ハワイでの会合が無事に終り、オレ達は空の上にいる。

白い雲の上を飛び続ける飛行機。時々、雲に飛行機の陰が映る。

隣の我が社の社長は、カタログでガンヒョンへの土産を選んでいた。

「お前も懲りないよなー。」

オレは呆れながら、ギョンに言う。

「良いんだ。ガンヒョンは俺に物を買って欲しいと言わない女だ。だから、こういう時が、チャンスなんだよ。土産は受け取ってくれるから。」デレ~~とした顔で、オレに言う。

オレは呆れながらも、このカップルの事が好きだった。

ちょっと頼りない社長に、しっかりとしたガンヒョン。

何時もガンヒョンに怒られても、嬉しそうなギョン。

「マッ、頑張れ。」

そういうオレも、足元の紙袋にはぬいぐるみの手が見える。

今回はハワイ限定、リラックマ・コリラックマ・キイロイトリの3体。

全く空港でのレジに並ぶ時が一番辛い。

選んでいる時は、真剣に選んでいるから、良いけど。

レジに立ち、周りの客がジロジロと見る目が痛い。

 

 

 

 



「シン君って、黙っていると怖いんですから、口元ニッコリとしてください。」彼女の綺麗な指がオレの口元に触る。

ドキンッ、心臓が跳ね上がる。

全く、コイツはオレがどんなにお前に惚れているのか判ってないんだろうな。

お前に触られただけで、ドキドキする心臓の早さを止められないのに。

簡単に触れるお前の指。

悔しいから、イタズラをする。

「ニッコリ何て出来ない。」彼女の2本の手首を捕まえて合わせ。

綺麗な指を自分の口元に入れ、たっぷりと可愛がってあげた。

真っ赤になって「止めて下さい。」言い続ける彼女。

気にせずに、オレの舌先で舐め吸い付く。

彼女からの悲痛な言葉はなくなり、熱い溜息が溢れ出す。

「指だけなんですか?」オレに堕ちた彼女は、言葉でオレを誘う。

指をゆっくりと口から出し音を響かせる。

「もっと欲しいか?」彼女を覗き込みながら聞く。

ゆっくりとオレの肩に凭れた彼女は「欲しいです」長い髪に隠されてしまった可愛い顔を、手で出してあげてキスを重ねる。


 

 


しまった。

チェギョンに会えない海外では、思い出さないようにしてたのに

早く会いたい、抱きしめてキスがしたい。

自分の番がきて、カードで支払いと包装を待っていると、店員が声を掛けてくる。

「彼女への土産ですが?」英語は大体わかる。

「そうです。」愛想笑いをする。

「貴方の電話番号かアドレス教えて頂戴。」自分の名刺をオレに渡してくる。

「いえ、結構です。」ちゃんと店員に返す。

「アジア人の女性が出来ないような、蕩けるキスしてあげるから、あっちにいきませんか?」店員は怪しく誘う。

 

普通の男子なら、誘われてしまえば絶対に付いて行きたくなるタイプの女だな。

 

チェギョン一筋のオレは「そんなの、オレが何時も彼女にしてあげてるから、お構いなく」ニヤッと笑い、ぬいぐるみを受け取りその場を立ち去った。




つい思い出してしまった

オレにはチェギョンがいるから、他の女なんて興味ないのに

この飛行機のCAも何故か、異常な接待をしてくる。かわすのも一苦労だ。

頼むから、早く韓国に着いてくれ




空港に置いていた車に乗り、彼女のアパートを目指す。

後ろからは、ギョンの車も来るけど、ぶっちぎって進む。

早く、チェギョンを抱きしめたくて、アクセルを踏み続ける。

アパートに着き、扉をノックすると、彼女の声と共に扉が開き、オレの体にチェギョンが飛び込んできた。

「シン君、お帰りなさい。」オレの好きなマシュマロのような柔らかい体が、オレに抱きつき嬉しくなる。

「飛行機が無事に着いてよかったです。」ギューーーッと抱きしめられる。

「落ちない限り、飛行機が一番安全なんだぞ。」ギューギューと抱きしめられるのが、嬉しくて彼女の頭にキスを落す。

「心配で、心配で。」泣き始めた彼女の頭を撫でて、困った顔でいると。

ガンヒョンが彼女の荷物を持ってきて「本部長、出張ご苦労様でした。さーさーッ、これ持って行っちゃってください。」呆れながら手渡す。

「サンキュっ。」彼女にコートとマフラーをつけてやり荷物も持ち、アパートを出ようとした時に、ようやくギョンが着た。

「遅かったな。」

「シンが早すぎるんだ。俺のそこそこに早かったんだぞ。」

オレは笑いながら「想いの違いかな?」笑って階段を降りて行った。

その後ろからは、ギョンの叫び声が聞こえたが、オレはチェギョンが寒く感じないように、きつく抱き寄せ車に歩き出した。




ようやく家に着き、ソファに座る。

彼女を引き寄せ「早く帰ってきた実感、味わせろ。」

「シン君のキス欲しいです。」


「甘く蕩けるキスしか出来ないけど、いいか?」オレの唇は、彼女の唇に辿り着く。

「早く」最後の言葉も終わらない内に、彼女の口はオレの唇に飲み込まれていった。