震える足に力を入れ、私は歩き出そうとした。

でも、足が言う事を聞かず,縺れてしまい床に座り込んでしまった。

溢れる涙

口からは嗚咽しか出てこない。

皆の前で、愛を叫んだイ・シン

夢見る私がカレにしてもらいたいランキング2位の

皆の前で自分への愛を誓って欲しいをやってのけた。

この話を知っているのは、ガンヒョン達だけ、とてもあのカレが知っているわけでもなく。

シン君!!

シン君!!

今直ぐに走って抱きつきたい!!私だって、同じだよって。

卒業式の式典はまだ続いている。カレの起した行動にまだ皆興奮冷めずに、騒いでいた。

行かないと。時間だ。

もう1度足に力を入れて、立ち上がる。

カレの言葉を胸に沁み込ませて、私は自分の選んだ道を行く。






校門の前で、宮の車が止まっていた。

これに乗ってしまったら、もう後戻りは出来ない

荷物はもう準備して預けているので、ただあの車に乗ればいい。

芸術高校の校舎をもう1度見上げる

卒業することは出来なかったけど、私の高校生活は楽しかった。

色んな人に会えた。色んな事を覚えた。

そして、ガンヒョン、仲間も。

私の元旦那様イ・シンに出会えた。

憧れから、結婚へ急接近してしまった私の恋。

そして、本当の恋をした事に気が付いた時には、離れてしまった。

あの海に落ちた時に、運命は決まっていた。


車の横にチェ尚官を見つけて、ビックリする。

「チェ尚官さん、どうしてここに?」

「今日から 皇后様からの命令で、チェギョン様のお世話をさせて頂きます。

留学の事は全て私にお任せ下さい。」とお辞儀をする。

「だって、チェオネーサンって、皇太子妃付きじゃ。」

「細かい事は、御気になさらずに。」とニッコリと笑う。

綺麗な顔の人の笑顔に騙された私は、時が止まった。

「お妃様教育の時、厳しかったのにーー、チェオネーサンが適当なこと言ってるなんて、雪が降る。」泣き顔の私は、無理に笑う。

2人笑いながら車に乗り込み、飛行場を目指した。








式典の終わったオレは、そのまま自分の車を目指す。

途中、イン達に出会い「シン!!何処に行くんだ!?」横には憔悴しきったヒョリンがいた。

「先程はやり過ぎた。でも、次に行動したら、息が出来なくなると思え。」と冷たい目で言い放つ。

ヒョリンはインの陰に隠れてしまい、オレの事を見ない。

オレとヒョリンが過ごした2年間。

あの喫茶店で外を眺めている心地良い関係だった。

何も語らなくても、お互いの事が判る、その時はこれを恋と思っていた。

今のオレはそんな関係を恋とは言わないだろう。

二人は同じだった。プレッシャーの中で過ごす窮屈さから逃げ出したくて、もがいていたオレ達。

2人で同じ傷を舐めあっているだけで、何も変わろうとしていなかった。

でも、オレはシン・チェギョンと出会い、本当の恋を知った。

籠に閉じこもって寄り添っていたオレとヒョリン。

オレ一人がその籠から出てしまい、ヒョリンは慌てたんだろう。

どうにかして、オレを元に戻そうとしても無理だった。

ヒョリン、前を向いて、頑張れ。

オレなんかに執着していないで、何時も傍にいるインの気持ちに気が付いてやれ。

走り出しながら、インに「済まないが、オレは帰ったと伝えてくれ。」と叫ぶ。









昨日、来たチェギョンのアパート。

女が2人で住むにはちょっと小さい部屋。

それでも、彼女は誇らしげに、「私とガンヒョンでバイトしながら、学校を楽しむんだーー。」とオレの腕の中で無邪気に笑う。

ムッとしたオレは「そこにはオレも居るんだろうな?」と睨む。

さっきまでのあどけない笑ではなく、大人の笑いをしながら

「シン君は公務で忙しいから。中々会えないよ」とポツリと言う

オレは彼女を抱きしめ「そんな事ない!ちゃんと来るから。オレにこんな気持ちイイ事味わせておきながら、毎日来てやる。」と腕に力を込める。

「痛いよーー!痛いって!殿下痛いですーー!」

彼女の事を思い出し、階段を駆け上がる。

ドアを叩き続ける。

「チェギョン!!チェギョン!!いるんだったら開けてくれ!!」とドアに頭を当て、声を振り絞る。

彼女がオレの前からいなくなったのを、肌で感じていたオレ。

せっかく、ガンヒョンと暮らして専門学校の勉強をしていこうとした、彼女の夢を壊してしまった。

情けない。情けない・・・・。

自分の愛している女さえ、又守れなかった。

膝から崩れ落ちていく体をドアで支えながら、彼女の名前を呼び続けた。

何時間そこに居たのか判らなかったが、階段を登ってくる音がした。

「チェギョン!」立ち上がった目線の先には、ガンヒョンがいた。

「皇太子殿下、どいて!」と言って、オレを突き飛ばし部屋の鍵を開けた。

彼女はズカズカと中に入り、荷物を片付けた。

「ガンヒョン!チェギョンは?」

彼女のメガネの奥が冷たく光る。

「留学したわ。私はこの部屋の荷物を片付けに来たの、あの子の分はダンボールのままだわ。覚悟していたのね。」

「留学?」

「そうよ!もうチェギョンは、この韓国にはいない!」冷蔵庫を開け、箱を取り出した。

「この中にはケーキが入ってるの。チェギョンが私に、高校の卒業祝いで作ってくれた。」箱から取り出し、ケーキを持ち上げる。

「今日の卒業式にあのコ来てたの。アンタも殿下の晴れ姿見たいでしょって、私が誘った。朝,会った時にとても嬉しそうにしてた。殿下のあの言葉を聞きながら、旅立った。

あの子は我慢強い子だから、何もかも、自分で受け止めるのよ、私は貴方に忠告したはずよ!チェギョンに近づくなって!

何で・・・?チェギョンも守れないくせに、なぜチェギョンを好きになったの?

チェギョンのメールに、このケーキ、殿下に投げつけないでねって、最後に伝言が書いてあった。そんなの私が守るはずがない!」

ガンヒョンの持ったケーキがオレの顔、目掛けて飛んできた。

護身術を習っているオレは、彼女の事位避けきれるはずだった。

でも、オレは避けずにケーキを顔に受けた。

飛び散る生クリーム・スポンジ。

「皇太子殿下!あんたの事一生許さない!捕まえるのなら、捕まえなさい!
私は全然、平気!チェギョンの苦しさに比べたら、捕まる方がまだましよ!」と部屋を出て行った。

顔中にケーキを浴びたまま、立ち尽くす。

怒る気はまったくない。

彼女もチェギョンの事が好きだから、やった行動。

口についた生クリームを味わう。

けして最高に上手いと言う味ではなかったけど。優しい味がした。

そのチェギョンの優しさが、体に広がるようだ。

顔を拭こうと、ティッシュを探しだした先には、チェギョンの携帯が置いてあった。

蓋を開けて待ち受けを見ると。隠し撮りのオレの姿が写っていた。

「同じだ。オレ達、同じだったんだ。ほんと、バカだった。」悔しくて、涙が溢れてくる。

生クリームとスポンジと涙でオレの顔はグシャグシャに崩れていた。









皆様、こんばんは。

19話、ガンヒョンさんったらー、やっちゃいましたねー。

男気があります。(笑)

さーっ、この後どうなるのかしら?明日が楽しみです。

では、おやすみなさい。