「オイ、オイ。」

 
えっ?
 
声のほうを見上げるとインがいた。
 
「此処良いか?」
 
インはオレの向かい側に、昼食が乗っているトレイを置いた。
 
イスに座り、オレを見て笑う。
 
「オイオイ、ギョンから聞いたぞ。」定食のゴハンに、箸をつけた。
 
「あぁ。」オレはフッと苦笑いをする。
 
「精根尽きるとこうなるんだな。」インはニヤニヤする。
 
「そうだなーっ。もう家に帰って、チェギョンを抱きながら眠りたい。」フーーーッと溜息を付く。
 
「チェギョンちゃん、連れて行ったら、眠れないじゃないのか?」叉笑う。
 
「それでも、アイツがいないとぐっすり出来ない。」
 
「ふ~~ん。そういうもんかねー。」おかずを取り、口に入れるイン。
 
「ところで、初心なチェギョンちゃんが凄いテクでも持ってるのか?」インの目は、興味津々で待ってる。
 
「・・・・・・・・。」オレはジロッと見る。
 
「教えろよ。この事は、アイツらには言わないから。」真面目な顔をして、頭を軽く下げた。
 
「ふーっ。まったく。お前大学の時、ギョンが言っていた事覚えてるか?」
 
「大学?ギョン?いいや。」
 
「ギョンが仕入れてきた女の3大絶頂の話し。」小さい声で言う。
 
「・・・・。」考え始めたイン。
 
暫くして「あーーーー。思い出したーーー。」
 
「興味本位で聞いたけど、オンナの事なんて、あんまり気にもしてなかったから忘れてたよ。」
 
「オレもだ。」スマホの待ち受けを出す。
 
「でも、思い出して、チェギョンに試してみた。」待ち受けには、カワイイチェギョンの寝顔だった、
 
「で、こんな気だるくなってしまったのか?」インの顔は真面目だ。
 
「あぁ。何時もは恥らってばかりなのに凄かった。」
 
「名前なんだったけ?俺も検索して、試してみないと。」ニヤリと笑うイン。
 
「教えてもイイが試すなら金・土曜日にしとけ。」苦笑い
 
「体がもたないんだな?」オレは黙って頷く。
 
「スポーツ万能のお前がギブするんだ、今から楽しみだ。」ワクワク顔
 
「お前特定のオンナいなかったよな。」
 
「これから吟味するさー。トコトンできるんだ。上等なオンナじゃないと嫌だな。」インはスマホを持ち、電話番号を検索し始めた。
 
「全くオレも、去年まではこんな感じだったんだろうな。オンナなんてモノ扱い。」
 
「おい。俺はお前とは違うからな。ちゃんとオンナとして扱ってあげてるぞ。」確かに、インは真面目な所があり。マメだ。
 
「よし!!ユミちゃんにしよっ。」
 
「ユミ?日本人か?お前はとうとう国まで越えたのか?」笑う
 
「留学で韓国に来ているんだ。オヤジの日本の友達の子供で、世話してくれって頼まれてるんだ。」
 
「オイオイ、そこまで世話しろなんて、小父さんは頼んでいないと思うぞ。」呆れ笑い。
 
「ちゃんと夜の世話してあげるのが、韓国男子の務めだ。で、話はそれたけどその名称は?」
 
呆れ笑いをしながら「●●●●●頂。まッ頑張れ。」オレは、コーヒーを飲みに立ち上がろうとしたら。
 
「もし良ければ、これ飲みませんか?」世間的に綺麗なオンナが紙コップを持ち、オレに差し出していた。
 
「・・・・。」
 
「久し振りね。」
 
「・・・・?」誰だ?インと顔を見合わせる。
 
「貴方を追って此処の会社に入ったのよ。コーヒーはブラックでしょ?」
 
「・・・・。」記憶にないオンナ。
 
それにオレは自分の会社のオンナに手をつけるなんて、バカな事はしなかった。
 
「あの時の貴方が、忘れられなくて此処の幹部のおじ様に頼んではいらせて貰ったのよ。」
 
控えめに語るが自信満々の言葉。
 
全く記憶がないって言うか、性欲の捌け口のオンナは誰も覚えていない。
 
「悪いが、全く記憶にないんだが?人違いでは?」オレの目は気だるさから段々目が冴えてきた。
 
「えっ?去年の冬の時に。」チェギョンの会う前か。
 
「そのとき、貴方に自分の名前をお教えしましたか?」オレは自分の名前を教えた事は一度もない。
 
「いえ、だから探すのに大変でした。ようやく此処のホテルの従業員だってことが判って。イ・シンさんですよね。」オレのネームプレートとその名前が合っているのを確認して、ほっとしている。
 
「オレと似たオトコではないですか?こんなオトコいっぱいいますよ。」営業用の笑いをする。
 
「そんなはずは。」
 
「貴方ほど綺麗な人、忘れるはずがないじゃないですか。でも、オレは知らない。じゃっ、もう仕事に行きますから、この事は忘れてあげます。」
 
「間違っていない。貴方としたもの。忘れられなくてあんな素敵な夜初めてだったんです。おじ様に頼んで此処にわざわざ入ったんだから。」
 
もしかして。オレはそのオンナの近くに寄って「おじ様のお名前は?」
 
「キム・ドンゴンと言います。」オレが近くによって、ドキドキしているオンナを見下ろし
 
「おじ様って本当のおじさんじゃないだろう?オレは、品の良さそうなオンナは相手にしなかったんだ。と言う事で、貴方はそんな部類じゃないだろう?」オレの声は周りに聞こえないように低く話をする。
 
「それとも品の良さそうな振りして、オレとやったなんて、遊びオンナなのか?」出来るだけ冷たく言う
 
真っ赤になって、ギュッと歯を食いしばっているようだ。
 
「やっぱ知らないってことで。」オレの声は何処までも低く呟く。
 
「じゃっ、お仕事頑張って下さい。」インも立ち、オレと一緒に歩き出す。
 
何も言えなくなった女は、真っ赤になって俯いていた。
 
 
 
「イン、キム・ドンゴン。アイツの伝で入ったオンナ愛人だな。」
 
「古株さん達には、人事に携わらないように、体勢変えたんだけどな。手伝ったのは誰だ?ちょっと調べてみる。」
 
「あっ、それにあの。」
 
「オンナだろう?直ぐに辞めさせるか?」
 
「イヤ、ちょっとばかり釘刺しておいたから動かないだろう。でも、やばそうだったら辞めさせる方向で。」
 
「で、覚えてるオンナか?」
 
「イヤ、まったく。思い出す気もない。チェギョン以外は知らない。」トレイを返却口に返そうとしたら、オレに向かっている視線を感じた。
 
えっ?その方向を見ると、ちょっと離れたとこのチェギョンと目が合う。
 
「チェギョン?」何でそんな顔してる?彼女の顔は真っ赤になって眉毛は下がり、口を一文字にさせていた。
 
 
 
 
 
 
 
「よーやく昼飯だーー。メシ食いに行こうぜ。」バンとムン・ジェウォンに背中を叩かれた。
 
「いったいーー。」
 
「さーさー、行こう。」私の手を引っ張る。
 
「ちょっと、引っ張らないで。」手を払う。
 
「なんだよー。」ムン・ジェウォンが私見て、都合悪そうに言う。
 
「私と貴方は仕事上のパートナーです。それ以上の事しないで。」ガンヒョンが私達のとこに来た。
 
「ムン・ジェウォンさん、程ほどにしないと訴えるわよ。じゃあっご飯食べに行きましょう。」ガンヒョンの冷たい笑顔に、ムン・ジェウォンはビクつきながら「ちぇっ。」呟いた。
 
それでも3人で食堂に向った。
 
食堂に入ると、空いている席を探しウロウロとしていると。
 
「おっ、我が経理部のイケメン室長。」私はその言葉に反応して、シン君を探した。
 
あっ、シン君。インさんと食事してるんだ。
 
「室長、オトコから見ても本当にイケメンだもんな。それに今日はますますイケメンぶりが堪らないねー。ほらっ、気だるそうな顔。そして周りの女たちの目が飢えた雌達の中に綺麗な野獣がいるみたいだろう?」ムン・ジェウォンの的確な説明はあっていた。
 
周りのオンナの人達が、チラチラとシン君を見ている。
 
「チェギョン、もうゴハン買いにイコッ」ガンヒョンが私の手を握る。
 
「うん。」
 
3人で席に座り、ビビンバ丼を食べていても、シン君を目で追ってしまう。
 
「おっ、勇気あるオンナが行ったぞ。」シン君にコーヒーカップを渡そうとしている綺麗な女性。
 
「イケメン室長、イイなー。何時もモデル級の女ばっかりだったらしいぞ。」ムン・ジェウォンの言葉に私のスプーンが止まる。
 
「室長、仕事も出来るが女も凄かったみたいだな、聞いた話だが、どのオンナも室長にメロメロになってしまうけど、2度と同じオンナとしないそうだ。」
 
「ムン・ジェウォン。そんな情報聞きたくないわ。それに私達、女子ですけど?そんなの男子としなさい。」ガンヒョンが、私の手を握って労わるように私を見てくれている。
 
「ごめん。でも、チェギョンは室長の事嫌いだろう?先輩達が言ってた。入った時からバンバン怒られていて、チェギョンも悪口言ってばかりだったって。」私とガンヒョンは顔を見合わせ、苦笑いをする。
 
「お前ってこの会社中の女が憧れている室長の事、嫌いって。面白いな。」ユン・ジェウォンは笑う。
 
「嫌いってことは。」
 
「なあ?あんなイケメン嫌いなんだろう?だったら、俺レベルがお前に合うと思わないか?」
 
「えっ?」
 
「オレもそこそこに、カッコイイだろう?まあ室長には全然及ばないけど。色んなオンナに手を付けるなんて、室長見たく器用なこと出来ないから、ちゃんとお前だけ付き合うから!!」真っ直ぐに私の事を見るユン・ジェウォン。
 
私は慌ててシン君を見ると、綺麗な女性に近寄って行って、何かを話しているみたいだった。
 
シン君。
 
「シン・チェギョン、考えてくれないか?」彼の手が私の手を取ろうと。
 
嫌だ!!
 
私は立ち上がり、走ってこの食堂を出て行こうと。
 
シン君が綺麗なオンナの人から離れて、インさんと歩き出した。
 
「室長は色んなオンナに手をつけていた。お前だけ付き合うから。」ユン・ジェウォンの言葉のせいで、頭がクラクラする。
 
すると、シン君と目が合った。
 
驚いた顔の後に、都合の悪そうな顔。
 
一気に血が頭に上った私は、一目散にこの食堂から逃げ出した。