定時退社日の日。

 
残業のない私達は、待ち合わせをしてシン君のおねーさんのお店に行くことになっていた。
 
待ち合わせの場所は、高級デパート。
 
シン君の誕生日が近い為、カレへのプレゼントの物色もかねてそこの場所も選んだ。
 
ガンヒョン達と別れて、一人バスに揺られてその場所に着いた。
 
高級デパートのフレグランスコーナーには、、モダンなセンスの配置が敷居を高くしていた。
 
グッ!!ここはシン君への誕生日プレゼントの為で、乗り越えて見せる!
 
鼻息も荒く1歩を踏み出したが・・。
 
接客のおねーさんの綺麗な姿に眩暈がしそうだった。
 
「今日は何かお探しですが?」キラキラ輝く綺麗なおねーさんの素敵な笑顔が眩しい。
 
「あっ・・ア・・えーーっと男性に贈る香水を・・。」モジモジと言う。
 
「まあ、そうですか。ではこちらに。」おねーさんの導きに誘われて辿り着いた場所。
 
容器がオシャレで、皆シン君に似合いそうだ。
 
「男性は、もちろん彼氏さんですよね?」おねーさんがにこやかに聞いて来る。
 
「えっ?・・・・はい・・。」最後のはいは、小さい声で聞えたかな?
 
「彼氏さんの普段使っている香水はどんなのですか?」
 
「・・・確か・・」キョロキョロと見渡す。
 
ちゃんと見て来たから「ドルチェ&ガッパーナの ザ・・。あっありました。」指差した先には、シン君愛用のパヒューム。
 
香りも良いけど、容器もオシャレな感じで私も好きなパヒューム
 
「彼氏さんって、オシャレな方ですね」おねーさんは、ムエットを取り出しシュッと吹きかけて私に渡してくれた。
 
「あっ、これこれ良い香りです。」ブランド名の書いてあるムエットを鼻に当てて香りを嗅ぐ。
 
「じゃあ、これをお買い上げします?」
 
「・・・いえ・・・誕生日がきて30才になるんです。何か違う、私の選んだ香を。」
 
おねーさんは優しく笑い「判りました。お客様はお若く見られますのに、彼氏さんは30才なんですね。」
 
おねーさんは、私の話を聞きながら、どんなにしようかと、瓶を持ち上げて悩んでいる。
 
「不釣り合いだけど。」苦笑いをしてしまう。
 
「では、ダンヒルのエディションと、アイコンをお試しを。」ブランド名のついたムエットに、掛けて私に二つ渡してくれた。
 
「あっ、これいい香り。」鼻をクンクンさせて、良い香りを楽しむ。
 
「エディションでございます。大人の香で人気です。1つの方は今年出ましたアイコンです。」
 
「・・・あっ・・・苦手な香り・・・」鼻をクンクン。さっきの良い香りの方を嗅いで「やっぱり好きです。」
 
でも「なんかアイコン、苦手なんだけど。」良い香りよりもなぜか苦手な香りを嗅ぎたくなる。
 
「あっ、これなんか。」夢中にクンクン嗅いでいると。
 
「何か良い香り見つけたのか?」耳元に響くイイ声。
 
ビックリして、声の方を見上げると「シン君!」私と目が合うと開いている手を繋ぎ合わせた。
 
「あっ・・。」おねーさんの頬が綺麗な色に染まっている。
 
「この香、苦手だなーと思ってたんですけど。何度も嗅いでいると魔性の香のように、又嗅ぎたくなるんです。」嗅いでいたムエットをシン君にも嗅がせる。
 
「今使っているのよりも、大人だな。」
 
「まるでシン君みたいな香りです。最初苦手だったけど好きになるとトコトン好きになってしまう。」エヘヘヘッ苦笑い。
 
「ダンヒルのアイコンは、 オーデパルファム なので、他のより香りが持続し続けます。アイコンは強さと繊細さの完璧な融合を表現した、大胆でスタイリッシュな香りです。彼氏さんにお似合いの1品だと思われます。」おねーさんの説明が続く。
 
「シン君、これたまに使ってくれますか?シン君の誕生日のプレゼントに私が選びました。」
 
私の頬をカレの親指がゆっくりとなぞり「お前がオレの為に選んでくれたんだ、使わせてもらう。」頬をなぞる親指は、唇までいくが
 
「スト――――ップです!」言葉で親指の動きを止めた。
 
「シン君、ここ高級デパートですよ。」真っ赤になりながら、指摘する。
 
「気にすんなって。」
 
「あっすみません。これプレゼント用にお願いしたいんですけど。」おねーさんの方を向いたら、真っ赤になって固まっていた。
 
「あっ・・あの・・?」
 
「あっ、すみません。つい見惚れてしまって。彼氏さんに随分愛されてますね。」レジに向かい、おねーさんの手の動きは止まらずに、あっという間に小さなダンヒルの名前のついた紙袋が私の目の前に置かれた。
 
「振り向かせるのに、時間が掛かりました。それほどまでに手に入れたかったオンナなんです。」しみじみと言う。
 
「まあ・・・。」益々シン君をウットリと見上げるおねーさん。
 
支払いを終え、私はおねーさんから紙袋を受け取る。
 
「素敵なプレゼントで、素敵な時間をお過ごしください。」深々と頭を下げるおねーさん。
 
「ありがとうございました。」私はシン君と手を繋ぎ、この場所を離れた。
 
 
 
 
 
 
「無理させたな。」2人手を繋ぎ、デパートの中を歩く。
 
オバサンや、おねーさんたちがシン君をこっそりと見ている。
 
「だって、私の選んだ香をシン君に付けて貰いたかったんです。だからこの香選べて本当に良かったです。」
 
「オレも、とうとう30才か―っ、そんな香りを付ける年になったんだな。」少し笑いエレベーターのボタンを押す。
 
地下に置いてきた車に向かう私達。
 
ポンっと言う音と共に扉が開くと同時に、客がダダダ――っと降りていく。
 
「わっ。」出て来た客が私にぶつかってバランスを崩したが、シン君が支えてくれた。
 
「どんだけ急いでいるんだ?」空っぽになったエレベーターに二人は乗り地下へのボタンを押す。
 
シン君の腕に支えられていた私の体は、自然にカレを見上げる。
 
カレの顔が降りて「朝振り。」唇と唇がゆっくりと重なる。
 
チュッ。狭い個室に二人の重なる音が響く。
 
カレの唇が私の唇に覆い被さり、焦らすようにキスをする。
 
離れていくシン君の唇が名残惜しい。
 
何時も何時もシン君のキスは私を夢中にさせて、離れたくない。
 
私に回している腕に力を入れて「このまま家に帰るか?」
 
「・・・・・・・ダメです。この間もおねーさんのお誘い断って、家に帰ってや・・。」思い出して真赤になる。
 
エレベーターが地下2階への到着を知らせる。
 
「あの時もやりまくった。」クスクスと笑う。
 
扉が開き、私はシン君と共に前に歩き始めて、シン君の車を捜す。
 
「あっ、アソコですね結構近かいですね。」ドアの開閉ボタンが押され、ドアロックが解除された。
 
助手席のドアを開けながら「なあ?ヤッパリ、いえに・・・。」頬に軽くチュッとキスをする。
 
「もーーっ!シン君のおねーさんが待ってます!」突然のキスに又赤くなる。
 
「・・・・仕方ない・・・行くか」溜息を吐きながら、私を助手席に座らせてドアを閉めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「いらっしゃい!」何時もの席に座った私達。
 
先輩の話では、此処に座れるのは常連さんでも難しいと見たいよと言われた時には、驚いた。
 
「ようやく来たわね。」シン君のおねーさんの冷たい目。
 
「忙しかったんだ。」知らない振りで言う。
 
「ふーん、イ・ジイさんは来てくれてったんだけどなー。」意地悪そうな眼。
 
「上司は忙しいんだ、」
 
「シン君!」シン君の腕をツンツン引っ張った。
 
「全くッ、何時も可愛くないなー。でも、そんなアンタももう30才だ。お祝いのご飯食べて行きなさい。」
 
「ねーさん。」
 
「さーー、いっぱい食べなさい。」奥から持ってきたご飯は、見た事もないほどの豪華な食事。
 
「わーー、食べた事ないのばかりです!」美味しい料理を目の前に私の目が輝く。
 
食事を始めた途端
 
「グッ!」シン君が慌てて水を飲み始めた。
 
「えっ?シン君どうしたんですか?」慌てて背中をさする。
 
「ねーさん!何だこの辛さは!」目の前でニコニコ笑っているおねーさんを睨むシン君。
 
「ほほほほっ。色んなのは大人だけど、辛いのが苦手なお子ちゃまへの30才プレゼントよ。」腕を組み座っているシン君を見下ろして笑っているおねーさん。
 
「くっそーーっ。騙された。」悔しがるシン君。
 
シン君は、幼い頃身体が弱かった為に、辛いモノを食べれない韓国人としては異例な体質になってしまった。
 
だから、おねーさんが仕込んでいたこの辛い食事も。
 
「あっ、この位なら全然平気です。美味しい~~。」私はチョットもらって食べたら、この辛さが病みつきになる
 
ジーーーッとシン君に見つめられながら、平気な顔で食べる私を見て、シン君は。
 
「何時もながら、これはお前には勝てないな。」水をゴクゴクと飲んで、ため息を吐いた。
 
「ふふふっ。シン君のお祝い食事食べてしまいますよー。」美味しそうにパクッと食べる。
 
「さすが、チェギョンちゃん!辛いの大好きだからねー。シン!アンタも早く大人になりなさい。」

「辛いもの以外なら十分大人だ。毎日チェギョンを満足させてるからな。」ニヤリっと笑う。

「シン!(>人<;)アンタってば!」頬を赤く染めおねーさんは慌てた。

「へっ?どうしたんでさか?」二人の会話に❔マークを出しながら、一口食べた。

シン君とおねーさんは、顔を見合わせ私の顔を見てクスクスと笑う。

二人並んでいると、やっぱり似てる。

あーっ、写メ撮りたいー!

ボーッと二人を見てると「チェギョン、さっさと食べてもう帰るぞ。」

「えー、食べ始めたばかりですよ?」

「ねーさん、これ食べたら帰るから。」シン君は、辛い料理の方を私と交換して、優しい味のを食べ始めた。

「もう帰るの?デザートは?」ブーッと膨れ顏のオネーさん。

「持ち帰り用にしてくれ。ねーさん、特別な料理ありがとうな。オレが30ならねーさんは32になるんだな。早く彼氏見つけろな。」食べながら、言う。
 
「シーーーン!私が焦ってる事知ってるくせにーーーー!」眉毛を吊り上げて叫ぶ。
 
2人の軽い言い争いの中心にいる私は、どうしたら良いのか判らず、パクパクと食べるスピードあげた。

大慌てで食べた私達はおねーさんからデザートの箱を受け取り、シン君のお家に帰った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


キッチンのテーブルにデザートの箱と、香水の箱を置く。
 
私はワクワクとデザートの箱に手を掛けた時、シン君の腕が後ろから伸びて、私のウエストをギュッと抱きしめた。
 
私の肩にシン君は顎を置き「今から食べるのか?」カレのイイ声が首肩に広がる。
 
「はい、食べます。」蓋を開けると手のひらサイズのハート形の真っ赤なクールシャンパーニュ  が綺麗に飾り付けてあった。
 
小さなチョコ板には、ハッピーバースデーと書かれてあり「可愛いーー。」
 
私がケーキに見惚れていると、シン君の手が香水の紙袋に手を掛けた。
 
ガサガサ、箱から取り出した香水の入れ物、万華鏡の様な入れ物は蓋を開けた途端、香水の入れ物になった。
 
「つけるんですか?」シン君の体に包まれている私は、ちょっとだけ顔をシン君に向けた。
 
シン君はケーキの蓋をパタッと閉め、ワイシャツを少し捲り慣れた手つきで、香水をシュッと吹きかけた。
 
そして、私の手首を掴み、香水をつけた手首を私の手首に擦りつけた。
 
「!!」カレは私の手首を自分の鼻元に持って行き「嗅いでいた香りとちょっと違うな。」クンクンと私の手首を嗅ぐ。
シン君の腕は私の鼻元にやって来て、嗅げと手が合図する。
 
クンクン「やっぱりこの香凄いです。ずっと嗅ぎたくなる。」何度も何度も鼻をクンクンしてシン君の手首に鼻を押し付けた。
 
「香水って良いですね。私も付けようかな。」
 
「ダメだ。」肩に顔を置いていたシン君は、私の耳元で言う。
 
体が反応してビクッとなってしまう「もう、私も良い香りつけたいです。」
 
「お前の体元々いい匂いしてるんだから、付けるとオトコ達が寄っていくから、却下!」首元をクンクンと嗅いでいたが、シン君の唇は私の首元をゆっくりと這わせ
 
「やっぱいい香りだ。オレと同じのを使ってるはずなのに、何時までも嗅いでいたくなる。」私の首元に唇をくっつけて話すシン君に、体がゾクゾクと震えだす。
 
「シン君、ケーキ食べるんです。」ようやく出した言葉は熱で熱い。
 
「ケーキ?これは俺の誕生日ケーキだが?」意地悪く答えるカレに
 
「シン君のモノは私のモノ。私のモノはシン君のモノなんです。」言葉の攻撃でシン君のひるんだ隙間を狙い、私は後を振り向いた。
 
「だから、ケーキは私のモノでもあるんです。」ニッコリと笑い、ジャンプしてカレの首元に腕を回した。
 
ちょっとだけぶら下がった状態だったが、直ぐにシン君が私の体を抱き上げ私の顔はシン君の顔に近づいた。
 
「まいった。」フーーッと溜息を吐き「全くお前は、オレが思う以上に進化していくな。」シン君のメガネに手を当て「じゃあ、ケーキ食べない代わりにいっぱいのキスを下さい」クスクス笑いながらカレに軽いキスをする。
 
「今日のチェギョンは積極的だな。」カレのキスが始まる。
 
ちょっと離れたすきに「だって、この香のせいです。」私とカレの手首から香るオーデパルファムが、私を大胆にさせていく。
 
「苦手だったのに、何度も何度もその香りに包まれていたい」私の唇はシン君の唇と重なる。
 
カレとのキスは数え切れないほどしているが、すればするほど欲しくなる。
 
唇と唇が重なる音は、何時までも続いていた。