「プレゼントを買うのに付き合って下さい!!」室長を止めようとして、咄嗟に出た言葉。

コートを掴まれて、ビックリした室長は私の事を見る。

余りにも恥かしい引き止め方をしてしまい、顔を上げれなかった。

「プレゼント?」

「そうです。付き合ってくれますか?」段々言葉が震え始めた。

ちょっとの間があったが「コートから手を離しなさい。」室長は言った。

しまったーー、怒らせてしまった?

私はしょんぼりとして、コートから手を離した。

「オイ、どっち方向に向かっている」

「えっ?だって、断られたから、此処から出ようと。」

「プレゼント誰に贈るんだ?」素っ気無く聞いてきた。

「男の人です。」私は室長を見上げ口をギュッと閉め、室長の言葉を待つ。

「そっかー、男か。」室長は大きな溜息を付きながら、「部下が悩んでいるんだ。付き合う。」雑貨の方に足を向けて歩き出した。

何とか引き止めることに成功したが、まさかあげる本人に見立てて下さいってよく言ったわ。

私は何とか、室長と一緒にプレゼントを選び始めた。

「どんな感じの男だ?」

「イケメンです。」

ムッとする室長。「どんな感じのをあげたいんだ?」

「その人センスが良いので、質の良い物をあげたいです。」

室長の眉間に皺が寄っていく。

色んなモノを持ち、見比べて、候補があがってく。

そこに室長のスマホが鳴り響く。

「あっ、悪い。」とスマホの画面を開きながら外に出た。


この雑貨屋はちょっと高い位置にある為、階段を降りて行くと駐車場がある。

ガラス越しに、室長の車が止まっているのが見えた。

入り口の傍で、スマホで話し合う室長。

入っていく人や、出て行く女の人達が、室長の事を見て行く。

そして、キャーキャー、騒ぎながら見て逃げたり、声を掛けたりと盛り上がっていた。

室長は丁寧に断り中に入って来た。

そして、私に向かって歩いてくる姿をとらえ、私の心臓は暴れだす。

まるで付き合っているみたいな勘違いを起してしまう。

「悪い、待ったか?」

「いいえ、大丈夫です。」後ろから聞こえる、なーんだあの女なのー?この男の人にはもっとキレイな人が合うわーとか、いろんな声が聞こえた。

ぐっ!!当たっているだけに、言い返せない。

カッコイイ室長に、やっぱ私なんか合う訳ないか。しょんぼりしていると。

急に大きな手が私の手を握った。

ハッと顔を上げると、「ほらっ早く選ばないと、遅くなる。」フッと外を見ると、さっきまで明るかった外が薄暗くなっていく。

でも、建物の周りの木に、イルミネーションを巻きつけ、クリスマスサンタやスノーマン、そしてトナカイまで彩りに光り輝く。

「キレイ。」ボーっとしている私の手を引っ張り「で、何を候補にしたんだ?」室長は聞いてきた。

「これとこれのどっちかに。」

スマホカバーと万年筆。

「室長のスマホと同じなんです。入るかどうか試させて下さい。」言うと「オレと同じスマホ使っているのか?」室長は仕方なく、スマホを私に渡しカバーに嵌めてみた。

「あーーッ、これ似合いますよね。」室長の同意を求めたが、面白く無さそうな顔。

「室長、さっきから変な顔になりますね。」背の高い室長を見上げる。

「別に、何時もと同じだ。」横を向く。

「これに決めました。買ってきます。」私はスマホカバーを持ち、会計に並んだ。

レジの横に並んでいるクリスマスカードも気に入った物が有り、一緒に購入した。

キレイにラッピングされた箱。クリスマスカードは別に入れてもらった。

私は、室長の傍に寄り「今日は本当に有難うございました!!私一人では、終わらなかったかも知れません。」頭を下げた。

「気にすんな。じゃあ、又会社で。」室長は扉を開けてさっさと行ってしまった。

「えっ。まだ全部言ってないのに。」慌てて私も後を追う。

室長は階段を降りていた。

「室長ーー!!行かないで!!」私の声が響く。

私の大きな声が、真っ暗になった空に響き渡る。

「オイ!!声!!」と室長が体の向きを変える。

「待って!!私、まだ室長に言いたい事があるんです!!」両足に力を入れ、手は握り真っ赤になった顔を室長に向ける。

「もう、プレゼント買うのには付き合った。オレだってもう、限界なんだ。お前から早く離れたい。」辛そうに言う。

室長の辛そうな顔を見てしまい、今から言う事は、果たして言っても良いのか悩みだそうとしたが。

室長に自分の想いを言ってみないと。>

このままじゃ、嫌だ!!

「離れたくない。室長から離れたくないです!!」大きな声で言った。

周りの客が驚いて見ていくが、気にしない。

ただ室長の顔だけ、見つめる。

「言いたい事はいっぱいありますが、今はただ室長が欲しい!!室長の心も体も全て自分だけのモノにしたい!!」

階段の半ばで、驚いている室長。

「自分の気持ちが判らなくて、室長から離れていたけど、キスには愛が篭っています!!室長としたキスには、愛が一杯入ってます!!だから、室長と又愛の篭ったキスがしたいです!!」私が室長に言っている間に、室長はゆっくりと階段を上がってきた。

目線が重なる位置で、室長が止まる。

「お前が持っているプレゼントは?誰か他の男にやるんじゃーっ。」

「イケメンで、センスがイイって、室長しか知りません,室長にあげるんです。」真っ直ぐな瞳を向けた。

「さっきまで嫉妬しまくっていた。お前からのプレゼント貰える男に。」室長の顔が段々近づいて来た。

「室長の事しか、考えられなくておかしくなりそうです。」目に涙が溜まり始めた。

ゆっくりと重なる2人の唇。

雑貨屋の階段の上でキスをし合う2人を、周りの人達は、驚きながら立ち止まり、通り過ぎていく。

夢中でキスをし合う2人には、気にならない。

今はただ愛が一杯入ったキスだけしていたい。