「泊まってもいいだろう?」

「ダメです。」

「泊まる。お前が一人でこんなとこにいるなんて。」

「それが当たり前です。」

「ほらっ、もう服着たんだから行かないと。」と彼女に背中を押された。

「チェギョン、冷たくないか?こんな時は何時までも抱き合っているのが、普通みたいだぞ。」

「皇太子殿下?朝のご挨拶がありますよ。」

「チェッ」

「もう日付が変わっちゃうから、早く帰らないと」

「もっとしたかった。」

「今は無理です。」と手を横に振る。

「仕方がないな、じゃあ行くよ。」とキスをする。

「おやすみなさい」と扉を開けてカレが車に乗るまで、見つめていた。

車は走り出すが、一旦止まり窓ガラスが開いた。

「チェギョンお休み。」と手を振り車が走り出した。

私は車が見えなくなるまで、見つめていた。








「あれ?シン!?早いな。」ギョンがビックリする。

「今日は卒業式だからな」

「そうだよなー、ほんと早かった。好き勝手に遊んでばかりいたけど、最近はオヤジの仕事手伝うようにしてるんだ。」

「・・・?」

「チェギョンがさ。アイツを見ていると、オレも頑張らないと、と思うんだ。」

「オイ。オレの女に惚れるなよ。」と意味深に笑う。

「うん?なんか引っかかる。もしかして、お前・・・。チェリーご卒業か!?」

「卒業式までには卒業しないとな。」とニヤリと笑う。

「マジかよーーー!うらやましーーー!で、どうだった?」

「・・・・・・教えない。」

「はーーーーっ!?一人勝ちしておいて、次のヤツ達には伝授しないのか?」

「研究熱心なお前なら、大丈夫だ」と言っていると、インが教室に入って来た。

オレとインは手を上げ頷きあい、そして教室を出て行った。

「オイ!何処に行くんだ?」とギョンとファンは慌ててついて行った。






今日の朝、ミン・ヒョリンにメールをした。何時ものとこに来て欲しいと。

インにもメールを「明日の朝、ヒョリンと会うから付き合って欲しい」と送った。

階段をインと2人で上がっていると。インがポツリと言う

「お前はヒョリンの事。」

「終わった話だ、オレにはチェギョンがいる。」

「そっかー、ヒョリンも気が付いてくれれば。」

「そうだな、ちゃんとしたケリをつけないと。皆が前に進めない。」階段を登りきり、あの場所を目指す。

オレはゆっくりとその場所に入る、インは背中を向けて、入り口に立っていた。

「シン!メール貰って嬉しかった!4月から東宮殿に住むから、今度こそ貴方と結婚できる。」夢見るような、ヒョリンの目が、オレを踏ん張らせた

「ミン・ヒョリン!はっきり言うが、その話はなかった事に決定した。

オレが王族会に掛け合った。だから、そのことは皆に言ってはならない!」

「何で!?私とシンは元々結婚するはずだったのよ。」

「もう・・・、オレにその気はない。」

「何で?私達、2年も付き合ってきたのよ。」

「長さの問題じゃない、どんなに相手の事を想い欲しがるのに、時間は関係ないことが判った。」

「シン・チェギョンなの?あの子がシンの事を惑わしているの!?」

「いずれは、又オレの妻に戻る。」しっかりと強い言葉で言う

「あの子に言ったのよ!」

「ヒョリン!何を言った!」突然の声の変わりように、ヒョリンがビクッとなり、インも後ろを振り向いた。

「シンの子が出来たって。」

「お前、その冗談、皇后だけじゃなかったのか?」手に力が入り、ギューッと指がなっているようだ。

「シン・チェギョンにも言ったわ!シンとよく行っていた喫茶店に連れて行って、2人の事話をした。どんなに、私達が愛し合っていたかを思い知らせる為に!」

イ・シンの形相が変わる。

素早い動きで、ヒョリンの腕を後ろに組み、首に手を掛けた。

「ヒッ!!」引きつるヒョリンの顔

「今まで色んな護身術、テコンドーと習って、相手の息の根を止める方法まで習った。

ヒョリン。お前の事ものの1秒で、息を出来なくさせる事が出来る。」

「シン!止めろって!」インが間に入る。

「あのチェギョンに言ったのか?一生懸命生きようと頑張っているチェギョンに!
声が出なくなり、足を引きずる彼女に!

お前が愛だと言っているのは、自己満足の愛だ!」低い声でヒョリンの首を締め上げていく。

「シン!止めろ!」ギョンとファンも止めに入り、3人がかりでシンをヒョリンから離した。

下に座り込み首元を押さえ、ゼイゼイしているヒョリンを見下ろすイ・シン

「ヒョリン、お前と付き合っていた2年間を消したい。オレはお前の何処を見ていたんだろう。自分が悔しい。2度とオレの傍に近寄るな!「宮」にも入るな!敷居を跨ごうとしたら、オレがお前の事消してやる」今まで聞いた事のない声は、4人を怖がらせた。

踵を翻し、携帯を取り出し1番を押す。

繋がらないコールが鳴り響く。

何度かけ直しても、繋がらない!イラつくオレは階段を降りる


途中校長に会って「殿下、今日のスピーチ頑張って下さい。」皇太子スマイルを作り「頑張ります」とお辞儀をして外に出ようとしたら。

「殿下、もう時間ですよ。どこに?」校長に気付かれないように、舌打ちをした。


何度掛けても繋がらない電話。

諦めたオレはコン内官に電話を掛けた。

「コン内官!至急今言う住所に護衛を派遣して、シン・チェギョンを探し出してくれ!」

「殿下、申し訳ございません。」

「なんだ?」

「今日は、殿下がおっしゃった事には、従ってはいけないという、急な申し入れがございました。」

「陛下か?」

「いえ、皇后様からでございます。」

「皇太子のオレの命令が通らないのか?」低い声は諦めを漂わせる。

「申し訳ございません!」コン内官が頭を下げているのが、見えるようだ。

「・・・判った。もういい。」と携帯を切る。

昨日の夜からほんの30分前まで、浮かれまくっていたオレ

でも、今は好きな女を捜しに行けない、情けなさでいっぱいだった。








教室に戻り、待ち受け画面を見る

ヒョリンにあんな事を言われたのに、オレと逢った時にはいつも通りに迎えてくれた。

シン・チェギョン、お前ってヤツはほんと強い

昨日チェギョンと結ばれたオレ

彼女がどんな思いで、切り出したのかも知らずに。

無我夢中で、彼女と繋がっていた。

チェギョン・・・。チェギョン。

頼むから何処にも行かないでくれ。教室の机に手を顔の前に置き祈る。

皇太子としてのスピーチがある為に、抜け出せない自分が腹ただしい。

落ち着くんだ。

待ち受けの彼女の笑顔をみても、この胸騒ぎが止まらない

時間がきて、皆、体育館に集まった。






時間になり皆が体育館に集まるのを、体育館の2階から隠れて見ているシン・チェギョンがいた。

ガンヒョンが誘ってくれたこの場所

「あんたも、殿下の晴れ姿見たいでしょう?」

「うん、見たいけど。入れないし。」

「何言ってるの!ここの高校にいたあんたが知らない道はないでしょう。

体育館の2階の道具保管場所に隠れてなさい。時間になると出てくればいいんだから。」

朝早く、芸術高校に呼び出された私は、ガンヒョンの提案に驚く

殿下の卒業式を見たかった私は、ガンヒョンに飛びついた。

「ガンヒョン、愛してるーー!」

「そんな愛はいらん!」

「またまたーーッ、一生愛するから!」

余りしつこいので「はいはい」と適当にかわす彼女。

本当だよ、何時も私の為にやってくれるガンヒョン、愛してる。

ずーーっと、離れていてもガンヒョンの事愛してる。







卒業式が始まり、静かな緊張が広がっている。

何時も、こういうのキライだったけど、出ていない私にはこの緊張感が心地いい

色んな祝辞が終わり、次は皇太子イ・シンの番になった。

私は少し前にで、カレを間近に見ようとした。

この静けさの中に、カレのクツ音が響く

そして、カレ特有の皇太子スタイルで立つ姿を、出席していた人達は、見惚れてしまう。

ほんと、カレほど皇太子が似合う人はいない。

冷たい瞳にカリスマ性を漂わせる雰囲気。

ここにいる人達は、それに引き込まれカレから目を離せなくなる。

そんなカレと私は、昨日。真っ赤になる。

ほんの半年前までは憧れの人だったのに。

体を重ね、カレの汗ばんだ肌の匂いを感じた。

愛しい。キスにカレへの気持ちを込める

私の人生を掛けてまでも、この人を守りたい!私の全てを差し出したいほど、愛してしまった。もう戻れない。

ガンヒョンに逢う前に、「宮」に電話をいれた。

皇后様に繋がり、事は急に動いた。


今、カレを生で見れるのは、今日で最後。


カレを愛しすぎた私は、皇太子イ・シンを守る為に韓国を離れます。

少しずつ、涙が出て来た。

今で最後なのに、目が涙で溢れてカレの事が上手く見れない。

何度、涙を拭いても止まらない。

もうそろそろ時間だ。私は泣きながら、出て行こうとしたら

「皇太子の話はここまでにしましょう。少しばかり、イ・シンの話をさせて下さい。」

皇太子がいつもと違う感じで、皆ざわつき始めた

私の足も止まってしまった。

「私イ・シンは半年前に祖父の遺言で、シン・チェギョンさんと結婚しました。

が、幼い私は彼女の事をどう扱っていいのか判らず、手離してしまいました。

今になって知る自分の本当の気持ち。

この気持ちを皆さんの前で、宣言したいです。

皇室はウソを付いてはいけないので、私の気持ちが本気だという事を知って貰いたい。

では、今ここにはいないシン・チェギョンへ

私イ・シンは、シン・チェギョンを愛してます!

彼女をもう1度妃宮にする為に、頑張ります!」と声を張り上げた。

初めて聞く、カレの大きい声

突然のカレの告白に皆、ビックリしていたが

「皇太子!頑張って!」「応援してます!」色んな言葉が通い合う。

「この場所を借りて言ってしまって済みません。どうしても,言いたかったんです。」
と頭を下げた




皆様、こんばんは。

人魚姫18…大人の話が長くて普通の文が少しだけだったので、19と合体させました。

それにして、シン君たらーっみんなの目の前に告白なんて。

恥ずかしいー。

いつも、コメントありがとうございます。

では、おやすみなさい。