タンパク質中で結合状態になるアミノ酸は、そのタンパク質を構成し、高次構造をつくり出すという役割を担っているのであるが、いわゆる生理作用を示すことは少ない。

 

遊離しているアミノ酸は、数々の生理作用を示すことが多くなります。

 

BCAAの例も、その1つになります。

上図は、BCAAのうちロイシンに関する作用メカニズムであるが、大まかには4種類の作用があります。

 

1つは、図中でロイシンから真下に行く経路になります。

 

ロイシンはタンパク質をリン酸化する酵素の1つであるmTORを活性化し、最終的にはタンパク質合成に関わるmRNAの翻訳を促進することによって、タンパク質合成を促進します。

 

2つ目は、ロイシンがインスリンの分泌を促進し、そのインスリンがmTORを介してタンパク質合成を促進する経路になります。

 

ちなみに、BCAAがインスリンを介さずに筋肉へのグルコースの取り組みを促進するという報告もあります。

 

3つ目は、mTORがオートファゴソームの形成を阻害して、タンパク質分解を抑制することです。

 

また、プロテアソーム系にも阻害的に働いており、それによるタンパク質分解を抑制しています。

 

4つ目は、BCAAに分解され、エネルギー源及びグルタミン酸やグルタミンの生成に使われたり、あるいはアラニンの生成に使われたりする経路になります。

 

BCAAは運動後に起こる筋肉痛をある程度抑える効果を持つことが報告されています。

以上のことからBCAAの主な作用は以下になります。

 

・タンパク質合成促進作用

・タンパク質分解抑制作用

・筋肉へのグルコース取り込み促進作用

・筋肉痛を軽減させる作用

 

また、グリコーゲン枯渇時の補助的なエネルギー源になったり、生じたグルタミン酸によってアンモニアを処理する働きも持っています。

 

そのため、筋肉量ならびに筋力の増進、運動時の筋肉中タンパク質の分解抑制、運動時における持久力の向上、筋肉の修復や疲労回復の促進、肝機能低下時のタンパク質補給などを目的として、経口または点滴によるBCAA投与が行われています。