「さっき渡されたの捨てたほうが良い。シンに見つかったら、とんでもない事が起こるから。」小声で言う。

 
 
私はポッケに入っていた、紙切れの束を出して1枚開いてみた。
 
すると、名前とスマホの番号が書いてあった。
 
「えっ、これって?」ビックリ
 
 
「全く知らなかったのかい?君と連絡取りたい奴等の必死の願いの紙だよ。それに今日のチェギョンちゃんの顔結構やばいよ。ウッ!!」急に脇腹を押さえ蹲ったカン・インさん。
 
 
「どうしたんですか?」あれ?影がかかる。
 
 
上を見上げると、冷たい、冷たい表情の室長が立っていた。
 
 
 
ひーーーーーー!!
 
 
何も言わずに食券を差し出す室長
 
 
こわーーーい!!
 
 
久々の般若の顔。
 
 冷や汗がダラーーーって、出てきそ。
 
変な沈黙が流れる。
 
「ポケットの中から出せ。」ばれてた。
 
蹲っていたカン・インさんも起き上がり、ヤバイという顔をする。
 
般若の顔の室長が手を出した。
 
私はすごすごと、紙の束を渡す。
 
紙の多さに、般若の顔がますます牙と角が長くなっていった感じがした。
 
えーーーん、怖いし。
 
ビビンバ丼のとこに並んでいる男の人達に向かって
 
「すみません、仕事中にこんなのを渡さないように、お願い致します。」イイ声が響き渡った。
 
紙の束を自分のポケットに入れ、番号札を持ち歩いて行った。
 
急にイ・シン本部長に注意された男の人達は、ビクビクしていた。
 
やっぱ、あの冷たい感じは皆苦手だよね。
 
 室長怒ってる?
 
慌てて、室長の後を付いていくカン・インさん。
 
私は深い溜息を吐いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
テーブルにドンと座ったオレ。
 
辺りを見渡すと、オレ達の席の周りには、何故か人がいなかった。
 
「そんなに怒るなって。何たって結婚したい女子№1なんだからなっ。」インがなだめてくる。
 
「怒ってない。」とポケットからメモ紙の束を取り出した。
 
オレが傍にいないと、こんな有様だ。
 
テーブルに並べられたメモ紙。
 
若い奴らが殆どだったが、オイあの課長までもが。年幾つだよ。ようやくチェギョンを捕まえたのに、先が思いやられる。
 
それにしても、多いな。溜息を吐き、紙を束ねた。
 
アホ顔でボヘーッと歩いて来るこの会社の社長のギョンが戻って来た。
 
後ろから、ファンも来た。
 
「やっぱ、ガンヒョンは今日も綺麗だった。」ニヤニヤしながら座る。
 
「ギョンったら、恥かしいんだ。彼女が冷たくしても、全く動じないで、グイグイといく。」
 
ビビン麺に手をつけながら、言う。
 
「お前は良いよなー。」ジロッと睨む。
 
「ガンヒョンほど、俺に合う女はいない。何たって、顔と頭が良い。社長夫人として申し分ないだろ!?」笑う。
 
「でも、キム・ガンヒョンさんはお前ほどじゃないように見えるがな。」インが笑う。
 
「そんな事ないぞ。彼女だって、社長夫人になれるんだ。」自慢げに言っていると。
 
「お待たせしました、ビビンバ丼です。」可愛い声が響く。
 
4人で話していても、ずーっと目の端に入れていた彼女が、このテーブルに来た。
 
歩きずらそうに、ビビンバ丼を運んでいる姿。
 
色んな男達が、「持ってあげるよ。」申し出るのを断り続ける彼女が、真っ直ぐにオレの元にやってくる。
 
後の3人にばれないように、ドキドキと胸が高鳴る。
 
まだ少女だった清らかな体の彼女を、大人にしてしまったオレ。
 
罪悪感。、嫌、まさか。
 
毎日色んな事を教え込ませ自分の女だと言う事を体に注ぎ込む。
 
雄としての本能が、奥底から湧き上がるようだ。
 
オレがこんなに女に嵌るなんて。
 
頬をピンクに染めオレの為に向かってくる。
 
ヤバイ口元が歪む。
 
慌てて口元を隠したが「シン、顔変だぞ。」ギョンが突っ込む。
 
隣に座っているインが「バカ。」背中を叩いた。
 
久々の会社での仕事。
 
少しでも彼女に会いたかったオレに、昨日キム・ガンヒョンからの朗報。
 
明日は食堂に行けば、チェギョンに会える。
 
こんなチャンスは滅多にない。
 
一人で行こうとしたのに、ぞろぞろと秘書室に入ってくる3人の男。
 
「ガンヒョンが今日、食堂の手伝いだって、観に行こうぜ。」ギョン
 
「オイ、チェギョンちゃんが手伝ってるってよ。」イン。
 
「シンの彼女、見に来たーー。」ファン。
 
ジロりと睨むが。この3人には余り効かないみたいだ。
 
3人は、オレが上着を着たのを確認して、ぞろぞろと出て行った。
 
チェギョンの仕事姿を見れるのは、久し振りだ。それも、食堂の手伝いって。エプロンに三角巾姿だろ。
 
ヤバイな、写メに残しておきたいと悔しがった。
 
 
 
オレの為に持って来たビビンバ丼。(うん、もう1セットあるから、インの分もか。)
 
並び終えた彼女は、オレの顔をチラッと見た。
 
オレは口元をもっと押さえる。
 
「シン・チェギョン、お前今日の顔何か変だぞ?」素直に聞いてくるギョン。
 
「えっ!?何か付いてます?」慌てる彼女。
 
「顔の筋どこにやった?ポワ~~ンとなってる。」
 
「「オイ。」」インとファンが同時にギョンに突っ込む。
 
「そうなんですか?今日寝不足だからかな。」頬の色がますますピンクになっていく。
 
あーーーー!!無駄に可愛い!!
 
エプロン姿やっぱ似合うしそれに三角巾無駄に可愛くなるアイテムばかり身につける?
 
オレ、この後・仕事出来るか!?
 
「じゃっ、もう行かないとカン・インさん、室長。美味しく召し上がってください。」言った
 
「シン・チェギョン、シンはもう秘書課の本部長だぞ。間違えるな。」睨んだ。
 
「すみません、上司だったもので。今度からは、本部長さまと呼びます」慌てて頭を下げた。
 
「良いって!!彼女は特別だからいいんだ。」ギョンを睨む。
 
「シン。」
 
「オレの女だ。もういい加減、チェギョンの事認めろ。チェギョン此処はいいから、仕事場にもどれ。」言った。
頭を下げて、慌てて戻る彼女の後姿を見つめていた。
 
「オレの女って、チェギョンと、とうとうしたのかよ。ふっ、まな板の上のマグロ状態とやって何処が良い?」ギョンが笑う。
 
「ギョン、お前言い過ぎだぞ!!」インが嗜める。
 
「ギョンお前と一緒に、日本の大間のマグロ食べた時あるよな。」オレはビビンバ丼に手をつけながら聞く。
 
「アア、日本に遊びに行った時に食べた事がある。ありゃー、凄くうまかった。」あの味を思い出す顔。
 
「例え、まな板の上のマグロ状態でも、最上級の大間のマグロ級の上質の女で、それを裁き料理するヤツが、凄腕だったら、世界一上手いはず。
 
それと同じ。お前もそんな女見つけろ。」ギョンの足を蹴り、黙々とビビンバ丼を食べた。
 
「シン、カッコイイな。」ファンが言う。
 
「シン、蹴らなくても。」とギョンが余りの痛さに泣く。
 
「お前、蹴られただけで良かったな、お友達じゃなかったら骨折られてるぞ。」インが脅した。
 
 
 
 
「ふーーー。ようやく今日の分終わったね。」食堂の後片付けが終り、背伸びをした。
 
時計を見ると、もう2時になろうとしていた。
 
「お腹ぺこぺこーー、早く食べようーー。」とおねーさんを誘う。
 
「私達は、もう少し掃除をしないとダメなんだ。アンタ達で食べてきて。」指を指した。
 
「そうなんですか。じゃっ、先に頂きます。」私とガンヒョンは食堂の従業員達が休憩する場所に移動した。
 
テーブルに座り「アンタ、今日大変だったでしょっ」心配するガンヒョン。
 
「うん、でも体が段々慣れてきたから、大丈夫だったよ。」大盛りのビビンバ丼に箸を入れた。
 
「体もだけど、本部長怖い顔してたね。」苦笑い。
 
「うん、久々あの般若顔見てしまって、怖かったーー。」
 
「アンタまでそう思うなんて、どういう事?」笑う。
 
「だって、毎日あの顔で怒られていたんだよ。トラウマになっちゃたんだよ。」モジモジ言う。
 
「じゃあ、止めちゃえば。1回だけならまだ引き返せるよ。」ガンヒョンは試すように聞いてきた。
 
「遊びってこと?」
 
「違う、性の不一致って事で断ったら。」
 
「無理。だって般若でも大好きなんだもの。知らなかった事を、シン君が教えてくれた。
 
それに肌を合わせたら、シン君の気持ちが伝わってきた。」頬が熱い私は、両手で頬を押さえる。
 
それをみていた、ガンヒョンは言う。
 
「はは~~ん、最高だったのね。それは離れられないわね。」笑う。
 
「ガンヒョン。」余りにも的を言われ、慌てる。
 
「恥かしい事じゃないよ。これは大事なことだから。」真剣な顔。
 
「うん。」
 
2人で食事していると、ドアをノックする音がする。
 
「ノックって、誰だろう?食堂の人達ならそのまま入ってくるのにね。」言いながら扉を開けたら。
 
「室長ーー。」突然の来訪。
 
「ほらっ、差し入れ。」小さな箱を差し出した。
 
小さな箱には、ロッテデパートのケーキショップのロゴマークが付いていた。
 
「もしかして。」私の目がキラキラと光りだす。
 
「ケーキだ。」
 
「やったーーー。ガンヒョン、ケーキだよ。」喜ぶ。
 
 「全くケーキ食べるのが、初めてみたく騒がない、。」怒られた。
 
室長は私の隣に座り、箱を開け「ひゃーーーー!!美味しそうーーです。」叫ぶ私を見て、口元を隠した。
 
「本部長、イイですよ。判ってますから、ベタ惚れって事を」残ったケーキを受け取った。
 
ビビンバ丼が少し残っていたけど、ケーキにフォークを差した。
 
大きな口を開き、フワフワなスポンジで、超ー美味しい生クリームを口に入れ「美味しいーー!!」うっとりする。
 
「本当だ。それに此処のケーキって、凄く上手いってだれかが言ってた。その通りだわ。」チョコのケーキを食べながらいうガンヒョン。
 
「室長ーー、美味しいです!!」口に入れたまま話す私の口元を、生クリームが覆う。
 
 急に、私の視界が暗くなった。
 
「?」突然、唇を舐められる感覚。
 
何度も行き交う舌先に私は朝までの事を思い出した。
 
「本部長。」真っ赤な顔のガンヒョンの声が響く。
 
離れていく室長。舌先には生クリームがまだ付いている。
 
「すげー美味し過ぎて止まらなかった。」笑う室長。
 
ガンヒョンと私は真っ赤になり、居心地が悪かった。
 
 
 
 
 
 「じゃっ、もう行くから。」立ち上がる室長。
 
ケーキを食べる私は、スプーンを口に頬張ったまま、室長を見上げた。
 
室長は私の顔を見下ろし「浮気するなよ。」笑いながら、ドアから出て行こうとした。
 
「シン君。」慌てて立ち上がり、室長の傍に近寄った。
 
「お仕事頑張ってください。」この言葉と共に、頬にキスを落とした。