熱でうなされている彼女の了解なしでオレは。

「・・・っ・・・。」彼女が苦しそうに声を出した。


頭を振り、さっきまでの自分の行動を怒った。

オレって最低だ。

彼女のきがえを無言でしてあげて足のシップを張り替え、掛け布団を掛けてあげた

全部終わるまで、長い時間が掛かったように思える。

ベットの端に座り、彼女の額に濡れたタオルを置く。

「誰にも教えないで、皇太子にも、」彼女の声を思い出し、溜息を付く。

彼女の頬を撫でながら、「すまない。」

来た時よりも一回り細くなってしまったお前。

こんなになるまで、気が付かなかった間抜けなオレ。

彼女はずーっとオレにサインを送っていたのに。

思わず細くなってしまった彼女の体を抱き上げ、ギュッと抱きしめた。

熱が下がったら、話しよう。

ちゃんとお前の話聞いてやるから、だから早く良くなれ。と彼女の髪にキスを落とす。

もう1度掛け布団を掛けてやり、彼女の顔の傍に自分の顔を近づけ、彼女の荒い息遣いが静かな息使いに変るのを嬉しそうに眺めていた。







朝になり私は目を開ける・・見慣れた天井。

頭がスッキリしていて、昨日の具合いの悪さがうそのようだ。

確か昨日はあのままねむってしまったんだーっ

目の上に手を重ね暫くボーーッとしていると、ハッと気づき「今何時!?」と慌てて体を起こす。

ネグリジェの生地が私の膨らみに当たってチクリッと痛い。

不思議に思い、ちょっと中を覗いて見るが見た感じは何でもなさそうだ。

でも、やっぱり痛い。

何でかなーと思いながらも、私は着替えようと服を脱いだ。

あれっ?こんな色の着てたっけ?

きっと昨日は具合が悪くて覚えてないだけ!ッて自分で勝手に解釈をした。

ベットから降り、足の調子を見る。

あれっ?あんなに痛かったのに、今はちょっと痛いくらいだった。良かった、今日も乗馬クラブに行ける。

私の唯一の楽しみなんだもの、行けないと凄く落ち込む。

朝の挨拶の着替えが終わり、自分の部屋を出るとチェ尚官が待っていた。

「姫宮様、殿下は急な公務の為に出掛けてしまわれたので、今日の挨拶はお一人だそうです。」
「そうですか、判りました。」と残念なのか、嬉しいのか判らない溜息がその後に続いた。

学校に向かう車でも一人で座る。

何時もだったら、無口で機嫌の悪そうな人が隣に座っているのに、相手をされてないのが判っているのに、やっぱりカレがいないと寂しい。

あたしってほんと変っている。

いつも意地悪されて、無視されて、冷たい言葉しか言ってくれないのに、好きになるなんて。

私ってほんとバカだよねーー。と小さく笑いながら、カレが何時も座る所を優しく撫でた。

玄関に入るとガンヒョンが待ち構えていた。

「チェギョン!」と私を抱きしめる。

「ガンヒョン!おはようっ!」と笑う。

「全く見る度に痩せていく、バカチェギョン。」と私の肩や腕を摩る。

「そんな事ないよ、只今ダンスのレッスン中なので、心も体も絞られ中です!」と舌を出しておどけた。

頭を撫でながら「私には無理しないで!判った!シン・チェギョン!」

「判ってるって、愛してるよ!ガンヒョン!」と抱きつく。

「今頃判ったけど、あの冷たい皇子は?」

「今日は公務なんだって、朝から見てない。」

「そっかーっ、あんたもたまには心を休めなさい。」

「うん、判った。」と私は静かに笑った。




学校が終わり今日の予定で2時間位空いているのが判り、乗馬クラブに向かってもらった。

乗馬服に着替えて何時も通りに彼の所に行った。

優しい大きな瞳が私を迎えてくれる。

「会いたかった!」と彼の体を触る。彼も私を見て鳴き声をたてる。

「お兄さん、彼の調子はどうですか?」とにこやかに聞いた。

「妃宮様、昨日の足大丈夫でしたか?今日は止めた方がいいのでは!?」と心配そうに見ていた。
「大丈夫です!見て何ともないですから!」と足をバタバタさせた。ブーツの中はシップとテーピングでしっかりと巻いてある。

「じゃあ、気をつけてくださいね。無理をせずに遠出しないように。」と念を押された。





公務が終わり帰りの車の中で、オレは腕時計の針を確かめた。

まだ授業が終わっていない時間。

助手席に座っているコン内官に行き先の変更を頼む。

シートに深く沈む体。窓ガラスには流れる建物、そして雲。

オレはこの移動している時の窓ガラスから見える風景が好きだ。

ただボーッと見ているだけで、癒される。

左側には誰も座っていない。

ポッカリと空いている席

今日の朝から全然見ていないオレの妻シン・チェギョン

朝、熱も下がりホッとしている所に携帯の着信音

今日の公務の予定変更を伝えられた。

彼女の目が覚めるまで傍にいたかった。

目を開けたお前に「熱は下がった」と伝えたかった。

何でもいいから、彼女と話がしたかった。

車が指定された場所に着いた時には、帰りのベルが鳴り響いていた。

間に合った。

もう少ししたら彼女はここに来るだろう。と安心していると、彼女用の車が何処にもいなかった。

不思議に思いイギサを聞きに行かせた。

「殿下、妃宮はもう帰られたそうです。」

「?」

「殿下東宮に帰られますか?」

「イヤッ乗馬クラブへ。」とオレは目を瞑り答えた。

乗馬クラブに着き、着替えもせずに彼女を探す。

探し当てた彼女は自分の馬に跨り、世話係のヤツと楽しそうに話していた。

昨日足からくる熱の為に苦しんでいたのに、今日は無理をしないで欲しかった。

それなのに。そんなにここに来たかったのか?

そんなに世話係のヤツに会いたかったのか?

そいつを見る度に頬を赤く染め楽しそうにしている彼女を見ていると、オレの心に闇が掛かる。

彼女に会いたくてここまで来たのに。

きつく握り締めた手をスラックスのポケットに入れて、踵を翻しオレは乗馬クラブを出た。





皆様、こんばんは。

今日はバイトを有給で休みました。

年5回使わないといけないので残りの3回を慌ててとってます。(笑)

おかげで体が楽~~。

そしてパソコンで遊べる~~。では、久々にお話を書きに引き籠ります。

では、またーー。