漢字の勉強中に突然現れたシン君。

私に話があるみたいだけども。

私にはない。

それにシン君は自分の事殿下ではなく、前みたくシン君て呼べって、小さい声で言っていた。

自分の心の中ではシン君って呼べるけど。

もうこの宮ではその言葉は出てこない。

「お前に話がある。」

「シン殿下、先程も言いましたけど、勉強が忙しいんです。邪魔しないで下さい。」と私はシン君を見ずに言う。

「シン チェギョン!夫である皇太子の言葉に逆らうつもりか!」声を張り上げるシン君。

私は動かしていた筆を置いて、シン君を見つめる。

「シン殿下、申し訳ございませんでした。話の内容は何ですか?」とシン君の目をジーッと見つめる。

先程声を上げてしまったシン君は、都合の悪い顔をしていた。

気を取り直し「さっきは声を上げてしまい、済まなかった。お前に話したい事は・・・。」

シン君の改まったお話をボーーーッときいてしまっている私。

シン君、ごめんなさい。週末、この宮を逃げ出します。

やっぱり庶民にはムリだったの。

妃宮なんて、ちゃんとした小さい頃から教育を受けていた人じゃないと勤まらない。

それに私の気持ちがもうはち切れそうなの。

このままじゃ、シン君に好きって言ってしまいそうで。

ヒョリンンと愛し合っているシン君なのに。

お邪魔な私が入り込めないのもわかっているから、宮というか、イ・シンから逃げ出すの。

ごめんなさい。

皇太子のあなたに泥を塗ってしまうけど、これで本当に愛しているヒョリンを迎えてあげて。

だって、どんな辛い勉強でも、シン君が傍で支えてあげると出来るはず。

私とシン君には一方通行の愛しかなかったから、勉強はダメでした。(あはははっ)

だから、この数日だけは大人しく過ごすの。

誰にも気づかれずにここを出るの。

皇太子妃になってお金を頂いた内から、少しだけお金お借りします。

後で、返しますから。

だって、ソウルには居られないから。

若干18歳が一人で生きていくには、世間は厳しいの!

私の事を知らないどっか遠くに、遠くに行くの。

シン君の言葉をボーッと聞いていたから、内容はさっぱりわからない。

でも、シン君の顔をちゃんと見ておかないと!

と思っていたら涙が勝手に出てきた。

この宮で覚えた音も出さずに一人でないく技を、とうとうシン君の前でやってしまった。

でも、いいや!どうせもう、ここを出て行くんだから。

「チェギョン!どうした?」とシン君は私に近寄る。

「何でもないです。ちょっとトイレに。」

私は慌ててシンくんのいるこの部屋から出て行った。






急に出て行ったチェギョンの背中を見て、溜息を付いた。

さっきオレの言ったことを、お前は聞いてくれたんだよな?

「シン・チェギョン。2年後の離婚は止めようと思う。お前が傍にいると、楽しいから、このまま一緒に暮らさないか?」

ようやくお前に言った言葉は、お前の涙に慌てた。

オレの前で声も立てずに、肩も振るわずに、ただ自然に涙は落ちていく

オレの事を黙って見つめるお前の目からは、止め処もなく涙が落ちていく。

流れる涙に何も関心もし召さずに、ボーーッとしている。

「チェギョン。どうした?」お前、大丈夫か?

涙ってそうやって出るものなのか?

泣いている事に気が付いたお前は「何でもないです」と言って部屋を出て行った。

一人残された俺はチェギョンの帰りを待つ。

待っている間、チャギョンの書いた漢字を見る。

女の子の独特な丸い字だが、一生懸命書いてある。

漢字なんて、普通に暮らしている分としてはいらないものだが、宮では使う。

今まで勉強した事のなかったお前は、頑張ってやっているのに、オレは知っていても助けなかった。

ほんと悪い夫だったな。

チェギョンがここに戻ってから、オレ達は最初からやり直すんだ。

お前に少しずつ、オレの気持ちを伝えていきたい。

お互いの事を話あおう。

オレはお前の小言を毎日聞いてやる。

そして抱きしめて、安心させる。

音も立てずに泣く涙なんか、流させない。

そして又シン君って呼んでもらう為に。

白い紙に無意識に、漢字でシン・チェギョンと書くオレ。

何度も書き、自分の恋する気持ちにビックリする。

オレがこんな事するなんて。

シン・チェギョン!お前ってやっぱり凄いな。と紙にシン・チェギョンだらけの漢字を見つめ笑う。

そんな身近な未来を思い描いているオレの所に、チェギョンは戻ってこなかった。







次の朝、朝の挨拶に行くために、チェギョンを待っていると、コン内官がコーヒーを持ってきてくれた。
「妃宮は遅いですね、私が見てきます。」とコン内官はチェギョンの部屋に行った。

昨日、ずーーッと待っていたのに、戻ってこなかったチェギョン。

チェ尚官に聞いたら、「皇后様と生け花のお勉強をしております。」と頭を下げて踵をひるがえして行った。

夕食の時間も「あちらで召し上がると連絡がありました。」

いくら待っていても、チェギョンは戻ってこなかった。

ウトウトと寝てしまったオレは朝、コン内官に起こされた。

「殿下、こんなとこで寝てたんですか?」

アイツの部屋が見れる所のソファに寝ていたオレ。

照れ隠しで「シャワー浴びてくる」と逃げ出した。

着替えて、チェギョンを待っているオレに


「大変です!妃宮がどこにもいません!」と転がるように駆けつけたコン内官

飲んでいたコーヒーカップをテーブルに置こうとして、皿にぶつかったカップは下に落ちていった。




皆様、こんばんは。

この北国にも、桜が咲きました。

先週蕾がピンクになったなーと思ったら、一気に咲きました。

短い春を楽しみたいと思います。

では、おやすみなさいー。