「わざわざ、この経理部に何の用だ。」来客用のソファにドカッと座る。

 
向かいには、秘書室のインが座った。
 
「遊びに来た。」にやっと笑う。
 
「随分、オレが居た頃と違うんだな。」ネクタイを少し緩めた。
 
「お前の後釜になった奴が、結構慣れてきたからな。」
 
「ふーーん。」
 
そこに、チェギョンがお茶を持ってやってきた。
 
インがこの経理部に入る時に、チェギョンの席に行って「チェギョンちゃん、悪いけど、お茶準備してくれる?」にこやかに話し掛けているのを、ジロッと睨んだ。
 
インのヤツ、簡単にお茶頼めてずるいぞ。
 
オレの傍に来たインに、背中をバシッと叩かれて「羨ましいだろう?」ニヤっと笑う。
 
その通りだったので、睨みだけをアイツに向けた。
 
チェギョンがお茶をテーブルに置いている時「チェギョンちゃん、その指輪凄いよね。チェギョンちゃんの彼氏って独占欲強いね。」ニヤニヤしながら言う。
 
「えっ?」お茶を置き終わった後、自分の指輪を触っている。
 
「カルティエのカップリング指輪、中々素人さんは手を出せないかもね。俺の女だ。俺はレベル高い男なんだぞって、周りに警告してる。」ジーーっとオレを見る。
 
ふん。何が悪い。
 
「そうなんですか?」チェギョンがちょっと頬を染めて言う。
 
おい。無駄に可愛い顔、インに見せるなって。オレはジロッとチェギョンを睨む。
 
チェギョンが入れたお茶をゆっくりと味わうイン。
 
一口飲み終わり「美味しいね。チェギョンちゃん、うちの秘書課に移動しない?」又一口飲む。
 
「えっ?まさかー、秘書課なんて無理ですよ。」手を横に振る。
 
「何時でもお出でね。」
 
「シン・チェギョン、ここはもう良いから、席に戻りなさい。で、本当は何しにここに来たんだ?」チェギョンは頭を下げて席を離れた。
 
「もっと、チェギョンちゃんと話したかったな。」又お茶をすする。
 
「お前後でボコボコにするぞ。」ボソッと言う言葉は、インだけに聞こえるように言う。
 
「おーー、こわ。じゃあ。そろそろ本題。俺、1ヵ月後にここ退社するんだわ。」
 
「はっ?」
 
「とうとう、月からのお迎えがーーって言う冗談は置いて、ギョン社長もさまになってきてるだろう?もう戻ってきなさいって。電話があった。」
 
「そっかーーっ。」チェギョンの煎れたお茶を一口味わう。
 
美味くなった。
 
「お前んちも、後1年じゃなくて、早まるんじゃないか?」
 
「知ってたのか?」
 
「ああ、親父が言ってた。シンの家もシンを呼び戻そうとしているって。」
 
ソファに深く座りなおし、ため息を吐く。
 
「ああ、強くじゃないが、そろそろどうだって言われている。」
 
「こればっかは仕方ないな。戻るのなら、後釜見つけないと。」
 
ギョンの社長ぶりも板につき、そろそろ実家に戻って来いと。
 
オレは自然にチェギョンを探す。
 
実家に戻っても良いけど、チェギョンが傍に居ない仕事場なんて嫌だな。
 
彼女の仕事ぶりを、ジーっと見ていると
 
「じゃあ、俺そろそろ秘書課に戻るわ。」インは立ち上がり「お前も気持ち、固めておけよ。」良いながらオレに釘をさしていった。
 
親達は、早く戻ってきなさいと言う
 
「今付き合っているお方を紹介しなさい。ヘミョンだけに会わせたとと聞いているが?」チェギョンを連れて来いと言う。
 
連れて行っても良いけど、チェギョンに負担が掛かると思って、中々行けない所になっていた。
 
でも、もう潮時だな。
 
連れて行こう、オレの彼女、イヤッ妻になる女ですって。
 
 
チェギョンを見ようとしたら、ムン・ジェウォンと目が合う。
 
何か言いたそうな顔。
 
お互い目を離さず、目を交わす。
 
するとチェギョンがムン・ジェウォンに、紙を出し聞いている。
 
オレの目線から外れたアイツ。
 
アイツともそろそろ、決着つけないとなっ。
 
 
 
 
 
 
 
「シン君、今日ムン・ジェウォンさんに、私の彼氏って室長?かって聞いてきたんですよ。ビックリしましたが、なんとか回避しました。」
 
バスルームに響く彼女の声。
 
最初の頃、一緒に入る時、電気消してくださいとか、目瞑ってください、向かい合ってばかりで全然傍にも寄らせなかったのに、今じゃあっ湯船の中ですっかりとオレの腕の中で、フニャっとなっている。
 
きっと下手に回避したんだろうなっと、ちょっと笑う。
 
ムッとした彼女は「そこなんで笑うんですか?」
 
「イヤッ想像したら、きっと可愛い顔であたふたしたんだろうなって。」
 
「もうーっ当たってますーっけど。」湯船に浸かりながら、頬を真っ赤に染める。
 
柔らかい彼女の体をギュッと抱きしめ「ばれたら、嫌か?」耳元で呟いた。
 
「えっ?」彼女の顔が後ろに居たオレの顔を覗き込む。
 
「付き合っていること。皆に教えたら嫌か?」
 
湯船に浮かぶ黄色いアヒルがちゃぷちゃぷと動いてる。
 
「ビックリしました、嫌というか、良く分からないです。このまま隠れて付き合っていくのがいいのか?それとも堂々と言った方が良いのか。」
 
動いていたアヒルがオレの腕にぶつかってグルグル同じとこを回る。
 
「都合の良い日を決めて、お前をオレの家族に紹介したいんだ。」ボソッと言う。
 
「・・・。」
 
「結婚したい女だって。ダメか?もちろん会ったからって、直ぐには結婚しないから、お前仕事楽しいだろう?」
 
「シン君。」オレの腕の中に居た彼女は、自分で体勢を変え、オレと向き合う。
 
「会いたいです。シン君のご両親に会いたいです。会って、お礼が言いたいんです。シン君を産んで下さりありがとうございますって。」オレの首に腕を回し、ギュッと抱きしめられた。
 
「そんなこと。」
 
「だって、こんな平凡な私に、シン君を会わせてくれたんですよ。もう凄い感謝しないと。」ギューーっと又抱きしめられた。
 
「もしかして泣いてるのか?」小刻みに震える彼女の頭を撫でてやる。
 
「・・・。」
 
「湯船ももう熱いな、上がるか。」力を入れて、二人一緒に立ち上がる。
 
彼女は泣いているのが恥ずかしくて、顔を上げない。
 
「まったく、お前なー。無駄に可愛い事すんなって。ほらっ、体洗うから」ボディソープの泡は、オレの手の中で溢れ出していく。
 
 
彼女の肌を綺麗に洗った後。
 
甘い甘いキスを一つ、一つ落としながらベットに横にさせる
 
「シン君、明日は女子会です。」
 
彼女の首元にキスをしようとした時に言われて「了解」と呟き、キスを止めて舐めあげた。