エレベーターの扉が開くと同時に、目の前にファンが立っていた。

「シン。願いが叶ったね。」ニコーッと笑いながら、携帯を掲げた。

そこには動画がアップされていた。

自分が映っている。何だという顔でファンを見下ろしたら「ギョンからさっき届いたんだ。」

ピンときたオレは、ニヤリと笑う。

「シンのとこにも着てると思うよ。暇になったら開いてみてよ。」嬉しそうなファン。

「そうだな。チェギョンはオレの女だって、みせつけてやりたくて、ずーっとこうしたかった。」肩に乗せている彼女の体をギュッと掴む。

「ファンさん、助けてくださいー!私はもう恥ずかしくてー、シン君降ろしてくれないんです。」かわいそうに、こんな目立つ事をされてしまい、真っ赤な顔で半泣き状態のチェギョンちゃん。

「まぁーまぁー。シンもようやく、皆んなに、公表出来たから嬉しんだよ。付き合ってあげて。」ニヤニヤ笑う。

「ほらっ。頼まれ物。サインして。」ファンさんが差し出した小さなトレイ。

トレイには、紙と万年筆とこのホテルのカードキー

ファンさんがトレイを持ち、シン君が私を抱えながら書いたので何時もの几帳面そうな字ではなかった。

イ・シン。シン君の書いた名前まで愛しくて仕方がない。

「じゃあな。」カードキーを受け取り、エレベーターの上昇のボタンを押す。

フロントのあるフロアのエレベータ―の目立たない所に居ても、色んな人達が私達を見て驚き見上げ、ニヤニヤ笑ったり、恥ずかしいわ!とオバ様達はイヤーなモノを見る目付きで通り過ぎていく。

シン君はそんな目線をかわし、知らない振りで私を肩に置いている。

「チェギョンちゃん、後でプレゼントがあるから。楽しみにしといて。」ファンさんがニッと笑う。

「えっ?」

「チェギョンに?」シン君の声が低い。

「大丈夫だって。チェギョンちゃんが貰ったらすごく喜ぶものだから。」エレベーターがこの階数に近づいた。

ポンッと言う音と共に、エレベーターが到着して扉が開き、ファンさんに見送られながら私達はその中に吸い込まれるように入り込んだ。








チェギョンちゃんへのプレゼント。

前に、ドナのパン屋で昔の写真を見ていた時に、キミがポツリと呟いていた言葉。

「高校生のシン君に会ってみたかったですねー。」ジーッとシンの写真を見つめ言ってたんだーと、ドナが後で教えてくれた。

高校生からの付き合いの僕達。

シン、ギョン、インは大人しくて引っ込み思案な僕を友達として、よく遊んでくれた。

こんな何も取り柄のない僕なんか、何で三人と合わないよーと最初の時。

「馬鹿!お前だからイイに決まってるんじゃん!」ギョンにバシッと叩かれグイッと肩を組まれた。

シンは「オレ達はちょっとやんちゃだから、お前ならオレ達がいき過ぎた事をしたら、引き止めてくれると思ったから。」長い前髪の隙間から見えるシンの冷めた目と冷ややかな笑い

「そうそう、俺達はファンが気に入ってるんだ。だから、何にも気にするなって!」インがニッコリと笑う。

高校の時から、目立つ存在の三人。

皆、親が財閥で、中学の時から徹底的に遊び尽くしてきたみたいで。

将来は親の跡を継がないといけない事を自覚してきた3人は、歯止め役に僕を友達に選んでくれた。

まーっ、そう言う設定だけど、ちゃんと彼らはこんな僕を友達として遊んでくれて、どこへでも一緒につるんでいた。

そんな3人を幼馴染のドナから教わったカメラで撮り始めた僕。

僕には勿体ないくらい凄いこの3人。

財閥の跡取り息子達は、将来きっと大物になっていくに違いない。


韓国の国王の血筋を受け継ぐシンは、皆んなを纏める統括力と威厳の才能を持ち合わせ、モデル級なスタイルを持ち、クールビューティとは、彼のためにあるかも知れない。


インは、人当たりの良さから、いろんな情報を持ち、危ない橋を渡らないように、導いてくれる。

あっ、女子への気配りはこの中では一番だ。


ギョンは、思ったことを素直に言ってしまうダメな面もあるが、その屈託のない笑顔に皆引きつけられる。

そして、プロ並みなダンス。

そんな魅力的な3人達を記録に残しておきたい。

3人の奥さんや子供に、ほらっキミ達の旦那様やパパはカッコ良くて凄かったんだよーって、見せてあげたかった。

それが、こんな僕を友達にしてくれたお返しだと勝手に思っている。

最初は嫌がっていたけど、後々何かあった時には証拠として使えるなって事で、了解を得た。

高校、大学、色んな彼らを撮った映像がいっぱいある。

この中からチェギョンちゃんに見せれるレベルをデーターにして、あげよう。

シンが初めて好きになったチェギョンちゃん。

去年まで、親の決めた婚約者と結婚する事が決まっていたシンは幸せな人生を諦め冷めきっていた。

そんな冷めたシンをこんなに熱い男にさせたチェギョンちゃん。

キミって本当に凄いよ。

ギョンから届いた、シンの堂々交際宣言の動画。

早くドナにも見せてあげたい。

僕の奥さんは、シンが変わっていくのが楽しみで。この動画を見て泣くかもしれない。(笑)

僕も親の会社を継ぐ為に、このホテルを退職する日が近づいてきた。

色んな業務を引継ぎ中で、毎日が忙しいけど徹夜して作るぞー。と、1人でガッポーズをした。











カードキーを差し込み、重厚なドアを開けた。

我がホテルでも最高ランクに入るこの部屋。

広い部屋は、モダンな造りでとてもセンスが良い。

シン君は当たり前のようにズンズン入っていき、私をベットの上に優しく下ろした。

私の上に跨り見下ろすシン君は、何も言わずに私をただ見つめる。

顔に掛かっていた私の長い前髪を耳に掛けて、何度も後ろに流す。

どの位時間が過ぎたんだろう、見つめられ過ぎた私はどんどんと頬が赤くなっていくのが分かる。

「シン君。そんなに見つめないでください。」恥ずかしくて、目をぎゅっと瞑った。

「こらっ。目を瞑るなって。」私の頬に細い指が触れた。

「ようやく会えたんだ。ちゃんと顔見せろって。」ユックリと瞼は開く。

「やっぱり、可愛いな。」カレの親指は私の頬を撫で、カレの顔は私の顔に近づき・・唇が重なる。

「チェギョン。」私の名前を優しく呼ぶカレの久し振りな声に私の心臓が、ギュー―っとなる。

「チェギョン。すまないが、昼までには戻らないといけない。」又唇は重ねられる。


制服のブラウスのリボンが解かれる。

「毎日、お前に会いたくて、会いたくて。」一つ一つベストのボタンは外されていく。

「父親が倒れてから、色んな事があり過ぎて。」ブラウスのボタンも外されて、シン君がボタンに夢中になっている隙を見て、私は素早くカレの身体から逃げ出した。

「チェギョン?」突然の事で、カレは驚いて目がまん丸だ。

「シン君に会えなくなったこの5日間。ずーっとシン君に抱かれたかったです。」私はカレの上に跨り、ベットに押し倒した。

「抱かれたくて、抱かれたくて。」驚いているカレのワイシャツのボタンを外していく。

1つ外れる度に、カレの肌が見え

「本当は抱かれたいですよ。でも、止めます。」意外な言葉にシン君は「何で?久々に会ったんだぞ。」起き上がろうとしたが。

「ダメです。だってシン君余り寝てませんよね?シン君って痩せているから直ぐに顔に出ちゃうんですよー。」眼鏡を外し横のデスクに置く。カレの顔をゆっくりと撫でてあげながら

「やっぱり頬コケてます。」カレのワイシャツのボタンを全部外し前を開ける。

ベルトのバックルを外し、スラックスのチャックも下してあげると、リラックマのペンティが見え、私はおねーさんを思い出し冷や汗が出た。

私はシン君にボタンを外されたベスト、ブラウスをを脱ぎ捨て、ストッキングとスカートも脱ぎ捨てた。

下着姿で、シン君の腕を引っ張り起き上がらせた。

「寝ましょっ。」ニッコリと笑い、カレのワイシャツを脱がせた。

「チェギョン。」

「私の事は良いんです。今は疲れているシン君を寝かせてあげたい。」カレの靴下も取り、スラックスは何とか脱がせた。

「はい。全部脱いじゃうと、ムラムラしちゃうので、下着は外さないようにしましょう。」カレと向き合い、大きく手を広げて「来て下さい!」ニッコリと笑う。

「参った。オレの彼女は、何でもお見通しだな。」深い溜息。

両腕を広げてシン君が飛び込んでいるのを待ち構えている私を引き寄せ、ギューッと抱きながら「本当に、他の男見てもムラムラしないのか?」

「しませんよー。シン君にしかムラムラしません!!あんなスゴ技を持っているシン君から離れられません。」ギュー―っと抱き返す。

キスをしながらベットに横になり、お互いの軽いキスは止まらない。

本当は、シン君に抱かれたかった。久々に見たシン君の色気を独り占めしたくて、何度も繋がりたかった。

でも、シン君の疲れた顔を見て、私の我儘は一瞬に消えてしまった。

今は寝かせてあげたい。

シン君のセットされた髪の毛を軽く撫でながら、眠りにつくのを待つ。

シン君の身体は温かく、私を何時も包み込む。

シン君と一緒に寝ない日々は、眠りが浅く何度も起きてしまった。

当たり前のように二人で過ごしていた日々が、突然の離れ離れで寂しかったけど、少しの時間でも私に会えに来てくれて嬉しかった。

本当はシン君のおうちの会社からは、自分のアパートの方が近いのに。

シン君の身体をギューっと抱きしめ「シン君、大好き。」ポツリと呟く。

シン君が眠りにつき、安心した私は眠くなってきちゃった。

そう言えば、ムン・ジェウォンに付き合って朝まで仕事してたから寝てない。

キングサイズのベットからは、二人の規則正しい寝息が聞こえ始めた。