんは。

お久しぶりですね。

こちらの桜も散ってしまい、北海道にバトンタッチですね。

さて、私は先週性格悪いウィークでした。

でもようやく直そうと努力し始め、お話もアップできるようになりました。


こんな私のブログですがお暇なときに、覗きに来てください

あっ、コメント、いいねボタン有難うございます。

では、おやすみなさい。