経理部に、会議の終わった男子達が一斉に入ってきた。

私は立ち上がり、皆の為にコーヒーを淹れ、渡し歩いた。

そして、室長のところへ持って行ったら。

急に立ち上がり、私達は御互いの行動にビックリして見つめ合った。

突然、目の前には上着を脱いでいたベスト姿の室長。

余りにもカッコ良さに、ただボーーッと室長の事を見上げてしまう。

スーツ姿はオトコの武器だと思う。

それも、上質のスーツは最高レベルに達する。

そんな男子なんて世の中には中々いないのに、今私の目の前に立っている。

あぁ、こんなにカッコイイのに、私の彼氏なんて本当にいいのかな?

上着を脱いだ姿は中の体の造りがもろ分かり、ただ細いだけじゃなく男子特有の筋肉が分かってしまう。

奥底からジワジワと体が熱くなっていく。

触れて、抱き付きたい。

シン君と数え切れないほど体を重ねる度、私の体は一つ一オトナの女に近づく。

シン君の動きに合わせて、自らの腰を動かすようになってしまった。前までは最初から最後までギュッと目を瞑っていた私なのに、最近では、時々シン君の表情を見るようになっていた。

切なくそしてイクときの顔は何とも言えないほど、なんて色っぽい表情なんだろう。

思い出すだけでも、顔から火が出そうな位に熱くて、片方の手でパタパタと手で仰ぐ。

毎日のようにカレは私を抱き締めて、繋がりあう。

もうこれ以上離れたくなって位に、キツクキツク押し込まれる

「シン・・。シン・・・チェギョン・・。」

どこかで私の名前を呼ぶ声がする。

「シン・チェギョン!」その声は私の目の前から聞こえた。

「あっ!ハイ!」慌てて現実の世界に戻ってきた。

「どうした?何度呼んでも返事がなかったぞ!顔が真っ赤だぞ?」ニヤリとイジワルな顔

「あっ、イエ、なんて言うのか。」一人コーヒーの乗ったトレイを持ってもじもじする。

小さな声で「さてはオレの事、欲しくなったのか?」ボソッと言う声で、私の顔はもっと赤くなった。

「今日の夜まで待てるのか?」小さな声は、私の心臓を跳ね上がらせる。

カレの言葉に下を俯き、もっと小さな言葉で「待てません。」

カレの息を飲む声がした。

すると。

「室長!やっぱり釜山支店に行かないとダメみたいです。」誰かの声がする。

「そうか、判った。準備が整い次第出るぞ。」2・3人の名前を呼び、一緒に行くメンバーを決めた。

カレは「突然の出張になった、オレが居なくても、各自の仕事をきっちりとしてくれ。じゃあ、皆よい週末を。」

今日は金曜日のAM11時過ぎ、これから釜山に行くと言う。

皆に向けて言い終わった途端、トレイのコーヒーカップを持ち上げ、幾分冷めてしまったコーヒーを一気に流し込んだ。

「ありがとう。」室長はお礼をした後に,上着を腕に掛け愛用のカバンを持ち上げ、経理部を出て行ってしまった。








体の火照りを静めれないまま、ボーっと立ち尽くしていると。

「チェギョン!」通りすがりのイ・ジイ先輩が私を見て、驚いていた。

「アンタ!もうーー、こっちに来なさい!」腕を強く引っ張られて、給湯室に押し込まれた、

「先輩!痛いです!」

「チェギョン!そんな顔で室長の事見てたら、ダメよ!」先輩の顔が真剣に怒っている。

「えっ?どんな顔ですか?」言われたまま傍に合った鏡を見たら。

顔が真っ赤で。「真っ赤なだけで。」

「バカ!さっきは色気ムンムンで室長の後ろ姿見てたわよ。」

「えっ。そんな色気ムンムンって私がですか?」

「なってたわよ!そんなとこ女子達にバレたら大変な事になるよ。私はもう諦めているから良いけど、諦められない女子達が、まさか!チェギョンと付き合っているって分かったら、おーーっ!怖っ。

男子はお目当てのチェギョンがそんな顔でいるんだもん、狼のようにあんたを襲いに来るかもね。

もし!男子にお持ち帰りされたのが、室長に知れたら、アンタどうするの?」

「そんなーー、みなさん良い人ですよ。する訳がない。」

「バカね、チェギョンはまだまだ甘いわ。恋って、人を狂わせるからね。身近にいい題材がいるでしょう?」

「えっ?誰ですか?」

「室長よ。同期の入社でずーっと見ているけど、チェギョンに恋してから、誠実なオトコになったんだから。その前の室長は、ほんとに。」溜息を吐く。

鼻に指を当てられて「チェギョンは、会社の女には絶対に手を付けていなかったオトコを本気にさせたんだからね。」ギュッと押され先輩は行ってしまった

ふーーっと溜息を吐き、シンクのとこに体重を掛けた。

あの体の火照りは、大分引いてしまい、ううん、嘘。

恋は人を狂わせる、この言葉は本当に当たっていると思う。

先輩の話を聞いて、自分も当てはまっているといると思う。









席に戻り、ムン・ジェウォンが私に頼んでいた仕事を片付けていると。

「チェギョン、今日は何処に帰るの?」ガンヒョンは室長が釜山に行ってしまい、どうするのかを聞いてきた。

「うん?今日はシン君のとこに帰るよ。]

「えっ?一人なんでしょ?アパートに帰って」

「ガンヒョン!あのね、ガンヒョンに彼氏がいなかったら絶対に帰るけど、彼氏が帰ってきたばかりでしょ?ちゃんと一緒に居てあげなくっちゃ・‣あのギョン君だものガンヒョンの事離したくないはずだもの。」ニッと笑う。

「アメリカから帰ってきたばかりで、ほんとしつこいくらいうるさいのよ。」言葉は嫌がっているけど顔は嬉しそう。

「だから、私は大丈夫!今日は、シン君ごっこして遊んでいるから大丈夫。」

「シン君ごっこ?」

「今まで溜めこんでいたシン君の写真の中から、最高の一枚探し出して、豆腐人形の顔に張り付けて、シン君に見立てる!」

「チェギョン、本当に室長チェギョンでイイのかしら?」

「ガンヒョン!」キッと睨んだ。










「はい、シン君。ゆっくりしよっ。」豆腐人形とソファに座った私。

豆腐人形をギュッと抱きしめて、顔に張り付けたシン君の画像を見ても、心はシュンっとしてる。

豆腐人形でごまかしても、あのシン君に勝るものなんて、どこにもいない。

シン君からのLINEは「「今日は戻れなくなった。明日帰るから。」」短い文章のみ。

たった一日一緒に居れないだけで、こんなに落ち込むなんて、もう子供か!?

ますます豆腐人形を抱き締める。

「そうだ!!」立ち上がり寝室に向かう。

寝室の奥にWICがある。

シン君のスーツから私服までずらーと並んでいる。

ここは私にとって、聖地だ。

数あるスーツに鼻を寄せ、クンクンとシン君の香を探す。

「これ!」一番シン君の香がする。

私はこのスーツに体を寄せて、カレの香を楽しむ。

「シン君、私と付き合う前まで、何度も私シン君から逃げ出していた。そんな時どうしてたの?辛かったよね。本当に私は子供だった。

カレの誠実さを見逃していた私は、飛び込む勇気がなかった。」ギュッとスーツを抱き締めてあげる。

「ごめんね、シン君。」








釜山の支店に着き、到着したメンバー達はこの状況に呆れ返っていた。

「ムン・ジェウォン、お前がいた頃はまだちゃんとしてたよな。」

「はい。そのはずですが。」4人で来たのに、この状況に人手が欲しかった。

「キム室長!本当の決算のファイルを出してください。」オレはワザと低い声でゆっくりと言った。

「・・・・はい。」本店からの調査に入られた釜山の経理部の室長は、自分の机に行って引き出しからファイルを出してきた。

「やっぱり、不正な出費かこのお金は何処に?」

「ハイ、釜山の支配人に頼まれまして。」

「ビンゴ見つけた。後は洗いざらいパソコン見させてもらいますから。あっ社長には連絡しておきましたから。」

オレの言葉に、釜山支店の経理部の室長はガックリと項垂れた。

オレは電話を掛け「オレだ。支店の経理部の室長と支配人の二人が、やっていたみたいだ。処分はどうする?」

ボソボソと話をしている間も、目線はパソコンをスクロールしてチェックしていた。

「あぁ、判った。伝えとく。」

「キム室長、週明けに社長が此処に来るそうだ。逃げないで堂々と出迎えてやってくれ。」

釜山支店での多額な出費が相次ぎ、調査にオレ達が駆り出されてきたが。此処まで、酷いとは。

突然の社長交代で、オレが秘書課に、釜山支店の室長が本店の室長に飛ばされたのが、いけなかったみたいだったな。

後任のキム室長が、バンバンお金を操作していた。

せっかく日帰りで帰れると思ったのに、このままだと久々の徹夜だな。

i phoneの待ち受けのチェギョンを見て、溜息を吐いた。

何時間前のチェギョンの色っぽいフェロモンが急に漂い、オレはその場で我慢するのが精いっぱいだった。

チェギョンがオレの体を欲しがっていた。

くっそーー!滅諦にないチャンスをつぶしてしまうなんて。

壁に掛けてある時計は4時半。

一分でも早くチェギョンの元に帰ってやる!

「皆、全てのファイルを開き徹底的に調べるぞ。」

近くにいた女にコーヒーを頼み、オレは上着を脱ぎ、指をボキボキ鳴らしながら椅子に座った。

久し振りの本気モード全開で、朝までに終わらせてやる。

パソコンのキーボードを叩き始めると「コーヒーどうぞ。」と言う声がした。

女の顔を見ずにキーボードを打ち続け「ありがとう。置いてくれ。」グイッと流しいれたコーヒーの味は。

オレが教え込んだチェギョンの味にはかなわない、ただ苦いだけのコーヒー。

これを何時間も味わないといけない、絶対に早く帰ってやる。








「ようやく終わった。」釜山の信用のおける社員とオレ達ソウルの社員で、朝まで掛かってようやく全てを割り出した。

「よし!皆さんご協力感謝します。此処のキム室長の処分は来週の月曜日に決まるそうです。

新しい室長は又、選考して誰かがやってくると思いますが、もう2度とこのような事が無いように、宜しくお願いします、」此処の社員達に挨拶して、オレは連れて来た社員達の肩をバシッと叩き。

「ごくろうさん!お前らはどうする?一応ここのホテルの部屋取ってるから、寝てから帰っても良いし、泊まって遊んで行っても良いぞ。
あっ、会社が出すのはホテル代とKTX代だけだからな。」笑って言う。

「室長ーー、遊び代は無理ですか?」ニヤニヤ笑う。

「じゃあ、オレからポケットマネーで少し出してやる。」財布から数千ウォン取り出し「コーヒー代。」3人に渡した。

「室長も一旦仮眠するんですよね?」ムン・ジェウォンがたずねて来た。

「嫌、オレはこのままソウルに帰る。」上着を着て、愛用のカバンと紙袋を持った。

「室長寝てないのに、大丈夫ですか?」眠そうな顔のもう一人の社員。

「ktxで少し寝るから。」

「それにしても・・、室長、これ渡されましたよ。」連れて来た一人の社員の手には、いっぱいの紙切れがあった。

「なんだ?」受け取切れには、色んな電話番号が溜息がでる。そう言えば、コーヒーのカップの下にもあったな。

全部を近くにあったゴミ箱に捨てた。

「あーーーっ、勿体ない。結構いい女ばかりでしたよ。」羨ましそうに言う。

「こういうのは、もう卒業した。」i phoneをスライドして、LINEを出す。

ソウル着のKTXの時刻と、家の到着時間を打ち込み送信した。

「じゃあな。一足お先にソウルに帰る。」寝不足な体を無理に引きずって歩き出したら。

「あっ!俺も帰ります。」ムン・ジェウォンが声を上げた。

「お前は久々に釜山に来たんだ、家に顔を出しても。」

「いえ、帰ります。」自分のカバンを持って、上着を腕に掛けた。

「そっかー、じゃあタクシーで、駅まで行くか。それじゃあ、二人ともちゃんと月曜日の朝までソウルに来いよ。」残った二人に手を上げた。










KTXの乗り込み、ムン・ジェウォンと隣同士に座った。

仕事の話をしながらウトウトと寝てしまい、フッと起きたら、もうソウルまで30分もなかった。

隣を見るとムン・ジェウォンも寝ていた。

お互い徹夜明けの体に、この汽車の揺れは眠りを誘う。

まさか、ムン・ジェウォンが帰ると思わなかった。

足元の紙袋の隙間から、リラックマの耳が見える。

釜山の駅構内にリラックマの専門店があり、ソウルで見た事のないリラックマが店頭に置いていた。

おっ!日本限定のモノがなぜ、この釜山に!?

深夜までにはソウルに戻ろうとしているので、買うなら今しかない!

一緒に来た3人にちょっと遅れるから、先に食べてくれと伝え、店に入って行った。

店頭に合ったリラックマを持ち、レジに持っていくと「お客様、お子様へのお土産ですか?リボン付けますか?」

お子様?そうか、オレの年なら子供がいてもおかしくないよな。

チェギョンとオレとの子供。

何時か叶うなら・・嫌、絶対チェギョンとの子供が欲しい!

「お客様?」

「あっ?いえ、子供はいないので普通のリボンで」

「えっ?結婚していないんですか!?」店員の目が輝く

「私もしてないんですよ。」傍に合ったメモ紙に電話番号を書こうとしていると。

スタッフの扉から、もう一人の店員が出てきて目が合う。

「あっ?イ様!何でこんな釜山に?」

「出張ですよ。でも、ビックリしました。なぜここにいるんですか?」ソウルのCOXのリラックマ専門店のスタッフが、釜山の店にいた。

「月に1度は釜山店の視察ですよ。本当にイ様がいてビックリですよ!あらっ、この子!何やってるの?」店員のメモ紙を見て、目付きが悪くなる。

「イ様には、すっごーーーく可愛い彼女さんが居て、ラブラブなんだからアンタなんかの出番はなし。そうですよね、イ様。」

「ええ、可愛くて仕方ないです。」営業スマイル。

「マジでーーー!?此処に勤めて、初めてイケメンがキターー!って思っていたのにーー!」

「もう!すみません。この子への指導がまだなってなくて!」二人で頭を下げている。

「気にしないで、じゃあ、又ソウルで。」オレは手を上げて、店を出た。








日本限定のリラックマを持って、釜山から帰って来るとチェギョンが怪しむかな?

まさかな?

車内アナウンスが流れ、ソウル到着まで後5分だと言う。

オレは隣のムン・ジェウォンを起こした。

「はっ!寝てしまってたーーー。」ガックリと肩を落としている。

「アハハっ、仕方ないだろう?寝てなかったんだ。」オレはi phoneを取り出して、LINEで「「ソウル駅に着く」」打つ。

直ぐに「「待ってます」」と返ってきた。

列車は定時刻より5分ほど遅れ、ソウル駅に着いた。

2人列車から降りて、背伸びをした。

「ふーーー!ソウルに着きましたね。」

「ああ。」ようやく着いた。早くチェギョンに会いたい「じゃあ、又月曜日!」行こうとしたら。

「室長その紙袋の中身のリラックマ、シン・チェギョンへのお土産ですか?」ムン・ジェウォンの声が聞こえた。

今日は土曜の午前中。

釜山をAM6:30発、ソウルには、AM9:18に着き、色んな人達が溢れかえっているこの構内に、コイツの声が響く。

「・・・・。」二人の目線は御互いの出方を待っている。

「前にもシン・チェギョンに聞いたんですが、はぐらかされました。でも、昨日の二人の会話で、二人は付き合っているのが、判りました。

まさか、仲の良くない二人が付き合っているとは、今までは、確信がなくてどうする事もできなかった。」鞄を下に置き、上着を羽織る。

「初めて、この女が欲しいと思うほど、惚れてしまいました。

我が会社のエリート社員のイ・シン室長のような肩書がない俺ですが、彼女の事は諦めません!じゃあ、失礼します。」靴の音を鳴らさせて歩き出した。

もっと噛みつかれると思っていたが、中々堂々とした気持ちだった。

「ムン・ジェウォン!」オレの声に奴が振り向く

「オレとお前の好みのタイプはーっ、同じだな。じゃあっ、月曜日に。」改札口に向かって歩き出す。

オレの言葉に驚き、真っ赤になり始めたムン・ジェウォン。

悪いがお前の事なんか、ライバルなんて思ってはいない。

早くオレは家に帰ってチェギョンに会いたいんだ。こんな所で時間を潰していることが勿体ない。

歩き出す足は段々早歩きになっていく。

ムン・ジェウォンはオレに負けないように早歩きを始め、先に改札口を出た。

そこには、もっと多くの人達が溢れかえり、普通に歩くのが難しそうだった。

アイツはズンズン先に行き、オレより早く歩いているのを何度も振り返り確めている。

全く、まだまだお子ちゃまだな。苦笑いをしたが、壁の前に立っているある女に目が留まる

オレの足がそっちの女に向かい始めたを、ムン・ジェウォンが見ていた。

お団子頭に、大きなサングラスを掛け、ダボダボのパーカーを着て、下は黒いスパッツ姿。

オレの心臓が異常な速さで動き始める。

人が行きかう中、上手く歩いてこの女の元に辿り着いた。

「家で待ってるんじゃなかったのか?」目の前に逃がさないと言うほどの近さで立つ。

「だって、早く会いたかったんです。」何時もとは全然違う格好なオレの彼女。

彼女の顔が見たくて、サングラスを外した。

そこには、眩しいほど可愛い顔のチェギョンがいた。

「他の皆がいると思って変装してきたんです。完璧に変装できたのに、何でばれたのかなー?」眉毛が下がる。

「ほらっ、土産。」リラックマの紙袋を彼女に持たせようと差し出したが、彼女は中々手を出さなかった。

「どうした?釜山に日本限定のリラックマがあったんだぞ。」言っている内に、彼女はオレをギュッと抱き締め

「リラックマは要らないです。・・・シン・・シン君が欲しい!」

お前こんな所で。

「お前の大好きなリラックマだぞ、何時も買うと喜んでいたはず。」

オレの胸元で、ゴシゴシと頭を擦りながら「シン君がイイです!」

「こうやって言ってくれたのは初めてかな?スッゲー嬉しい。」彼女の顔をクイッと上げて唇と唇を合わせた。

「シン君!」幾ら人が溢れかえっている所でも、私達を見てビックリしている人たち。

恥ずかしくて顔をカレの胸元に逃げた。

「今日は海までドライブの予定だったが、どうするこの近くのホテルに。」カレの意地悪そうな声。

「嫌です。ホテルだと時間気にしないといけないないから。」

「お前、今日はとことんオレが欲しいんだな?」胸元に隠れている私の耳元に、ワザと低い声で言う意地悪なシン君。

恥ずかしいけど、素直に小さく頷いた。

「ご期待に添えるように。あっでも先に体洗わせてろよ、徹夜明けなんだからな。」彼女の体を離して、一緒に歩き出す。

遠い場所で、ムン・ジェウォンが立ち尽くしているのが、人ごみの隙間から見えたが、オレとチェギョンは自分たちの家をめざして歩き出した。













室長が認めた。

さり気なく言う所が又カッコイイ。何たって、あの人は俺の憧れの人だ。
 

 


釜山からソウルにやってきて、仕事のパートナーになったシン・チェギョン。

シンチェギョンは可愛い顔しているが、女よりも仕事が好きだった俺には、興味がなかった。

周りの男達からも、羨ましがられて。

「俺達のアイドルチェギョンちゃんと仕事ができるなんて、ずるいぞーーー!」

「チェギョンちゃんと結婚してーー!」

とにかく、手を出すなと!念を押されて一緒に仕事をし始めた。

でも、仕事を一緒にする度、彼女の一生懸命な態度や上手く出来るたびに、嬉しそうに笑う笑顔に俺の心臓は大きく跳ね上がり、彼女へのキモチが毎日大きくなっていた。

ある日、釜山から一緒に来た室長が病気で倒れた代わりに、あのスーパーエリートのイ・シンさんが経理部に復活した。

釜山でも有名な人と同じ所で仕事ができるなんて、こんなチャンス滅多にない。

チェギョンに「なーっ室長のと飲みに行かないか?室長とご飯食べないか?」二人一緒に室長とお近づきになろうとしたのに、チェギョンは何度もそういうのを断わり続けた。

よく見ると、チェギョンは室長が来てから,ちょっと様子が変だった。

はしゃぐことがなくなり、努めて冷静に仕事をする様にしていたが、失敗で室長から怒られると、机の上でスライム状態になって落ち込んでいる。

「お前、イ・シン室長になってから態度おかしくないか?」

「えっ?そんな事ないよ。」真っ赤になりながら違うと、手を横に振っていた。

その後、チェギョンは、室長に呼ばれて資料室に探し物を取りに行かされていた。

「あっ?ムン・ジェウォンは知らなかったんだよね?シン・チェギョンとイ・シン室長は仲が悪いんだから。」

「えっ?仲が悪いって?あの何でもできて、女にモテまくりの室長と?」

「そうなのよ、室長の教え方がハンパなくてねーー。何度もチェギョンは怒られて、良く資料室で泣いてたんだから。だから、チェギョンを誘って行こうとしてもダメだからね。」最後を強く言われた。

もしかして今も泣きに行ってるのか?

室長の席を見ると、打ち合わせのがネームプレートが置いてあり、人はいなかった。

ふーん。

俺から見ても、惚れてしまいそうなくらいにカッコイイのに、まっ、好みがあるからなー。

益々、気に入った。

毎日、彼女に自分のキモチを伝えていたのに、何時も断られ、そして彼氏からの貰った指輪をして来たあの時の顔。

幸せそうだった。

俺が何度も言っても無理だったのは、その指輪の彼氏だったんだ。

俺のキモチは?

思い余って室長に、この気持ちを相談したのに答えを貰えなかった。

ある時、フッと目線を上げると、室長とチェギョンが並んで話をしていたが見えた。

へ――っ、嫌いだけど、仕事上は仕方ないよなーと、目線を下に下そうとしたら。

2人の口元が。

小さく開きながら会話をしていた,ボランティアで手話や口の動きには詳しい俺は目を見開いてしまった。

それは少ない言葉だが、彼氏彼女の会話だった。

2人が互いの事を嫌っているのは、経理部の中では暗黙の了解になっていたのに。

俺の間違いだったと思いながらも、チェギョンに問いだしてみた。

真っ赤になりながら否定していたが、この慌てようは。

会社のみの付き合いだが、彼女はウソをつけるタイプではない。

そして昨日の二人の言葉は、確実に付き合っている。

久々の釜山で親にも会いたかったが、俺は室長に聞きたくて同じくソウルに戻る事を選んだのに、不覚にも寝てしまった。

KTXから降り、服の乱れを直し、キリッと立っている室長は格好良かった。

釜山で徹夜での仕事ぶりは、テキパキと指示を出し、俺達3人を上手く使いあの量の仕事を朝方までに終わらせた。

凄過ぎる!

そんなエリートなのに、なんでチェギョンと?付き合うんだ?

お世辞にも仕事のできるガンヒョンさんとは劣る、室長にはガンヒョンのような綺麗で仕事のできる女が合うのに。

あの話の後、先に歩いていた俺なのに、やはり室長に堂々と言ってしまった手前意識してしまう。

俺の尊敬する室長の彼女を好きになってしまった。

そして、諦めない宣言までしてしまった俺ってとんでもないこと言ってしまったか?

ブツブツと言っていると、室長が改札口じゃないほうに行き始めた。

あれ?そっちの壁の前には、お団子頭の黒いサングラスを掛けたチャラそうな女がいた。

室長ーー!チェギョンがいるのに。

なんだよ、室長も男だよな。今日はその子と遊ぶのか、ため息をついて俺も帰ろうとしたとき、黒いサングラスは外されてチャラ子はシン・チェギョンに変身した。

「えっ・・・・・。」二人は抱き合い、この人の多い中キスをしていた。

俺の目の前をたくさんの人達が通り過ぎ、キスの処は見えたり、隠れたり、それをただ茫然と見ている俺。

ドンっと誰かがぶつかり叫ばれても、俺はただ茫然とする。

エリート社員の顔しか知らなかった男の、恋する顔。

業務力は平凡でも、一生懸命さでは経理部一番。社内で一番結婚したいナンバーワ1の恋する顔。

二人の恋する顔は、重なり幸せな顔になる。

俺は、ただその姿に見惚れてしまっていた。











玄関の扉が閉まらないうちにチェギョンは背伸びをしてオレに唇を重ねて来た。

昨日の朝からずーっと欲しかった唇とようやく重ねる事が出来た

玄関に響く音は、何時もより荒く大きい音。

隙間から逃げる溜息息継ぎの音。

たった1日会えないだけで、こんなに寂しく相手の事を欲しがってしまうなんて、今まで良く我慢できていたな。

まだまだキスを欲しがるチェギョンから唇を離すと、もっとーと言う顔をされるけど「早く体洗わせろ。」唇に一指し指をギュッと置いた。

彼女は俯き、オレの上着のボタンを外し、ベストのボタンも外しながら「このままでもイイです。」上着とベストの隙間からワイシャツの上から彼女は頬を当て「あったかいです。」

全く、オトコを誘うのが上手くなってしまった。

此処は襲い所だが!体を綺麗にしてからじゃないと、彼女の中に入れない!

「チェギョン、お利口さんに待ってろ。」上着を脱ぎ、ベストも脱いだ。

彼女に渡しながら、ワイシャツも彼女の目の前でゆっくりとボタンを外していく袖口のボタンは上にあげながら、焦らすように外していると、彼女の頬がますます赤くなっていく。

ボタンを外し終り、ワイシャツを脱ぎ捨て上半身を彼女に見せつける様に「釜山に行っても、ちゃんと仕事してたぞ。」彼女の鼻をギュッと押した。

ぶかぶかのパーカーの裾から手を入れ、彼女の可愛い胸をギュッと触り「浮気していないか、確かめるからな。」

「すッ,する訳ないじゃないですかーー!ちゃんと、ちゃんとお利口さんにシン君の事待ってました。だから、早く。」オレの服たちに顔を埋めながら言う。

シャワーを慌てて浴び扉を開けると、彼女が顔の前にバスタオルを広げて、待っていた。

「お利口さんに待っていた私に、ご褒美下さい。」恥ずかしくて声が上ずっている。

「オレの体はお前のモンだ。好きなように扱え。」濡れた髪の毛を後ろに流しながら言った。