仕事が終わり、今日は一人でシン君のアパートに向かった。
もう季節は春になり、途中咲き始めた桜の花を見上げて歩いているとホッコリとする。
江南地区にあるアパートから車ではなく、電車の乗って今度の休みに汝矣島公園の夜桜を見に行こうと、シン君が言ってた。
そう言えば、小さい時良く親に連れられて、見に行ってた。
あらからずいぶんと行っていないので、もっと桜の木が増えているのか楽しみだ。
自然に鼻歌を歌いながら歩いて行くと、シン君のアパートに着いた。
見上げるほどの高層アパート。
何時見ても高そうだよねって、言うか本当に高いけど。
入り口に、ロビーがあるってこと自体が私的に凄い。
私とガンヒョンのアパートは古びた屋上の1室。そんなアパートしか見てこなかった私にはとんでもない建物だ。
昨日、二人でアパートの管理人さんに呼ばれた。
「このアパート建て直すから、申し訳ないが立ち退いてくれ。」紙を渡された。
そこには、いろんな条件が書いており、私達には悪くない条件だった。
でも、突然の事で二人は顔を見合わせる。
「1ヶ月以内だそうだ。宜しく頼むよ。」二人で自分の部屋に戻り、テーブルに紙を置いてボーっとする。
暫く経って、ガンヒョンが口を開いた。
「アンタどうする?」
「うん、どうしようね。」
「仕方ないから、新しいアパート探すか。」ガンヒョンがポツリと言った。
「探すの ?」
「だって探さないと住むとこないでしょ。」
「ギョン君のとこは?」
「アイツのとこには、行かないわよ。アンタは、室長のとこに行くんでしょ?ペアリングしちゃう仲なんだから、もう室長のとこに行きなさい。」
紙を見ながら、ずーっと左指に嵌めている指輪を触っていた。
カルティエの指輪をして行った日を思い出す。
経理部の皆にバレないように、さり気無くしていたつもりなのに、ムン・ジェウォンに見つかってしまい、経理部の皆に知れ渡ってしまった。
「シン・チェギョン、そんなー。指輪貰ったのかよ。ずーっと告白してたのに。」今にも泣きそうな、ムン・ジェウォン。
おねーさまたちは、目の色を変えて「ちょっとー、これ、カルティエよ!」
「ひーーー!チェギョンが彼氏から、カルティエ貰うなんて負けたーーー。」
色んな人達から、「根掘り葉掘り言えーーっ!」と強制的だったが、口に手を当てて言わなかった。
皆に取り囲まれている時、指輪をくれた張本人は、この光景をニヤニヤと笑って見ていた。
くーーーーっ。シン君のバカー!!シン君だって、同じ指輪持っているけど、会社だけは外すようにした。
同じ部署と言うのが、まずいんじゃないかと、二人で相談した。
もう、こうなったら、「ムン・ジェウォンさん、私には彼氏がいるので、もう告白しないでくださいね。」と強く念を押した。
皆を掻き分け、自分の席に座ったら、スマホのLINEが鳴った。
小さな画像と、少しの言葉。
愛してる。
小さな画像をダウンロードすると、シン君がギュッと私を大事そうに抱いている写真だった。
「・・・・・。」パッとシン君を見ると、もう室長の顔になり、パソコンを見ながら電話をし始めていた。
私は大事そうに指輪を撫でて、仕事をし始めた。
カレの家に住む?
今もずーッとカレの家に住んでいるようなものなので。どうしよう、カレに相談する?
それとも又ガンヒョンとアパート借りる?
「2・3日考えてみる。ガンヒョンと一緒に部屋を借りるか、それともシン君の家に行くかちゃんと考えるよ。」
ガンヒョンは、私の言葉に頷き、笑った。
「私に気を使わないで、ゆっくり考えるのよ。」と念を押された。
シン君の部屋の扉を開け、何時も通りに中に入っていくと。
下駄箱の上に、リングケースが開いた状態であった。
男性用の、カルティエ。
私は画廊でシン君に嵌めて貰ったが、シン君のはこの部屋で私がカレに嵌めてあげた。
二人で手を合わせて見比べ、カレが幸せそうに指輪にキスをする。
何枚も写真を撮り、画像をプリンターから出し、良く見える位置に貼った。
カレは家に帰ってくると、必ずこの指輪を嵌めてから、部屋に入る。
カレのストレートな気持ちを受け取っている私。
幸せ過ぎる。
自分用のスリッパを履き、昨日買って置いた食材で、カルグクスとブロッコリーとエビ・卵のサラダと、ヤンニョムチキンを作ろうと思っていた。
春用のトレンチコートを脱ぎ、密かにシン君のとお揃い。
自分のエプロンを付けた途端、カッと目が開いた。
今は、料理の事だけ考えよう。「食べて貰う人に、美味しいのを食べて貰おうと、作らないとね。」シン君のオネーさんが私に教えてくれた言葉。
毎回それを実行する。
シン君の為に美味しいのを食べて貰おうと、唱えながら、私は冷蔵庫の扉を開けた。
ピンポーーン。
シン君が帰って来た。私は慌てて玄関に行って、扉を開けた。
そこには、黒のスーツに、腕にはコートを持ちながら立っているシン君がいた。
「おかえりなさい。」玄関の中に入りながら「ただいま。」軽くキスをするシン君
私がシン君のスリッパを準備している時、カレはリングケースの前に立ち、指輪を左手に嵌めた。
「うん?この匂いは、ヤンニョムチキンだな。」鼻が利くシン君。
「バレましたね。ご名答です。」キッチンに立ち寄り、テーブルの真ん中に、ドーンと構えているヤンニョムチキンを見つけると、カレは1個口に入れた。
「チェギョンのヤンニョムチキン、店のより美味しいな。」
私にも1個口に入れた。
真っ赤になった指を1本ずつ舐めるシン君。
口に入れたチキンを良く噛んでいると、シン君と目が合った。
「ヤンニョムチキン又食べるか。一番美味しいのを」私に近づいてくる。
グイッと腰を掴まれ、びっくりした私は、顔を上に上げてしまい、シン君の唇と重なった。
「口の周り真っ赤だ。」カレの舌で舐めあげられる、真っ赤な液体。
そして強引に重なり絡められた舌先。
早急な行為についていけなかった私は、ただカレの舌の動きに任せるしかなかった。