急に現れたイ・シン皇太子殿下。

真っ直ぐに走ってくるカレの姿を目にして、私の腕に沢山あった花束が下に落ちていった。

何で?

何で、こんな所に来るの?それも走って。

だって。この間、もう会いたくないって言ったのに。

それとも、それに対しての文句かしら?

殿下の突然の行動に頭の中がパニックを起していた。

そして殿下は私に抱きついた。

「迎えに来た。もう1度オレの妃宮になってくれ。」と頬にキスをした。

そして、大きいカレが私に覆い被さり

「ずっと言いたかった。」と私をきつく抱きしめた。

私の顔は自然と上を向き、青い空が見えた。

風も強くないのに、流れる雲。

私はカレの体温・体を感じながら、形の変わる雲を追いかける。

温かい。

カレの心が今なら判るような気がする。

婚姻していた時には、全然判らなかった不思議な謎の男イ・シン

謎の男をずーーッと追いかけていた私。

追いかけても、追いかけても、追いつけなかった男。

あの海の底で泡になったイ・シンに恋していた人魚姫

カレに恋していた人魚姫はもういない。

王子様が幸せになる為に、泡になったのに。

その王子様が、今、庶民に生まれ変わった私を抱きしめている。

カレの温かい気持ちが全てを溶かしていくようだ。

もう我慢しなくてもいいの?

カレへのキモチ我慢しなくてもいいの?

涙が溢れ出す。

一筋一筋と流れ出す涙。

青い空が何時もより眩しかったせい

カレへの想いを閉じ込めていた小箱と鍵がビックバーンを起した。

小箱も鍵も粉々に散らばり、それらは私のキモチになり体の隅々に行き渡る。

好き。

好きです。

大好き。

この想いをカレに伝えたい。私の喉が震えだす。

「イ・・・・。」涙が止まらない。

カレの体がピクッと動く。

「イ・シン・・・・で・・・・。」涙で声が出なくなる。

カレは体を離し私を見つめる。

「妃宮!!声出せるのか?」

涙、鼻水でグチャグチャな顔の私は下を向く。

「オイ!!下を向いてちゃ判んないだろう!!」

「だって、顔・・・・・・、ひ・・どい・・・。」

「妃宮、声が戻ったんだな。」と抱きしめられた。

頭に手を添えられ、何度も撫でられる。

「妃宮の声、聞きたかった。罵られようが、泣かれようが・、ただ妃宮の声が聞きたかった。」また流れる涙。

「殿下、私の事、妃宮って呼んじゃダメだよ。」カレの胸に顔を埋め、小さい声で言う。


「オレの妃宮は、シン・チェギョンだけだ。」カレの声が耳元で響く。

きっと、涙は止まらないだろう。カレが傍にいる限り。







「あのう・・・」

2人は抱き合ったまま

「あのう・・・、殿下?皆が見てますよ。」と男の子の声がした。

2人はビクッとして、顔を見合わせる。

ここが高校って事をすっかりと忘れていた。私達の周りには、凄い数の人達がいた。

カレは思い切って顔を上げて、何時もの氷の王子様を作った。

そして私の顔を隠し「忘れ物をとりに来ただけです。皆さん、ご卒業おめでとうございます。」カレは私の手を繋ぎ、歩き出す。私の足に合わせて歩き出してくれた。

「こうして、ずっと妃宮の事支えていきたい。」と軽くキスをする。

私達を囲んでいた人達のフラッシュの嵐の中、車に向かって歩きだした。









皆様、こんばんは。

人魚姫10です。

えーーっ、チェギョンさん。シン君の気持ちに応えるの?

まだまだ切なくていいのにー。

では、またー。