![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210419/01/akashia93/ac/b8/p/o0400040014928578743.png?caw=800)
「はーあ!よく寝た!」とガバッと起きた私。
私はソウルの地下鉄から、乗り継いで、春川に辿り着いた。
そこで食べたソルロンタンのチェーン店の味にすっかり惚れてしまい、ダメ元でここで働けないか?と聞いた。
ここでは募集していないと言う、答えが返ってきた。
そうだよねー。むしが良過ぎる。そんなに上手くいく訳がない。
「じゃあ、募集があったら貼紙してください!直ぐに面接に来ますから。」と店長さんに頼んだ。
頭の良さそうな店長さんは「どうしてここで働きたいのですか?」と聞いてきた。
「今日、初めてこのお店のソルロンタンを食べさせて頂きました。すっごく美味しくて、この味を韓国の皆さんに教えたくて。そしてその中の一人になれたら!と思いました。
店長さんは「気に入りました!でもこの店は十分人手があるので、工場の方でもいいですか?」
「はい!どこでもいいです!」
「じゃあ、明日からこの工場に行ってください。工場長には知らせておきますから。」とニッコリと笑って言ってくれた。
「有難うございました。」とお辞儀をする私。外に出ようとしたが、店長に話しかけた。
「どうして、私に決めてくださったんですか?」
「このチェーン店の社長は、この店のソルロンタンをとても大事にしております。今の貴方のように、ソルロンタンを愛してくれる人なら、大丈夫だと思い決めさせて頂きました。それに判断は私に任されてますから。」
照れる私。
「じゃあ、明日から一緒に頑張りましょう。」と送り出してくれた。
住む所も18歳が一人で住むには手頃な所を探して、とんとん拍子に決まっていった。
全てが新しいことばかりで、私は毎日がヘトヘトになりながら、生きていた。
「おはよう。パパ・ママ・チェジュン。」と家族写真に挨拶をする。
私がここにいる事を、家族は知らない。
「おはようございます。陛下・皇后・皇太后様」と宮の家族だった人達に挨拶をする。
たった4ヶ月だったけど、この人達とは家族だった。
そして最後は元夫のイ・シン殿下の写真を見つめ
「おはよう。シン殿下。」と写真にキスをする。
でも「もうそろそろミン・ヒョリンが妃宮になるのかなー?」
この部屋にはテレビも新聞も取っていない。唯一の情報は、工場や本屋や電気屋さんのテレビに映るニュースくらいだ。
工場に行く時には三つ編みにして、メガネをする。誰も私の事を妃宮と思う人はいなかった。
「じゃあ、今日も仕事頑張りますか。」と私は元気よく部屋を飛び出していった。
仕
事が終わりロッカーで着替えていると、知り合いになったオバサンに
「あなたって、誰かに似てるわ。」
ドキッ。
「誰だったかしら、思い出せない。結構有名な人なんだけど。」と私の顔をマジマジと見る。
「誰だって似てる人はいますからね。」と逃げ腰になる。
「うーーーん。」とまだ悩んでいる。
焦る私は「じゃあ、お先に。」と慌ててロッカーを飛び出した。
危ない危ない。どうしよう。このままじゃ、直ぐにばれてしまう。
元皇太子妃って事がばれたら。
部屋に着き、さっき買ってきた物を袋から出した。
隙バサミ。
台所の横に下げている鏡を見ながら、私は三つ編みにハサミを入れた。
「中々上手くできたわ。これで誰もシン・チェギョンって言わないわ。」
鏡の中にはショートカットの私がいた。
切った長い髪の毛を見つめ、「バイバイ。妃宮様。」と言って、ゴミに捨てた。
私はこれから、この春川でショートカットのイ・ヨンスという名で生きていく。
もう宮には未練がない。
ただ心でシン殿下の事を思っていてもいいよね。
次の日工場に行くと、昨日のオバサンが「ヨンス!判ったわ!貴方に似た人が誰かって事が!」と言いながら近寄ってきたけど。
「まーーーっ、どうしたのー?こんなに短くなっちゃって。」と頭を撫でた。
「似合うでしょう?自分で切ったんです」と話を逸らしたが
「貴方に似てるって人。ホラッ昔のアイドルでbaby boxって言うグループがいたでしょう?その中のユン・ウネに似てるって思っていたけど、髪の毛切っちゃったから、そんなに似てないわね・・。」とオバサンは行ってしまった。
えーーーっ!そっちなのーーー!?もう髪の毛切っちゃたよー。
トホホッとがっくり肩を落としたが
まっ、これでカット代が暫く浮くわ!と喜んだ。
こんな私だけど、この春川でめいいっぱい生きていこう。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210419/01/akashia93/f8/0c/p/o0400040014928580968.png?caw=800)
オレは東宮殿に帰ってきて、チェ尚官が残って居てくれた事に、ビックリした。
「チェ尚官、遅くまで残っていたのですか?」
「さっきまでコン内官も残っていましたが、お帰りになられました。」
「そうですか、何時も迷惑掛けてすみません。」頭から雫が落ちるのも気にせずに、頭を軽く下げた。
殿下変わられました。
以前の殿下は人に気を使うなんて、しなかったのに。
今の殿下なら、妃宮様の事を大事にしてくれる。
前のような辛い日々を妃宮様には味あわせたくない。
そろそろ私の重い口も開かねばなるまい。
チェ尚官は殿下の後ろ姿を見つめ、今の殿下ならと確信した。
「殿下、ずぶ濡れのままでは、お風邪を引きます。早めにお風呂にお入り下さい。」
「判った。」
「チェ尚官。」
「はい。」
振り向きざまに濡れた髪の間から、真剣な目で
「オレの妃宮はシン・チェギョンだけだから、絶対に探し出します。」
私は顔を上げ、ハッとした。
「心得ております。」深々と頭を下げた。
シン君!シン君ってば!!
オレの後を一生懸命付いてきて、クルクル回りながらオレに話しかけるチェギョン。
シン君、シン君・・・・。その声は段々遠ざかっていく
ゆっくりと瞼が開く。
夢か。
少ししか寝ていないのに、目覚めのいい朝。
さっきまで見ていた夢の事を思い出す。
お前の笑顔が思い出せなくなりそうだ。
ノロノロと起き上がり、いつも通りにシャワーを浴び、挨拶する為のスーツに着替える。
自分の部屋を出て、何時もの習慣でチェギョンの部屋を覗く。
毎日1回はここに来る。
チェギョンがこの部屋にいた時は、あまり尋ねた事がなかった。
主がいなくなってから、尋ねるなんて。
オレはほんとにダメな夫だな。
一通り見て、何も変わらないことを確認していこうとしたら。
テーブルの上に1枚の紙があった。
オレは今までなかったものを見つけ、近寄った。
手に持つ紙が震えだす
「妃宮様は春川にいます」
皆様、こんばんは。
何時もコメントありがとうございます。
お話のアップの活力になります。
今日はたくさんのお方たちがフォローして下さり、どうも有難うございました。
では、おやすみなさい。