ガンヒョンに連れて来られた高級下着店。

此処は、明洞で1番高い店。

一回も入ったことがなかった。

「チョッ、ちょっとガンヒョン。こんなとこ、高すぎるって。」無理矢理腕を引っ張った。

「何言ってるの.、アンタのご卒業なんだよ。しっかりと準備しないと。」と反対に引っ張られた。

無理矢理入らされた高級店は、輝き眩しいとこだった。

「ガンヒョン~~ン、眩しい。」

「わたしもちょっと目がチカチカする。」ビビッていると。

ガンヒョンの隙を狙って此処から逃げ出そうとしていた私のマフラーをガンヒョンが掴んだ。

「こらっ、逃がさないよ。」

「エヘヘッ、ばれましたか。」マフラーを直しながら笑う。

「夢見る少女から大人の女に変わろうとしているアンタを、親友が応援しないで、誰がするの?」バン!!と背中を叩かれた

「ガンヒョン。」

「ほらっ、早くしないと時間なくなっちゃうよ。」彼女は笑った。

キム・ガンヒョン。高校の時からの親友。

キレイで、頭が良くて、性格も良し。

私と正反対な彼女。

それなのに、妙に気が合いズーッと一緒にいる。

昔のオトコ夢見てないで、新しい男作りなさいって何時も言っているた癖に、男達が寄って来ると蹴散らしてばかりいた。

「アンタにはもっとイイ男じゃなきゃダメ!!」説教されていた。

そんな彼女が許す室長。

「イ・シン本部長なら、合格。」

「何で?」

「本部長は、このホテルの従業員の中じゃ、一番の出世コース。社長のギョンより、社長が合う。」

「じゃあ、あたしなんか釣り合わない。」

「何言ってるの。それでもアンタがイイって本部長が言うんだから、それも4月からアンタに片想いしていたなんて羨ましいよ。アンタに近寄ってくるオトコ共は皆、アンタの顔と体が目当てなヤツばかりで、愛が見えなかった。

でも、本部長には愛が見える。私が初めてチェギョンの彼氏として、合格点出したオトコ。」

「ガンヒョンだって、将来は社長夫人だね。」

「バカ言わないで、私なんかそんな器じゃない。」

「えっ?どうするの・・?」

「考え中・。」済ました顔からは、もう何も聞けない。

何時も私の為に一生懸命な彼女。

ガンヒョンの為なら、私なんでも出来る

ガンヒョンが幸せになれるのなら。



下着の所でボーっと考え事をしていたら、ニヤニヤしたガンヒョンが来た。

「どうしたの?」

「じゃーーん!!」手に持っていたのは。

「男性用。」ガンヒョンが持っていたのは、ビキニタイプの下着。

「これって、イ・シン本部長に似合いそうだね、バレンタインの時にあげたら。」ニヤニヤする。

「えーーーー!!こんなの履かないよ。」そんな事を言いながらも、目線はビキニに集中してしまう。

室長ってこんなの履くんですか?

本当に履いていたら、フェロモンは此処から来るのねって、頷いてしまいます。

「チェギョンったらそんなに見つめないの。」笑う。

「ねーーッ。何で此処ふっくらしてるの?」素直な疑問を聞いた。

急に照れるガンヒョン。

「もーー。お子様チェギョン、この間ビッシリと勉強したでしょッ。」

「勉強。あっ。この間の」?」私の頬も真っ赤になる。




「オトコとオンナが好きあって付き合い始めると、オトコは体の繋がりを求め、オンナは心の繋がりを重視する。

オトコとオンナは根本的に違うから、オトコにそれを求めちゃダメ。

大人な本部長だから、体の繋がりだけじゃダメだって、判っていると思うんだけど。「」

「オレそれって、絶対にしないとダメ?」

「余程な事がない限り、絶対にします。「」

「夢見ているだけじゃ、恋は続かないよ。でも、無理矢理するのは、NG。ちゃんと2人の気持ちがお互いに欲しいって思ったら、OK。「」

「ガンヒョンって本当に私と同じ年なの?「」

「オバサンじゃないわよ。アンタが何にも知らないだけなの。」額に指でビシッと叩かれた。

その後の、大人への勉強は何時間も続いた。





スマホの着信音が鳴り、カバンから取り出し画面を見ると。

室長の表示が、思わず目の前のビキニを見入ってしまう。

ボタンを押し、室長と話し始める。

「今、金浦空港に着いた。ちょっとばかり時間が空いたから、少し付き合え。」室長の後ろから色んな人の声・アナウンスの音が聞こえる。

「もう家に着いたのか?」

「いえ、未だです。ガンヒョンと一緒に買い物です。」

「寄り道するなって言った筈だが仕方ない。キム・ガンヒョンさんが一緒なら、安心だ。お前一人なら、店の人に迷惑を掛けるんじゃないかと、心配してしまう。」

「もーー、。又子ども扱いしないでください。」膨れる頬

「オレが、お前の傍にいたいんだ。」突然の言葉に、言葉が詰まる。

「一分・いや一秒でも早く、お前の元に帰りたい。」スマホから伝わる室長の気持ち。

心臓がギューッとなる。

どうしてこの人って、私の心臓が壊れてしまう。

「時間だ。じゃっ、5日後に。」

「待って、待って下さい。」

「何だ?」

「えっと。」モジモジ

歩きながら電話しているんだろう。ギョン君の声も聞こえ始めた。

「もう、チケットのとこだ。切るぞ。」

「シ・・・シン君。気をつけて行って来て下さい」

「・・・。」

「あれ?やっぱり年上に君はダメでした?」

「お前なー。今言うなよ、反則だ。会ったら何百回も言わせるからな。」

「すみません。」

「謝らなくても、ちゃんと練習してけ。」ブチッと切られた。




「シン君って、チェギョン。本部長に。」呆れる顔

「だって、咄嗟に出てしまった。」

「まッ、本人同士が良ければいいけどね。」笑い「で、バレンタインのビキニ買うの?」今度は真っ赤なビキニパンツを持ってきて、ニヤーッと笑う。

「もーー、ガンヒョン。そんなの買わないよ。私のをちゃんと選んでよ。」睨む。

「アハハッ、そうだったよね。」ガンヒョンは手に持っていたビキニパンツを元の場所に戻し、女性用の場所に行った。






「チェギョン?」私を呼ぶ声が聞こえた。

それも男の声が

振り向くと。

「又、会ったね。」ニッコリ微笑むイ・ユル君がいた。

「ユル君。」

「こんなとこで会うなんて。あの別れからずーっと会った事がなかったのにね。」

中学校の時よりもポッチャリしているユル君。

今日の姿は、結婚式のタキシードじゃなくて、スーツ姿だった。

体型云々じゃなくて、室長との違い差を感じる。

室長のかっこよさを、改めて判ってしまった。

いつも自分に合った上質なスーツを見に纏い、暑くても寒くても乱れる事もない。

独身な筈なのに、何時もきちんとしている姿に、室長の真面目さを感じる。

あの冷たいメガネの奥に、温かい目を持っているなんて、全然知らなかった。

まだまだ子供だった私は、人を上辺でしか判断出来ていなかった。



目の前にいる、私の初恋のユル君。

あの頃は大好きだった。

大好きで、離れ離れになるのが嫌で、2人で駆け落ちまでした。

その情熱は若さゆえ、うんうんただの甘えだったかも。

だって、室長を想う気持ちとは、全く違う。

室長の全てが欲しい。

心も体も、全て私のモノにしたい。

たった5日間離れるだけで凄く辛い。

あんなカッコイイ人だもの、キレイなオネーサン達がほっとく訳がない。

どうしよう、こんなチンケな私なんてつまらない~~って、キレイなおねーさんのとこに行ってしまったら。

考えているうちに、段々焦りだし始めた私は、ウロウロと動き始めた。

「ちょっと、チェギョン。」ハッと気が付き、あっ!!ユル君が居たんだっけ。

真っ赤になって、ウロウロを止めた。

私の姿を見て、笑い出したユル君。

中々笑いを止めないユル君、そう言えば彼は笑い上戸だった。

「全くチェギョンは変わってないね。君が変わってなくて、嬉しいよ。僕はここで働いているんだ。」スーツについているネームプレートに、店長って書いてあった。

「えっ!?ユル君、店長なの?」

「研修で色んなとこに飛ばされているんだ。役職は店長だけど、雑用係だよ。」笑う。

あっ、この笑顔懐かしい。

この笑顔が好きだったんだ。

笑顔で急に思い出した私。

室長の笑顔?あの嫌味を言っている時の、イジワルな笑顔が多い。

でもね、たまーーーーに本当の笑顔がある、それを見れた時には、嬉しくて仕方がない。

どうしよう。

ユル君といても、室長の事しか考えていない。

「チェギョン誰?」ガンヒョンが近寄ってきた。

「あっ。中学校の時の同級生。イ・ユル君。此処の店長なんだって。」ビックリ顔のガンヒョン

「始めまして、キム・ガンヒョンって言います。」気持ちを改め。しっかりと告げる。

「僕はイ・ユルと言います。今後この店とも宜しく。今日、お買い上げの商品社員割りにするので、何でも買っていって下さい。」ニッコリと笑う。

「本当ですか!?有難うございます。」

「久々にチェギョンに会ったんだから、サービスしないとね。」ニッコリと笑った。




帰りの電車の中。

「あんな高いとこが、半額だよ。ビックリしたよね。」

「うんでも、お目当てのが在庫なくて。2日後に取りに来てくれって。」

「私が取りに行くから、大丈夫だって」とガンヒョンを叩く。

「うーーん、付き合いたいけど。その日は英会話の日なんだよね。」残念がるガンヒョン。

「私一人でも大丈夫。」

「心配、だってアンタが待っていたオトコでしょっ?」

「ぷーーーー!!何もある訳ないじゃん。ユル君は結婚して、可愛い子どももいたし、幸せそうだった。

私の長い恋も、あっという間に終わったんだから。それに、今は室長の事しか考えれない。」室長を思い出し、ボーっとし始める。

「そっかー、あのフェロモンにやられたら、もう抜け出せない。」からかう。

マジで、そうなのかもしれない。

室長の香りはフェロモン入りなのかな。

電車の窓ガラスに、室長を思い浮かべ一人で赤くなっていた。