ランジェリーショップ「EBLIN」に、今日は私一人で此処に来た。
ガンヒョンは心配性なので、最後まで一人で行かせるのは反対していた。
なぜなら、ユル君がいるから。
この店には、私がズーッと待ち望んでいた初恋の人がいる。
ガンヒョンの肩を掴み「大丈夫だって。私には、室長がいる。」大きく頷いた。
ランジェリーショップを中に入っていくと、ユル君が出迎えてくれた。
「チェギョン。今日は早かったね。ご希望の物は届いているよ。」ニコッと笑う。
「有難う。」
2人でレジに向かい、会計そして、ラッピングをキレイにしてもらった。
「ユル君って器用だね。」キレイに包み込まれていく下着。
「何たってずっとやらされてるからね。」キレイにラッピングされたガンヒョンからの贈り物。
一目で気に入った下着。
ギュッと大事そうに受け取った私を見て。
「チェギョンって、彼氏いるの?もしかしてこの間の男の人?」
この間のオトコって。
あの場所で、3人が出会った。
急に真っ赤になる私。
「彼氏って、そんな、つい最近なったばかりで。」ノロノロと言う。
「あんなカッコイイ男が彼氏なんて。」ユル君も驚く
「やっぱ、カッコイイ?男の目から見ても、やっぱカッコイイ?」私は真っ赤になりながら「カッコいいんだ。そんな人と」一人浮かれている私。
向かいに立っているユル君の顔付きが変わったのを、私は気がつかなかった。
「じゃあ、ねー。」浮かれたまま外に出ようと扉を開けた。
「チェギョン。」
「えっ?」急に呼ばれた私は、その方向に顔を向けた。
すると、私の唇に何か触れた。
ブチュッと重なる唇。
キスされた?
私はとっさにドンと押した。
目の前にいるユル君を睨みながら「何で?」
「僕はずっとチェギョンの事が好きだった。イギリスの高校が終り、大学は韓国にしようと思って戻ってきたのに。
たった一夜遊んだ女が妊娠してしまって。責任取って結婚させられた。
チェギョンが僕の事を待っているのに、ずーーっと待たせているのに。僕は君を迎えにいけないまま過していた。」
私は室長とは違うキスに、気持ち悪さを感じ唇を手で拭いた。
「君はズーッと僕の事だけ、待ってると思っていたのに、君はあの男と共に僕の目の前に現れた。
それも、僕がようやく君の事を諦めて、結婚式をした日にだ!!皮肉な運命だ。
それにその下着、もしかしてあの男の為?あの男、きっとチェギョンの事遊びだよ。
あんな男、女たちがほっとく訳がない。
毎日毎日違う女とやってるってチェギョンなんか相手にしてない。」ニコニコとこの話をするユル君の事が怖くなり、私は慌ててこの店から飛び出し走り続けた。
怖い!!
室長!!怖いです!!
走りながら、スマホを取り出し、震える指でボタンを押そうとしたけど、止めた。
きっと今はまだ仕事をしているかも。
それに、遠くにいるのに心配かけちゃいけない。
此処は明洞人が沢山いる。
こんなとこで、何かするとは思えない。
私は震える体で、ガンヒョンに電話を掛けた。
明洞サボイホテルの一階にあるビンスビンスコーヒーの奥の席に座っている。
どうしよう、さっきから体の震えが止まらない。
店員さんが不思議そうな目で見ていく。
何十分後かに、ガンヒョンが慌てて中に入って来た。
「チェギョン!!」
私の手を取り「大丈夫?」心配そうな顔。
「だいじょうぶ。」ガタガタ震えながらも、笑ってみせる。
「あーー、やっぱり一緒に行くんだった。」
私はユル君にキスされた口を擦り始めた。
「ちょっと、なにやってるの!?」
「だって、室長以外の人にされるのは嫌なんだもの!!」ゴシゴシと擦り始める。
「止めなさい。ほらっ、血が出ているから、そんなに擦らないの。」私の手を止めさせた。
「室長に嫌われないかなー。他の男とキスしたなんて知って、バイバイって言われたら。どうしようガンヒョン!!」段々涙が出てきた。
「そんな心配しない。あの店にもう行かないと良いだけなんだから。泣かないの。」
「ほらっ。ココア温かいうちに飲みなさい。落ち着くから。」ガンヒョンに勧めるられるままココアを飲んだ。
一口・一口、口に入れる度に、震えが止まり始めた。
暫くガンヒョンと2人でただココアとコーヒーを飲んでいた。
飲み終わったコップを皿の上に置いた。
「大分落ち着いた?」優しいガンヒョンの声。
「うん。さっきまで気が動転しちゃって大事にしてしまったね。この事は内緒にしていてね。」
「それにしても、アンタ何時の間に室長の事そんなに好きになっちゃった?」段々イジワルな瞳に変わる
「うん。」はっきり言う。
「アハハッ、初心なアンタがそんなこと言うなんて、ビックり!!」大袈裟に驚く。
「だって、あのフェロモンにやられたかな。」呟いた。
その日は2人でキョロキョロしながら、ユル君が現れないか注意しながら家に帰った。
一緒の布団に入って眠る前ガンヒョンに聞いてみた。
「ねーっ。ガンヒョン。」
「何?」
「室長って色んな女の人達とやってるのかな?」
ガンヒョンの体が飛び上がり「何!!急に!?」
「だってさっき言われたんだ。あの男にとって、チェギョンは遊びだって。」
「もーーー。何信じてるの。本部長の気持ち届いたでしょッ。前に何があったのかは知らないけど、今アンタを思う気持ちはウソじゃないって」説得する。
「ガンヒョン。」
「アイツに何を言われようが、気にしない。後二日、本部長の事待ってなさい。」オデコをビシッと叩かれた。
「うん。」ビシっと叩かれたとこを撫でた。
次の日
「朝も今でも何もなかったから大丈夫だと思うんだけど、とりあえず気をつけて帰ろ。」
今日は2人共残業で夜遅くの帰宅になった。
電車を乗り継ぎ、用心して家まで着いた。
「ここまで来たら大丈夫、早く家に入ろっ。」ガンヒョンが先に狭い階段を登り、次に私も登ろうとしたら。
急に口元を布で塞がれ、私は強い力で引っ張られ。
ビックリする暇もなく、ズルズルと引き攣られて行く。
恐怖の為、体が震え始めた。
暗い路地裏に連れ込まれて、口に布を当てられたまま後ろから押さえ込まれた。
「----。」叫ぼうとしても、口を塞がれていて、声が出ない。
「チェギョン。昨日途中で帰っちゃダメじゃないか。」
この声は、血の気が引いていく。
「僕はただ、元の運命に戻そうとしているだけなんだ。僕と君がかけおちするほど、好きあっていた時にね。」
左手で口元を押さえられ、右手で体を押さえ込みながら、私の体を触る。
ザワッ。
寒さで鳥肌が立つのではなく、嫌悪感で一瞬に鳥肌が立った。
恐怖。
今はこの言葉しか思い浮かばない。
あんなにズーッと待っていた人なのに。
ようやく迎えに来てくれたのに。
体が、心が、拒否をする。
嫌だ。
こんなユル君、嫌いだ。
「2人で、逃げよう。そうだ、済州島なんかイイかもね。」笑いながら言う言葉に、私の体は小刻みな震えから、ガタガタと震え始めた。
「嫌だ!!!離して!!室長、室長ーーー!!」って叫びたいのに、口元が塞がっていてダメだ。
何とか逃げようと体を捻った。
すると、口元の布が少しずれた。
「室長・室長ーーー!!シン君、助けてーーー!!」断末魔のような声が響いた。
慌てて、布を元に戻し「チェギョン、諦めな。あの男はどっかで女とやってる最中だよ。」笑い始める。
「そんな訳ないだろう。」暗い路地に響く低い声。
トンという音と共に、塀から降りて言い放った言葉。
声と共に、拘束がなくなり、私の体が自由になった。
すると、今にも泣きそうなガンヒョンが私の元に駆け寄ってきた。
「チェギョン!!大丈夫!?」私の体を明るい方に連れて行き、何度も見る。
「キム・ガンヒョン、チェギョンは大丈夫か!?」暗い所から、室長の声がする。
なにがどうなったの?
「チェギョン、ゴメンね!!私が目を離した隙に。後ろから着いて来ていると思って、振り向いたらいないんだもの。降りていくと、階段の下には、チェギョンのマフラーが落ちてあって、息が止まるほどビックリした。
でもね、急に電話が鳴ったの。
「キム・ガンヒョン。ソウルに戻って来た。今君達のアパートの傍まで来ているんだが、チェギョンに電話掛けても通じないんだが、傍にいるんだよな?」心配そうな声。
「本部長!!」ビックリした。
まだロンドンに居る人が、ソウルに帰って来ているなんて、事情を説明したら直ぐにそこに行くから。
チェギョンがいるのが判っても、オレが行くまで絶対に手を出すな。って。
本部長が付く前に、あの男の声が路地裏から聞こえてきて、着いた室長は遠回りをして塀を登るから、キム・ガンヒョンは後から来なさいって言われて。
ほんと、あの時の本部長、カッコ良かったーー。ドラマのヒーロー見たくカッコ良かった。」
暗い奥から男の低い声が言い放ったと同時に、鈍い音がした。
室長は、ユル君を引きずりながら言う。
「イ・ユル。お前の運命とチェギョンの運命は、もう交わることはない。黙って元の生活に戻れ。」
座ったまま引きずられたユル君は、右足を押さえ痛がっていた。
「チェギョンの怖さは、お前の痛みと比べられない。弱い女を男の力で羽交い絞めするなんて好きな女をそんな方法で奪うなんて、最低な男だ。
正々堂々と好きだって言いにくれば、オレの片思いは実らなかったのに。」
足を放り投げ、ゲホッゲホッと首元を押さえているユル君。
「足、チェギョンの元に来れないように、ちょっと骨折っていたから。此処には二度と来るな。
次来たら、警察に突き出す。」スマホを取り出し、電話を掛ける。
「あっ、夜遅く済ない。コンさん直ぐに今言う住所に来て欲しい。」室長は私たちに聞かれないよう、奥に行って話し始めた。
「ユル君。」
「僕の気持ちズーッと我慢していたんだ。君の幸せそうな笑顔見たら僕は我慢して君の事を諦めたのに。
君を幸せにするのが、僕の夢だったのに。」首を絞められていたみたいで、ゴホゴホとまだ咳き込む。
「ユル君の子供を幸せにしてあげて。あの結婚式の時、3人共凄く幸せそうだったよ。」
電話を終えた室長が、私の元に来た。
優しく私の肩を抱きしめて「お前の声、ちゃんとオレに届いた。遅くなって悪かった。」愛しそうに、髪の毛にキスを落とす。
室長の言葉に、私の涙腺が壊れた。
ボロボロ止まらない涙。
「怖かった、室長、こわかったです。」室長の胸元に崩れるように堕ちていく。
「オイ。大丈夫か?」室長が崩れ落ちた私を支える。
「ちょっと体に力が入らなくて。」苦笑いをした。
「無理するな」私を肩に担いだ室長。
「えっ?」目線の高さが違う。
あっ、こんな事されたのは、もう何ヶ月も前。
今まで見た事もない、景色が又私の前にある。
これ、結構好き。ボロボロ泣きながら、笑ってしまった。
「キム・ガンヒョン、明日チェギョンは有給を取らせるから。それにこのまま連れて帰る。」ニヤッと笑う。
「チェギョンだけ、有給ですか?」笑う。
「まさか。オレは今日から有給を取った、君は一人になるけど大丈夫か?イ・ユルは病院に行かせるから、もう安心だと思う。それとも一緒に来るか?」私の体をギュッと抱えなおす。
「2人の邪魔はしませんよ。」ガンヒョンは私に近寄り「今日は大変な日だったね。でも、本部長が来てくれた。
アンタに会いたくて、ギョンに仕事押し付けて、イギリスから飛んできたんだって。」笑う。
「オイ、キム・ガンヒョン余計な事まで言うな。」室長のメガネが光る。
「これくらいは、しっとおかないと。」ガンヒョンのメガネが光る。
お互いのメガネが光り、口元が上がる。
そこに、タクシーが止まった。
中から、白髪頭の上品そうなおじさんとガタイのイイ男が降りてきた。
「コンさん。お手数掛けます。」頭を下げた。
「頭を上げてください。後は私が処理しておきます。もう、夜も遅いのでお休み下さい。」ガタイのイイ男はイ・ユルを担いで、タクシーに乗せた。
コンさんと言われるおじさんは、室長を見て深々と頭を下げて、タクシーに乗って行った。
私とガンヒョンの顔が向き合って、?マークを出す。
室長は私を抱えたまま、3人はアパートの階段のとこに来た。
「じゃっ、キム・ガンヒョン、お休み。明日の仕事頑張って。」横に止めてあった車に歩き出した。
「本部長。さっきのおじさんは?」ガンヒョンは顔を上げて質問をした時。
室長は助手席にチェギョンを下ろして、キスをしまくっていた。
本部長、がさつき過ぎでは?とガンヒョンは呆れた。