会社帰りに、ソウルの郊外にあるラクジュアリーホテルに泊まった私達。



シン君のオネーさんが付き合いで貰ったご優待券

名前で検索したら、一泊安くても90万ウォン、私の目が飛び出てしまった。

「良いんですか?」ただの薄い紙なのに、持っている手が汗ばんでくる。

「忙しくて使う暇がないから、チェギョンちゃん達が行ってきて」ニッコリ笑う。

「シン君、貰っちゃいましたよ。」優待券を見せる。

「あーっ、ねーさん一人で行ってもつまらないからなーっ。じゃあ、オレ達が代わりに行ってやるか。」意地悪く笑うシン君。

「二回も言うけど、仕事が忙しいの!」おねーさん、鼻息も荒く目が吊り上がってますよ。

 
私は間に挟まれて、苦笑いをしているしかなかった。
 
 
 
 
 
 
 


デカイベッドの中で、1人でポツーンと寝ていた私は、目を覚ましキョロキョロと辺りを見ていた。

あれ?シン君は?

探しに行こうとして体を起こしたら、何も着ていなくビックリした。

「あわぁぁぁ。」慌てて隠してたが、やはりシン君はいない。
 
昨日、ご優待券を使いここのホテルにチェックンして食事をした。
 
軽くワインで乾杯して、ギリシャ料理を堪能した筈。あれ?最後のほうの記憶がない。
 
ギリシャ料理よりも、私はシン君の色気にやられて、、ワインの酔いが早かったかもしれない。
 
ただ広いスイートルームをキョロキョロ見渡していると、バスルームの扉が開いた。
 
「起きたか?」仕事帰りに来たので、ワイシャツにスラックス姿のシン君がいた
 

何時もながらの格好良さで立っている姿に、何度も惚れてしまう。でも、今はそんな時じゃないって。

 
「起きましたー。」もぞもぞと体を隠していると、シン君はベットに腰を掛けじーっと私を見て「朝食食べに行くぞ。」
 
なんてイイ声で呟くの。もう腰抜けそうです。
 
「何真っ赤になってるんだ?ほら着替えろ。」立ち上がり、バスローブを私に渡してくれた。
 
「はっはい!!」大慌てでバスローブを着て、バスルームに逃げ込んだ。
 
 
 
 
指定されたレストランに行くと、宿泊の方々がいた。
 
朝食はビュッフェ形式なので、初めてのビュッフェの私は緊張してしまう。
 
だって、ホテルに泊まっても必ず部屋で食べていたので、ドキドキ。
 
レストランのボーイさんが私たちに近寄ってきて,席を案内して朝食の説明をしてくれた。
 
さすがラクジュアリーホテル、ビュッフェ形式と言っても、必ず目の前で仕上げてくれるので,美味しさに拍車が掛かる。
 
テーブルにフレンチトーストを置いて周りを見ると。
 
宿泊客達も皆お金持ちの人ばかりなので、皆ゆったりとこの朝食を楽しんでいる。
 
「さすが、高級ホテル、人も高級ですね。」
 
「そっかー?」私の目の前に座ったシン君、あっ。この人も高級な人だった。
 
何時も朝はお粥だけど、こんな日くらいはパンにしたら、シン君もパンを持ってきた。
 
「朝食にパンは久々だな。」プレーンオムレツに美味しそうなウィンナー。
 
「はい。」出来立てのフレンチトーストは最高に美味しくて、私の目が輝く。
 
「家の近くに美味しいパン屋があれば、週末はパンにしたいな。」
 
「そうですね。」シン君とこんな話していると、なんか夫婦みたいでドキドキしてきます。
 
慌ててフレンチトーストを押し込んだら、アップアップしてしまった。
 
「何慌てて食べているんだ?」笑う姿が又カッコ良くて、昨日のギリシャ料理を食べているときの色っぽさがよみがえり、ドキドキに拍車が掛かる。

こんなカッコイイ人と付き合っているなんて、うん?ちょっと前まで般若って言っていた事は忘れている私。

ほら、なんだかんだと言って高級な人達も、シン君を見ている。

隣の人なんか、目がハートだ。

やっぱフェロモンが溢れ出しちゃってるから、私のドキドキも半端ない。

昨日、二人でワインを飲んだので、何もせずに寝てしまい、その反動が今きている。

モジモジ。

「何だ?さっきまでここの全部食べますよーって張り切ってなかったか?」ニヤニヤ笑いながら言う。

「はい。言ってました。」シン君の顔を見てしまうと、大変なので下を向いて小さな声で呟いた。

私の様子がおかしい事に気がついたシン君は、自分の持ってきたウィンナーにフォークを刺し「ほら、これ食べてみろ。家で食べるのより美味い。」人が居るところで、私の口の前にフォークがやってきた。

「いつも通りに大きく口開けて、食べろ。」なかなか食べない私にシン君はウィンナーを唇に当てた。

周りの奥様たちの目がギラギラと光ってきた。

ツンツンとウィンナーは私の唇をノックする。

「恥ずかしいです。」諦めた私の唇はウィンナーを招き入れる。

カプッ。弾ける肉汁がフォークを伝う。

「どうだ?美味しいだろう?」カレの目が熱い。

「美味しいです。」か細い声はシン君に聞こえたかどうか分からない。

残りのウィンナーをシン君は自分の口の中に入れてゆっくりと噛み締めた。

それってー。周りのおばさま達が赤くなっている。

もう一本のウィンナーにフォークを刺し「ここのプレーンオムレの卵、良いとこのやつみたいだ。」

ナイフでオムレツに切り込みを入れていくと中から、トロトロの半熟卵が出てきた。

シン君はウィンナーをその半熟卵の中に絡めて「素材の良い卵に負けないようなウィンナーを作る為、何回もスパイスや肉を変えてようやく出会えたこの二つ。」口の中にゆっくりと入れて「美味いな。」
 
最後のウィンナーを刺し、又オムレツに絡め「オムレツ、お前みたいだ。暖かくトロトロと溶けているところが激似だ。」ユックリと微笑むその顔に私の顔はボンっ!!と噴火したように熱くなる。
 
「シン君!恥ずかしいです。」カレは残っていたフレンチトーストをフォークを使い、私の口に運ぶ。
 
「何を持ってくれば良い?」上質な男性にこんな扱いを受けて私の心臓はMAX状態。
 
「・・シン君・・・シン君が欲しいです。」小さな声
 
「まだ全然食べてないぞ?」余裕な言葉。
 
「シン君が足りないんです。」ギュッと顔を上げて、カレの顔を見つめる。
 
ナフキンで口元を拭き「オレもチェギョンが食べたくて仕方なかった。」すっと立ち上り私の椅子に手を掛ける。
 
カレの大きな手は私の手を掴み、グイッと引っ張った。
 
私の体はシン君にぶつかり、ギュッと腰をシン君に近づけさせた。
 
「さっきからエロオヤジ達がチェギョンの事ばかり見ていて、怒りMAXだった。もうビュッフェなんか来ないからな。」髪の毛にキスしながら呟く。
 
人前で堂々とイチャつく私達はレストランを出て、エレベーターに乗り込んだらお客様が居たので、ぎゅっと寄り添うだけにしておいた。

自分達の部屋のカードキーを差し込むとエアコンが作動する音がした。

後は、もうシン君の力強い腕に抱き上げられ、キスをしっぱなしで、カレの事しか見えて無かった。

 
 
 
 
 
 
 
その日の夜。
 
おねーさんのお店に食事をしに行ったら。
 
「あのホテルのジュース、買ってきてくれた?」ワクワクとおねーさんが来た。
 
カウンター席に座っていたシン君と私はビクッとする。
 
「ねー、どこどこ?あれ、あそこのホテルと作っている農園に直接行かないと買えないんだよねー。」身を乗り出し私達をジロジロと見る。
 
「うん?何も持ってきていないの?」シン君のおねーさんの顔が変わっていく。
 
そう言えば、ご優待券を貰った時に、おねーさんに頼まれていた、よね?
 
シン君といっぱい愛し合って、ギリギリにチェックアウトしてしまった私達はホテルのジュースをスルーしてしまった。
 
「・・・・すまない。買ってくるのを忘れた。」シン君が正直に謝った。
 
「え!?そんな―。今日は楽しみにしてたのにーー!」
 
「おねーさん、ごめんなさい!」私は深々と頭を下げた
 
「もう、仕方ないわねー。2人とも謝ってくれたから、良いわよ。今度近くに行ったら買ってきてね。」ニッコリと笑って、厨房に戻っていった。
 
「おねーさんに頼まれていたのに、忘れてしまいましたねー。」しょんぼりとする。
 
「帰る時、すごいバタバタと出たからなー。今度買いに行くか。」すまなそうなシン君。
 
「今度のお休みにあのホテルに行ってみましょう」ニッコリと笑った。
 
その後、料理が運ばれて来て、美味しそうな匂いが漂う。
 
「おねーさん、美味しそうです!」目の前に出された料理は韓国一のコックが作ったものだ。見た目から美味しそうだ。
 
「いただきます!」大きな口を開いて食べようとしたら。
 
「グホッ…ゴホホホッ・・。」先に口をつけたシン君が大きくせき込む
 
「どうしたんですか?」慌てて、背中を擦ってあげる。
 
「オホホホッ、頼んだもの買ってこなかったからよーーー。」
 
「ねーさん!謝ったじゃないか!」咳込みながら反論する。
 
「こんな辛くて美味しいのに、シンったらー。お子ちゃまねー。」おねーさん、楽しそうです。
 
「ねーさん!」辛い物が苦手なシン君に、辛い料理で反撃されしまった
 
水をガブガブと飲み込んでいるシン君「食べ物の恨みは恐ろしい。」と小さく呟き、おねーさんの高笑いは続いた。