定時退社日の金曜日。

私とガンヒョンは、ベルと共に猛ダッシュして、帰り道を急いだ。

今日、20時45分発の済州島行きの飛行機に乗る為に、一旦アパートに急いだ。








1週間前。

シン君のお友達のファンさんがアン・ドナさんの為に友人だけ集めての結婚式を挙げるそうだ。

で、シン君、インさん、ギョン君、親友が結婚式をセッテイングするみたいで、パートナー同伴でって、カードに書いてあった。

「シン君、パートナーって。」カレの足の間に座っていた寛いでいた私は、カードを見ながら呟いた。

「オレのパートナーって、お前しかいないだろう?全くーっ。」後ろからギュッと抱きしめられた。

「えへへへっ。ちょっと聞いてみたくなってしまって。あっ、でもこれ。済州島って、私そんなお金持ってません。」

抱きしめられて、カレの顔は私の肩に凭れる。

「お前の分は心配するなって、オレが出すから。」

「そんなーっ。この間もブレスレット、ラルフのウエスタンデニムシャツも買ってもらいましたよ。」眉毛が下がってしまう。

「彼氏って言うのは、可愛い彼女が喜ぶのならバカになれるんだ。その分働いているから、何時も気にするなって言ってるのに。」カレの唇は、ゆっくりと私の首元を吸い上げた。

 

 

 

 

 

 

 




そして1週間後、ガンヒョンと二人で電車に乗りアパートを目指す。

2人とも、飛行機に乗るのが初めてなので、楽しみだねーっと笑いあう。

ギョン君のパートナーには、ガンヒョンが決まっているので、今日の金浦空港で待ち合わせをしているインさんのパートナーが気になるとこだ。

「インさん、どんな人をパートナーに選ぶのかなー?」

「カン・インさん?あの人なら色んな人「とお付き合いしているからねー、芸能人が来たらどうしようねー?」ガンヒョンが茶化す。

「ありえるかも。」ニヤニヤと笑う。

「そう言えばチェギョン、アパートの事室長に言った?」

「え?あぁ。今日言うよ。」ボソッと言う。

「まったく、言ってなかったんだ。」冷たいー目。

「済州島に行ったら言うから、待っててよ。」

住んでいる所が老朽化の為に、取り壊すことが決められているアパート。

又、ガンヒョンと違うとこを見つけて一緒に住むか?

それとも、シン君と一緒に住むか?

ずーっと決めれなかったが、私は今までのようにガンヒョンと一緒に暮らすことを決めた。

彼女と暮らせるのも後少しだろう。

ずーっと一緒だったガンヒョン。

高校の同じクラスで、隣の席になってから自然に仲良くなっていった。

短大も就職場所も一緒で、私達は笑い合う。

好きになる男も一緒だったりしてね?とふざけ合っていた。

でも、まーっ。お互い好きな人は違い人になり、いっぱいの愛で愛して貰えている。

幸せだね。

幸せ過ぎて良いのかなーーと時々思う時があった。

身支度も終え、小さなキャリーバックを引きながら、金浦空港行きのバス亭を目指した。






金浦空港に着き、初めて見る空港にワクワクしていたら。

「遅い!」不機嫌そうなシン君が入り口で待っていた。

「えっ?」遅刻したかと思い、私とガンヒョンは慌ててシン君の傍に行く。

「あれ?室長時間通りですけど?」時計を見ながらガンヒョンは不思議がる。

シン君の顔がちょっとだけ照れる。

私のキャリーバックを奪い取り、ギュッと私の手を握りしめ「早く会いたかった。」優しい目は、仕事の時とは違う。

「室長、仕事との顔のギャップが違い過ぎます。

毎日、そんな顔で好きだって言われると、誰でも惚れちゃいます。」ガンヒョンの頬が赤く染まる。

「ガンヒョン!そんなーーっ。シン君は私の!」と言いながら、シン君の体を抱きしめた。

「もうーーっ。私がそんな事する訳ないでしょう。ペアルックのシャツ着て、ジーンズ、ブレスレットもお揃いのカップルに誰が手を出すの?」呆れた声。

2人で合わせたはずがないのに、私達の格好はまさにペアルックだった。

「偶然だ。」シン君と私は笑い合う。

チケットのとこに行くと、ギョン君が皆分を貰っているとこだった。

「おっ!来たなー。ガンヒョンーーー!朝振りーーー!」今にも抱きつきそうだったが、サラリと交わす彼女。

「ガンヒョーーン。」又抱きつこうとしているギョン君の体を右手で止めているガンヒョン。

凄ッ

「まったく、ギョンはM体質だからなー。」呆れて私を見下ろす。

そこにインさんが女の人を連れて、つれて。

「先輩!」インさんの隣には、経理部の先輩、イ・ジイ先輩が立っていた。

「お前ら、一回限りじゃなかったのか?」

インさんと先輩は顔を見合わせて笑う「体の相性がすっごく良いんだ。いわゆるセ〇〇○フレンドだな。」

「インさん!それってーーっ。」反論しようと声を上げたが。

「チェギョン、いいのよ。二人とも同意の上での事なの。こういう関係も楽で良いのよ。」

「先輩。」

「好き嫌いという感情なしで、食事したり夜を共にしたり、結構楽しんでいるんだから。」

「二人が良いんだから、オレ達は何も言えないな。」私の腰に腕を回し、ギュッと自分に引き寄せるシン君。

オレ達は違う。カレの力強い腕はそう言ってくれている。

二人はそれで良いのかも知れないが、私は愛のないのは嫌だ。

「まっ、暗いムードにならずに、もう搭乗時間だから行くぞ。」ギョン君が皆分のチケットを一人一人に配る。

シン君に連れられて、保安検査場に行き、二次元バーコードリーダーを端末に当てて、荷物とともに通過する。

初めての私は、何かとあたふたとして、旅慣れた大人の彼らを笑わせてしまった。

登場口の傍で立ち話をして、少しばかりの時間を過ごす。

「ガンヒョン、具合はどうだ?」ギョン君の一言が私をビックリさせる。

「えっ?ガンヒョン具合が悪かったの?」

「昨日辺りからなんかだるくて、きっと風邪よ。」

「気がつかなかった。」ずーっと一緒だった私達、風邪の症状なんて直ぐに分かっていたのに。

「そんなに落ち込まないの。ちょっとだるいだけなんだから。」具合の悪いガンヒョンに慰められてしまった。

長年の親友の体調の悪さに気がつかない鈍感な自分に、落ち込んでいると。

シン君が私の体を抱き寄せ、髪の毛にキスをする

「ガンヒョンの事を見守るのは、もうギョンの役目だ。お前は心配するなって。ガンヒョンよりもオレの事心配してくれないのか?」

「えっ?シン君も具合悪いんですか?」

ギューっと抱きしめられて「チェギョンを好き過ぎて、心臓がおかしくなりそうだ。」私だけに聞こえる小さな声。

ポーーーっ!真っ赤になる顔。

「こんな皆の前でーーー、恥ずかしいです。」抱きしめられながらもジタバタと暴れる。

「オイオイ、イチャイチャっし過ぎだって。」インさんと先輩が笑う。

搭乗の案内のアナウンスが流れて、皆歩き出す。

さすが何チャラ会員の皆様、一番先に入ろうと、バーコードリーダーにかざした。

私とシン君は一瞬でも手が離れるのが嫌で、自然に手を繋ぐ。

初めての飛行機、初めての済州島に行くのをワクワクドキドキしていた。

そんな浮かれている私の後ろを、先輩とインさんが。

「今回誘ってくれてありがとう。」

「いえいえ。」

「仲の良い二人を見て、確実にこの想いを忘れる事ができると思うわ。」

「女性のお役に立てるのなら、俺はなんだってするよ。」

「何時もながら優しいわね。」

「まっ、俺も今回は自分の為でもあるからな。」

「そうよねーー、私と同じだもんね。」クスクス笑う。

「!!」

「同じニオイがするもの。」

「そっかーっ。じゃあ、シンにもばれてるのかもなっ。」ポリポリと頭をかく。

「チェギョンの事には、敏感だからばれてるでしょっ。」

「アハハ八。じゃあ・・、セ〇〇○フレンドさん、今回は俺を癒しておくれ。」

「お互いにね。」顔を見合わせて笑い合う大人な二人。

そんな事を話しているとは思わず、私は初フライトにドキドキして席に座った。




済州島までの短いフライトは、無事に終わり。

夜遅く、ホテルに着いた。

前もって連絡していたみたいで、ホテルの支配人自らが案内をしてくれた。

今日はプライベートだが、自分のホテルなので、顔パスな社長。

すっかり忘れてた。

ギョン君って、このホテルの社長さんだった。(汗)

支配人さんは、インさん、シン君にも挨拶をしている。

「ご予約のお友達様は先に到着しております。」

「判った。」ギョン君は電話を掛けて「後三十分したら、パティオ部屋ナンバーは。」

「では、皆様へ。カードキーをお渡しします。」支配人さんが差し出した部屋は3セット。

ギョン君が「あっ。一組だけ違うタイプ頼んでいたのは?」支配人さんがギョン君に渡す。

「ほらっ。アヒル。お前たちの分だ。」2枚渡されたカードキー。思わずガンヒョンを見てしまった私。

その時、隣にいたシン君がみんなに聞こえるような大きな舌打ちをした。

「お前なー、こんな所にきて、男同士で泊まれというのか?」怒り口調になってしまっている。

「ファンさんの独身最後の日は、親友さん達で飲み明かすのかなーって。」もう、シン君の顔つきが般若になってきた。

私は、ヤバイと感じて、ガンヒョンか先輩に逃げようとしたが、ガッチリ捕まれた。

「三十分後の集合は遅れるから。」私を引っ張り、さっさとエレベーターに向かった。

「ガンヒョーーン、せんぱーーーい。」私の助けてコールは誰にも届かなかった。

ガンヒョンは笑いながら「まったくチェギョンらしいわ。天然。」

自分で荷物を持って行こうとしたが、支配人がわざわざカートに4人分の荷物を置き、「ご案内致します。」お辞儀をした。






エレベーターに乗り、二人っきりの静かなこの中は空気が重かった。

30階以上の部屋に行くには、わざわざカードをかざさなくては動かなかったこのエレベーター。

さすがセレブご用達のホテルだわ。

エレベーターはあっという間に止まり高そうな扉が開いた。

ルームナンバーを探しながらも私の手はガッチリと掴まれている。

お目当ての番号があったみたいだ。

シン君がカードをかざして、扉を開けた。

「うっ!!なんだこの部屋は!?」扉の横にカードを差込み、全ての電気が点灯した途端、あまり物事に動じないシン君が驚きの声をあげた。


なんと。キティーちゃんが。

濃いピンクと黒で統一されたこの部屋はキティーちゃんだらけだった。

「わーーー!キティーちゃんですーーー!」私はバタバタと中に入っていった。

「マジかよ。モダンな部屋じゃなくて、キティちゃん、そうだすっかり忘れてた。この間キティちゃん部屋を作ったって聞いてた。」怒っていたシン君が、ソファにドサッと座る。

色んな所を見渡すと、バスルームがガラス越しだった。

中が丸見えでどうやって入るの?

猫足のバスタブは、映画に出るような物。

「すっごーーいです!こんなお部屋ってあるんですねーー。シン君嬉しいです!」ソファにぐったり倒れているシン君に抱きついた。

カレの手はゆっくりと私の頭をポンポンと軽く叩き「お前が喜ぶのなら何処でもいいか。」フっとカレが笑った。

「私もシン君となら何処でもいいです。」チュッと頬にキスをした。

間近にシン君の冷たい目が痛い

「本当か?さっきはオレを置いて行こうとしたくせに。」

「あははははっ。」誤魔化そうとして、キスをいっぱいしてあげた。