「ガンヒョンが言うんですよー。アンタには注意力が足らないって。」
「さすが、シン・チェギョンさんの友達だ。判ってるな。」口元に神経質そうな指を当てる。
「室長!!」ムッとした顔になった。
二人が会話している場所は黒く輝く室長の車。
2回目に食事して送ってもらう時、運転手席に乗ってジロリと私の事を見る室長の事を、マフィアのボスかと思った。
これは、室長には内緒の話だ。(冷汗)
後部座席に乗ろうとしたら、助手席の窓が開いた。
「何やってる。」冷静な声が聞こえた。
「え?車に乗ろうと、それとも乗っちゃいけませんでしたか?」困る。
室長のメガネが光り「早く助手席に乗れ!!」怒った声。
なんで怒るのよ。
心の中で怒りながら、助手席の扉を開けたら、微かに室長の香りが私の鼻を掠める。
この香り…イイニオイ。
ゆっくりと私の体に染み渡らそうと、ニオイを吸い込む。
本人は苦手だけど、この香り好きなんだよねー。
なんでだろう?
苦手なら全部苦手になればいいのに。
男が苦手な私は、あの焼き肉屋での室長の言葉を受けた。
その代わり、私の事は名前じゃなくて、本名で呼ぶように。そうじゃないと、この話はなかった事に。という提案をした。
室長は「仕方ない、お前の要件をのもう。」溜息を吐いた。
残業が終わり、私と室長は会社から離れたとこで食事をする。
やっぱり、幾ら同じ職場の上司と部下とはいえ、二人で会っているのを誰かに見られてしまったら。
大変だ。
あの室長の提案以来ちゃんと距離を取って接してくれている。
最初の辺りは何も話さず終わっていた食事も。
今じゃ、大分話が続くようになったが、何時も私ばっか話している。
室長は私の話にトゲをさすくらいで、後はずーーっと食事している。
そして、室長の車で私とガンヒョンの家まで送ってくれる。
室長は男の苦手な私の為に、練習台になってくれているけど。
でも、一番苦手な室長を克服できるのかが、心配だ。
家からちょっと離れたとこに止め、話をしていた私達。
室長は、ハンドルに腕を掛けて、私と話をしていたが。急にメガネを外した。
キョトンとして、室長を見る。
室長によく似合うメガネは,ダッシュボードの上に置かれた。
ゆっくりと体を起こしながら「シン・チェギョンさん、車での茶飲み友達は卒業して、そろそろ第一ステップに行こうか?」
私を真剣な目で見つめる室長。
「第一ステップ?」
室長の鋭い目つきは、私の体を動かせなくさせる。
さっきハンドルに体を預けていたのを起こしたので、前髪がちょっと落ちた。
ドキン!!
薄暗い車の中。
車のメーターの光で室長の顔が青白く照らされる。
室長の手が私の頬を包み込む。
えっ?
何をしようと。
青白く照らされた顔は私にゆっくりと近づいて来る。
室長の見た事もない瞳。
怒られる時やイジワルな言葉を言う時、黙って仕事をしている時の目じゃない。
男の特有のフェロモンを、プンプンさせながら私に近づいて来る。
怖い!!
ユル君!!
アパートの扉の鍵を開けようと、鍵をガチャガチャと入れようとしても、焦って鍵穴にさせない。
扉の変な様子に気が付いたガンヒョンが中から「誰!?」低い声で聞く。
「ガンヒョーーン・・。」
私という事に気が付いたガンヒョンは、慌てて扉を開けた。
雪崩込んで部屋に入って来た私を、彼女は受け止めた。
「ガンヒョン!!」ボロボロ涙が出る。
「チェギョンどうしたの?」
「もう寝る。」言う言葉を言いながら、会社帰りの服のままベットにダイブし、泣きながらあっという間に寝てしまった私。
ガンヒョンは呆れながらも、何も聞かずに私の着替えをしてくれた。
そして次の日、私は又少し微熱を出してしまった。
「今日・・、休む?」ガンヒョンが聞く
少し微熱の私は、ボーっとしながら頭を振る。
「有休何から、行かないと・・。」パジャマを脱いだ。