残業時間が終わり帰ろうとした時に、メールの着信音があった。
慌てて開くと。
今、一旦社に戻った、顔見たいから直ぐに来い。秘書課の女子は帰って、インしかいなから。
一緒に帰ろうとしていたガンヒョンに断りを入れ、秘書課を目指した。
秘書課の扉を開けたら、カン・インさんがいた。
「こんばんは!!」頭を下げた。
「おっ、来たな。シンが待ってる。アイツも大変だ。これから又、出掛けるんだからな。」室長の部屋を見る。
「室長,,又出掛けるんですか?」心配そうに見上げた。
カン・インさんの顔が微妙な顔になった。
「チェギョンちゃん、いいかい。」他の男の前でそんな顔しちゃダメだぞ。」念を押された。
「えっ?」
「君は自分の事あんまり何とも思っていないみたいだけど、此処の会社のオトコだけの嫁にしたい女子社員の投票で、堂々の1位なんだから、それも毎月。何時もシンがイライラしてた。
経理部に閉じ込めておいても、アイツの良さはばれてしまう。ッて怒っていたからね。」笑う。
「・・・。」何だろう、赤くなってしまった。
「余程、君に参ってるみたいだね。」笑っていると、急に首元に腕が回った。
突然現れた室長。
カン・インさんと私はビックリした。
「オイ、足音聞こえなかったぞ。」冷静に話し始める。
「オレが、そんな間抜けな事するか?」笑いながら腕に力を入れた。
「ギブギブ!!」首を少しばかり締め上げられているカン・インさん。
「室長!!ダメです!!」私は止めた。
「チェギョンが遅くて見に来れば、お前、チェギョンに何してる?」地獄の底から聞こえるような声。
カン・インさんは「アハハッ、まさかーっ、親友の彼女には、手を出さない主義だ。」
「ふーーん。この間ので、懲りたんだよな。」ギロッと睨む。
「もうしないから後勘弁。」自分の部屋の扉を開けた。
「ふん。」室長は私の手を取り、自分の部屋の扉を開けた。
「室長ーー。この間のって、何ですか?」見上げる。
「・・・・・・。」室長の眉間に皺が入る。
「えっ?」
「チェギョン、他の男の前でその目をするのは、止めるんだ。」グイッと中に無理矢理入れられた。
「何でですかーー?さっきもカン・インさんにも言われました。男の前でやっちゃいけないって。」
その後、室長が投票でイライラしていたって事を。
「その、顔がやばいくらい可愛いからだ。オトコがそんな顔見てしまったら、キスしたくなるだろ。」と室長が照れながら言い、自分のデスクの椅子に座った。
「室長ー。」私が聞いても返事をせずに、椅子事反対を向いた。
照れてしまった室長の椅子のとこに近寄り、顔を覗き込んだ。
顔に手を当て、困った顔をしていた。
「室長、顔見せて下さい。今日、ようやく見れたんですから。」室長の指に自分の手を当て、ゆっくりと外した。
室長の腕がゆっくりと私のウエストを掴む、そしてグイッと私の体を自分の膝に置いた。
「オレだって、お前の顔見たくて仕事頑張った。」
暗い部屋の中に、唇と唇の重なる音がする。
荒い息と、追い求める舌の音。
「室長。」離さないとばかりに、追いかけてくる唇。
何度も重なる唇。
そのうち、ドンドンと胸を叩く。
「チェギョン痛いぞ。」唇は離れたけど、目線が痛かった。
「だって、もう時間じゃないんですか?」時計に目を向けた。
室長も目線を合わせたが。「未だ、時間はある。」私の首筋に唇を這わす。
ゆっくり降りてくる唇から舌先が出て、ピーポイントで下がってくる。
室長の手際の良い指先はベストのボタンを外し、ブラウスのボタンも一個一個外す。
「室長、ダメです。」
私の言葉を無視して、舌先はドンドン下に降りていき、胸元に辿り着いた。
暴れて離れようとしたら、しっかりと室長に押さえ込まれていて、抜け出せなかった。
舌先はブラの隙間から、ゆっくりと入って来て、中心を探す。
「室長ってば。」
舌先から与えられる今まで感じた事のない、気持ちよさ。
でも、私は気持ち良さよりも。
「ダメだって言ってるじゃないですか。」と言い放ったと同時に。
室長の口の中に、私の胸の先は吸い込まれた。
私の胸の先は、室長の舌先と、歯で丁寧に扱われた。
私の背中を電流見たく駆け抜ける、キモチよさ。
「うんっ。」こんな声出した事ない。
「室長ダメ。」それでも尚止めない、室長の舌先。
段々、熱くなり始めてきた体を持て始めてきた時。
スマホのベルが鳴った。
ゆっくりと離れていく、室長の唇。
唇に滴っている唾液を、親指で拭う。
「時間だ。」私の顔を見て、寂しそうに呟く。
ブラウスのボタンを掛けて貰い、ベストも着させてもらった。
そしてギュッと抱きしめられた。
「これから、社長と済州島のホテルに行く。そしてそのままイギリスまで行って帰って来るのは5日後だ。
これを乗り切れば、大分楽になる。」抱きしめられながら、耳朶を噛まれた。
「!!」初めての事なので、ビックリ目の私。
何度も噛まれ、口に含まれ。
体が熱い。
私の口から吐かれる息遣いが段々荒くなってきた。
室長にキスをねだった私。
でも、ゆっくりと室長は離れていく。
「えっ。」
「本当に時間だ。チェギョン、帰ってきたら。もう離さないからな。オレの事忘れられないように、何度も刻み込んでやる。あっ、後オレの事室長って呼ぶのは、もう止めろ。名前で呼べ。」私の両頬を引っ張った。
「無理でず。ぎゅう”に”。」頬を引っ張られたまま話す。
「5日間もあるんだ、練習しとけ。今日も分厚い格好してきたか?本当はこの寒いソウルを帰らせたくないが、後もうちょっとすれば。とにかく、寄り道せずに帰ろ。」笑って私を膝から下ろした。
「もーーー。子ども扱いしないで下さい。私もう23才です。」ブーたれる。
「オレより、5才も下だ。まだまだ子どもだ。」イジワルな目で笑う。
あーーッ、私ってこの目が嫌いだった。
仕事が出来ない私の事、呆れてバカにしたような目だって思っていたのに。
でも、今は、このイジワルな目までカッコイイと思ってしまう。
私って、Mだったのかなー。
「子どもじゃないです!!」椅子から立ち上がろうとした室長を、ドンと椅子に戻し、愛情たっぷりなキスをしてあげた。
室長の舌が動き出そうとした時、私は思い切って離れた。
そして、扉に向かって走り、ドアを開けながら
「室長こそ、帰ってきたら、私がいないと死んでしまいそうと言わせるんだから!!覚悟しておいて下さい!!」手を振って出て行った。
一人だけになった部屋に溜息が聞こえた。
「そんなこと4月から思ってたさ。」
秘書課から出たとこで、ギョン君に会った。
いや我が社の新しい社長。
同じ同期で入って来た時から、ガンヒョンに一目惚れしてしまった彼。
でも、彼は私の事を見る度に、「オイ。アヒル。」邪険に扱う。
「私にだって、シン・チェギョンって言う名前があるんですけど。」
「アヒルで十分だ。ガンヒョンは白鳥のように美しいが、アヒルは何時まで経っても白鳥にはなれないんだ。」
「そんなの自分だって、判ってるよ。」
「ガンヒョンみたいにキレイで頭イイ子なんかなれない、それでも頑張って生きてるんだから。ギョン君には何も言われたくない。」
「ふん」
入社当時は、ただからかう程度だったのに。
秋頃から、冷たい態度に変わった。私、ギョン君に何かした?
自分の部署とは違うとこで会ってしまい、都合が悪かった。
社長室から出てきたギョン君。
本当に社長さんなんだね。
私の事をジロリと見る。
「アヒル、部外者は立ち入り禁止だ。」
「すいません。」頭を深々と下げ、慌ててこの秘書課を離れた。
「お前なんか、シンとは似合わない」ギョン君の呟きが私の耳には届かなかった。
ガンヒョンと待ち合わせのカフェに、私はぶっ飛びで入っていった。
「ごめん!!」と謝りながら座る。
ジロリと見ながら「今日は、アンタのおごりだからね」と言う。
「えっ!!?マジ?」
「そう、マジです。」
「トホホッ」
「で、イ・シン本部長と会えたの?」と新しい雑誌を見ながら聞いてきた。
「室長だよ、何か本部長って馴染めない。」
「仕方ないでしょッ、役職が変わったんだから。それとも名前で呼んだら?」ニヤッと笑う。
「わーーー!!魔女の笑い。」
「誰が魔女じゃっ。」
「室長も名前で呼べって。5日後には帰ってくるから、練習しておけって。」
「そっかー。5日後か。チェギョンが大人になる日。」笑う。
急に真っ赤になる。
「とうとう、ご卒業だね。」
「ガンヒョン、こんなとこで言わなくても。それに5日後に会えるとは、限らないし」モジモジする。
「アンタ、何言ってるの?あのフェロモンオトコだよ。」
「何そのフェロモンオトコって。」ジロッと睨む。
「イヤーーッ、そんな感じでしょっ。じゃあ、チェギョンの卒業祝いに私が下着のセット買ってあげるから。」
「えっ?」
「何時もの安い下着もいいけどやっぱご卒業用の下着買わないとね。じゃあ、今から行きますか!?」ガンヒョンは私の手を取り、歩き出した。