カレがここからいなくなり、私は又ダンボールを持ち上げる

さっきまで交わしていたキスは私の気持ちを揺さぶる。

「彼の子を授かったのよ。」とミン・ヒョリンの言葉が何度も浮かぶ。

そしてもう1つの言葉も

「オレの言葉だけ、信じろ!!」殿下に聞かなかった。

彼女の事はどうなっているのか?もう、次の皇太子妃に内定している彼女がいるのに。

私の元に来たカレ。

嬉しかった、思わずカレに全てを任せようと思った。

ダンボールを抱えたまま、ボーッとしていると。

ドアにノックの音が響く。

殿下が何か言い忘れたのかと思い、簡単にドアを開けた。

「はい!?」

すると、そこには皇后様が立っていた。

「皇后様!?どうしてここに?」

「シン・チェギョンさん、お久し振りね。」と挨拶をする。








車の後部座席に乗ったまま私達は話をした。

「声が出るようになったのね。」

「はい。」

「そんなに硬くならずに、元は義理の親子だったのだから。」

「はい。」

「時間もないから用件だけ言いいます。シン・チェギョンさん、留学して下さい。」

「!!??」

「太子のそばからいなくなって欲しいんです。」私は俯いたまま、その言葉を全身に受け止めた。

皇后様の顔を見た時に、感じた。

私と皇太子殿下を離そうとする強い思いが流れ込んできた。

「この間、太子に問い詰めました。ミン・ヒョリンが貴方の子を授かっていると言ってたが、これは本当の事かと。

太子は「馬鹿馬鹿しい!!やったこともないのに、どうしたら出来るのか教えて欲しいです。」と笑ってました。

でも、皇室ではミン・ヒョリンを次の妃にと、動いています。

もう後戻りは出来ないのです。貴方もそれは知ってますよね。

太子は笑った後「オレの姫宮はシン・チェギョンだけです。彼女が戻れないのなら、皇太子を辞めます。」と言って出て行きました。

シン・チェギョンさん、私はあの子が皇帝になるために一生懸命やって来ました。

あの子の母を辞めて、皇室にずーっと尽くしてきました。これも皆、太子が皇帝になる為です。

でも、あの子は貴方じゃないと、皇太子を辞める覚悟まで出来ています。

貴方が羨ましいです。

私と皇帝とはそんな間柄ではなかったので。

私はシンが皇帝になる為なら何でもします!!

シンが愛している貴方を、傷つける事なんて何とも思っていません。」と皇后様は私を見て言った。

その強い思いは私を押しつぶす。

「留学の手続き、金銭面の事は全てこちらで請け負います。2年だけ韓国を離れてください。
2年経ったら、シンも貴方の事忘れるでしょう。貴方も少し前に言ってました。

殿下は皇帝になる為に、生まれてきた人だって。その気持ちは変わってませんよね?

明日の10時までに良い返事をお聞かせ下さい。」

私を降ろした「宮」の車はゆっくりと走り出した。

私は車が見えなくなるまで、そこに佇んでいた。





コンコン。

窓から夕日の温かさがなくなり始めた夕方。

ドアを叩く音がした。

私はソファから立ち上がり、ドアを開けた。

そこには、イ・シン皇太子殿下が、沢山の荷物を持ち立っていた。

皇太子だから、沢山の荷物なんて持ったこともないのに。

胸の奥がギューッとなる。

「遅くなった。妃宮のとこに持って行きたいと言ったら、料理長が張り切ってしまい、色んな物を持たせるんだ。全くお前は「宮」では人気者だったからな。」

小さい玄関でカレは靴を脱ぎ中に入って来た。

私が黙って見ていると「ちゃんと靴脱いたぞ。」と都合悪そうに言った。

「覚えてくれていたんですね。」

「お前の言った事は覚える、お前はいつもオレに正しい事を教えてくれていたが、素直になれないオレは、お前の事無視してばかりで済まなかった」

「気にしないで!!あの料理長さんが作ったのでしょう?早く食べたいな。」とテーブルに誘った。色んなモノを乗せてしまうと、テーブルからはみ出していた。

「全く多過ぎだ。」

「大丈夫だよ!全部食べれるもん!」とえばった。

「大食いシン・チェギョンだったもんな。」

「さー、早くたべよっ!」と殿下に箸を渡した。

「じゃあ、2人の高校卒業に乾杯。」とコーン茶で乾杯する。

私は、久し振りの美味しい食事を食べ、美味しい・美味しいと連発して食べていく。

「お前は本当に美味しく食べるなー。」箸を持ったまま呆れる

「殿下は食べなさ過ぎです。」と膨れる。

「でも、そんな妃宮可愛いな」とカレは私の頬に付いた御飯粒を食べた。

「!!!」真っ赤になる私。

「東宮殿のテーブルは遠過ぎて、話もろくに出来なかったけど、このテーブルなら、キスも出来る」と笑う。

「・・・・。」ますます赤くなる私に、殿下はキスをする。

「一日でも早く、こうして食事が出来るようになりたい。」カレの温かい瞳が私の目と合う。

食事が終わり、コーン茶を飲み休んでいると

「殿下、聞きたい事があるんですけど。いいですか・・?」

「いいよ。」と姿勢を正す。

「えーーっと、殿下の次の妃宮候補のミン・ヒョリン」

「何度言ったら判るんだ?オレの妃宮はチェギョンだけだって言ってるだろう。」

「だって・、私はもう妃宮じゃないし、もう1度戻るとしても皆が反対する。
妃宮の時だって何も出来なくて辛かった。
それなのに足まで悪くなってしまって、皇太子殿下にとって私は役立たずなの。

だったら、殿下の本当の婚約者のミン・ヒョリンさんの方が。」

「シン・チェギョン!!」カレの澄んだ声が響き渡る。

「彼女とは終わった。お前がオレの元に嫁いだ時に終わったんだ。」

「うそだ!だって、殿下の誕生日の時、2人でキスしてた。」

「あれは避けきれなかった、どちらかに気持ちがなかったら、キスにはならない。
それにあの後、お前の部屋に行っても全然反応してくれなかった。

ずーーッと部屋の前に座り込んでいたけど、お前は出て来てくれなくて。」

「確かにノックの音はしてたけど、チェ尚官だと。」

「天下の皇太子が妃宮の部屋に入れなくて、ドアの前に座っているんだ。
チェ尚官に頼んで人払いしてもらっていた。後、彼女に話を合わせて貰った。」

「私、あの時ずーッと泣いていて、殿下に片思いしていたから。2人のキスがショックで。」

「妃宮も片思いだったのか?オレもお前に片思いしてた。

バカだ!!オレは本当にバカだった。ちゃんと歩み寄ればよかった。

無理をしてまでも、あの部屋に入っていって、ちゃんと話をしていればお前は妃宮のままだったのに。

昨日、両陛下に言った。お前と一緒になれなかったら、皇太子を辞めますって!!

元々、皇太子なんて、オレには合わなかったからな。」

「殿下、そんなことないよ。皇太子殿下はイ・シンしかいない。辞めるって言っちゃいけない。」とカレに近づき訴える。

「そんなに迫るなよ、皇太子を辞めるのは、最後の手段だ。色んな事をやってもダメだったらの話だから。」と頭を撫でられた。


2人の間に沈黙が続く。

「あっ、忘れてた。」宮からもってきた紙袋の中から箱を取り出し、テーブルに乗せる分を片付け置いた。

「ほらっ、お前の好物だろう?」と取り出したのは、ベリー系がたっぷり乗ったタルトだった。

「あっ、これ大好き。何で知ってるの?話した事なかったのに。」

「デザート、これだけは大きめにカットして貰っていた。何時もダイエットしないと女官達と騒いでたのに。当たりか?」と微笑む。

胸がギューーっとなる。

あの頃、全然話をした事のなかった私達だったのに。

涙が零れた。一粒・一粒流れ出す涙。カレに見られなくて、背中に抱きつく。

「オイ・オイ。背中に抱きついたら、妃宮の顔が見れない。」と無理に私の体を自分の正面に持ってきた。

「泣くな、ほらっこれ持て。」とナイフを持たされた。

そして、私のもっている手にカレの手を重ねて

「ケーキ入刀。」とゆっくりとタルトをカットし、スプーンで食べさせてもらい

「美味しいか?」ウンウンと頷く私の涙は止まらない。

「そんなに泣くくらい、上手いのか?」

「殿下、大好きです」殿下はホッとした顔になり座り込んだ。

「その言葉、ようやく貰えた。ずっと聞けなかったから、ちょっと心配してた。」

「殿下。」もう、心臓が壊れそうです。



皆様、こんばんは。

お話は突然終わってますが、なんせ健全なブログなもんでー。

大人なお話はかーーっとです。(笑)

では、こんな風に時々カットしますのでよろしくお願いいたします。