バスローブを羽織ながら、ヒゲを剃り、髪の毛をセットする。

その時に、この部屋のチャイムが鳴った。

予定通りの時刻、メガネを掛けこのままの姿で出る。

大股でこの部屋を横切り、扉を開けた。

「時間通りだ。」ニヤッと笑う。

「イ・シン様、おはようございます。ご要望の物をお持ちしました。」

オレの目の前には、イ・ユルが紙袋を持って立っていた。

「すまない。休日なのにワガママを言った。」紙袋を受け取り、彼に頭を下げた。

「大丈夫です。今日は仕事だったので、問題ありませんよ。」ニッと笑う。

「あっ、ちょっと待ってくれ。」オレはカバンを取りにイスに向かった。

ガチャっと言う音と共に、バスローブを羽織ったチェギョンが出て来た。

「あっ、ユル君。」自分がどんな場所に居て、どんな格好をしているのも忘れて、ユルに手を振っている彼女。

オレはカバンから封筒を取り出しながら「オイ。」声を上げながら、彼女に近づく。

「えっ?」オレの声で、すっかりと状況が判りアタフタとなる彼女。

何時も変わらぬ彼女の行動に、オレは苦笑いを浮かべながら彼女の体を、自分に寄せる。

そして彼女の綺麗な髪の毛に手を当て、オレのもの!という風にイ・ユルを見下ろす。

「シン君、ユル君いるのに。」恥かしい彼女は、口元が出てきた。

「アハハハッ、チェギョン何時も仲が良いね。」

「えへへっ。見た目は似合わないけど、中身はお似合いなのです。」オレのバスローブにギュッとする。

オレとイ・ユルの目が合い、二人で苦笑いする。

「これ、前からやろうと思ってたんだ。うちの系列のご優待券。」封筒をイ・ユルに渡す。

「中には、ロッテワールドの1日券、3人分が10セット入ってるから、これで娘さんと遊んであげて。何時も無理して来て貰っているから。」ニヤっと笑う。

「イ様、仕事ですから、こんな凄いの。」

「大丈夫、この会社の社長とは友達で、タダで貰ったんだ、気にするなって。じゃあ、時間も無いから」オレは軽く手を上げ、扉を閉めようと、イ・ユルはずーっと頭下げていた。

「オイ、扉閉めずらい頭上げろ。」声が照れる。

ハッと顔を上げ「イ様、有難うございました。ね

「じゃっ、又頼むよ。」バタンと扉を閉めた。




この部屋に、二人きりになったオレ達。

「さっ今日頼んだのは、ペアの下着だぞ。お前の好きそうなにしてみたから、これ着けろ。」紙袋を持ち上げながら言ったら、ガバッとチェギョンがオレに抱きつく。

「シン君,さっきの事かっちょえーです。イイ男過ぎてますます惚れます。」ギューギューとオレの体に巻きついてくる彼女。

「チェギョンもう行かないと行けない。」チェックアウトの時間が近づく中、彼女からの愛をめい一杯貰っているオレだった。






ロッテデパートの前に車を止め、ギョンの車が来るのを待っていた。

ちょっとだけ待っていたら、ビカビカな黒塗りが止まった。

オレとチェギョンが降りると、その車からも男女が降りてくる。

4人が集まり「じゃあ、ガンヒョン、チェギョンと食事お願いする。」チェギョンの体を押し近づけさせる。

「判ってますよ。」チェギョンと手を繋ぐガンヒョン、クッソーー。オレがずーっとしていたかった事を。

「ガンヒョン、このカードで好きなの食べて。」ギョンは自分のカードをガンヒョンに渡そうと。

「いらないわよ。」チェギョンとガンヒョンは目を合わせ、笑う。

「私達は、屋台で食べてドーナッツ屋さんで過すから、そんなカード使うとこ何か行かないわよ。昨日チェギョンと話せなかった分、話すんだからーーー。」二人で笑い合う。

「うん、シン君のお仕事終わるまでちゃんと待ってます。ドーナツのお土産、シン君の好きなチョコいっぱい掛ったのでイイですよね?じゃあ、もう行きます。」チェギョンとガンヒョンは、ロッテデパートには入らず、道路の横にある屋台に向って歩き出して行った。

「シン、お前ドーナツ食べた事あったか?」二人を見ながら、ボソッと聞いた。

「チェギョンと付き合うようになってから、食べてる。」チェギョンが沢山のオデンを持つところを見て、ボソッ。

「インに教えないと。」ニヤッと笑うギョン。

「オイ、インには内緒だ。」言い合いながらも、目線は自分達の彼女に向っている。

屋台でオデンやトッポギを頬張っている二人。

「全く。オレ達の彼女は最高だな。」チェギョン口裂けそうだ、オレの笑いは止まらない。

「やっぱ、ガンヒョン食べ方まで綺麗だ。最高ーーー!!」二人目を合わせ「さー、今日の食事会さっさと終えてドーナツ屋に迎えに行かないとな。」二人とも笑い、お互いの車に乗りあった。









明洞のドーナツ屋さんのテラス席。

今日は温かいので、外の席に座りガンヒョンと久々な話をした。

会社では言えない事を、ここぞとばかりに言い合う二人。


屋台でいっぱい食べた筈なのに、ドーナツを2つとHOTのキャラメルマキアートにシナモンを掛けたベンティサイズ。

ガンヒョンの目が痛い。

「アンタその甘さ凄いわ。」呆れた目で見下ろされる。

「そう?」大きな口を開けて此処の店自慢の大きなドーナツを頬張る。

「バカうまっ。」ニッコリと笑う。

本日のコーヒーに1個のドーナツを頼んだガンヒョンはお上品に食べていた。

「ガンヒョンってば、細いんだからもっと食べたほうが良いよ。」

「良いの、アイツの部屋に行くと色んなお菓子食べさせてくるから、おかげで太ってきたんだから。」イラッとした顔で言う。

「アハハッ、ギョン君ガンヒョンの為なら何でもしちゃいそうだもんな。」

「アンタのとこの彼氏さんもそうでしょ?」コーヒーを飲みながら言う。

「シン君?まーっ確かに。」

「それにしても、改めて思うけど、凄いオトコと付き合ってるよね。」ジーッと私を見る。

「凄いよねー肩書きも凄いのに容姿までも凄いって。女子にとって高嶺の花だわー。」

「ギョンもホテルの社長で凄いんだけど、レベルが違うからねー。」

「でも、家じゃ普通。ただの料理が出来て、自分の実家の仕事をパソコンで指示して、私の世話を一生懸命してくれるあれ?これって凄過ぎるね。」苦笑い。

「気がつくのオソッ。」

「アハハッ、ほんと時々なんでこんなヤツと付き合ってるのかなーと思う。」


「そんな事ないでしょッ!!仕事以外じゃスキスキオーラがいっぱいで、目も当てられないよ。」ドーナツを一口食べた。


私は自分好みの美味しいコーヒーを口に入れて、幸せを感じる。

「うーーん、前まで此処のが最高に好きだったんだけどなー・・。今は、シン君が淹れてくれた方が美味しい。」

「ハイハイ、ラブラブカップルご馳走様でした。」

「あっ、噂をするれば。」

明洞の通りをこの店に向って歩いてくるイケメン二人が見えた。

それも、多くの女性を引き連れて。

「どう見ても室長目当てだね。」女性達を見て呆れる。

「ねっ、慣れちゃうでしょ?」私の目はシン君を追いかける。

段々近づくに連れて、カレとの目が合う。

なんてカッコイイ。私はカレの顔をボーっと見てしまう。

部屋でいっぱい見ているのに、未だに見惚れてしまう。

「オイ、アホ顔になってる。」ニヤッと笑いながら私のカレは言う。

真っ赤になりながら、パタパタと自分の顔を整える。

「遅くなったな、迎えに来た。」何て、優しい顔で言うの。又ボーっと見惚れてた。

後ろのいた女子達が騒ぐ。

何であんなオンナとーー?色々と酷い言葉が出ている。

シン君とガンヒョンが、その女子に向いながら、冷たい目で見下ろす。

「オレのオンナに」「私の親友に」「ケチつけるな!!」二人の声がハモりながらもジロッと睨む。

騒いでいた女子たちの口が止まる。

「ちょッ、ちょっと2人共ーーー。皆黙っちゃったよ。」

「ガンヒョン、カッコイイ。」ギョン君の目は、ハートになってる。

「室長、今日はどうも有り難うございました。チェギョンといっぱい話し出来ました。」綺麗な笑顔で言うガンヒョン。

「いや。何時もオレの我侭で、チェギョン連れて行ってるから、すまない。」カッコイイ顔で言うシン君。

シン君とガンヒョン、綺麗とカッコイイでお似合いなのに。

シン君は私の手を取る。

ガンヒョンは、ギョン君の傍に行く。

「もう、家に帰るぞ。」カレは私の荷物を皆受け取る。

「早く行こう。」ギョン君はニコニコしながら、ガンヒョンのカバンを持つ。


2組のカップルは、駐車場まで歩き出す。

お互いの彼氏は、彼女の事を大事そうに扱いながら、この寒い季節の中を歩く。

休日の明洞は人が溢れている。

段々2組のカップルの距離が離れていく。

私とガンヒョンは一緒に並んでいたのに、段々手が届かなくなっていく。

まるで私達のように。

高校、大学、会社ずーっと一緒だったのに。

お互いの大事な人を見つけて、同じ道を歩かなくなった私達。

淋しいけど。シン君から離れる事なんかできない

カレの腕をギュッと掴み、ガンヒョンに手を振る。

彼女も、ギョン君に手を繋いで貰っていて、私に手を振る。

人の多さに、とうとう二人は見えなくなってしまった。

ギュッと掴んでいた腕に、自分の頭をくっつける。

「チェギョン?」

「なんでもない。」ちょっと、淋しくなっただけ。

お互いの帰るとこが違うだけ。

ちょっと前までは、あの小さな寂れたアパートに、二人寄り添っていたのに。

大人になった私達は別の家に帰る。







帰り道、しんみりしてたのに。

お土産用のドーナツを見た途端。

私の頬は緩む。

「頂きますーーーー。」大きな口を開けて一口食べた

「バカうまっ!!」もう一口食べようとしたら、ギュッと手を捕まれた。

「オイ。お前自分の分食べたよな。」冷たい声

「はい、ストロベリー味を食べました。」冷や汗が出る。

「それは?」ジトーッとカレが見る。

「チョコのドーナツはシン君の為に買って。」

「じゃあ、なんでお前が食べるんだ?」

「エヘヘヘッ・。」笑ってごまかす。

「オレのを寄越せ」チョコのドーナツがシン君の口に消えて行く。

「あ~~~~。」

「そんなに食べたかったのか?」

「はい。もっと買ってくれば良かった。」

「仕方ないなー。」

「えっ?今から買いに行くんですか?」

「まさか?」ニヤニヤ笑うカレの顔は私に近づいて来る。

「オレのチョコ味わえばイイ。」カレの口は開き、チョコの香りが広がる。

私の口にゆっくりと唇を重ねる。

「チョコのドーナツ食べたかったです。」カレのキスをゆっくりと味わう。

「買いに行くの面倒くさいから、オレを食べて我慢しろ。」カレの舌が私の口の中に入って来た。

「どーな・っ。」最後まで諦めなでも、カレの熱い気持ちに、負けてしまって。

二人の舌は、絡まる。




その後、私達はチョコよりも甘く蕩けた。