「シン。お前にはヒョリンが合ってる。お遊びは止めて元に戻れ」ロンドンホテルの廊下に響くギョンの声。

少し酔ってしまったギョンを、無理矢理部屋に押し込んだ。

「こんないい部屋で騒ぐな。礼儀正しくしろ。お前はもう社長なんだから。」キングサイズのベットに投げつけた。

「シン。痛いぞーー。」

「いいから、もう寝ろ。」

「寝ないで、今日はずーーっと教え込んでやる。」ギョンの目はすわっている。

「お前もしつこい。」吐き捨てる。

「ずーっと、お前とヒョリンは、オレの憧れだったんだ。何で別れたんだよ。」

「親が決めた婚約者だっただけだ。」

「好きだったから、婚約破棄しなかったんだろう?」ベットに座って話していた。

「すきとか嫌いとかじゃない。決められていたからだ」

「ヒョリンだって、お前の事好きだ。」

オレはギョンをドンと押し「もういい加減にしろ。お前がオレの親友だから、聞いているけど。じゃなかったら、言葉が出せないほどボコボコにしてやるとこだ。」ワザと低い声を出し脅かしてみる。

「シン。」

「本当に好きな女が出来たんだ。もういい加減認めろ。」

「アヒル何かお前に似合わない。」

「白鳥になれないアヒルはみにくいのか?オレには、可愛くて溜まらないアヒルにしか見えない。ッて言うか、もうアヒルって言うのを止めろ。」ドアを開けた。

「明日は8時に起こしに来るから、もう寝ろ。」高そうな扉を閉めた。





自分の部屋に戻り、溜息を付く。全く、ギョンのヤツ懲りないなー。

何時までもヒョリンの事を言う。

小学校からの腐れ縁なオレ達。

色んな悪さや遊びをつるんでやっていたが大学を卒業と共に皆、卒業した。

でも、オレにはタバコと言うのが残ってしまったが。

オレとインはギョンの会社に入社し、ギョンはアメリカの大学に飛ばされた。

オレとインの学力に追いつかないと、社長にさせないと脅かされたギョンは仕方なくアメリカに行った。

オレとインは徐々に位を上げていった。

ギョンがここでの社長と言う位に付きやすいように、オレとインとで広げていった。

何年か経ち、ギョンがアメリカの大学を卒業して、韓国に帰ってきた。

ギョンの入社式の時。

それまでオンナなんて全て同じに見えていた。

本当の顔を何処に置いてきたんだ?と言いたい位に、皆のバッチリメイク。

色んな香水をかけまくり、ここはクラブじゃないぞ。入社式だと喝を入れたいほど皆酷かった。

そんな中、殆ど素顔じゃないのか?と言いたい位の、薄化粧のオンナ。

目が離せなかった、輝くばかりの目。そして白い肌に、ピンクの頬が可愛い。

唇がやば過ぎる。

隣の赤いメガネのオンナと話す仕草、笑い顔全て自分のものにしたい。

婚約者がいるし、オンナなんて本気になるもんじゃないと逃げていたオレなのに。

彼女の全てが欲しかった。

今直ぐに、上着を頭の上から被せ、誰にも見せたくないほど。

運命って本当にあるんだ。でも、オレには手が出せない。

幾ら彼女が運命のオンナだろうが親に逆らえない。




シャツの衿からネクタイを取り、ボタンを外していく。

テーブルの上に置いた、チェギョンのフォトフレーム。

この出張に持って来た唯一の私物。

彼女の写真はこれしかない。

会社の広報に今年の新入社員の顔として載った写真。

わが社の広報は一人の事を詳しく載せる。

オレは未だにその広報を大事に取っている。

彼女が自分の事を話し、仕事への抱負。

チェギョン情報が載っているのを、捨てるわけないじゃないか。

広報の生写真を裏の手を使い、ようやくGETした。

この写真をフォトフレームに入れて、自分の部屋のサイドボードに立てた時、自分の行動が中学生のガキみたいだと感じた。

それでもいい。

どうせ叶わない恋なんだから、ただ見ているだけなら良いだろう?

4月から飾っている写真。

彼女との奇跡が叶い恋人同士になれた。

会社用の顔の写真じゃなくて、オレの為に笑った顔の写真が欲しい。

韓国に戻ったら直ぐに彼女に頼もう。

「写真一緒に撮ろう。」と。




オレは全てを脱ぎ捨てて、バスルームに入った。

鏡に映る自分の裸をチラリと見て、腹が出ていない事を確認する。

後2日かしたら彼女に会える。

そして、ずーっと願っていた事、彼女と一緒になれる。

あの可愛いピンク色を思う存分、吸い上げ舐め回す事が出来る。

あのホテルでバスローブが肌蹴た時に見えてしまった時、初めて見たピンク色。

本当にあるんだ。

余りの感動で、胸が震えた。

でも、彼女は酔っていて、それどころじゃなかったな。

ヤバイ思い出したら。熱いシャワーを出し、頭から温水を浴びる。

婚約者がいても、オンナに不自由していなかったが。

4月から、オンナ断ちをしている。

オレの考えは180度変わって、愛のない行為はしたくない。

て、言うかチェギョン意外としたくない。

今までと同じように、いろんな女が寄って来たけど、皆お断り。

勝手にチェギョンに義理を立ててやっていなかった。

お陰で、お一人様復活。

熱いシャワーを浴びながら自分のモヤモヤを吹き飛ばした。





シャワーから上がり、バスローブを羽織ながら、冷蔵庫の扉を開けた。

ビールの瓶を取り出し、左手に持つ。

そのとき、部屋の様子に違和感を感じた。

「うん?」扉の下に封筒が見える。

ゆっくりと近づき、封筒に名前が書いていないのを、確認した。

嫌な予感がした。

デスクの上に置いてあったメガネを持ち、歩きながらメガネを掛けた。

心を落ち着ける為に、一人掛けのソファに座り、封筒から中身を出した。


写真・・。

写真には、会いたくて溜まらないチェギョンが写っていた。隠し撮りされたみたいで、アングルが悪い。

チェギョンの他にオトコが写っている。

そのオトコは、チェギョンの唇にキスをしていた。

このオトコ、確かイ・ユル。

チェギョンがずーっと迎えに来てくれるのを待っていた男。

ビックリ目をしている彼女に、キスをしている男の写真。

オレの左手から、ビールの瓶が落ちていく。

そして、右手からも写真は落ちていく。

顔を天井に向け、目を瞑る。

力が抜けた体は、ズリ、ズリとソファからずれていった。

「チェギョン。」

オレの掠れた声は、この部屋の天井まで届かなかった。