「チェギョン・・・」
「チェギョン・・・。」
うーーーーん。
誰?起さないで。
今ね、ユル君とお話しているの。ようやく迎えに来てくれたんだ。ずーーッと待ってた。
誰からの誘いも受けずに、ユル君の事だけ待ってたよ。
「チェギョン!!」
ユル君をお話しているのに、遠くから聞き覚えのある怖い声が聞こえる。
「チェギョン!!」段々近づいて来るその声。
怖い声だって判っているから私はユル君の手を取り、その声から逃げ出そうと。
その時、繋いでいたユル君が突然いなくなった。
「ユル君?どこ?」辺りを見ても、どこにも居ない。
何処行ったの?
走り回っていると、突然誰かに抱きつかれた
「ユル君!!何処に。」顔を見上げると・・。
ゲーーーーーっ!!室長ーーーー!!
室長は私のアゴを上に上げ、唇にキスをした。
「ヒャーーーーーーーー!!」私跳ね起きた。
肩で息を吐き、ゼイゼイしていると。「大丈夫か?」言う声がした。
私は恐る恐る横を見ると、室長がいた。
「なんで?室長が私のベットに?」
「お前、此処が自分の部屋に見えるのか?」ムスッと言う。
ゆっくりと周りを見るとどうやら医務室ぽい。
「お前、仕事場で倒れたんだ。判るか?」さっきの顔とは違う心配顔。
倒れた?
そう言えば室長の事考えていたら、何かグルグル目が回った。
「顔が赤い熱があるみたいだ、今日は帰れ!!」
保健医が傍から歩いてきて、体温計を出した。
「頬が赤いから大分熱あると思います。」室長を見てニッコリと笑う。
あっ!!この人、室長の肩に手を置いた、それに意味ありげな微笑み。
ムーーーーッ!!
段々、イラ付き始めた。
ピピッ・・ピピッ・・。体温計の音が鳴る。
保健医は体温計を取り熱を見た。
「あーー、やっぱり!!38度もあります。」体温計のリセットボタンを押した。
「シン・チェギョン。今日は仕事休め。オレが送って行くから。」
体温計の温度を聞いたら、ビックリしてしまい、体が段々重くなっていく。
ボーーーッとしながら「だって休んだら室長に怒られる。」
「あのなー、怒られないだろう?熱のあるヤツをなぜ怒る。とにかくもう家に連れて行くから、ほらっ!!準備しろ。」
「だって・・室長も休んだ事に。」
「オレは元々、今日まで休みなんだ。会社に来たのは・・資料取りに来ただけだ。」
「室長。ゴメンなさい!!」と頭を下げた。
「なんだ?行き成り。」
「今日の室長の髪型、違っていたのに・・気が付きませんでした。余り室長の顔見ないようにしていたので。」
・・・・。
顔を上げると、室長の顔が真剣な顔つきだった。
「ほらっ、イ・ガンヒョンが持って来てくれた。」私のカバンと着替え。
「立てるか?」私の手を取る。
ビックリした私はとっさに手を引いた。
お互いの顔が黙る。
気まずい。
「どんだけ苦手なんだ。」切なそうな室長。
「だから、あのーっ困ってしまって考えていたらグルグルしちゃって・・後は記憶がありません・・。」
下を向いてしまった私。
室長がどんな顔をしているのか、判らない。
「オレの事はいいから、今は熱下げることだ!!送って行く。」又私の手を握った。
引っ込めようにも、ガッチリ掴まれている。
「室長ーー!!」
「頬が赤くて、フラフラしているお前の事、ほっとけないんだ。」カバンと着替えを腕に取り、室長はこの部屋を出た。
ぐいぐいと引っ張られる私。
こんなとこ誰かに見られたら。
「キョロキョロするな・・黙って下向いてろ。」
運よく誰にも会わずに駐車場に着き、室長は自分の車の鍵を開けた。
あっ、この車。。カッコイイ。
KIA社・・・室長に合う黒い色。
私を後ろの席に乗せて、エンジンを掛けた。
ちょっと熱のある私は,ボーッと席に座っていると、ガンヒョンがやってきた。
そして室長が招き入れる。
「チェギョン大丈夫?」彼女は私のオデコを触って、心配そうにしている。
「ガンヒョン、なんで。」ボーとしながら聞いてみた。
「室長が、あんたを病院と家に送って行って欲しいって。」その言葉が終わると、車はゆっくりと走り出した。
ガンヒョンに連れられ、病院に行った。
室長は「後は君に頼む。」行ってしまった。
病院が終り、私とガンヒョンが一緒に住んでいるアパートに帰ってきた。
高校の時からの付き合いのガンヒョンとは、大学の時から一緒に暮らしている。
着替えて横になり、薬を飲まされた私は、まだ熱でボーーッとしている。
「ほらっ、もう眠りな。」とガンヒョンにオデコを触られ、私はウトウトとし始める。
「ガンヒョン、もう戻る?」
「アンタが寝たら、会社に戻るよ。今日は温かいスープ作ってあげる。」
ゆっくりと私の視界から・・ガンヒョンが消えた。
世界で一番苦手な室長から、付き合おうと言われ、混乱しきった私はゆっくりと睡眠に入った。
その日の夜。
私達の住む3階建てのアパートを見下ろす丘に、黒い車が止まった。
車にはKIAと言う名が。
車からスーツを着た男が降りる。
タバコに火を点け、ゆっくりと煙が出てきた。
何本目を吸い終わった時、屋上の部屋の電気が消えた。
スーツの男は、安心しきったように車に乗り、エンジンを掛けて駐車場を去った。
シン。チェギョンが仕事場で倒れた。
騒いでる皆の声に、オレは駆けつけた。
シン・チェギョンは頬を赤くして、床に倒れたいた。
「オイ!!」オレは彼女の肩を揺すったが、荒い息を繰返すばかりの彼女。
イ・ガンヒョンも「チェギョン!!どうしたの?」慌てている。
オレは彼女を抱き上げ「頭打ってないんだよな」見ていた部下に聞いてみた。
「ハイ、肩から落ちたので、頭は打ってなかったです。」心配顔。
「判った。皆もう席に着いて、業務を続けて!!私とイ・ガンヒョンさんで彼女を医務室に連れて行くから。」言った。
オレとイ・ガンヒョンは慌てて医務室を目指した。
ベットに寝かせ、保健医を呼ぶ。
頬が赤いチェギョンを2人で心配そうに、見ていると。
「室長がそんな顔するとは、知りませんでした。」
「部下が倒れたんだから、当たり前だろう?」冷静に言う。
イ・ガンヒョンは、チェギョンの額に手を当てながら、言い始めた。
「このコ未だに男の人苦手なんです。」
「!?」
「突然済みません。苦手だから。室長の事も苦手なんです。だから室長に呼ばれる度に、ビクビクしちゃってー。
だから、判って欲しいなーって、前から言いたかったんです。」彼女はオレの顔を見る。
「判った。嫌われてるかと・・苦手の方なんだ・・。」
「はい。」
「イ・ガンヒョンさん、仕事を抜け出して、君は彼女を病院に連れて行って欲しい。」
「えっ?良いんですか?」
「上司が良いっていうんだ着替えとカバン持ってきて欲しい。」
「室長!!有難うございます!!」と彼女は保健室を出て行った。
オレはチェギョンの熱くなった額に手を当てた。
彼女の額は熱くて、肌が柔らかかった。
オレは保健室の事を思い出しながら、車を走らせている。
シン・チェギョンと付き合えるには、時間が掛かりそうだな・・。
口元が片方だけ上がる。
「男が苦手。さてどうしようか。」