「熱、下がったよ。」ガンヒョンが体温計を見て、ホッとしていた。

「アンタ・・仕事場で倒れたの憶えているよねー。」と睨まれた。

「うん・・・。」

「病院に行った事は・・?」

「ウン・・・」

「家に帰って来た事は?」

「うん・・・。」

「まったく・・うんばかり。」ガンヒョンは、夕飯の支度の為に立った。



私は、心の中で、室長の車に乗った事、覚えてる・・・。


室長・・・かっ。

世界で一番苦手な男の人。

なんかね・・近寄ってしまうと・・危険信号がでる。

危ない・・・危ない・・・って。


小さな台所にガンヒョンは立ちながら、室長の事を言い始めた。

「イ・シン室長・・って、凄かったよ。アンタを抱き上げて、保健室まで行ったんだ。」

私の顔がガンヒョンを見る。

「経理部の女が皆騒いでいた・・。でも、倒れたんだから、当たり前だよねーー。」とニヤッと笑う。


私は、ベットの中で、ゴロゴロと転がる。

苦手な人から、付き合ってくれって言われたから・・パニックで熱出たのかな・・?

冗談じゃないって言ってた・・。

だって・・・。

だって・・・、室長の事苦手てで、顔見ないようにしてたのに・・。


でも、室長がなんと言おうと!!

私にはユル君がいるんだモノ!!

ちゃんとお断りしよっと!!


何か急に元気になった「ガンヒョーーン!!ゴハン未だ?」大きな声は、小さな部屋に響いた。


テーブルに大きい野菜の入ったスープをすすっていると・・。

「アンタって・・、室長・・苦手だよね・・。」メガネが光る。

「な・・・なに!!急に!?」室長の事が出て慌てる。

「男が苦手だから・・、室長が苦手なんだよね・・。」

スプーンが口元に留まったまま、黙る

「どうだろう・・・。判んない・・。」

付き合えって・・・、毎日仕事を失敗する女のとなぜ・・?

それに室長、あの韓国一のバレリーナのミン・ヒョリンにプロポーズしたばかりじゃん・・。


ヤッパ・・・、からかってるんだよ。

アハハッ・・、ちょっと真剣に思っちゃったよ・・。

冗談じゃないと言いながら、明日になれば・・考えが変わるって。


「あははははっ!!そうそう。」急に笑い出した私のオデコを触り、「アンタ、まだ熱あるんじゃない?」とガンヒョンが慌てる。

「熱なんて、下がった・下がった!!さーーーッ、大好きなマンガ本読もっと。」と食器片付け、荒い始める。

「早く、ガンヒョンのも出してよー。」と明るい声で言った。


小さなキッチン。2人で立つと、狭すぎな場所。

でも私はこの窓から見上げる夜空が好き。

扉を開けると、3階の屋上の部屋から、向の低い丘の上に木が一本立っている。


丘・木・夜空・・。

この小さな窓には、どんな高そうな絵画にも負けない、風景が広がっていた。


わーーーっ!!今日もキレイ・・。

「うん?あれ?丘の上に車が止まっている。此処穴場だから・・滅多に人来ないのに。」
黒っぽく見えるけど・・、何か良くわかんないや。

窓を開けながら見ていると「こらーーーッ、熱下がったばかりなんだから、早く寝なさい!!」とガンヒョンが怒る。
「へーーーい!!」私は仕方なく窓を閉めた。


黒っぽい車から降りた人は、タバコを吸い始め・・煙が夜空に向かって伸びていった。



次の朝、私はガンヒョンより早く出て、昨日の自分のやってない仕事をやろうとしていた。

会社に着き慌てて着替えて、エレベーターの階数の数字を押した。


地下から上がってくるエレベーター。

ポーン。と言う音と共に、扉が開いた。

開いたと共に、イ・シン室長が一人で立っていた。


「あっ・・。」私の顔が止まる。


今日も又・・自分の体型に合った細身のスーツをビシッと着こなす室長。

室長のスーツ姿、結構好きなんだよなー・・。

首から上ってあんまり見た事無いんだけど・・、だって仕事で怒られてばかりだから、般若の顔だと思っているから。

ちゃんと顔見て、挨拶しないと!!と室長の顔を見た。


・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・。

「オイ!!早く乗れ!!」と怒られた。

・・・・。


「オイ!!シン・チェギョン!!」何時もの室長の声が私の耳に届いて、青くなる。

「はい!!何でしょうか!?又失敗ですか?」と恐る恐る聞く。


呆れた室長が・・「エレベーターに早く乗れって言ってるんだ。」と又怒った。

ハッと気がつき、慌てて中に入った。


このエレベーターに、室長と2人きり・・。

ヤバイ・・・昨日こと、謝った方が良いよね。

私は室長に謝ろうと口を開いたら・・。

「熱は良いのか?」

「ハイ、もうすっかり下がりました。室長・・昨日はどうも有り難うございました。」と頭を下げた。

「気にするな。」と優しく笑った。

あっ!!2回目の笑顔。

般若の顔から・・随分印象が変わる・・・。


「室長・・・。」

「何だ?」

「室長・・って、笑っていた方が断然イイ男です。」とエレベーターの扉を見たまま言った。

「オイ、随分な言葉だな・・。大分元気になったな!!」と急に睨む。

「はい、元気になりました!あっ!!室長、昨日、お世話になった御礼したいのですが・・?」

「・・・・元気になったから・・夜飯に付き合え、」と顔を覗き込まれた。

「皆と行くんですよね。」と平然と言った。




「まさか!!2人っきりだ!!」とカレの顔が、般若のように笑った。