チェギョンが、ムン・ジェウォンと一緒に帰って行った。

オレが机のとこに隠れているのを、知られたくなくて、慌てて取った行動かもしれない。

それでも、嫌だ。

彼女とヤツの後姿をずーっと睨んで見ていた。

チェギョンが着替えのへ部屋に入り、ムン・ジェウォンが外で待っていた。

オレは、チェギョンの機転を無駄にしたくないので、ソイツの視野から逃げた。

自分も仕事が終わったので、帰る仕度をしようと、机の前に立つ。

この席から、チェギョンの席を見る。

久し振りだった。

オレの視界に、彼女がいる。

突然の秘書課への移動、そして経理課への出戻り

チェギョンのいない仕事場は、オレにとって苦痛だった。

だから、仕事の合間にチラッとチェギョンの方を見ると、彼女が一生懸命間違ったとこを直している。

頑張る姿を見ると、オレにもヤル気が出てくる。

がむしゃらになって仕事をする姿は、入社した頃の自分を思い出す。

オレも、最初はあーだった。

ギョンの為に、イン・ファンと一緒になり、このホテルの経営を少しずつ変えていった。

毎日、遅くまで3人で話し合い作戦実行

凄かった。フッと笑が出る。

カバンの中に、パソコンを入れ、コートを出す。

スマホを取り出し、番号を押す。

「もう出来てる?じゃっ帰りに寄るから。」通話ボタンを押す。

待ち受け画面には、チェギョンがオレ目線でニッコリと笑っている。

もう、何度も変わるこの待ち受け。

仕方ないだろう?

チェギョンが毎回色んな顔を見せて、微笑んでくれるんだ。

でも、あの写真は未だにフレームに入れて、部屋に飾っている。

チェギョンの入社したての頃の広報写真。

ガッチガッチで写っている彼女。

チェギョンは「シン君、こんなの此処に置かないで下さい。」何度も怒る。

「良いんだ。そこに置いておけ。」

「えーーっ、こんな緊張した顔嫌です。」ブーッと膨れる。

「オレが初めて持ったお前の写真なんだ。これだけはお前のいう事聞かない。」彼女を後ろから抱きしめる。

「シン君、叉ウソつきましたね。私のいう事なんか聞かないくせに。」オレも腕に自分の手を当て、オレを見上げる。

全く、オレがその顔に弱いのを知っているくせに。

自然に重なる口元。

オレの2本の腕は、違う方向に動き出す。

右腕は彼女の胸へ。

左腕は、彼女のアソコへ目指す。

その後は、甘い彼女を味わいつくした。



ヤバイ、こんなとこで思い出すな。オレは、咳払いをする。

チェギョンをチラッと見る度に、ムン・ジェウォンがチェギョンの事を見ている事が判った。

クッソーッ、何であそこの席なんだ?

オレが此処に居た時は、チェギョンの周りを女子で囲んでいたのに。

絶対にアイツの席、移動させてやる。オレの右手には自然に力が入った。




地下の駐車場のエレベーターの中、LINEでチェギョンに送る。

「家にいる?」

ポン。「いません」

何、まさかアイツと?オレの眉毛の間の皺が、深くなる。

「ガンヒョンと一緒か?」

ポンッ。「いいえ。違います。」

「何処にいる?今直ぐに迎えに行く。」エレベーターが止まり、オレは足早に自分の車を目指す。

くっそーー、絶対アイツと一緒だな。

ポンッ。「駐車場にいます。」

駐車場?居酒屋か?車が見えたので、鍵を外して、車の傍まで行くと。

「あっ、シン君。待ってましたーーー。」車の後ろから出てきて、小さい声で叫ぶ。

右手にはスマホ、左手にはカバンを持ったオレが、彼女の姿を直視した。

「お前アイツと。」突然の登場は、オレの頭を混乱させる。

「アイツって、あっムン・ジェウォンさんですね。まさかー、送って行くって言う彼に色んな理由つけて、先に帰らせました。で、私はシン君を待ってました。

カバンを持つ左手をもう1度力を入れた。

オレのあげたマフラーを首に巻き、頬を赤くして待っていたオレの彼女。

オレは「乗れ」わざと低く言った。

じゃないとこんなとこで、襲ってしまう。

慌てて乗る彼女。

こうして、会社から2人で乗って帰るのは、初めてかもしれない。

「シン君、こうやって帰るの、初めてですね。」

「そうだな。」彼女がオレと同じ事、考えていてくれた事が嬉しい。

「えへへっ、ダメかなーと思ったけど、余り車がいなかったから、車の陰に隠れていました。

何時もシン君の仕事の終わる時間決まっていなくて、私を迎えて来てくれていたけど。

同じ部署だと、帰る時間が判って良いですね。こういう事も出来るし。」嬉しそうな彼女の顔。

ねーさんの店に行って、食事なんかも出来る。

何時も拉致ばっかしてたから、こういうのもいいな。

自然とニヤニヤし始めた時、「あっ。ムン・ジェウォンさんからの差し入れ、食べないと。」彼女は膝の上に置いていたビニール袋を見る。

「そんなの、食べるな。」ジロリと睨む

「ダメです。食べ物は粗末にしちゃいけません。」

「ムン・ジェウォンから貰ったモノ、お前は食べるな。」

「もーー、シン君我侭です。彼だって、私の為に持って来てくれたんですよ。」

判る、気持ちは判るが。嫌なものは、嫌なんだ

運転しているオレは、機嫌が悪くなりそのまま何も話せずに、オレのアパートに着いた。

アパートの前に止まった車。


「降りろ。」

「えっ?シン君は?」

「ちょっと出掛けて来る。部屋で待ってろ。」

「えっ?時間掛かるんですか?部屋の暗証番号判りません。」なさけない顔。

「お前の生まれた年と生年月日。」恥ずかしいオレは、彼女を降ろして、逃げるように走り出した。







玄関のベルを鳴らして、鍵を解除する。

すると、彼女が「お帰りなさい。」満天の笑顔で出迎えてくれた。

何時ものピンクのエプロンをして出迎えてくれる姿は、オレの気持ちを温かくしてくれる。

「ほらっ。」彼女に差し出す箱

黒くて高さのある箱に、ベルベット素材の大きなリボンが結んである。

「これ、なんですか?」素直に受け取る彼女。

「わっ。ちょっと重いです。」歩き出すオレと彼女。

キッチンのテーブルにその箱を置き、リボンを外す。

箱の蓋を上げると。

「きゃーーーーー!!かわいいーーーーー!!」チェギョンのハートマークの声が上がる。

箱の中には、マカロンタワーが、嫌、クマの形で皆表情が違う。

「シン君、これ。皆可愛いです。何で、何でですか?」キラキラした目でオレを見上げる。

「ねーさんに頼んでいたんだ。まさか、こんな風になってるとは。」

彼女はスマホのカメラで、バシャバシャと、写している。

「1個、食べても良いですか?」クマカロンと同じような可愛い顔

クマカロンタワーを持って、オレをキラキラと見上げる彼女の口元に指を当てる。

「いいよ。今日は久々に仕事場が一緒になった記念と、お前が大人になる記念日だからな。」

「シン君、最初の記念日は判るんですけど、最後のほうは。」彼女の眉毛が下がる。

「これから、判る。」

クマカロンタワーから、ピンクのクマカロンを1個取り出し、彼女の口元に入れてあげる。

そして、クマカロンタワーをテーブルに置き、彼女を抱き上げ寝室に向った。