朝の6時。

ドアの鍵を開ける音がした。

「ただいま。」小さい声。

朝帰りのガンヒョンは、チェギョンが寝ている事を祈りつつ、中に入って行った。

寝室のドアを開けると、薄暗い部屋の中に人影が。

「誰!?」とっさにチェギョン以外の人物だと思った。

「キム・ガンヒョン遅い帰宅だな。」うん?聞き覚えのある声。

「キム・ガンヒョンが帰ってこないから、朝まで付き合ってしまった。」溜息の声が聞こえた。

「しつちょうーーーーー!!」ビックリして目が飛び出した。

「うるさい、チェギョンが起きるだろう。」たしなめられた。

チェギョンの布団の隣に、座っている室長がいた。

「随分遅い帰りだな。」室長がボソッと言う。

「2度も言わないで下さい。何でここに?」ようやく言えるようになったガンヒョン。

「昨日、チェギョンが微熱を出していて、キム・ガンヒョンが帰ってくるまで付き添うと約束した。オレは早く帰ろうとしたが、帰って来なかったもんな。」ニヤリと笑う。

真っ赤になって、口をパクパクする。

「まっ、キム・ガンヒョンが何処のヤツと泊まろうが、勝手にどうぞ。オレが大事なのはチェギョンだけだからな。」チェギョンの頭を撫でてやる。

「バトンタッチ。もう、行かないと。」大きな体が立ち上がった

「室長!!・・チェギョンと付き合ってるんですか?それとも遊び?なら、もう構わないで下さい。」睨む。

「遊び?まさか。」ニヤッと笑う。

「室長には彼女さんがいるじゃないですか!!」食いつく。

「彼女?ああ。心配するな。」室長は上着を羽織った。

「チェギョンの微熱は下がったが、起きてダメそうだったら、休ませろ。」高そうな靴を履き、私に伝える。

「じゃあ、会社で。」扉を開けて出て行った。

あの室長が、私達の部屋にいるなんてビックリしたーーー!!

スヤスヤと眠っているチェギョンを見て、ガンヒョンは溜息を吐く。

「全くアンタは大物だわ。

初めて男を部屋に連れ込んだのが室長だなんて。レベル高すぎ。」苦笑いをした。

そう言えば、家の前に黒い高そうな車が止まっていたのを思い出す。

あれは、室長のだよね。

慌てて帰ってきたから、甘かった軽くしか見ていなかった。

室長、彼女の事心配するなって。

恋愛初心者のこのコが、泣くとこ何か見たくないな。






「あーーーー!!待って!!乗ります!!」と私はエレベーターに駆け込む。

みんなの視線が集中して、慌てて私は横を向く。

朝になり、微熱の下がった私はスッキリと起きた。そして、昨日の事をぼんやりと思い出していた。



ユル君に家族がいた・・・。

3人とても幸せそうだった・・。


言わないでよかった・・・。


私が勝手に待ってただけなんだから・・。

でも、室長が私の傍にずっといてくれた・・・。

あんなに泣いたのに・・・凄い顔だったんだろうな・・。

恥かしい・・・。

それに・・室長の寝顔・・初めて見ました・・。


「アンタ、顔赤いよ!!今日休んだら?」心配そうに覗き込むガンヒョン。

私は慌てて首を振り「大丈夫!!今日・会社に行けるから、大丈夫!!」

この頬が熱いのは、熱のせいじゃない・・・室長の寝顔を思い出して・・赤くなっていただけで・・・。


「じゃあ、ボーーッとしてないで、早く出るよ!!」とガンヒョンは着替えが終わって私を急かした。



あたしはフッと思い出し「ねーッ?ガンヒョン・・?」

「何よ!!アンタ、早くしないと!!」慌てるガンヒョン。

「昨日・・ギョン君と泊まったの?」と聞いた。

「-------!!!!!」真っ赤になったガンヒョン。

「そっか、そっか・・・、良い事だね。彼、良い人だから、安心だーー!!」とニヤニヤと笑った。


「もーーーー!!アンタの事、置いて行くから!!」と靴を履いて出て行った。

「あーーーっ!!ガンヒョーーン、照れないでよーー!!」と私は慌てて、部屋を出て行った。



エレベーターに乗り、一人思い出していると、扉が開き大半の人が降りて行った。

広くなったこの個室で、私はホッとする。


でも、2・3人乗っていて、チラッと後ろを見ると・・・。


室長ーーーーー!!が立っていた。


昨日とは違うグレイのスーツ・・又もやカッコイイです。

ボーーッと室長を見ていると、希望の階数で扉が開いた。

私は降りると、室長も降りてきた。

2人微妙な距離で歩いていたけど、室長に追い越された。

「室長、おはようございます!!」と頭を下げた。

「おはよう。」と室長は行ってしまった。

室長をエレベーターのとこで見てから、私の心臓の速度が上がった。

ドキン・・ドキン・・・。

室長の歩く姿を黙って見届けていると、同じ課の子に、「チェギョン、早くしないと遅れるよー!!」と言われた。


「わっ!!そうだね・・、遅刻するーー!!」と私は更衣室に入った。


着替えが終り、自分の机に座り「間に合ったーー!!」とフッと溜息を吐いていると、メールが着た。


「熱下がったのか?無理しているのなら、帰りなさい。」と昨日の事が嘘じゃなかった事を確定するメール。

さっきの上司と部下の関係だったのが、寂しかった私。


昨日の事を心配されて、嬉しくなった。


「大丈夫です!!今日も一日頑張りますよーー!!」とメールを返した。

「そっか、それは楽しみだ。ヘマするなよな。」と返って着た。

「・・出来るだけ・・頑張ります・・・。」と気弱な返事を返した。



私の席から、室長の席を見ると、スマホの画面を見て軽く笑っている室長が見えた。

笑っている室長を見て、又私の心臓が・・おかしくなった。

ドキン・ドキン・・・。

何だろう・・・。






仕事時間が始まり、今日の仕事をこなしていくと・・・室長に呼ばれた。


「シン・チェギョン!!この資料を探して来てくれ。」とメモ紙にびっしりと書き込まれた文字。


私は「はい、判りました!!」と返事をしながら・・心ではウへーーーっ、多過ぎるよーー!!と舌を出していた。



資料室に行き、色んなファイルを探していると、誰かが入って来た。

私は、気にもせずに探していると


「資料は見つかったか?」と言う声が響いた。

「室長!!」ビックリした。

室長は近寄ってきて、私の手元を見た。

「オイオイ。まだ残ってるな・・。」と言葉を言う。

「すみません!!中々場所が見つからなくて・・。」

その言葉を聞いた途端、室長が色んなとこから、ファイルを取り出してくる。


そして、あっと間に探して欲しいのが見つかった。


「室長・・・?」


「いっぱい頼んだのは・・お前と二人っきりになりたい口実だ。」と笑う。


室長・・なんですかその自然な微笑み・・・、目が離せません。


「熱は本当に下がったのか?」と室長のきれいな指が私の額に触れた。

カーーーー!!と熱くなる顔。


「うん?熱くなってきた・・・。」と室長は不思議がる。

「室長が触ったから・・・」言ってしまって、後悔する。


その言葉を聞いて、急にニヤつく「オレが触ったから・・・か?」

真っ赤になった私は下を向く。


室長が「今日・・・お前の好きなのに・・付き合うぞ・・。」と優しく笑う。


頬が熱くなりながら「じゃ・・・、カラオケ・・に行きたいです。」

「カラオケ・・・。」

「とことん歌って、忘れちゃいますーーー!!」と室長の顔を見上げた。


「判った・・・、オレにも少しは歌わせろよ。」と笑って出て行った。


優しい室長の言葉を聞き、私の心臓は何度目かの高鳴りを感じた。