今日は金曜日。
仕事が終わり、私とガンヒョンは一緒に帰る支度を始めた。
「なんか久し振りだねー。」ブラウスの紐を外す私。
「そうだね。何時も残業だったり、男に連れ去られたりと、中々一緒に帰ること出来なかったね。」ベストを脱ぎながらガンヒョンは私をジッと見る。
シン君の事だな。
「まあ、まあ。ガンヒョンもギョン君が迎えに来てたでしょ?」
「ふん!学生じゃあるまいし。迎えに来たーーって!この会社の社長が言う事なの!?」呆れるガンヒョン。
「まあまあ、そこがギョン君らしい。」ウンウンと頭を頷き、ブラウスを外した。
ガンヒョンの冷たい目がこっちを見る。
「・・・・・・相変わらずキスマーク。」ボソッと言う言葉。
「えっ?」大慌てでロッカーの小さな鏡を覗き込む。
「もーーっ!見えるとこはダメだって言ってるのにーー!」慌てて私服に着替える。
「慌てなくてもいいよ。もう慣れたわよ。本当にアンタの旦那って羨ましいーーー。」ボソと言う
「ガンヒョン?」
「あっ。気にしないで倦怠期だから。」真顔で言う。「アンタ達がちょっと羨ましくなっちゃっただけ。」私服に着替え終わり
「さっ!今日はいっぱい飲もうーー!」ガンヒョンは私の手を引っ張り更衣室を出た・
廊下には、先輩が立っていた。
「着替えるの遅い!」
今日は、ファンさんとアン・ドナさんとの結婚式の打ち合わせの為に、シン君達は相談するみたいで、私とガンヒョンは久々に二人でご飯食べようと話し合っていたら、先輩も行きたいと言って出掛ける事になった。
シン君に、先輩も一緒に行くことになったと、LINEで教えたら。
「又、凄いこと教わってくるのか?」と笑った顔のスタンプがあった。
「!!」あのことを思い出し、真っ赤になった。
頬が熱い。
あの時の私を思い出すと、恥ずかしくて、恥ずかしくて。
でも、その後のシン君がとってもビックリして、そして「こんなの初めてだった。」と頭を撫でてくれた。
好きな人の為に私は段々と大人になっていく。
その相手がシン君で、本当に良かった。
「チェギョン?どうしたの?」立ち止まってLINEを見ていた私にガンヒョンと先輩が呼ぶ。
「うん?何でもないよ。」2人の側に寄り「お腹減ったー!早く行こうー!」とわざと明るく言った。
食事も終わり、次どこに行くー?と三人で相談していると。
「私、良いトコ知ってるんだけど、時間大丈夫?」時計を見ると10時になろうとしてた。
「今日は大丈夫です!!今日中に帰って来れれば良いって言ってました。」
「なにそれ?まるで本当に旦那様じゃない。」呆れ顔の先輩。
「結婚していないんだから、もっと自由になったら?」
「良いんです。私もシン君の傍にいたいし。」コップを持ち、モジモジとなる。
「若いうちは遊びなさい。」先輩は、私の頭を撫でながら笑った。
「じゃあ、私お勧めのとこに行きましょうーー!」ニコッと笑うイ・ジイ先輩。
三人で話ししながら地下鉄に乗りお目当ての場所を目指す。
目の前には重厚な作りの扉があった。
看板には、Zと言う字だけが書いてある。
辿り着いた先には、いかにも私とガンヒョンだけだと絶対に入らなさそうな感じの店。
「さーー、行こうー。」チョットだけ焼酎を飲んでいる先輩は、明るいテンションで私達を引っ張っていった。
「ほらっ、此処って雰囲気イイでしょう?」
ダーツバーなんて初めて入った。
色んな会社帰りの人達が、ダーツをやって遊んでいた。
私とガンヒョンは目を合わせて、こんなとこ場違いじゃない?と話し合っていたら。
「あっ、アソコにしましょう。」先輩が指差した先には、小さなテーブルに椅子がない。
どうやら、立って飲むみたいだ。
「飲み物と軽い食べ物頼んでくるよ。何か注文は?」メニューを渡されたが。
「ウーーロン茶。」「オレンジジュース」私とガンヒョンの言葉に絶句する。
「カクテル飲まないの?」先輩が呆れながら聞いてきたけど、私とガンヒョンは手を横に振る。
「全く、仕方ないわねー。」慣れた様子で先輩はカウンターに行った。
「先輩って凄いね。」モジモジ。
「うん、伊達に年取ってないね。」ボソッと言う。
「ガンヒョン!怒られるよ。」フフッと二人で笑い合い、何もかも初めての場所なので、キョロキョロと目が泳ぐ。
ダーツの場所が5か所くらいあり、その奥に一人掛けのソファが沢山あった。
どんな人がいるかと思って、ようく目を凝らしたら。
インさん?
私達の所から見える位置に、インさんがいた。と言うとあの横顔はシン君!とギョン君!
アタフタとガンヒョンの腕を引っ張った。
「ちょっちょっ、ガンヒョン。あそこー。」
「なによーー。」メガネを凝らして、私が指を差している場所を見た。
「!!!やだっ!!どういう事?」ガンヒョンと私は、カレらから見えないように、背を向けた。
そこに先輩が飲み物を持って来て「食べるのは後に来るから。」手際よくコップを小さいテーブルに置いた。
「アンタ達なに小さくなってるの?」
「先輩~~。」後を小さく指差した。
「あっ!」先輩の目線の先には、わが社切ってのエリート社員2名と超――有名ホテルの社長がいた。
タバコを吸いながら、3人で何かを相談している姿を、私は隠れながらジーーーと見てしまう。
仕事の姿とは違う、休憩時間の姿とも違う、会社の飲み会の時とも違う、家で寛いでいる姿とは違う。
親友達と寛ぐオトナの男性がそこにいた。
シン君って、外で飲んでいる時って、そんな風なんだ。
煙草を口にはさみながら、話をしてクスクスと笑う姿。
タバコを持って頬づえしながら、お酒を飲む姿は、まるでモデルのよう。
色んな女の人達が、3人を誘うが、手を横に振ってやり過ごしている。
それでもチャレンジする女性もいた。
シン君の肩に手を置き、どうやら誘っているみたいだが、何かをシン君に言われて、怒って行ってしまった。
「浮気してないね。」私とガンヒョンはポツリと言う。
「だよね。」2人共いっぱいの愛を注ぎ込まれているいる為、疑うことは無い。
気が付かれない様に、3人の様子を見ていた私達3人。
「室長、やっぱカッコイイ。写真撮りたい。」小さく呟く先輩。
ボーっとシン君を見続けている先輩の顔は、恋している顏。
先輩はまだシン君の事好きなんだね。
ずーーっとシン君の事好きだった先輩を差し置いて、付き合ってしまった私なのに、先輩は何時もと変わりなく接してくれる。
凄いなー、私だったら絶対に無理。
大人な先輩私もこんな風なオトナに何時かは、なりたい<。div>
「はいお待たせーーー!」3人に間違った、インさんを除いてボーっとしていた私達のテーブルに、料理が運ばれてきた。
「エスカルゴのオーブン焼きとマルゲリータピッツァ、あとはお任せサラダの山盛りー。」小さなテーブルにギューッギューーッと置かれていく料理。
「此処の料理はね、最高に美味しいのよ。」モーヒートを飲んでいる先輩は「後、店員が皆イケメン。」くすくすと笑う。
「ありがとうございます!」
「店長直々に料理運んでくるなんて、珍しいですね。」
「美人さんだらけの席に、俺が持って行かないとね。見た事もない美人とカワイ子ちゃんが二人と常連さん。」ニッコリと笑う笑顔は何かユル君を思い出した。
「俺は可愛い子がタイプなんだよね。」ユル君に髭を生やして、細マッチョにした感じで。
「もしよかったら。って言うか結構マジなんだー。此処に電話して。」渡されたコースターには、直筆の電話番号
「エっ⁈」ビックリしてしまい、大きな声を出してしまった。
「いやーっ、こんなかわいい子がいたなんて、俺もまだまだだなーーっ。いやゆる一目惚れみたいで、キミの名前は?」ポリポリと照れながら言う店長さん。
「いえ、どうしよう先輩。」こんな事に慣れていない私は、先輩に助けを求める。
「もーーーっ、チェギョンは何処でもモテまくりだーー、店長さん、止めておいたほうがイイですよ。」グイッとお酒を飲む。
「へっ?」
「その子の彼氏って、とっても怖い人なんだから。」先輩の指は、後を指差した。
てっきりソファに座っているシン君を、指差していると思ったら.
「コイツの怖い彼氏だが。」ひっく――い声にギュッと抱きしめられ、髪の毛にキスをされる。
「シン君!」煙草と酒の匂いに包まれた私は、真っ赤になる。
「シンの女なのか?」店長さんが驚いている。
「そう、オレの女だ。だから。」私が持っていた電話番号のコースターは破かれていく。
「諦めろ。」
「シンの女かよー!こんなに可愛いのにー!何処で見つけたんだ?」色んな質問をベラベラと言う。なんかギョン君に似てる。
「イ・ジイさん、この店チェギョンに教えなくても良かったのに。」店長さんの質問には答えずに先輩に言う。
「教えるのなら、又別の秘技を教えてくれ。」私をギューッと抱きしめる力が強くなる。
「シン君!何言ってるんですかーー!」後を振り向き言い返していると、頬にチュッとキスをされた。
「シン君!皆の目の前で何、あ――っお酒飲んでるから。」
「そうそう、酒飲んでるからな。」又チューーっとされる。
「何このバカップル。私達の目の前でチャラチャラと。」先輩の目付きが怖い。
「・・シンが・・あのシンが、こんなことをするなんてー。」驚き過ぎている店長さん。
「そんなに変なんですか?」メガネの位置を直した。
「大学の同期だけど、飲みに行ってもオンナとイチャイチャなんか絶対にしないくせに、何時の間にかその日の一番人気の女をお持ち帰りしていたな。」
「そういう事、あの子には絶対に言わないでくださいね。純情な子なんです。」
「シンの周りにいないタイプだな。アイツは何時も後腐れのない綺麗なオンナばっかだった。」
「ガンヒョン!」店長さんと室長の過去の事を聞いていたのに、邪魔が入ってしまった。
「チっ。」
「ガンヒョン、今アンタ舌打ちしなかった・ ?」ビックリしている先輩。
「ガンヒョーーーン何でここにいるんだ?シンが急にいなくなって、探しに来たんだ。」私に抱き付こうとしていたのを、サラリとかわした。
「ガンヒョン!そりゃー、ないだろう。」バランスを崩してしまい、床に転がった私の彼氏。
「フン!たまたま此処に来ただけよ。」
「おっ!」「あらっ!?」お互いにビックリする先輩とインさん。
先輩とインさんは並びながら「いなくなったシンを探しにギョンを追い掛けてきたら、馴染みの顔が3人もソウルも狭いねー。」
「そうですよねー。」2人の大人の会話に、この無邪気な彼氏の態度に最近イラつき始めていた。
他の二人は大人な雰囲気をかもし出しているのに、ギョンは社長なのに何時もヘラヘラとしていて、社長としての自覚がなさ過ぎ。
本当に最近、この男と付き合っていていいのだろうかって、思い始めて来た。
「店長、時間ですよー!サボってないで仕事してください!」イケメン店員が呼びに来た。
「もうそんな時間?じゃあ、カワイ子ちゃんに美人ちゃん、そして常連のジイちゃん・金曜日の深夜11時から真夜中の12時までの1時間限定ダーツフロアがダンスフロアに変身しちゃうよーー。」親指をギュッと立てた。
「ギョン、シン、イン。お前らもどうだ?久々に踊れよ。」店員から、大きなヘッドフォンを受け取り店長がお室長達を誘う。
男三人の目線が通い出す。
「そうだなーー、久々に踊ろか?」ワイシャツ姿のギョンが私から離れ、体をボキボキと鳴らし始めた。
「良いのか?封印してたんじゃないのか?」先輩の隣から離れて、柔軟し始めるカン・インさんはスーツ姿。
「皆、30代になろうとしているから、大技はかんべんな。」チェギョンを思うがままにしていた室長も、チェギョンに自分のメガネを渡して「持ってろ。」チュッとキスをしてフロアに行ってしまった。
残された3人は、ボーーッと男達の後ろ姿を見ている。
「先輩、シン君ってダンス踊れるんですか?」
「ガンヒョン、うちの社長ってダンス踊ってもイイの?」
「チェギョン、室長メガネ外しても見えるの?」3人とも淡々と呟ている間に、私の大好きな曲がかかった。
テイラー・スイフトの曲が、店長さんのDJにノって、アレンジされていく。
スーツ姿のサラリーマンや会社帰りのOLさん達が日頃のストレスをこの曲に合わせて踊っていたが。
長身の3人組がスーツ姿で踊り始めた途端。
見ていた私達は唖然と口を開けてしまった。
凄い!!
プロ並みな踊りは、3人一緒に揃い、カッコイイ――!!
シン君とインさんはギョン君を前にして踊っていた。
そして、一番前のギョン君が、何時も私に嫌味を言う、ガンヒョンの前だとヘラヘラな、頼りない風をかもし出していたギョン君が。
キラキラ
1番輝いていた。何時もの顔じゃなくて、本当に楽しくてしょうがないと、キラキラと眩しかった。
スーツ着ているのに、皆綺麗にターンや足を上げ、ギョン君は何度も空中を回りだす。
何でそんな事出来るのーーー!!
周りを囲んでいる人たちからも歓声が上がる。
私達3人は目の前の凄いダンスを見て、寄り添い合い鳥肌が立っていた
「凄い!凄すぎるーー!!」凄い音で大きな声で隣に叫ぶ
「室長ってやっぱカッコイイーー!カン・インさんも上手いわ。」先輩も興奮中。
ガンヒョンは、ギョン君だけをジーーーッと見つめていた。
このフロアが一体化して、盛り上がる。
3人組、カッコ良過ぎる――!キラキラとライトが光り、ギョン君、シン君、インさんのダンスをずーっと見ていたかった。
曲が終わり、3人は私達の所に戻って来た。
「あっちいー」「喉乾いたーー」「久々で体動けなかったな。」スーツのワイシャツのボタンを外して、風を入れようとパタパタと動かす。
私は慌てて、バックからハンカチを出して、シン君に渡す。
「酒が無いな、俺達の席に行こう。」インさんが私達を向こうのソファ掛けに誘った。
ダンスはまだまだ終わらない。ガンガンと鳴り響くダーツバー。
一人掛けのソファが3つに、テーブルが1つ。
男達は先に座り、どこに座ったらいいの?と悩んでいる私達を、一人一人と掴み自分の膝に乗せる。
ダンスが終わったばかりのシン君の体は熱く、ちょっとだけ息が荒い。
まるであの時の様だ。
私の体も自然に、熱くなっていく。
何時もなら人前でこんな事しないけど、この雰囲気に酔ってしまい、シン君の首に腕を回した。
「シン君、ダンス踊れるんですね。知らなかった。」お互いの顔は近づく。
「ギョン程じゃないが、それなりにな。」
ギョン君達を見ると、あのガンヒョンまでギョン君の膝の上に乗って、キスしまくっている。
それも、ガンヒョンが積極的に「ガンヒョン、今日はどうしたんだ?」シン君が心配する。
「うん?ガンヒョンってK-POP好きなんです。だから踊れる人にめっぽう弱い。」シン君の頬にキスをする。
「ギョンは、ダンスが好きで、プロからもスカウトくるほどの上手さだった。でも、家のホテルを継がなきゃいけないって、泣く泣く断念した。
ようやく継ごうとしても、学力が追い付かず、遊びのダンスも封印して勉強しまくって、ようやく社長の座を受け渡して貰った。
オトナって好きな事だけじゃ、暮らしていけない。」インさんの方を見ると、先輩を膝に乗せて何かを話している。
「シン君。ダンスカッコ良かったです。ギョン君のダンスはプロみたいでしたけど,私はやはりシン君が一番でした。」渡されていたメガネを、シン君に掛けてあげる。
「シン君の事、抱きたいんですが、良いですか?」真っ赤になり言った言葉
「酒を飲んだらお前の事、抱きたくないんだが?」私の唇はシン君の唇の傍にある。
「わっ、私が抱きたいの!」唇と唇が重なる。
急激に始まったキスは、熱く熱く、体の火照りを増していく。
キスをしながら、シン君のワイシャツのボタンを外して行こうとしたら。
「ストップ。」低い声とシン君の手が止める。
「待て!ここはダーツバー。」あっ、そうだった。つい・・。
「チェギョンがオレを抱きたいって言うんだ。今日はとことんお前に抱かれましょうか?」私のお尻を触りながら、ニヤニヤと笑う。
シン君は私を立たせると、自分も立ち上がりスーツの乱れを直し始めた
気が付くと、他の4人の姿は見えない。
「あれ?皆は?」ブラウスやスカートを直す。
「帰った。お前が夢中にキスしてた時に。ちゃんと手振っておいたから。」
「マジですかー!?」恥ずかしいー!
夢中になってキスしてたから、気がつかなかった。
ピーッと泣いていると。
シン君がスーツの身だしなみを終え、カバンを持った。
ビシッと決まったスーツに乱れはなし。さっきまでダンスして、私とキスしていたなんて、嘘の様だ。
シン君は、ボーーッと見惚れている私を見下ろしていたが、顔を近づけて来た。
「早く、抱いてくれ。」その言葉と同時に私は、カレに抱きついた。
シン君の手を繋がず、中々した事のない腕組をしながら出口を目指した。
会計を通り過ぎようとしているシン君の腕を止めた。
「シン君!お金払ってませんよ!。」
レジに立っていた店長も止めた。
「シン!」
「チッ。なんでお前がレジのとこにいるんだ?」ますます目つきを悪くする。
「シン君、どうしたんですか?」
「チェギョン。」私とシン君の目線は交わる。
「うーん、なんか聞いたことあるなーチェギョンって名前。もしかして、シン、チェギョンって言わない?そして、年いくつ?」
「ビックリしましたー。年は今年23才です。」
「やっぱり――、中学の時、イ・ユルって名前の男と君付き合ってなかった?」久々に聞く名前の響きにシン君の腕が強張った。
「イギリスに行きたくないからって、家出までしたとか?」
「当たってます。」そこまで言われたら否定できない。
「俺、イ・ユルの兄貴なんだ。両親が離婚したから苗字は別々だけど、血を分けた兄弟なんだ。」
「!!」私と、シン君が驚く。
なんかユル君に似てるなーと思ってたけど、まさか兄弟だったとは!!
「そう言えば、ヒョンチョルに弟がいるって、前に聞いた記憶が。」
「そっ!!悪い悪い。本気になりそうな女が現れたと思ったら、シンの女で、弟の元カノって、俺とチェギョンちゃんはとことん合わない運命だったね。」笑い顔はやはりユル君に似ている。
「そうですね。私の運命の相手はシン君だけです」腕を組んでいたのを止めて、シン君の手を無理矢理繋ぎ、指をギュッと絡めた。
アッ、指先が冷たい、何時もは温かいのに。
シン君は、ユル君の存在に弱い。
今では良い関係なのに、ふいに名前を聞くと一気に強張ってしまう。
「シン君。」手を繋ぎながら、カレをギュッと抱きしめた。
「早く抱きたいです。」何度もスリスリと擦り、シン君を見上げた。
切ない顔のシン君は、私を見て苦笑いをする。
「すまない。」私の体を包むように抱きしめてくれる。
ギューーッと二人抱きしめ合ってると。
「お前らこんな場所でーっ、さっさと行けよ。」店長さんの声が響く。
「シン、チェギョンちゃんにそこまで言わせておきながら、なんも言わずに帰るのか?」店長さん、ニヤニヤ顔が気持ち悪いですよ。
「そうだな。」ようやく何時もの顔になったシン君は私の耳元で呟く。
ボンっ!!余りにも照れてしまう言葉に私は熱くなる。
「じゃあなっ。」私の肩を抱き締めて、歩き出した。
「おい!!シン!!さっきなんて言ったんだ?」
「教えてやるもんか!!」手をプラプラと振って、この建物を出た。