シン君のアパートの近くに、美味しそうなパン屋さんが出来た。
アパートが建っているこの場所は,高級アパートが立ち並ぶ。
色んなセレブ達がこの場所に集まる。
高そうな店がいっぱいある中、このパン屋さんは素朴な感じで改装をしていて、私は、シン君と一緒に帰る時とか、一人で帰る時にこの店がオープンするのをワクワクして待っていた。
今日は残業が終わり、皆がいなくなってから二人車に乗ってシン君の家に向かっていた。
するとあのパン屋さんの所に、明日オープンの看板が立ててあった。
「シン君!あのパン屋さん、明日オープンみたいです!」あっという間に遠ざかる車
運転しているシン君は,バックミラーで確認したが「全く見えない。」笑う。
「今度の休みのお昼、あそこのパン買ってみましょっ。」どんなパンを売っているのか、楽しみでしょうがない。
一人、パンのことを想像していると、肩をギュッと掴まれ体をシン君に引き寄せられた。
「シン君?」突然の行動に?マークが出る。
ちょっと照れた顔をしながら運転しているシン君。
カレのスーツからタバコの香りとシン君の香りがする。
タバコの煙は好きじゃないけど、服に染み込んでいる香りは好き。
この香りを嗅ぐと、安心する。
なんだろう、安心し過ぎて瞼が重く・・・・。
「オイ、寝るなよ。もう着くからな。」シン君の言葉にドキッとして目がパッと開いた。
「つい、気持ち良くて。」苦笑い
「お前は寝てしまうと、中々起きないからな。」意地悪な声。
「シン君、そんな事ないですよ。」当たっているいるので、声が小さくなる。
「まっ、そんなとこも好きだからな。」ボソッと言って、ウィンカーを右に下げた。
休みの日。
シン君に凄く愛して貰った次の日。
ようやく起きた私達は、お昼を大分過ぎた時間にこの店を訪れた。
二人手を繋ぎ中に入ると、小麦の良い香りとパンの焼ける香りが一気に体中を駆け巡る。
良い香り。
キョロキョロと見渡すと、棚にあるパンは少ない。
お昼時間を過ぎているから、大分買われたみたいだ。
「シン君、パンが少ないです。」手書きの美味しそうなネームプレートが並んでいるのに。
「もっと早く起きれると良かったです。」
「仕方ないだろう。お前がもっともっと欲しいって言うから、オレの精魂尽き果てたくせに。」意地悪そうな目で見下ろす。
「こんなところで言わないで下さい!」恥ずかしくて真っ赤になる
「本当の事だから。」ニヤニヤ笑うカレに向かって睨んだが。手を引っ張られて、シン君の躰のなかに崩れた。
「こんなところで言わないで下さい!」恥ずかしくて真っ赤になる
「本当の事だから。」ニヤニヤ笑うカレに向かって睨んだが。手を引っ張られて、シン君の躰のなかに崩れた。
「今日はもうできないから。明日は開店と同時に買いに来れるぞ。」髪の毛にキスを落とす。
「シン君、ここお店ですよ。」
「誰もいないって」余裕なシン君は、又キスをする。
「もーーっ!」カレの腕から逃げようとすると、奥からお店の人が出て来た。
「ごめんなさいーー。パンとドーナッツ焼けたから。」大きな声がこの店に響く。
お店の人に見られなくてパッとシン君から離れたが、カレは絶対に手を離さない。
何時もそうだ。
シン君は何時も私との手を離さない。
安心感。
カレとの繋がりは絶対だという安心感。
お店の人が顔を上げて、私達と目があった瞬間。
「お前は!」一緒に過ごすようになってから、聞いた事もない大きな声を上げながらカレの手は私から離れていった。
えっ?カレが自分から手を離すなんて初めてで。
それに、カレの手はお店の人を掴んだ。
「シン君。」私の呟いた声は。
「シン!何でこんなとこに?」シン君の事をシンって呼んだ。
「お前ーーー、ファンがどんだけ心配してたか!逃げるなよ!」お店の人を捕まえたシン君はポケットからスマホを出して、直ぐにファンさんを呼び出した。
「ファン!今直ぐに来い!何年ぶりに捕獲だ!」住所を教えて直ぐに行くと言う返事が来た。
「シン逃げないから、手を離せって!」バタバタと女の人は暴れている。
「お前の言葉は信じないぞ!ファンが来るまでは、オレが捕まえている。」
「シン。久し振りの再会なのに酷い扱いだ。」ブーブー叫ぶカッコいい美人さん。
「お前なー、カメラマンになるってフランスに渡ったのに、なんでパン屋になってる?」
「これには。」苦笑いのカッコイイ美人さん。
シン君とカッコいい美人さんが話し合っているのを、ボーーっと見てた。
初めてシン君から手を離された。
それがこんなにショックだったとは、自分は何時もシン君の手から何度も離れるのに、シン君もこんな思いだったのかなー。
なんか悲しくなってきた。シン君の気持ちも分からなくても、彼女顔してた。
彼女失格だ。
ズーーンと落ち込んでしまった。
「ちょっと、シン。ちょっとあのカワイイ子、シンの何?何か落ち込んでるみたいだよ。」
「チェチェギョン?」
「・・・・。」
「チェギョン?」
「シン、傍に行ったら?」私の傍に、女の人の手を握りながら、シン君が来た。
「チェギョン、悪い。コイツとは、なんでもないからただの同級生だから。」下を俯き、何も話さない私にシン君は女の人のことを話しているが。
「それにコイツには、幼馴染のファンがいるから。」シン君が一生懸命話しているが。
「違うんです。」
「えっ?」驚く。
「違うんです。、シン君が初めてシン君から手を離した。何時も私が離していたのに、離される事がこんなに嫌だったなんて、分からなかったです。」俯きながらボソボソと言う。
「チェギョン。」
「それにシン君が、他の女の人を掴んでいるのが嫌です。我侭なのは知ってますが、シン君は私だけの彼氏なんです。」俯いてた顔を上げて、二人をキッと見る。
シーーんとなる店
「ちょっと、シン、アンタ顔変だよ。」ドスッと脇腹に拳骨を入れられていた。
「まったく何時もお前にはやられっ放しだ。」嬉しそうなシン君の顔が私の顔に近づいてくる。
シン君の手は私の顔を何度も撫でる。
「何度惚れても足りない、好きだ。」シン君の唇は私の唇と重なり、深く深く絡まる。
「ちょーーーーっとーー。私がいる事忘れてるーーー。何でこんな至近距離でキス見なきゃいけないんだよーー。」バタバタと暴れる女の人をシン君は離さない。
シン君は暴れる女の人を無視しながら、何時もの濃いーーー、キスを何度も何度もしてくれた。
私を自分の体にギュッと抱きしめ、余韻を楽しむシン君は、何度も私の髪にキスをする。
「ねーーっ、アンタ、本当のイ・シンなの?あのスカした学校の王様イ・シンなの?こんなベタベタ甘甘のキスしまくりのイ・シンなんて。」キスシーンを間近で見てしまって、ぐったりとしている女の人。
「もう逃げないから、手を離してよーー。」
「本当か?」
「本当だってあんな濃厚たっぷりと欲情するようなキス見させておいて、もう逃げる気力なんかないよ。」
シン君のキスにウットリとしていた私は、人に見られたと言う実々に恥ずかしくなった。
「じゃあ。」パッと離した。
「でも、お前のは離さない。さっきはすまなかった。もう離さないから。」私の手をギュッと握り締める。
「待ってってーー!又アンタ達する気?ひーーーー、もういっぱいいっぱい見たから勘弁してよーー。」ギャーっ、ギャーーーっ、騒ぐ女の人。
シン君、もう又するんですか?顔が近づいて来た時に、ドアが勢い良く開いた。
「ドナ!」シン君のお友達、ファンさんが中に飛び込んで来た。
「ファン!助けてーーーー!」女の人は、自分より小さなファンさんに飛び付いていた。
「ドナ!助けっててどういうこと?」自分より大きな女の人を抱えながら、ファンさんは聞く。
「もうーーーー、キスは見たくないーーー!」店に響く声は耳にジンジンした。
夜になり、二人でお風呂に入り、着替えてリビングに戻った。
テーブルに置いていた紙袋には、パンとドーナッツが沢山入っていた。
シン君はドーナッツを2つ手に持ち、私を見る。
「食べるか?」
「ハイ。食べます!」ニコニコと笑ってテーブルに近づくと、シン君はドーナッツ2つを目の前に下げながら、歩き出した。
「えっ?」何が分からずに、後をついて行く。
すると、ドーナッツを持ったシン君は寝室のドアに手を掛け、ゆっくりと扉を開けた。
ドーナッツの匂いストロベリーの香りに誘われるまま、私はその部屋に入っていく。
ベットにシン君は座り、傍に来た私を引き寄せ、後ろからドーナッツ1つを私の口に入れ、もう1つを手に持たせた。
「お前は甘いドーナツを味わって、オレはドーナツのように甘いお前を味わう。」
「シン君もう今日は、出来ないって。」
「あんな嬉しいこと言われたんだ。お礼しないとな。」
「後でも良いんですよ。」
「今直ぐにしないと。」カプッと肩に唇を押し付けるシン君に、私のスイッチが入った。
甘い溜息が出てしまい「お前のやる気スイッチは、どこでもあるな。」ニヤッと笑った。