「お断りします」

朝早い、この経理部には2人以外の人はいない。

シーーンとした中に響く私の声。

「なぜだ?」室長の声もまた、響く。

「私は将来を誓い合った人がいるんです。」

「ほーーーっ。」

「ずーーッと好きな人なんです。」とポッと赤くなる。

「何時から?」

「中学校の時からです。彼、親の転勤でイギリスに行っちゃって、必ず私を迎えに来るって!!だからずーーと待ってるんです。」

室長の目がビックリしている。

「シン・チェギョン今何歳だ?」

「はい?今年で23になります。」

「そっかーーっ。オレは28だから、年的には悪くないな。」

「えっ!!室長って30越えているんじゃなかったんですか?」素直な私は思ったまま言ってしまった。

ギロッ!!

あーーーーっ!!怖いーーー!!

切れ長の目がもっと細くなってしまった。


「・・・じゃあ・・、今は22か・・・。だったら・・・夢見る年頃じゃないよな。」

「室長・・・何言ってるんですか!!彼はちゃんと来ます!!離れたくなくて、二人で家出までしたんですよ。」と室長のデスクに詰め寄った。

「ほーーーっ。それは又お前にしてはやったな。」

「それほど2人の絆は深いんです。」とえばった。

「ところで・・・その彼以外とは・・付き合ったことは・・・?」室長の目がイジワルモードに入った。

「ないです!!ある訳ないじゃないですかー!!彼、イ・ユル君の事ズーッと待ってるんです。他の男の人なんて、無理です!!」

「じゃーーッ、お前・・・、未だ処女なのか?」イジワルな言葉が私に突き刺さる。

「セクハラ!!室長、今のはセクハラーーー!!」怒る。

「今は職務外の時間だ。それに、これはとても・・オレにとっては重要な話だ!!」と逆に怒られた。

「くーーーーっ!!何で重要なんですか!?」

「オレは・・まだ処女と付き合った事ないんだ。楽しみが増えた。」手を組み笑う。

「済みません、付き合う前提になってますけど?」

「付き合うだろう?オレとお前は思ったより合うと思う。」机のパソコンを立ち上げた。

「私にはイ・ユル君がいるんです!!」

「その男は迎えに来ないさっ。お前もう22だろう?本当にお前に会いたかったら、高校終わって直ぐに迎えに来るはずだ。

4年も待ちくたびれてる。他の女と宜しくやってるさ。」

ぐっ!!

私が何時も心配していることをーーっ!!簡単に言って。

待っても待っても、迎えに来ないユル君。早く迎えに着てよーー!!

「迎えに絶対来ます!!」フンと顔を背けた。

室長はパソコンのキーボードを打ちながら「お前のスマホは?」

「えっ?ここにあります。」ポケットからスマホを出した。

「電源入れろ」

「ハイ。」室長の言うとおりに電源を入れてロックを外した。

待ち受け画面は・・中学校の時イ・ユル君と一緒に撮った写真だった。

室長は私からスマホを奪って画面を見て微妙な顔をした。

「コイツか。」

「かっこいいでしょッ」と照れる。

「中学のお前、髪短かったな。」

「よく男に間違われていました。だからユル君の為に伸ばしているんです。」照れる。

室長がスマホを私に返した。

「えーーーー!!なんで?待ちうけ。地球になってるんですか?」

「オレのアドレスと番号入れておいたから、短縮1番だからな。」

「勝手に。」


「おはようございます!!」人が入って来た。

「あれ?室長とシン。チェギョン!!珍しいですねーー。」

「昨日、ヘマしてないか聞いてた。」


「おはようございます!!やーーーーっ!室長ーーー!!今日髪の毛おろしているんですね。カッコイイーー!」次から次と女の声が響く。

私はどきなさいと皆に押された。

えっ!!知らなかった。

こんなに話してたのに、室長の髪の毛、何時ものセットじゃなかったんだ。

ちょっと悪い事しちゃったかな。

自分の席に戻ろうとした時、チラッと室長を見た。

皆に囲まれている間から、私と室長の目が合った。

室長は優しく私に笑ってくれた。

初めて室長の笑顔を見た。

何時も怒られてばかりで、まともに顔見た事無かった

だって、マジに怖かったから。


でも今、初めての優しい笑顔を見てあっ・・。

室長って、そんな顔できるんだ。

そんな人が私と付き合おうって。

冗談だよね。


私はスマホを握り締め、室長を見ていた。

すると、マナーモードがブルブルと震えた。

メール?慌てて開くと。


付き合うと言った事は、冗談じゃないからな!!今日の夜、メシに付き合え!!そして、この事は誰にも言わないで欲しい。

室長からのメールをボーーと見ていると、又メールが着た。


オイ!!返事は?



私は慌てて返信する。

付き合いませんが、ゴハンはお供させてください!!と返した。


ジーーーと室長を見ていると、スマホを見つめて、笑う室長がいた。


今日、初めて知った。室長って笑うんだ。

そして付き合ってくれって。


頭がゴチャゴチャして、グルグルするーーー。


自分のデスクに座ったが、突然の出来事に対応できない私は。


椅子から崩れ落ちた。