健常な成人である限り、グルタミン酸を経口投与しようが、経腸投与しようが、その大部分が小腸粘膜で消費される。

 

仮に門脈経由で若干のグルタミン酸が血漿中に入った場合でも、余分はアラニンなどの他のアミノ酸に変換されたり、アミノ酸濃度が満たされていればグルコースに転換されるなどして処理されます。

 

そのため、血漿中グルタミン酸濃度が大幅に上昇することはありません。

 

腸粘膜によるグルタミン酸の消費であるが、食事として取り込まれた腸管内のグルタミン酸は、そのほとんど(およそ98%)が小腸粘膜細胞のエネルギー源として消費されます。

 

その以外のアミノ酸では、グルタミンのおよそ66%、アスパラギン酸の99%以上が小腸粘膜細胞のエネルギー源として消費されます。

 

そのため、腸管内に入ったグルタミン酸とアスパラギン酸は、門脈の血液中にはほとんど入りません。

 

また、グルタミン酸とグルタミンはどちらも小腸粘膜細胞のエネルギー源となるが、仮にグルタミンを投与した場合には、グルタミンはグルタミン酸とアンモニアに分解されて血中のアンモニア濃度を高める方向に働きほか、グルタミンはその何割かが血中に移行して血漿中アミノ酸濃度を高めてしまいます。

 

血漿中のグルタミン濃度やアンモニア濃度の上昇が問題にならないようであれば、グルタミンそのものを投与しても大丈夫である。

 

疾患の場合において、腸炎からの回復を早めるためにグルタミンではなくグルタミン酸を経口投与されるのは、血漿中のアンモニア濃度やアミノ酸濃度を不用意に高めたくない場合であり、グルタミン酸の一部がアンモニアを吸収することへの期待もあるからです。

 

小腸のエネルギー源となるアミノ酸が食事などによって腸管経由で供給されないとき、すなわち空腹時には、動脈血中に比較的多く存在するグルタミンが小腸粘膜細胞に供給されます。

 

なお、動脈血中にはグルタミン酸もアスパラギン酸も少量しか存在しないため、それらが動員されることはありません。

 

一般的に小腸粘膜細胞に吸収されたグルタミンは、クエン酸回路を回すとともに、いくつかの代謝産物を排出します。

 

血漿中アミノ酸、ならびに筋細胞アミノ酸プールにおいて、グルタミンが最も多量に存在するのは、テニスコート1面分以上もの広い面積を有する小腸粘膜細胞の主要エネルギー源になっているからだと解釈することもできます。

 

体内に存在するグルタミンのおよそ30%は小腸粘膜、および小胞粘膜付近の免疫細胞が消費してしまうようです。

 

空腹時においてグルタミンを動脈血へ供給する主な供給源は、当然のことながら筋肉であり、筋肥大や筋力アップのためにグルタミン補給が重視されるのは、空腹のままだと筋肉中のタンパク質がグルタミン供給のために分解されるからです。

 

小腸粘膜細胞の主要エネルギー源がアミノ酸のグルタミンであることは、大領粘膜細胞の主要エネルギー源が酪酸などの低級脂肪酸であることと同じように、一般の人々にはあまり馴染みのないことだと思います。

 

生体のエネルギー源として多くの人が思い浮かべるのはグルコース(ブドウ糖)であるが、グルコースは赤血球や中枢神経細胞にとってかけがえのないエネルギー源であるため、小胞粘膜細胞はそれを消費することなく通過させ、門脈に送ります。

 

これは脂肪酸についても同じことであって、脂肪酸やアミノ酸が不完全代謝産物であるケトン体についても同じことであって、小腸粘膜細胞がこれらをエネルギー源として利用する割合はかなり少なくなっています。

 

いわば、小腸は他の組織の細胞のために、それらが好んで使う栄養素の使用を遠慮するということです。

 

今回のまとめ

 

・グルタミン酸を多量に摂取しても健常者であれば、小胞粘膜で吸収され、仮に血漿中に入ってもアミノ酸に変換されたり、グルコースに変換されることで処理する

・小腸粘膜細胞のエネルギー源は、グルタミン酸がおよそ98%、グルタミンがおよそ66%、アスパラギン酸がおよそ99%

・空腹時は、動脈血中に多く存在するグルタミンが腸内粘膜細胞に供給され、グルタミン酸やアスパラギン酸は少量しか存在しないので供給されることはない

・血漿中アミノ酸、並びに筋細胞アミノ酸プールにおいて、グルタミンが最も多量に存在するのは、テンスコート1面分以上もの広い面積を有する小腸粘膜細胞の主要エネルギー源になっているため

・小腸は他の組織の細胞のために、その細胞が好んで使う栄養素の使用を遠慮する

 

今回は以上になります。